「…?シャマン……??」
「どうした、大地?」
「えっ、いや……ううん、なんでもないよ。」
シャマンの声が聞こえたように思えたが、気のせいかと大地は首を横に振った。
〈見ろ、大地。火山の噴火が収まって行くぞ。〉
スーパーグランゾートの声にハッとして大地は火山の方を見やった。
「ホントだ!ラビ、噴火が収まりそうだよ!!シャマンたちやったんだ!!」
「マジかよ!!スッゲー、やるじゃん!!」
「うん!あの2人、きっともうすぐ戻って来るね…!これでやっと…!」
〈喜ぶのはまだ早そうだぞ、大地。凄まじい邪動力を感じる!〉
「えっ?!」
「おい大地!あれ!!」
スーパーアクアビートが指差した先、その火口から黒いエネルギーが渦となって湧き出て来るのが見てとれた。
「邪動力が漏れ出るって、このことだったのか…?!」
「漏れ出てるなんてもんじゃねぇ!あれじゃあ、防御壁張ったって突破されちまう!」
「スーパーグランゾート!どうすればあれを抑えられるの?!」
〈あれ程の邪動力を抑えるには、私とスーパーアクアビートの力だけでは無理だ。スーパーウインザートの力が必要だ。〉
「そっ、そんな…!そんなこと言ったって、ガスは…!」
ここは月からかなり離れている上に、ガスは今ラビルーナにいてこちらの状況など知る由もない。
「ラビ、どうしよう?!スーパーウインザートの力がないとこの邪動力を食い止めるのは無理だって…!!」
「っ、マジかよ…じゃあオレたちにはどうすることも出来ねぇってことなのか?!」
「どうすれば…一体どうすれば…!!」
〈大地よ。ラビと共にガスに呼び掛けるのだ。〉
「呼び掛ける…?それどういうこと??」
〈お前たち魔動戦士もまた、心と心で強く結びついている。光の呪文を唱え呼び掛けるのだ。お前の、お前たちの魔動力の導くままに。〉
「……うん、わかった。ラビ!光の呪文を唱えてガスに呼び掛けるんだ!」
「はぁ?!呼び掛けるつったって、ここは…!」
「わかってる!でも、とにかくやってみよう!今はそれしかない…!!」
大地の言葉に理解が追いつかないが、自分たちのリーダーである大地がやろうと言っているのだ。理解出来ずとも、それだけでやってみる価値は十分にあるとラビは頷いた。
「……わかった、やってやるぜ!」
「うん、行くぞ!」
「ドーマ・キサ・ラムーン、ドーマ・キサ・ラムーン!」
「ドーマ・キサ・ラムーン、ドーマ・キサ・ラムーン!」
(ガス、聞こえるか、ガス!)
(オレたちの声が聞こえるなら、返事をしろガス!)
(ガス、答えてくれ!俺たちは今、ガスの力が必要なんだ!)
(頼む!返事をしてくれ、ガス!)
大地とラビの強い祈りが魔動力となり、魔動王の体を駆け巡る。そして2人の体が、眩い光に包まれた。
(……い…くん……ラ………ん……)
遠くで聞き覚えのある声が聞こえた。空耳なんかじゃない。ハッとして大地とラビは、僅かに聞こえた声の方に全神経を集中させた。
(大地くん!ラビくん!)
今度こそ、はっきりとガスの声が聞こえた。
「ガス!ガスなんだね!」
「オレたちの声が聞こえるんだな!」
(はい、聞こえます!2人ともご無事ですか?!)
「うん!でも俺たち今結構不味いことになってて、ガスの力が、スーパーウインザートの力が必要なんだよ!」
(実は……実は、私もなんです!私も大地くんとラビくんの力が必要なんです!)
「どういうことなんだよ、ガス!」
(ラビくん、えっとですね……何から説明したら良いのか…こちらも色々ありまして…。)
「んもう、ガス!俺たち説明なんか聞いてる場合じゃないんだってば!一緒に光の呪文を唱えてよ!」
(光の呪文……ですか?)
「そうだな!光の呪文を唱えれば、オレたちの魔動王もガスの魔動王も力がみなぎって何だって出来るはずだぜ!」
(…よくわかりませんが、そうですね!2人と一緒なら私も出来る気がしてきました!)
「よし!じゃあガス、ラビ!行くぜ!!」
(はい!)
