ここから後編になります。引き続きお付き合い頂ければと思います。
「シャマン、エヌマ!!」
「オセロ、ドミノ!!」
山を降りてすぐ、目的の人物たちを見つけ大地とラビがそれぞれ声を掛けると、邪動王に乗ったシャマンとエヌマが振り返り、オセロとドミノがこちらに駆け寄って来た。
「無事だったようだな。」
「でも不味いことになったわね。」
「避難誘導は終わったぞ!オメーらは平気だったか?!」
「大丈夫か、ラビ、大地!!」
「オレたちは何ともねぇよ。それより不味いことって何だよ?何が起きてんだよ?」
「噴火です。」
「噴火よ。」
そう答えたのは、オセロたちの後ろから走って来たルビドとエメラだった。
「ガラス山が噴火しそうなんです。」
「噴火?!ガラス山って火山なの?!」
大地が聞くとエメラが答える。
「確かに火山には違いないんだけれど、今まで一度も噴火なんてしたことなくて、休火山って言われてたのよ。なのに、何故か急に活動を始めたらしくて…。私たちにもわけがわからなくて…。」
「だったら、噴火じゃねぇんじゃねーか?単なる地震とか…?」
「いや、それはない。私たちが火山の様子をこの目で見てきた。噴火するのは間違いない。」
ラビの言葉にシャマンが首を横に振る。
「じゃあどうして突然、休火山が活火山になったんだよ?」
「私のせいだわ…。」
大地の疑問に答えたのは、大地たちを追って後からやって来たベリタスだった。大地がビックリしてベリタスに詰め寄る。
「ベリタス?!どういうことだよ、私のせいって…??さっき知らないって言ってたじゃないか!!」
「……ガラスが…溶け始めたの…。私の力が弱まったことで、この星を覆っているガラスまでもが、力を失ってしまったの…。」
「つまりどういうことなんだよ?!もっとわかりやすく話せよ!!」
返答の意味がわからず、ラビもベリタスに詰め寄った。ベリタスは静かに説明し始めた。
「私から生み出された青いガラスが、この星が元々持っている光のエネルギーを吸収して熱に変え、長い間火山を温めてしまっていたのよ…。温められた休火山は活火山へと変わり、静かに活動し続けていたけれど、ガラスに覆われていることで噴火が抑えられていた……そのガラスが力を失い溶け始めたことで、抑えられていた噴火が始まったのよ……。抑えられていた分、何倍にも威力を増して……。あれが噴火したら、この星は……。」
「壊滅するでしょうね……この星には、誰も住めなくなります……。」
黙ってしまったベリタスの代わりにルビドが言葉を紡いだ。静かに、怒りを滲ませて。
「あなたにとっては、ただの暇つぶしだったのかもしれません。この星を壊す気などなかったのでしょう。ですが、結果的にこの星は、壊れます。私たちにとっては大事な大事な星です……この星がなくなれば、私たちは生きていけない……あなたは結果として、この星に住まう何百人もの命と生活を奪ったことになります…。それを、よく、覚えておいて下さい。今更、もう、どうにもなりませんけどね…。」
ルビドの言葉にベリタスは震えが止まらなかった。大地はもう、黙ってなどいられなかった。
「待ってください!ベリタスは、好きでこの星をガラスに変えたわけじゃないんです!ベリタスが触れると、本人の意志とは関係なくガラスに変わってしまうんです!」
『えっ?!』
エメラとルビドの声が揃う。他の面々も一体どういうことなのかと、目で大地とラビに説明を求めてくる。
大地とラビは、先程ベリタスから聞かされた話を簡潔に話した。話し終えた時には、誰一人言葉を発することが出来なかった。ベリタスが項垂れながら言う。
「もう、いいのよ……どんな理由があったって、私はまた、同じことを繰り返してしまった…そのことに、変わりはないんだもの…。」
「なんとかしようよ!」
大地が言った。
「みんなで力を合わせて、噴火を止めるんだ!」
「止めるって言ったって、どうするんだよ?!火山の噴火なんて、魔動王の力だってどうにか出来るもんじゃないぜ?」
