話をしている間にだいぶ時間が経っていたらしい。気が付くとオセロたちに追いついて、エメラの家の前まで来ていた。シャマンとエヌマが大地とラビをそっと地面に降ろしたのと同時にルビドが家の中から出て来た。ルビドは、みんなの無事を確認してホッとした後、シャマンとエヌマに気付いて目を丸くし、駆け寄ってきた。そして、2人に微笑んだ。
「よくご無事で…。あれ以来、ずっと気にかかっていたものですから…。」
「兄妹揃って心配をかけさせてしまったようだな。すまない。」
「これ以上、ご迷惑になるわけにはいかないと思ってずっと尋ねずにいたのだけれど、かえって迷惑をかけてしまっていたのね。」
「迷惑だなんて……お二人の無事な姿を見てホッとしただけです。ガラスの魔女の怒りの声が麓のこの村にまで響いてきていたもので……何かあったのではと……。」
ルビドの話を聞いていた大地は、そういえばとシャマンとエヌマに声をかける。
「ねぇ、なんでベリタスはシャマンとエヌマを見てあんなに怒っていたのかな?2人ともベリタスに何かしたの?」
シャマンが首を横に振りながら話し出す。
「我々がガラスの魔女に直接的に何かをしたわけではない。ただ、魔女が作ったガラスを穢してしまったのだ。意図的にではないがな。」
「穢すってなんだよ。第一、テメーら、なんだってこの星にいるんだよ?その答え、まだ聞いてねぇぞ!」
ラビもずっと疑問に思っていたことを口に出す。さて、何から説明したものかとシャマンとエヌマが考えあぐねていると、ルビドが立ち話もなんだから家にどうぞと招くので、全員お言葉に甘えることにした。ガラスの魔女との一戦で、大地たちも緊張しっぱなしで本当に疲れ果てていたので、そのお申し出はとてもありがたかったのだ。
ありがとうございますと挨拶もそこそこに、家の中に入って椅子に腰掛け、ルビドとエメラが淹れてくれたカモミールティーを飲んで、ようやくホッとすることが出来た。
その間にシャマンたちが説明してくれた内容をまとめるとこうである。
・故郷の星を離れ、邪動神に乗って旅を続けていたシャマンとエヌマは偶然にも、自分たちの持つ邪動力とも大地たちが持つ魔動力とも違う強いエネルギーをこの星から感じて興味を抱き、立ち寄ることにした。
・ガラスの魔女の話を聞いて、更に興味をそそられ会いに行くことにしたのだが、魔女の作ったガラスになんとなしに触れた途端、綺麗な青いガラスが黒ずんでしまったのだという。
・魔女がそれを見て、自分の作ったガラスを穢されたと酷く怒ったのだそうだ。怒り心頭の魔女と一戦交えたが、シャマンたちの邪動力の方が強く、またシャマンたちが邪動力を使うたびにガラスが黒く変色してしまうため、それ以上戦うことが出来ず、力もあまり残っていなかった魔女はそのまま眠りについたのだという。
・それからは、魔女の怒りのためにこの星の人たちを危険に晒すわけにはいかないと、シャマンもエヌマもガラス山の中腹辺りを拠点にして隠れていたのだという。大地たちの声を聞きつけるまで。
「我々の邪動力は、どうやらガラスの魔女の力と相当に相性が悪いらしい。拮抗する力である、お前たちが持つ魔動力以上にな。」
というところでシャマンたちは話を終え、ようやく大地もラビも合点がいった。魔女のあの忌々しげな表情や態度は、自分が作りあげた芸術を穢す存在である上に、力では及ばないことに対するイラつきからきていたのだろうと。
「邪動神で旅をしているって言ってたけど、それってシャマンが乗っていたワイバーストのこと?」
