月虹の鎮魂曲と光の仲間たち   作:ÆM

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魔女の悲しい罪

 

「なぁ、ラビ。大丈夫かな、シャマンとエヌマ。巨人のこと任せっきりにしちゃったけどさ……怪我とか、してないかな…。」

 

 魔動王に乗っているおかげで、あっという間に魔力ガラスの所まで登って来た大地とラビ。ふと大地は、残してきたシャマンとエヌマのことが心配になってきてラビにたずねた。

 

「んなこと心配してる暇あったら、早いとこ魔力ガラス砕かねーとだろ?魔力ガラスさえなんとかすれば、あの巨人だって消えるだろうし、そうすりゃあの2人だって助かる。」

「そうだけどさ…。」

〈大地。仲間を案じる気持ちはわかる。だがそれ以上に信じることも大切なことだ。〉

 なおも心配する大地にグランゾートが声をかける。

 

「…仲間……。」

〈あの2人はもはや敵ではない。お前の大切な仲間、違うか大地。〉

「…うん、そうだ。あの2人はもう仲間だ。ありがとう、グランゾート!」

「チッ、んだよ。なんでオレの言うことは聞かねーくせに、グランゾートの言うことは素直に聞くんだよ!」

「別にそういうわけじゃないけど、なんていうかさ、グランゾートってラビルーナでは神様って呼ばれてたじゃん?だからなのか、なんか言葉に重みがあるっていうか、ありがたみがあるっていうか…?」

「んな?!」

 

 つまり自分の言葉は、重みもありがたみもないということかと、ラビは怒りを通り越してショックを受けた。

 

「……あぁ、そーかよ!だったらもう、オレには聞くなよな!!言葉に重みもありがたみもあるグランゾートに聞けばいいだろ!!」

「ラビ……。」

 

 ふんっと大地に背を向けでラビが座り込むと、ラビが乗っているアクアビートも同じように、向こうを向いてあぐらをかき、頬杖をついた姿勢をとった。

 仮にも水の魔動王であるアクアビートに、そんな格好をさせるなんて、これは相当拗ねてるなと大地は思った。

 

「そう拗ねるなよ、別にラビの言葉を聞いてないわけじゃないんだってば。ちゃんと聞いてるから、なぁラビ!ラビってば!」

「……ふんっ…。」

「…あ〜あ…。」

 

 完全に機嫌を損ねてしまったらしく、そっぽを向いたまま返事もしない。そんなラビを見て大地は唐突に、先程エメラの家の前でラビが大地に言おうとしていた〝スッゲー大事なこと〟が何なのか、気になってきてしまった。

 

(今聞いたところで答えちゃくれないだろうけど、ホントになんて言いたかったんだろ?)

 

ーーー今回のことが全部片付いたらさ、大地、オレと……!

 

(もしかして………オレと、結婚してくれ!……とか…?)

 

 ボンッ!!!

 

 想像して大地は顔から火をふいた。

 

「っ、やだなぁ、んなわけねーじゃん!!俺ってば何考えちゃってんだろ!!ちがうちがう、ないないない!!」

〈落ち着け大地!私までお前につられて動いてしまっているではないか。〉

「あっ…!ゴメン、グランゾート…。」

 

 大地が首を激しく横に振ったり、両腕を顔の前でブンブン振ったりすると、グランゾートもそれに同調して、まるで下手な一人ダンスを踊っているかのような奇妙な動きをする羽目になってしまった。

 

「……何やってんだ大地…?」

 

 拗ねてたはずのラビも、突然変な動きを始めたグランゾートを見て呆気にとられてしまった。大地の想像は当たらずとも遠からずなのだが、そんなこと当の本人たちは知る由もない。

 

〈大地。お前とラビの間に、一体何があったというのだ。〉

 大地が動くのをやめると、グランゾートが聞いてきた。

「?何がって何?どういうこと?」

 急な質問の意図がわからず大地は尋ね返したが、数秒後に聞き返すんじゃなかったと後悔した。

 

〈明らかにお前たちが纏っている空気が以前と違うのだ。以前は、固い絆で結ばれた親友といった空気感だったが、今はまるで、痴話喧嘩している恋人同士といった空気感ではないか。〉

「?!」

〈…どうした大地。顔が真っ赤ではないか。その上心拍数まで急速に上がっている。大丈夫か、大地。〉

「大丈夫!大丈夫だから、そんな身体症状の実況までしなくていいから!ちょっと、待って!」

 