「わぁってるよ!」
【ドーマ・キサ・ラムーン、ドーマ・キサ・ラムーン、ドーマ・キサ・ラムーン、ドーマ・キサ・ラムーン!!!】
3人の声がピッタリ合わさると、光のエネルギーが、そのパワーを一気に増して大きな光の波となり溢れ出した。
光の波は増幅し続け、渦となって湧き出している邪動力を飲み込んだ。2つのエネルギーは激しくぶつかり合いながらまるで竜巻のように空中へと舞い上がった。
光の力と闇の力。相反する2つのエネルギーが巻き起こす渦は白と黒の輝きを放っており、傍から見ているととても美しくて、大地もラビも息を呑んでその不思議な光景に見惚れていた。そして全員が体の奥から溢れてくる不思議な、けれどとても強いエネルギーを感じていた。
〈今だ、大地。スーパーエルディカイザーであの渦を切るのだ。今ならば、それぞれの必殺技を最高の状態で放つことが出来るぞ!〉
突然聞こえたスーパーグランゾートの声に大地はハッとする。
「渦を、切る…?」
「大地?」
(大地くん?)
「ラビ、ガス!スーパーウェーブカイザーとスーパーシュトルムカイザーを出すんだ!今の俺たちなら、最高の必殺技として使えるって!」
大地はラビとガスに呼び掛けた。
「そうなのか?!よし、だったらやってやろうぜガス!」
(はい!やりましょう!)
「よおし、行くぜ!」
大地の掛け声でそれぞれが呪文を唱える。
「ジーク・ガイ・フリーズ、出でよ、スーパーエルディカイザー!」
「ジーク・ガイ・フリーズ、出でよ、スーパーウェーブカイザー!」
(ジーク・ガイ・フリーズ、出でよ、スーパーシュトルムカイザー!)
炎の剣、水の槍、風の弓が今まで見たこともないくらいの凄まじい輝きを放ち現れる。
「一刀両断、スーパーエルディカイザー!」
「一閃炸裂、スーパーウェーブカイザー!」
(一発必中、スーパーシュトルムカイザー!)
それぞれの掛け声がこだまし、それぞれの必殺技が繰り出されたーーーーー。
大地とラビの繰り出した必殺技が光と闇の渦に直撃すると猛烈な勢いで舞い上がっていた渦の中心に六芒星の亀裂が走って弾け、全てが光の粒となって花火のように消えていった。
「…オレたち、やったのか…?」
「…あぁ!俺たちやったんだ!守れたんだよ、この星を!」
「やったな、大地!!」
「やったぜ、ラビ!ガスも…あれ?ガス?ガス!」
「ガス?おいガス!……何にも聞こえなくなっちまった…。」
「……俺たちは終わったけど、ガスは大丈夫なのかな…?何があったんだろう?」
「さぁな。けどまぁ、あの様子じゃ心配することねぇよ。なんとかなったに決まってるって!」
「……そうだよな。うん、大丈夫に決まってるよな!」
「おーい、ラビーー大地ーー!!」
「2人とも無事かーー?!」
オセロとドミノの声が聞こえて、そちらを見ると2人がこちらに走ってくるのが見えた。その後ろからエメラやルビド、それにこの星の人たちがわんさかやって来た。
大地とラビがそれぞれの魔動王から降りると同時に元の服装に戻った。大地はグランゾートを振り返る。
「ありがとう、グランゾート。思いがけずだったけど、また会えて、一緒に戦えて嬉しかった。」
〈私もだ大地。私の力が必要なときはまたいつでも呼ぶといい。私の心は常にお前とともにある。さらばだ、また会おう!〉
そう言うとグランゾートはアクアビートとともに消えてしまった。大地は密かに、戦いなんかなくても俺はグランゾートにいつでも会えるようになりたいよ、と思った。
「オセロ、ドミノ!お前たちも無事だったか!」
「もう大丈夫、噴火はおさまったよ!」
「ラビ!大地!オメーらホントに、ホントによくやったなぁ!」
「俺も船長も、グスッ、感動したぜ!」
ラビと大地がオセロたちに駆け寄ると、オセロは2人の肩に手を置きながら涙を目いっぱいに浮かべ、ドミノは鼻をすすりながらウンウンと頷く。
「湿っぽい雰囲気を出すなよ。だから言っただろ?オレと大地にかかればなんてことないって!」
「ガスも力を貸してくれたからさ、乗り越えることが出来たんだよ。」
「大地さん、ラビさん!本当に、本当にありがとうございました!」
エメラもやって来て満面の笑みでお礼を言った。後ろからも大勢の人たちがやって来て、口々にお礼と称賛の声を上げる。
「ありがとう、君たち!」
「かっこよかったわ!」
「凄かったぞ、ホントに!」
「あなたたちのおかげよ!」