大地がふと疑問に思い問いかけた。するとシャマンは首を縦に振ったが、エヌマは横に振った。
「あたしが乗っているのは、故郷に戻ってから再度作り直したヒドラムよ。」
それを聞いてラビが顔をしかめる。
「俺のアクアビートを真似しやがったマシーンのことか。また作ったのかよ。」
「悪い?あたしの邪動神をどうしようとあたしの勝手でしょ?」
「アクアビートの真似じゃねーか!盗作だ盗作!損害賠償しやがれ!!」
「海賊の真似事してたアンタに言われたくないわね。」
「なんだとー!!」
「落ち着けよ、ラビ。アクアビートとヒドラムは全然違うって。俺はアクアビートの方がカッコいいと思うよ。だからそんな怒ることないって。」
エヌマに掴みかからんばかりの勢いで立ち上がったラビを大地がなだめると、ラビはしょうがねーなと渋々席に座り直した。
シャマンが咳払いして、さてと、と切り出す。
「今度はこちらの質問に答えてもらおうかな。光の魔動戦士よ。」
「シャマン!!名前!!大地とラビだよ!!」
「…………わかっている。」
大地がふくれっ面で大声を出すと、シャマンは少ししおらしくなってしまった。なので、全く仕方ないんだからと大地は引き下がることにした。さもないと話が前に進まない。
「…我々が聞きたいことは、何故、お前たち2人が月から遠く離れたこの星にいるのかということだ。第一、もう一人の魔動戦士の姿が見当たらないではないか。別行動している理由はなんだ?それに、私が記憶している限りでは、お前たちの関係性はあくまで同じ魔動戦士であり、共に戦う仲間のはずだったが、いつの間に今のような関係になったのだ?」
シャマンに矢継ぎ早に質問され、大地とラビは戸惑う。何しろ、質問された内容はどれも今度の発端及び核心を突くものばかりで、それらを全て話すのは、穴があったら入りたくなるほど恥ずかしいものなのだ。どうしようと悩んでいると、すかさずオセロが大地とラビの代わりに答えた。
「コイツら、実は駆け落ち中なんだよ。」
『は?』
『オセロ!!!!』
言葉の意味を瞬時に理解出来ず思わず間の抜けた声を出したシャマンとエヌマ。核心を突くどころか、諸刃の刃で貫かれてしまったかのような心地になり、顔を真っ赤に染めて声を荒げる大地とラビ。そんな様子を気にもとめず、オセロはすべて包み隠さず、宇宙船内でラビから聞いた内容や自身の勝手な解釈(ほとんどそのとおりなのだが)を混ぜ込みながらシャマンとエヌマに話して聞かせた。
話し終わったときには、シャマンもエヌマも初めてラビから話を聞かされたときのオセロとドミノ同様、開いた口が塞がらなかった。深いため息を同時につく。
「……V‐メイたちの心労は相当であろうな…。」
「仮にもアグラマント様の孫だというのに、なんたること…。」
「うるっせえな!!こっちだってラビルーナを飛び出したときには、こんなことになるなんて思わなかったんだよ!!」
ラビルーナを家出し、駆け落ちなんてものを大地に持ち掛けたのは他でもないラビ自身なのだが、まさかこんな遠くの星まで逃げて、ガラスの魔女と戦う羽目になって、挙句の果てに偽の駆け落ち相手だったはずの大地のことをこんなにも好きになってしまうなんて、誰が想像できただろうか。
「オレだってな!!普通なら可愛い女の子の方がずっとずーっといいに決まってんだよ!!だけど、仕方ないだろ!!すっ、すっ、すきに、好きになっちまったんだから!!」
「ラビ!!頼むから、ちょっと、黙っててよ!!」
「嫌だね!!こんな好き勝手に散々言われて、こちとら我慢の限界だっつーの!!」