 グランゾートに見事なまでに言い当てられて、大地は恥ずかしさのあまり、穴があったら入りたい気持ちに駆られる。  

 確かに大地とラビの今の関係を言葉にすると、さっきの言葉通りになるのだろうけれど、まさかグランゾートにも見抜かれてしまうなんて、と大地は顔をさらに赤くした。すると突然、アクアビートが立ち上がってこちらに駆け寄ってきた。

 

「おっ、おい大地!大丈夫か?!」

「へっ?大丈夫って何が?!」

 ビックリしたようなラビの声が聞こえてきて、大地の方がビックリする。

「何がって……真っ赤だぜ、顔。」

「なっ?!なんで、そんなことラビにわかるんだよ!!」

 

 確かに大地は、自分の顔が赤いことをグランゾートに指摘されたが、何故グランゾートに乗っている大地の顔がアクアビートに乗っているラビにわかるというのか、という意図で大地はラビに聞く。

 

「なんでって、そりゃ目の前でグランゾートの顔がいきなり赤くなったんだから、わかるに決まってるだろ?」

「へ?グランゾートの顔が??」

 何の話だと大地が困惑していると、ラビが頷いた。

 

「そうだよ!いきなり変な動きをしだしたと思ったら、顔から火が出てんじゃねぇかってくらい、真っ赤になっちまうんだからよ、ビックリしたぜ。どうしたんだよ一体?」

「俺が聞きたいよ!何でグランゾートまで赤くなってんの?!」

 わけがわからず、大地はグランゾートに向かって叫ぶ。

 

〈大地よ。お前が私に乗っている間、お前の心も行動も全て私と一心同体なのだぞ。お前が強い気持ちで動けば、私も動く。お前の顔が赤く染まれば、私の顔も赤くなる。魔動王と魔動戦士は心と心で強くつながっているのだ。〉

「……。」

 

 自分が動くつもりになって動けば魔動王も同じように動く、魔動戦士の強い気持ちが魔動力をより強くする、というのは今までの戦いの経験上、よくわかっていた。だけど、顔色まで変わるというのは今初めて知った。

 

(こんな形で知りたくなんてなかったよ……。)

 大地は心の中でぼやいた。

 

「おい、大丈夫なのか?大地?」

 

 ラビにグランゾートの声は聞こえなかったらしく、大地に聞いてくる。さっきまで拗ねてたくせに、今は大地のことを本当に心配しているらしい。

 ったくもうと思いつつ、ラビの機嫌が直ったことに大地はホッとした。

 

「何でもないよ、大丈夫。ありがとな、心配してくれて。」

「……別に心配なんかしてねーよ…。」

「…あっ!」

「…?なんだよ、大地?」

「……ふふっ、何でもない!」

「ん??」

 

 アクアビートの顔がほんのり赤くなったのを見て、大地はこそばゆい気持ちになり、思わず笑みが溢れた。

 

(こんなふうに顔色がわかるっていうのも悪くないな。)

 

〈……大地。水を差すようで悪いが、今はこんなことをしている場合ではないと思うぞ。〉

「あっ!!そうだった!!ラビ、早く魔力ガラスをなんとかしようぜ!!」

「だからさっきからそう言って…!!ったく、しょうがねーな!!」

 

 2人はスーパーのコスチュームのまま、魔力ガラスの目の前に降りる。魔力ガラスを砕いたら、すぐまた魔動王に乗り込むつもりだったため、アクアビートとグランゾートにはそのまま穴の上で待っていてもらうことにした。

 

「……よし!ラビ、手を…。」

「……わかってるよ…。」

 

 両思いになったとはいえ、いやなったからこそ、恋人繋ぎに物凄い恥ずかしさを覚えるが仕方がない、これしかないのだと自分に言い聞かせ2人は手を繋いだ。繋いだ瞬間に2人の顔が更に赤く染まったのを見ることが出来たのは、上からことの様子を見守っていた2体の魔動王だけだろう。

大地とラビは深呼吸してから、魔力ガラスに手を当て、光の呪文を唱える。

 

「ドーマ・キサ・ラムーン、ドーマ・キサ・ラムーン。」

「ドーマ・キサ・ラムーン、ドーマ・キサ・ラムーン。」

 

 すると魔力ガラスが青から白に色を変え、輝き出した。まばゆい光に目が眩んだが、大地とラビは構わず呪文を唱えながら魔動力を注ぎ続けた。

 

 しばらくすると徐々に光が消えていき、気がついたときには触れていたはずの魔力ガラスが影も形もなく消えていた。

 

「消えた…?何で?」

「これって、魔力ガラスを砕いたことに、なるのか…?」

 