たくさんの人々に囲まれて次から次へと褒められ頭を下げられ大地もラビも完全に照れてしまい、互いに顔を見合わせた。目が合うと自然に笑みが深くなり心が幸せな気持ちで満たされる。けれど、ずっと見つめ合っていると段々と頬に熱が集まってきて、どちらともなく赤く染まった顔をふいとそらす。
「そういえばさ、シャマンとエヌマは?まだ戻って来てないの?」
大地が話題をそらそうとシャマンたちの名前を出すと、途端にその場が凍りついたように静まり返った。
「?どうしたの、みんな…?」
「?おい、なんで急に黙ってんだよ…?」
さすがにこれはおかしいと思い、2人はみんなの顔を見渡す。オセロとドミノも黙りこくって俯いてしまい、今まであんなに喜んでいた人々も一言も発しなくなってしまった。ルビドが顔面蒼白になっているエメラの肩に手を置きながら、大地とラビにこちらへ、と促し歩き出した。
大地とラビは顔を見合わせ、ルビドに案内されるがまま着いていく。…嫌な予感がする…まさか…。
そして辿り着いた先で、そんな大地たちの心境を嘲笑うかのような光景が目に飛び込んできた。
「……ウソ……だよな…?」
「……ウソ……だろ…?」
大地とラビが絶句する。
目の前にあるのは火山の熱で溶け半壊状態になった2つの機械の塊で…。
一見すると何だかわからない黒ずんだその機械だが、大地とラビには嫌でもわかってしまう。自分たちの魔動王を模して作られたそのマシーンを、何度も襲われ何度も戦闘を繰り広げたそのマシーンを、この星では味方となって助けてくれたそのマシーンを、見間違うはずがなかった。
「…ワイバースト…。」
「…ヒドラム…。」
半壊状態の2つの機械の前で1人佇んでいる者がいた。
ベリタスだった。そしてベリタスの足元に倒れている2人の人間を見つけて、大地とラビは一斉に駆け出した。
「シャマン!!」
「エヌマ!!」
服はあちこち焼け焦げ、服から除く肌は赤く焼けただれている。何よりも顔からは生気が感じられず、息をしている様子もなかった。
駆け寄り大地はシャマンを、ラビはエヌマをそれぞれ抱き起こした。やはり息はなく体は冷たかった。
「しっかりしてよ、シャマン!!どうしたんだよ、どうして、どうして…!!」
「勝算はあるって言ってたじゃねーかよ!!約束破ったら許さねぇって言ったよな!!起きろ、起きやがれ!!」
「火傷は大したことなかったのよ。とてつもなく強い光のエネルギーを発していた光の魔法陣、その中心に入ったばっかりに、2人は命を落としたのよ。火山から助け出したときにはもう、手遅れだったわ…。」
ベリタスの言葉が耳に届いても、2人は信じたくなかった。認めたくなどなかった。
2人の体を必死に揺さぶる。すると、シャマンの手からこぼれ落ちた物があった。大地はそれを見て目を丸くした。
「これ……どうして……?」
「?!大地、それって……。」
大地が拾い上げたそれは、邪動族との最終決戦直前に第1エリアでシャマンによって奪われた大地のオルゴールだった。
シャマンたちの体はあちこち焼け焦げているというのに、そのオルゴールだけは焼け跡どころか傷一つ付いておらず、大地の記憶にある、あの時の状態のままだった。
「この人が意識を失う直前まで大事に持っていたものよ。たとえ自分の体が火山の熱で溶けようとも、それだけは無傷の状態でいられるよう魔力を注いでいたから、余程大切なものなのだろうとは思っていたけれど、それ、あなたのだったのね…。」
ベリタスの言葉に、大地は震えが止まらなかった。流すまいとしていた涙が、一気に溢れてきた。
「……なんだよ、それ……!そんなことに力使うんなら、もっと自分の身を守ることぐらい、出来たはずだろ…!!」
オルゴールを握りしめ、嗚咽を必死に堪える。ラビも膝から崩れ落ちて、声を震わせながら罵倒を続けた。
「っ、ふざけんなよ…!!約束、破りやがって…!!これだから、邪動族は、信用ならねぇんだよ!!っ、クソォ!!」
どんなに怒鳴っても、罵倒を浴びせても、涙を流しても、もう声が、想いが届かないのは、とてもとても辛くて、悲しくて、2人は泣き続けた。
ベリタスは後ろを振り返る。大地たちの後を追ってやって来たオセロとドミノ、そして、この星の住民たち。みんなが涙を流して悲しんでいた。この星を、命懸けで守ってくれた2人の邪動士の死を。
ベリタスは自分の体に、久方ぶりの感覚を覚えていた。もう疾うの昔に忘れてしまっていた神より授けられし、自分本来の力が満ち溢れてくるのを感じた。
(私の力……そうよ、私の本当の力は……!!)