「だからって恥ずかしいにも程があるだろさっきから!!ちょっとは弁えて喋ろって言ってるんだよ!!」
「るせぇ!!オレに命令すんじゃねーぞ、大地!!」
「なんだと!!やるか?!」
「あぁ、いいぜ!!表出やがれ!!」
「よぉし!!」
ファイティングポーズをとって、勢いよく外に飛び出す大地とラビ。ラビの回復魔法のおかげで、捻った足はすっかり治っていたため、走ってもなんの問題もなかった。
そんな2人を唖然として見る一同。ドミノが口を開く。
「あの2人……仲が良いのか悪いのか、どっちなんでやんしょーね?」
「知らねーよ…。」
オセロがポツリと言う。そのとき、家の中にいた全員が呆れたという顔をして外を見ていたのだが、シャマンだけは難しい顔をして下方を向き、ボソボソと呟いていた。
「全く…。V‐メイは何をやっている?こちらの忠告は確かに受け取ったはずなのだが…。」
シャマンが小さく発したその言葉を、拾った者はいなかった。
家の外にて
「………………。」
「………………。」
無言で背を向け合って地面に座り込む大地とラビ。顔の熱はまだ引きそうになかった。
外に出た2人は、さぁやるかと互いに飛びかかった拍子にもつれ合って倒れ込み、大地が馬乗りの格好となってラビを押し倒すも、ラビが下から大地の胸ぐらを掴んだまま腹筋を使って起き上がろうとしたところ、それにより互いの顔がぐんと間近に迫ったことで、2人同時にハッと固まる。
キスを交わしたときもこんなふうに顔が近かったことを思い出して頬がかあっと熱くなる。あのときは、互いに想いが通じ合ったことに舞い上がり、夢中で口付けを交わしてしまったものの、2人とも後々になって恥ずかしい気持ちの方が上回り、そのことにはなるべく触れないようにしていたのだが、こうも顔が近いと思い出すなという方が無理である。喧嘩する気など疾うに失せていた。
喧嘩続行は不可能だが、かといって謝るのも癪。このままでは埒が明かないと、取り敢えず大地は馬乗りを止めてラビの上からどき、ラビは起き上がって座り直した。だが相手の顔を見てなどいられず2人して互いに背を向ける。どうにも好きな相手と喧嘩するというのは難しい。
喧嘩などしなければ良いだけの話なのだが、いくら好きになったからとはいってもムカつくものはムカつくし、譲れないものは譲れない。特に相手が、負けたくないと強く思う喧嘩友だちのような間柄でもあるから尚の事。
だけど決して、相手を困らせたいわけでもましてや嫌いになどなるわけもない。むしろ、嫌われたらどうしようと臆病風に吹かれてしまうくらいだ。
「………………なぁ、大地。」
「………なんだよ、ラビ。」
「………………怒ってるか…?」
「……………怒ってないよ…。」
「……そっか…。」
「……うん…。」
振り返ると互いに目が合う。こそばゆさを感じつつも、胸の中が温かく満たされる。初めての気持ち、相手からもらった大切なもの。大地はクスッと笑って立ち上がり、ラビに手を差し伸べた。ラビは差し出されたその手を、迷わずしっかりと握った。
よいしょと立ち上がると、ラビはその勢いのまま大地を抱きしめる。一瞬固まるも、大地も静かにラビの背に手を回し抱きしめ返す。相手の背中に手を添えるだけの優しい抱擁だったが、2人はとても満足そうに笑みを浮かべる。
大好きという気持ちが互いに、とてもよく伝わってくるからだ。抱きしめあったまま、ラビが大地に声をかける。
「……なぁ、大地。」
「ん?なに?」
「あのさ、今回のことが、全部が片付いたらさ、その、あの……。」
「…?ラビ?」
「……っ、大地、オレと……!」
ドオオオオオオン!!!!!