 大地とラビが顔を見合わせていると、頭上から声がした。

 

「ええ、そうよ。あなたたちの魔動力が魔力ガラスを光の粒子に変えたのよ。」

 ハッとして上を見ると魔動王よりもさらに上から、ベリタスがこちらを見下ろしていた。

 

「ガラスの巨人も光と消えたわ。これで私の力も、ほとんど失われてしまったわね。」

 悔しさなど微塵もなく、それどころか清々しさまで感じさせるベリタスの様子に、大地もラビも戸惑う。

 

「さてと、これであなたたちが取るべき行動はただ1つ。あなたたちの魔動力を全てぶつけて私を倒すのよ。そうすれば、この星は元通りの緑豊かな土地に戻るわ。」

 

 まるで始めから、これが狙いだったとばかりにベリタスが言ってのける。

 

「ちょっと待てよ!魔力ガラスを砕いたら、元の緑の星に戻すってこの星の人たちに約束してたんじゃないのかよ!お前を倒せばなんて聞いてないぞ!」

 大地が声を張り上げると、ベリタスはふんっとそっぽを向く。

 

「気分が変わったの。砕いたらそれでおしまいなんて、考えてみればつまらなさすぎるわ。私を倒さない限り、この星は永遠に元に戻らないわよ。」

「きったねーぞ!!」

 ラビの怒声にも知らんぷりで、ベリタスが魔動王の前まで降りて来た。

 

「さぁ、早く、この私を倒しなさい!あなたたちに残された道は、それしかないのよ!」

 

 そう言われても、大地もラビも戦う意志のない相手を倒すなどしたくない。戦わずしてことを収められるのであれば、その方が良いに決まってる。

 

「お前がさっさと負けを認めてこの星を元に戻せば済む話じゃねーか!何だってオレと大地が無抵抗の相手を倒さなくちゃならねーんだよ!!んなもん勝利でもなんでもねー!!絶対嫌だぜ!!」

 ラビが大声を出すと、ベリタスが睨みつけてきた。

 

「誰が負けを認めるもんですか!言っておくけど、魔力ガラスが砕かれても、私はね、この星を覆っているガラスからもエネルギーを貰えるのよ。グズグズしてたら私はまた魔力を回復してあなたたちに攻撃を仕掛けるわよ。巨人だってすぐに復活させてみせるんだから!」

 

 そうなるとかなり厄介だということは、大地もラビもわかる。だけど何故、ベリタスがそこまで自分を倒せと迫ってくるのかと疑問を抱かずにはいられなかった。

 

「なんで、そんなに倒せ倒せって言ってくるんだよ!俺たちがお前を倒したら、一体お前はどうなるわけ?!」

「……消えるわ。」

 

『なんだって?!』

 

 2人の声が揃う。ベリタスは何度も言わせないでというふうに首を縦に振った。

 

「消えるって言ったのよ。光の粒子たちみたいに、私は消えるの。あなたたちの世界の言葉でわかりやすく言えば、成仏するって言ったところかしら。」

「じょっ、成仏?!」

「…ってことは、テメー……魔女じゃなくて、幽霊ってことなのか…?!」

 大地とラビがおっかなびっくり聞き返すと、ベリタスは似たようなものよ、と言った。

 

「私はね、こんな身なりだけど、もう何千年も生き続けてるのよ。年も取らないし、死ぬこともない……昔々に犯してしまった、たった一度の大罪のために、罰として永遠の命を与えられてしまったから……。」

 

 ベリタスの言葉に2人は耳を疑う。罰として永遠の命を与えられたとは、どういうことなのか。

 

「永遠に生きられることが、罰になるのか…?」

 ラビが呟くように問うと、ベリタスは嘲笑うかのような口調で答える。

 

「わからないでしょうね。いつの時代も人間という生き物は、死という恐怖から逃れるため、永遠の命や不老不死に憧れを抱き、常に追い求めているもの…。それが、とてつもない不幸に結びついているとも知らずに……全くおめでたいわ。」

 

 その口調はどことなく悲しげで、切なげだった。一呼吸置いてから大地が尋ねる。

 

「ベリタス……君は、一体何者なんだ…?」

 

「……私はもともと、この宇宙とは違う別の次元、言わば異世界からやって来た異世界人よ。」

 ベリタスはそう言ってから、自分の過去を話し出した。その話をまとめると、こうである。

 

