「大変だよ、大変だ!!どうしよう!!」
「おっ、オセロ!ドミノ!大変、大変なんだよ!!」
大地とラビの慌てっぷりと勢いに押されてオセロもドミノもドン引きする。
「えっと、オメーら、ちょい落ち着け!な?」
「これが落ち着いてられるかよ、オセロ!!大変なんだぞ!!」
「ラビの言う通りだ!!大変なんだよ!!」
「えっと、えー、大変なのか?」
ドミノが言うと、2人は勢いよく頷き声を揃える。
『大変だよ!!』
「大変…か。たいへんって…。」
「すなわち…。」
『“タイが変”ってことか!!』
ズコーーーーッ
オセロとドミノのボケに、思いっきりズッコケた大地とラビ。先に立ち上がったのはラビだった。
「アホたれ!!!古臭いボケなんか、かましてるんじゃねぇ!!!」
「あまりにも古すぎて、俺ツッコむ気にもなれないよ…。」
呆れ返りながら大地がぼやくとシャマンが言った。
「お前たちが慌てふためいて話も出来なくなっているからだろうが。」
「この先どうするのかを考えなさい!話が前に進まないじゃないの!」
エヌマにも言われてしまい、大地とラビはうっと黙る。
「つまり、オメーたちはこれからどうするつもりなんだ?」
オセロが聞くと、ようやく自分たちが何をするべきか、落ち着いて考えることが出来た。
「……ラビ。」
「……大地。」
真剣な顔で頷き合い、オセロたちに向き直る。
「オセロ。俺たち、月に戻るよ。」
「オレたちを月に連れて帰ってくれ。」
大地とラビの真剣な表情。オセロもドミノも頷かないわけにはいかなかった。けれど疑問も残っているわけで。
「良いのかよラビ。月に戻るってことはこの駆け落ちも終わりってことだぜ?」
ドミノが言うと、オセロも頷く。
「そうだぞ。ラビ。オメーは望まない結婚をさせられるのが嫌でこんなところまで逃げてきたんだろ?それにようやくオメーら両想いになれたってのに戻っちまって良いのかよ?後悔しねーか?」
「しねーよ!それに、いつかは戻るつもりだったんだ。母さんやばーさんたちを、いつまでも心配させるわけにはいかねぇからな。大丈夫だ。ちゃんと覚悟は出来てる。」
「ラビ……。うん、オセロ。俺たち、どうしてもラビルーナに戻らないといけないんだ。仲間が、ラビルーナのみんなが大変なことになってるんだよ。だから助けに行く!」
そこまで聞くと、安心したようにオセロもドミノも頷いた。
「よーし!それなら善は急げだ!ドミノ、月に帰るぞ!!」
「ガッテン、船長!!」
「もう行ってしまわれるのですか…。」
「せっかく仲良くなれたのに…。」
ルビドとエメラが名残惜しそうに言う。
「うん。オレたち、もう行かなくちゃ。」
「この星も元通りになったことだし…。今度は俺たちの大切な場所を、人たちを守りに行かないと。」
ラビと大地の言葉に続けてシャマンとエヌマが言う。
「我らもそろそろお暇しようと思う。世話になったな。」
「そうね。迎えも来たことだし、あたしたちも帰るわ。元気でね。」
ルビドとエメラは顔を見合わせて頷き、改めてお礼を言った。
「わかりました。このご恩は決して忘れません。またいつでも、いらしてくださいね。」
「ガラスの魔女のことも街のみんなに伝えておくわ。でもあの光景を見たら、ベリタスが全部悪いわけじゃなかったって、みんなに伝わったと思うけれど……本当にありがとう!みんなのこと、絶対に忘れないわ!」
ルビドやエメラ、それに街の人たちに見送られて別れてから、大地たちは改めてこの星の全貌を見た。
ガラスで覆われていた火山は白銀の岩で出来ており、見下ろす街は宝石のように鮮やかな色とりどりの美しい街並みで、その向こうのガラスの広場だった場所は青一色の花畑が広がり、更にその向こうには青々とした緑の森が見えた。
青いガラスの星も美しかったけれど、宝石箱のような元通りの星も本当に綺麗だと思った。
宇宙船まで来ると、シャマンとエヌマがそれじゃあと手を振った。
「こんなところでお前たちに会えるとは思ってもみなかったが、会えて良かったぞ。」
「小うるさいのは相変わらずだったけど、まぁ楽しかったわ。元気でやんなさいよ。」
シャマンとエヌマの言葉に、大地とラビは何を言っているのか、という顔をした。
「シャマン、エヌマ。何ここでお別れみたいなこと言ってるんだよ?2人も一緒にラビルーナに来るんだよ。」
大地が当たり前のように言う。
「っ!!何を言っている?!我らはもう、ラビルーナには行かないと約束したではないか!!」
「そうよ!ワイバーストやヒドラムも持って帰って修理しなくちゃいけないのに、ラビルーナになんて行ってられないわよ!!」
シャマンとエヌマが憤慨しながら言うと、あのな、とラビが切り出した。
「今回の侵攻を食い止められなかったのはお前たちにも責任があんだよ!よって、行くことは決定事項!」
「そう、そう!ワイバーストやヒドラムは邪動兵士たちに故郷へ持って帰ってもらえばいいじゃん。2人にはラビルーナに来てもらって、邪動族の下っ端たちを連れて帰ってもらわないとね。」
ラビと大地がそう言ってもシャマンもエヌマも、どうしても乗り気がしなかった。
「……私たちの訪問はラビルーナの者たちにとっても、決して喜ばしいことではないはずだが?」
「返って迷惑なんじゃない?あたしたちはやっぱり行かない方が良いわよ。」