「うわっ!!なんだ!!」
「なんなんだ!!この地鳴りは!!」
凄まじい地響き、そのあまりにも強い揺れに大地とラビは尻もちをつく。
「どうした!!何があった!!」
「大丈夫か、ラビ!大地!」
オセロとドミノが慌てて家の中から出て来る。その後からシャマンやエヌマも出て来て、大地とラビを助け起こしてくれた。
「これは……!あの魔女の仕業か…!」
「全く、やってくれるわね…!」
苦々しげにシャマンとエヌマが揺れのもとであろうガラスの山の方を見上げた。
「なんだ、なんだ、一体何事だ?!」
「この地鳴りはなんなの?!」
「ガラスの魔女が怒ったのか?!」
あまりの地響きに、この街の人々が次々と家の中から出て来てガラスの山を見つめて恐れ慄いている。
こんなにも沢山の人が暮らしていたのかと、大地は少しばかり驚きを隠せないでいた。そして魔女の自分勝手な我が儘のために、こんなにも多くの人々の暮らしをめちゃくちゃにし、困らせていたのかと沸々と怒りが込み上げてきた。さっきは成すすべもなく攻撃に対して怯むばかりだったが、次はそうはいかないと、大地は戦う決意を固める。
「ラビ!俺がグランゾートを呼んで様子を見てくるから、その間にアクアビートを呼んでくれ!」
大地がラビに声を掛けながら振り返ると、ラビは、大地が思わず怯むくらい、これでもかというくらいに怒りを顕にした顔をしていた。
「嫌だね!!オレがアクアビートで応戦するぜ、その間にお前がグランゾートを呼び出せ!!」
「ラビ?どうしたんだよ、そんなに怒って…?」
「うるっせぇ!!こちとらスッゲー大事なことを言おうとしてたっつーのに邪魔しやがって!!ぜってぇ許さねーぞ、ガラスの魔女!!!!」
そう叫ぶように言うと、ラビは物凄いスピードでガラス山の方に向かって駆け出して行ってしまった。
「ラビ!!ったく、相変わらず無鉄砲なやつ…。何をあんなに怒ってるんだよ…?」
少なくとも、地響きが聞こえるまでは怒っていなかったと思うんだけどな…と大地が考えていると、エヌマに怒鳴られた。
「そんなこと考えてる場合?!いいから、アナタも早くグランゾートを呼び出しなさい!!あの坊や1人に行かせる気?!」
「はっ、はい!!」
エヌマの凄い剣幕に思わず敬語になってしまったが、一刻を争う事態だということは大地だって理解しているのだ。急いで家の中に戻り、ジェットボードを持ってくる。
「エメラ!この辺りに平らな広い地面のある場所ってないか?!」
「それなら、この先の街外れに大きな広場があるわ!」
「ありがとう、エメラ。オセロ、ドミノ!2人は街の人たちを安全なところまで避難させてくれ!」
大地がオセロとドミノに声を掛けると、ガラス山の方を呆然と見ていた2人はハッとして、頷く。
「おっ、おう!任せときな!!行くぞ、ドミノ!!」
「ガッテン、船長!オメーらも気をつけて行けよ、大地!」
「大丈夫、任せてよ!!」
大地はジェットボードに飛び乗ると広場の方向を目指して一気に加速させた。
勢いを増したジェットボードのスピードのおかげで、すぐに目的地に辿り着いた。ガラスの地面ではあるものの、この広さなら充分だと、大地は愛用の魔動銃を構え気合いを入れる。
「よおし!いくぜ!」
「おい、大地!」
「えっ、わ!!…っ、いってぇ!!って、ラビ?!」
グランゾートを呼び出そうとした次の瞬間、ついさっきガラス山の方に走って行ったラビが何故かすぐ近くにいて、大地はビックリして、その拍子にガラスの地面に足を取られてすっ転んだ。
「何やってんだよ、大丈夫か?」
「何やってって、お前こそなんでここに?!さっき山の方に走って行ったばかりじゃないか!」