・異世界の宇宙には、地球のような星が幾つも存在していた。そして、その宇宙を創造し守る神がいた。人々はその神の存在を認識し崇め奉っていた。

・魔法使いの家系に生まれたベリタスは、生まれたときから、神の姿を見ることが出来、声を聞くことが出来、近付くことが出来、神から力を受け取ることが出来るという不思議な力を持っていたため、幼少の頃からその神に仕えていた。

・普通の人より遅く年を取り、普通の人にはない神より授けられた力(魔法)を持ち、神の代わりに人の近くで人々の祈りを聞き、人々の暮らしに恵みをもたらし、人々の願いを叶えるといった役割を担っていた。

・あるとき、ベリタスは1人の男性に好意を持った。その人と共にいたい、同じ時を生きたいと願った。それは相手の男性も同じだった。けれどその男性は普通の人で、神に仕えるベリタスと生きる時を共にすることは出来なかった。限られた時間、限られた関係。それでも共にいられる時を、2人は何よりも大事にしていた。

・けれど男性は、流行り病にかかりあっけなく亡くなってしまった。ベリタスは神に頼み込んだ。自分の命と引き換えにしてもいい、男性を助けてほしいと。神は言った。生き物の寿命は決まっている。その男性だけを特別視して生き返らせることは、例え神でも許されないと。

・ベリタスは諦めきれなかった。男性の命を助けるため、生まれ持った力と神から授けられた力、己の持つ力の全てを振り絞った。結果として、男性は蘇えることが出来た。

・だがその後、様々な大災害があちこちの星で起こった。神から授けられた力をほとんど失ってしまっていたベリタスは、大災害から人々を守ることが出来ず、それにより多くの助けられたはずの命が消えていった。そして皮肉なことに、ベリタスが必死になって蘇らせた男性も、その大災害で再び命を落としてしまった。

・何もかも絶望したベリタスは、神に自分を殺してくれと言った。自分の命で償わせてくださいと。神は言った。ベリタスの命だけで今度のことを償うことは出来ない。助けることが出来たはずなのに失ってしまった命が多すぎたのだと。

・ベリタスは神によって、二度と死ぬことが出来ず年を取ることも出来ない身体にされた挙げ句、その宇宙からの追放を申し渡されてしまった。その際に、神はベリタスに再び力を授けた。その力とは、触れたもの全てを青いガラスに変えてしまうというものだった。

・誰とも触れ合えず、1人孤独に永遠に生き続ける。これがベリタスに科せられた罰だった。

・神は最後に言った。その罰が終わる時は、ベリタスが力を使い果たした時だと。力を使い果たせば、身体を維持することが出来ず、光となって消えるだろうと。その時こそ、ベリタスが真の意味で罪を許された時なのだと。

 

「こちらの世界に来た時は、今より魔力量が凄まじくて、触れるだけでなく、私の近くに来るだけで全てがガラスになってしまったわ…。隕石も、無人の星も、光さえ飲み込むブラックホールまでも…。この星は、長い間漂流して、力も少しはコントロール出来るようになって、やっと辿り着いた人が住む星だったの。でも、私がこの土地に降り立った瞬間、やはり全てが青いガラスに変わってしまった…。人々は知っての通り、私をガラスの魔女として恐れた。でもようやく見つけた人の住む星だもの。どうしても出て行きたくなくて…。眠る時間を長くしたのは出来るだけ魔力を抑えるためよ。起きていると時々力が暴走してしまうことがあったから…。たまに私を起こして、魔力を全身に浴びてガラス化してしまう人もいたけど…。そんなことを減らすためにも力を早く使い果たす必要があった。だからゲームと称して、私の全魔力を注ぎ込んで魔力ガラスを作り上げ、このガラスを砕ければ星を元に戻すと人々に言ったの。このガラスが砕かれれば、さすがに魔力を使い果たして身体も保てなくなるだろうと思ってね…。まぁ、あなたたちの魔動力が私のガラスと相性が良かったおかげか、星のガラスに含んだ私の力が強過ぎたためか、未だこうして身体は保たれてしまっているみたいだけど…。心から愛し合う者同士にしか砕けないように細工したのは、人と人が愛し合う姿を間近で見たかったからよ。かつての私も、この命をかけて愛した人がいたことを忘れないためにね。でも、中々いないものね……自らの命と引き換えにしたとしても守りたいと思うほど強い絆で結ばれてる人たちなんて…。」

 

 話を終えると、ベリタスは深呼吸をした。その心はとても穏やかなものだった。

 

「私は、もう生きていたくないの。早く、一刻も早く罪を償って、あの人のもとに行きたいのよ…。」

 