ラビが言うと、いいや方法はある、とシャマンが答えた。
「この星に来た時から感じていたのだが、おそらくこの星に宿る光のエネルギーは、光の魔法陣から生み出されているのだろう。」
「なんだって?!」
「光の魔法陣?!」
ラビと大地が声を上げる。
「お前たちがこの星に来た際に宇宙船ごと引き寄せられたと聞いたが、それはおそらく、お前たちの持つ魔動力が、この星のもともと持つ光のエネルギーと、それらを強めていた魔女の力に嵌合し、吸い寄せられてのことだろう。この星に住まう者たちが耳長族なら、あり得ない話ではない。魔動力と魔女の力の相性を考えても、間違いないだろうな。相性が良いからこそ、魔女の生み出したガラスが光のエネルギーを吸収することが出来たのだ。」
シャマンの言葉に続けてエヌマが言う。
「あの火山の噴火が光の魔法陣によるものなら、あたしたちの邪動力でその力を弱めることが出来れば、噴火は止められるはずよ。」
「だが、問題もある。この星が光のエネルギーによって保たれている以上、我らの邪動力を使いすぎれば、この星にとってそれは毒となる。星への光のエネルギーはそのままに、噴火だけを止めなければならない。」
「そんなことが出来るのかな…?」
大地が呟くとエヌマが答えた。
「だから、あんたたちの力が必要なのよ。」
「オレたちの力って…?」
ラビが聞くとシャマンが答える。
「私たちが火山に飛び込んで邪動力を放つ。お前たちはその間、火山の周りを魔動力で囲み、私たちの邪動力が火山の外へ漏れ出ないよう、抑え込んでほしいのだ。」
「そうすれば、星にあたしたちの邪動力が影響することはなく、光のエネルギーで増幅された火山の噴火だけを止めることが出来るのよ。」
「ちょっと待ってよ!!」
我慢が出来ずに大地が叫ぶ。
「そんなことさせられないよ!!そんなことしたら、2人は、2人は……!!」
「他に方法はない。時間もないんだ。この星を救うのだろう?だったら迷うな。」
「シャマンの言う通りよ。それにね、あたしたちはこんなことでくたばったりなんかしないわ。あんたたちは、あたしたちを信じて自分たちの魔動力に集中なさい。」
いいわね、そうエヌマが言い終えると止める間もなく、2人は邪動王に乗ったまま火山へと向かっていってしまった。
「シャマン!エヌマ!ラビ、追いかけよう!!」
「言われなくたって…!ったくアイツら、カッコつけやがって…!!」
大地とラビも慌てて魔動王でシャマンたちの後を追う。オセロたちは、声を掛けることも出来なかった。
「せっ、船長……俺たちどうしたら…?!」
「……信じるんだ、ドミノ!アイツらならきっとやり遂げて、無事に帰ってくる!宇宙一の海賊なら、仲間を信じるんだ!!」
「…ガッテンです、船長!!」
オセロとドミノは頷き合い、ルビドとエメラは無事を祈るようにガラス山を見つめる。
ベリタスが周囲を見ると、たくさんの人がルビドやエメラと同じようにガラス山を、魔動王と邪動王が向かった方を見つめていた。恐怖と戸惑い、不安と僅かな期待、切望と信頼、それぞれが顔に様々な色を浮かべていた。
ベリタスはもう、シャマンとエヌマに対して怒りを感じてはいなかった。そもそも、シャマンとエヌマに対してあれほどまでに怒りを顕にしていたのは、ガラスを汚されたからではない。それはあくまで建前だった。
(あの人たちは、自分たちのしてきたことを忘れたんじゃない……しっかりと向き合って……ずっと胸に秘めながらも、前を向いて、一生懸命生きてきたんだわ……。過去に悪行を犯して、何事もなく無事で生きているなんてって、罪を犯したのに、何の処罰も下されていないなんてって、敵だった魔動戦士たちともあんなに打ち解けているなんてって、あの人たちを羨んで、憎く思うのは……間違いだったわ。)
それでは今の自分に出来ることとは一体何なのか。ベリタスは自分の手を見つめた。