「しかたねーだろ、山にはアクアビートを呼び出すために水浸しに出来そうな場所なんてなかったんだからよ。山の中腹まで登って辺りを見渡したら、丁度良さそうな広場が見えて、走って来たらお前がいたんだよ。」
「…この短時間によくそんだけ走って疲れないよな…。」
息一つ切れてないラビに大地は感心するのと同時に呆れる。どう考えたって山の往復に全力疾走するバカはいない。だが、そんなバカをなんてことなくやってのけるラビには流石だと大地も思わざるを得ない。
「そりゃ登るのはちょっと走りにくかったけどよ、下ってくるのはガラスの地面を滑って来ただけだから案外楽だったぜ?」
「…あっそう…。」
ラビにとっては、あんなの全力疾走でもなんでもないのだろうと大地は考えるのをやめる。
そして、そういえばと思い出してラビに聞いた。
「おい、ラビ。さっきはなんで、ベリタスに対してあんなに怒ってたんだよ?第一、スッゲー大事なことって何?俺に何を言いたかったんだよ?」
大地の問いに対し、ラビはうっと詰まる。
「っ、えっと、それはだな……走ったらちょっとスッキリしたからよ、もうそんなに怒ってないぜ、っていうか、あんま覚えてねーわ、うん。何か言ったっけオレ?」
走っている最中に冷静さを取り戻したのは本当のことで、実際あのときあれ以上言わなくてすんで良かったと、走りながらもラビは思っていた。
(オレと、ずっと一緒にいてほしい…地球に帰らないでほしいだなんて、そんなこと言ったって大地を困らせるだけだしな…。)
そんなことを言えば、いくら大地がお人好しとはいっても本当に困らせてしまうだろうし、自分たちの関係を認めてくれた大地の家族にも申し訳がない。大地には地球での生活があるのだし、ラビだって母親であるサユリのもとに、ラビルーナに帰らなければならない。
もちろん帰ったら、サユリにもV‐メイにも自分と大地の関係を正式に認めてもらうつもりではあるが。
だが今この状況下で、そんなことを考えていました、などとバカ正直に言えるはずもない。ラビは目線を横に逸らしながら適当に誤魔化すが、もちろん大地に通じるわけもなくジト目で見られてしまった。
「ラビ、お前……嘘つくの下手だな…。」
「…っ、うるっせえな!!いいだろ、そんなこと!!オレたちは今、そんな些細なことで言い合いしてる場合じゃねぇんだから!」
「まぁたすぐ誤魔化す…ったく、もう…。」
これは今何を聞いても答えてもらえそうにないと、大地はため息をつく。
と、そのとき。
ズシーーーーン、ズシーーーーン
「うわ、またあの揺れか?!」
「いや、違うよラビ!さっきとは揺れ方が違う!!これは、まるで……!!」
まるで、そう。何か、とてつもなく大きな何かが、山からこちらに向かって歩いて来てるような……。
「っ?!おい、大地!あれ見ろ!!」
「えっ?……うわっ!!なんだよ、あれ?!」
ガラスの山を見上げると、頂上よりも少し下方付近に地響きを起こしていた主を、その全貌を捉えることが出来た。それは、とてつもなく大きなガラスで出来た巨人だった。以前戦った暗黒大邪神よりもさらに大きいように見える。
「と、とんでもねぇな…。」
「こ、これが魔女の底力なのかよ…。」
ラビも大地も唖然として、その巨人を見つめた。その巨人は体格が大きくガッシリとしており、その巨体からこれまた太く大きな腕と足が伸びている。頭は丸いが顔の部分には鼻や口といった顔のパーツなどなく、あるのは大きく赤く光る瞳孔のない目玉のようなものだけ。
すると、その目玉がこちらを、大地とラビの方をギョロリと見たように思えた。その瞬間、巨人がしゃがみ込むような動作をした後、その巨体からは考えられないほどの身軽さで一気に空中に跳び上がった。
巨人はその勢いのままに、こちらにどんどん近づいて来て、大地たちがあっ、と思ったときには、
ドシーーーーーーーーン!!!!!
