ガラス山にて。
「急いでよ、スーパーグランゾート!!もっと速く!!」
〈わかっている。落ち着け大地。〉
「落ち着いてなんかいられないよ!!あの2人、このままだと本当に……!!」
大地の速く速くという気持ちがスーパーグランゾートに伝わり、さらにスピードを上げる。スーパーアクアビートも必死にその後を追う。
「大地のやつ!完全に冷静さをなくしていやがる…!」
無理もないと思いつつ、冷静さを欠くことがどれだけの危険を招くかわからないと危惧する気持ちにもなる。
(シャマンもエヌマも……あんなこと言えば大地がこうなるってことくらいわかんねーのかよ!!)
「いた!!」
大地が大声を上げたことにより、ラビの意識もそちらに向く。
ガラス山頂上付近。ガラスが消え始め、火山への入り口が剥き出しになっている所に2体の邪動王を見つける。ワイバーストとヒドラムが、今にも火山の中へ入ろうとしていた。
「ダメだーーー!!!」
スーパーグランゾートが物凄いスピードで、ワイバーストの腕を掴む。
「ちょっと待ちやがれ!!!」
後を追ってきたスーパーアクアビートもヒドラムを後方から羽交い締めにする。
「いきなり何なのよ!離しなさいよ!!」
「うるせぇ!こっちの話を聞かないで飛び出したのはテメーらの方だろうが!!いいから大地の話を聞いてやれよ!!」
「そんな暇はないはずだ!噴火まであと何分持つかわからないのだぞ!」
「シャマン、俺も行く!」
「はあっ?!」
「何を言っているのよ?!」
「大地?!」
あまりにも突飛な発言にシャマンとエヌマだけでなく、ラビも驚いたように声を上げる。
「俺も行く。俺は大地と炎の魔動戦士だから、火山の中に飛び込んだってきっと平気だよ。きっと役に立てるから、だから、シャマンたちが行くなら、俺も一緒に……!」
「駄目だ。」
「シャマン!」
「これは私たちにやらせてくれ。必ず戻ると約束する。だから頼む。お前たちはここで、我らの邪動力がこの星に溢れ出すのを食い止めてくれ。お前たちにしか出来ない…!」
「っ、シャマン……!!」
「そんな顔をするな。今度のことが無事に終わったその時には、お前の名を呼ばせてもらう。」
「えっ、ホントに…?」
「約束する。だから、私たちを信じてくれ。」
信じていないわけではないけれど、本当に行かせて大丈夫なのか。黙りこくってしまった大地にスーパーグランゾートが声を掛ける。
〈大地よ、私は言ったはずだ。仲間を信じろと。〉
「スーパーグランゾート…。」
〈お前が案ずる気持ちもわかる。だが、信じることもまた強さだぞ。今は、信じる時だ。〉
「…………うん、わかった。」
大地はシャマンとエヌマに向き直る。
「僕たちはここで邪動力を食い止めればいいんだね。わかった、やるよ。だけど、絶対に、無事に帰ってきて!」
少し声が震えた。けれど、もう迷わないと決めた。
シャマンとエヌマが微笑んだのが、邪動王ごしでも伝わってきた。
「約束する。必ず戻る。」
「あんたたちこそ、あたしらの邪動力に負けるんじゃないよ!」
「へっ!誰に物を言ってやがんだよ!……言っとくけどな、もし約束を破って大地を泣かせるようなことがあってみろ…地獄まで追いかけて、顔面殴り飛ばしてやるからな!」
「ふっ……全く、愛の力とは恐れ入るな。」
「あたしたちがここまで言うのは、ちゃんと勝算があるからなのよ?猪突猛進で後先考えずに突っ走るお子様と一緒にしないでほしいわ。」
「だぁれがお子様だ!!」
「もうっ!!ラビもエヌマもこんなときに言い合いなんて止めろよ!!」
大地が大声を出して仲裁に入る。
「…へへっ、ちっとは元気が出たようだな大地?それくらいの元気があればなんとかなるよな!」
はにかんだように言うラビに、元気づけようとしてくれたのだと気付く。少しだけ嬉しい気持ちになったが、口では悪態をついておくことにした。
「……もっと他の方法で元気づけてくれてもいいじゃん…ったく……。シャマン、エヌマ!」
シャマンとエヌマに大地は声をかける。
「………気を付けて!!」
「…あぁ、行ってくるぞ!」
「そっちは頼んだわよ!」
大地の言葉に強く頷いて、シャマンとエヌマは火口の中へ飛び込んで行った。
「大地…。」
「わかってるよ、ラビ。もう大丈夫。俺たちは俺たちに出来ることをしなくちゃね。あの2人が無事に帰ってくるためにも…。」
「…ふん、それでいいんだよ!じゃあ、いっちょやってやるか!!」
「よし!!」
声を掛け合い、大地とラビはそれぞれ火山を挟むようにして位置に着く。
「ドーマ・キサ・ラムーン、魔動力、ロックセイバー!」
「ドーマ・キサ・ラムーン、魔動力、ウォーターウォール!」
2人が同時に魔動力を発動すると、それぞれ岩の壁と水の壁が現れ、火山の周りを取り囲んだ。
「これで邪動力が蔓延することもねぇぜ!」
「蔓延って…ラビ、邪動力は感染症じゃないんだぞ!」
「この星にとっちゃ似たようなもんだろ?」
「…後でシャマンとエヌマに言いつけてやるからな!」
「勝手に言えば大地くん?オレは痛くも痒くもねぇし!」
「全く、ラビの小憎たらしさは一生治らないな!」
いつものように言い合いを始める大地とラビ。だがその表情は固いままだった。
(……必ず帰って来いよ…!)