 大地もラビも言葉を継げなかった。大切な人の命を救おうとしただけなのに、結果的に、守らなければならなかった大勢の人たちも、助けたはずのその人のことも、守ることが出来なかっただなんて…。けれど、そんな話を聞いてしまえば尚の事、ベリタスにトドメを刺すなんて出来っこなかった。大地がベリタスを見上げながら言う。

 

「ベリタス…。悪いけど僕たちは、君を、倒すことは出来ないよ…。」

「同情なんていらないわ!!私が望んでいるのはただ1つ、あの人のもとへ行くことよ!!だから、早く!!」

「っ、ふざけんなよ!!何でオレたちが、テメーの尻拭いなんざしなくちゃならねーんだよ!!」

 

 大地の言葉に耳を貸さず、叫び散らすベリタスにラビが怒鳴り返す。

 

「テメーはなぁ!!そうやって、死ねれば満足なのかもしれねーけどな、残されたオレたちの気持ちはどうなるんだよ?!倒すことが出来ないって言った大地の想いを、テメーは考えたことあんのかよ?!」

「ラビ……。」

「オレたちを、テメーの都合のいい道具みたいに扱うんじゃねー!オレたちがどうするかは、オレたちで決める!テメーの指図なんざ受けるわけねーだろ!!死にたきゃ勝手に死にやがれ!!他人をテメーの人生に巻き込むな!!」

「ラビ!!そこまでだ!!」

 

 大地が怒鳴ると、ラビがビクッとして大地を見る。大地は、本気で怒っていた。

 

「言っていいことと悪いことがあるぞ、ラビ!ベリタスの気持ちも考えろよ!今の話を聞いても、ラビは、ラビはっ……何にも、感じないのか?!」

 

 他人事とは思えなかった。もしも、自分にとって大切な人が、心から愛した人がいなくなってしまったら……想像しただけで、どうにかなりそうだった。ベリタスは、そんな辛い思いをしながら何千年もの間、誰とも触れ合えず、たった1人で生きてきたのだ。

 ラビを好きになったことで、愛することを知ったことで、それがどのくらい恐ろしくて、悲しいことなのかを大地はいやというほどに理解することが出来た。だからこそ、ラビにそんな酷いことを言ってほしくなどなかった。怒りが、悲しみに変わる。

 

「俺は…イヤだよ…。もしも、ラビが、いなくなったりしたら、二度と会えないなんてことになったら……そんなの、絶対に耐えられない…!」

「大地……。」

 

 ラビは、大地の言葉の意味を理解した。ラビもまた知っていたからだ。愛する人を失うことがどれだけ恐ろしく、そして悲しいことなのかを。

 

「悪かったな、ベリタス…。ちょっと、いや、かなり言い過ぎたな…。」

 

 ラビは素直にベリタスに謝った。ベリタスは興奮が少しばかり落ち着いたのか、緩く頭を振って言った。

 

「私こそ、悪かったわね…。確かに、あなたたちには関係のないことだったわ…。ようやく願いが叶うと思って、勝手に期待して、焦ってしまっていたのよ…。馬鹿よね、私。こんな状態では、恥ずかしくてあの人の所へ行けないわ…。」

 

 かける言葉が見つからず、大地とラビは顔を見合わせる。

と、そのとき。

 

 

 ゴゴゴゴゴゴゴォォォォ!!!!

 

 地鳴りがして、ガラスの地面が大きく揺れ動いた。大地とラビは互いに支え合い、なんとか踏ん張る。

 

「今度はなんなんだよ!!」

「ベリタス、何かしたのか?!」

 

 大地が声を張り上げるが、ベリタスも何が何だかわからないといった様子で狼狽えている。

 

「しっ、知らないわ!私じゃない!!」

「チッ、仕方ねぇ!大地、一度グランゾートとアクアビートに戻るぜ!」

「あぁ、わかった!」

 

 大地が頷くのと同時に、グランゾートとアクアビートから光が伸びてきて、大地とラビは再びそれぞれの魔動王の中に戻っていった。

 

「グランゾート、一体何が起きてるの?!」

〈私にもわからない。だが、地面の下から膨大な灼熱のエネルギーを感じる。只事ではないぞ。〉

「取り敢えず、みんなと合流しよう!ラビ、行くぞ!」

「わあってるよ!」

 

 大地とラビが魔動王に乗ってガラス山を降りて行くのを、ベリタスは呆然と眺めていた。

 

「何が、どうして、一体どういうことなの…?」

 

                      続く





本作の『前編』がこれにて終了となります。
ここまでお読み頂き、本当にありがとうございました。引き続き後編もお楽しみ頂ければ幸いです。
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