と、大きな音を立てて、大地とラビの目の前に着地していた。
着地の際の強烈な揺れにおっとっとっと、とよろける大地とラビ。何とか踏みとどまって巨人を見上げた。近くで見るとさらに巨大に見える。
「スッゲーな…。よくこんなもん作ったよな、あのオバサン。」
「ラビ……オバサンってベリタスのこと?さすがに失礼なんじゃないか、そんなこと言って。」
「オレより5つ以上の年上はみんなオバサンなんだよ。」
「だからエヌマのこともオバサンって言ってたのか…。」
「まぁ、当時アイツが16歳だったってのにはビックリしたけどな。」
「確かに、俺ももっと年上だと思ってたよ。シャマンもエヌマも。」
「だよな!」
「うんうん。」
「あなたたち、この巨人を目の前にしてよくそんな世間話をしていられるわね。さすがに呆れるわ。」
突然頭上から声が聞こえてきて、ハッとして見上げると、巨人の肩に当たると思われる部分、そこにガラスの魔女ことベリタスがちょこんと座ってこっちを呆れ顔で見ていた。
『ベリタス!!』
2人は咄嗟に身構える。ベリタスは綺麗な顔で不気味な笑みを浮かべながら、立ち上がる。
「どうかしら?私の最善にして最大の魔法、最高傑作ガラスの巨人を見た感想は?」
「確かに見応えはあるしスッゲーデケェとは思うけど、センスは今ひとつだよなぁ、顔とかもっと工夫出来なかったのかよ?まぁ、そんなことよりもさ、随分とお早いお目覚めだよな。もっと長く寝てなくて良かったのかよ?寝不足はお肌の敵じゃねぇの、オバサン?」
ラビが挑発するように言うと、ベリタスが頬を引くつかせながらも、小馬鹿にしたように笑う。
「アラアラ。既に言ったと思うけど、私はね、あなたたちが穴に降りて来る少し前に起きたのよ?もうその時点で十分に睡眠は取れてるの。寝直したのは嫌な奴らを見て、気分が悪くなったから、体力を万全にするためにもう一度仕方なく寝ただけ。けれどね、短い時間でも熟睡したから気分は最高潮、思う存分戦えるわよ。さぁ、魔動戦士さんたち。私のガラスの巨人を相手にどう戦うのか、見せてもらうわよ!」
ベリタスがマントを翻し、音もなくフワッと浮き上がると、ガラスの巨人が口もないのに、地の底から響いてくるような声で、大きな雄叫びを上げた。
「へっ、相手にとって不足はないな!行くぜ、大地!!」
「よし!やるか!!」
お互いに顔を見合わせて頷き合い、背を向けて走り出す。ラビは小さく呪文を唱えて大きな水たまりを作り出し、大地はジェットボードを一度地面に下ろした。そして、大地はグランゾートを、ラビはアクアビートを呼び出すため、それぞれの魔動器を構えた。
「マジカルシュート!」
「マジカルスピン!」
2人の魔動器が地面と水面に、それぞれの魔法陣を描き出す。
「ドーマ・キサ・ラムーン、光出よ、汝グランゾート!」
「ドーマ・キサ・ラムーン、光出よ、汝アクアビート!」
2人が光の呪文を唱えると、それぞれの魔法陣からフェイスモードの魔動王が光と水に包まれて、その姿を現した。
「行くぜ!!」
「それ!!」
大地はジェットボードに、ラビは光のプレートに跳び乗る。2人のコスチュームが変わり、グランゾートとアクアビートの中に入っていく。
「グランゾート、スーパーチェンジ!」
「アクアビート、スーパーチェンジ!」
大地とラビの掛け声で、グランゾートとアクアビートはフェイスモードから戦闘形態バトルモードへとその姿をチェンジした。
月から遠く遠く離れたガラスの星に、2体の魔動王が今再び蘇った。