(……約束破ったらマジで許さねぇぞ…!)
火山内部にて。
「シャマン!光のエネルギーがどんどん強まっていくわ!」
「やはりな…!エヌマ、そろそろ行くぞ!」
「えぇ!久しぶりに腕が鳴るわね!」
ワイバーストとヒドラムに乗って火山に飛び込むと、強烈な光のエネルギーが2体の邪動王を包み込んだ。
強い光の力に押されながらも印を結び、闇の呪文を唱える。
「ジャハ・ラド・クシード、ジャハ・ラド・クシード!」
「ジャハ・ラド・クシード、ジャハ・ラド・クシード!」
2体の邪動王から凄まじい邪動エネルギーが放出され、光のエネルギーを蝕んでいく。
「これなら行けるわ!」
「あぁ、あと少しだ!」
頷き合い続けて呪文を唱えようとした、その瞬間。
パァァァァアア!!!!!
光の勢いが突然増し眩いばかりの光が、2体の邪動王を覆った。
「こっ、これは…!シャマン、これって…!!」
「まさか…!光の魔法陣はこの最下層にあるのか…?!」
2人が見下ろす遥か下。燃え盛る炎の中に光の魔法陣が姿を現した。
「くっ、このままでは、我らの身体が持たない…!仕方がない……こうなれば…!!」
「シャマン…まさか…!」
シャマンの操るワイバーストの手にブレードシュバルツが握られていた。
「この剣に、私の持つ全ての邪動力を注ぎ込み、光の魔法陣の中心に突き立てる…!」
「わかってるの?!そんなことしたら………邪動族が光の魔法陣の中心に入ったらどうなるか…!!」
「だが、これしかない…。エヌマ、今なら間に合う!君だけでも逃げろ!」
「……そう言われて、このあたしが逃げるとでも…?馬鹿にしないで!ナブー亡き今、邪動士はあたしとあなたの2人だけしかいないのよ!!あなたまで失うくらいなら、あたしは…あたしは…!」
最後は言葉にならずエヌマは俯いた。魔動戦士たちのように決して仲が良かったわけではないが、同じ邪動士で仲間だったナブーを目の前で失った。その後、自分もまた暗黒大邪神に殺されそうになったが間一髪で命拾いし、今日まで生きてきたのだ。
「あのときのことを忘れたことなんかない…!あんな思いは二度としたくないの!何も出来ずに目の前で仲間を失うのは、もうイヤよ!!」
「エヌマ……。」
それはシャマンも同じ気持ちだった。だからこそ、エヌマには逃げてほしかった……助かってほしかったのだ。
けれど、エヌマの気持ちを無碍にすることは、もっと出来ないと、そう思った。
「……すまないエヌマ…。一緒に、来てくれるか…?」
「……えぇ、もちろん…!」
ワイバーストの剣を持つ手にヒドラムの手が重なる。2人は覚悟を決めた。
「…行くぞ!!」
「…行くわよ!!」
ワイバーストとヒドラムが一直線に下降する。そして、光の魔法陣の中心部に思いっきり剣を突き立てた。
「ジャハ・ラド・クシード、ジャハ・ラド・クシード!」
「ジャハ・ラド・クシード、ジャハ・ラド・クシード!」
シャマンとエヌマの声がピッタリと重なり、2人の邪動力が猛烈な勢いで吹き出し光の魔法陣に注ぎ込まれた。そしてその勢いは留まることなく、光のエネルギーに満ちた火山の内部全体を覆った。
シャマンは懐に仕舞ってある物に手を伸ばした。
(……約束、守れそうにないな………すまない、光の戦士よ……すまない………大地………。)
そこで、シャマンの意識はふっつりと途切れた。