たが、そんな建前上の言い訳が通用するわけもなく。
「へっ!誰に物を言ってやがんだよ!お前らのラビルーナ訪問は、このオレ、V‐ラーマスの孫、マリウス・フォン・ラーマスが認めるつってんだぜ?誰が文句なんかつけられるもんかよ!」
こういうときばっかり、自分のラビルーナでの地位や血筋を最大限使う調子の良いラビに、呆れて最早言葉など思いつかず、シャマンもエヌマも折れるしかなかった。
無言を肯定と受け取り、オセロの船に2人を引っ張っていって半分無理矢理に乗せる。未だにポカンとしたままの邪動兵士たちを振り返り、大地とラビはにこやかに手を振った。
「というわけで、邪動兵士さんたち、後はよろしくね〜。」
「なんなら、ワイバーストとヒドラムの修復が終わってからでいいからさ、お前たちもラビルーナに来いよ。このオレが許すぜ。」
じゃあな〜と言って船内に入っていく2人をポカンと眺めていた邪動兵士たちにオセロが声を掛ける。
「あ〜すまねぇな。まぁよ、この俺が責任を持って月まで連中を送り届けるからよ、心配することねぇぞ。じゃあドミノ、行くとするか!」
「ガッテン、船長!そいじゃあ、俺たち失礼するんで。」
ドミノが頭をペコリと下げると、邪動兵士たちもそれに習って頭を下げた。
「ごっ、ご丁寧に…。」
「どっ、どうもです…。」
「よっ、よろしくお願いします…。」
頭を下げて礼を言うなんてこと、初めてのことであるため戸惑ってしまった邪動兵士たち。そんなことを気にした様子もなく、オセロとドミノも手を振って船に乗り込んだ。
「それじゃあ行くぜ!出航だ、ドミノ!!」
「ガッテン、船長!!」
ブオオオオオンと宇宙戦艦が起動して、浮かび上がる。
大地は船の中から星を振り返り見た。
(さようなら、エメラ、ルビド。さようなら、マリンタウン。……さようなら、ベリタス…。)
船は宇宙空間に出た途端に速度を増し、星がどんどん遠のいていく。大地たちは星が完全に見えなくなるまで、ずっと見つめ続けていた。
月面にて
フルスピードで往復した宇宙戦艦はガタがきてしまったようで、月面に到着するやいなや起動停止してしまった。燃料タンクも空っぽで、オセロとドミノは宇宙戦艦の修繕に取り掛かることになってしまったため、大地たちとはここでお別れすることになった。
「ワリィなオセロ。せっかくの宇宙戦艦、オレたちのために使わせちまって…。」
「ホントに、ごめんなさい…。」
しおらしくなっているラビと大地に、オセロは良いってことよ、と快く許してくれた。
「この程度で壊れちゃあ、宇宙一の海賊とは言えねぇからな!もっともっと細工に改造を施して、ちょっとやそっとじゃ壊れねぇくらいのすんごい宇宙戦艦を作ってやるんだ!」
「さっすが船長!どこまでもついていきやすぜ!」
2人の前向きさと寛容さには本当に感謝しかない。大地とラビは再度お礼を言った。
「ありがとう、オセロ、ドミノ!本当に、本当にお世話になりました!」
「今度月面に来たら何か奢るぜ!ありがとよ!」
「しみったれた挨拶は抜きだぜ!困ったことがあったらいつでも来てくれ!」
「気を付けていけよ、無茶はするな!」
オセロやドミノと固く手を握り合い、無事と再会を約束して別れた。
その後、大地とラビ、シャマンとエヌマは闇の塔に向かった。光の塔がある聖地ルナへと降りるには、ここが近道なのだと言う。
「あの連中も、ここから聖地ルナに向かったのだろうな。」
「聖地ルナに着いた途端、集中攻撃を受けるかもね…。気を付けて行かないと怪我じゃすまないわよ。」
シャマンとエヌマの言葉にわかってるよ、と大地は頷いたが、ラビは気にした様子もなく、印を結んで光の呪文を唱え始める。
「ドーマ・キサ・ラムーン、ドーマ・キサ・ラムーン!」
ラビが呪文を唱え始めると光の道が4人の体を包み込み、4人はラビルーナへと導かれて行った。
聖地ルナに到着した4人は目を疑った。
「こっ、これは……!」
エヌマがビックリしたように声を上げる。
「……シャマン、どういうことなんだよ?」
大地がジト目でシャマンを見て説明を求める。
「私にもわからない。一体これだけの人数をどうやって…?」
シャマンも驚きのあまり、言葉を失っていた。
それもそのはず。
聖地ルナの中心にある光の塔に着いた大地たちが目にしたのは、縄でグルグル巻きにされた何十人もの邪動族たちで。
その周囲では、V‐メイやサユリ、それにラビを追ってきた魔法使いたちやその他のV‐メイの弟子たちが、今しがたレーヴェの道からやって来た大地たちを見てポカンと立ち尽くしているのだから。
言葉が見つからず、ただお互いに黙ったまま立っていると、1人こちらに駆けてくる者がいた。その姿を認めて、大地とラビはパァッと笑顔になり駆け出した。
「大地くん!ラビくん!」
『ガス!!』
大地とラビは、駆け寄って来たガスをしっかりと受け止めた。
「2人とも、無事で何よりです!」
「ガスこそ!あんな状態で通信切れちゃってさ、俺たちスッゲー心配したんだぞ!」
「ホントだぜ!でもこれで魔動戦士が全員揃ったな!」
「はい!」
「あぁ!」
肩に手を置いて満面の笑みを浮かべて、互いの無事を喜び合う。数時間ぶりの再会だったが、無事に会えたことが嬉しくて、1年ぶりに再会したときよりもテンションが上がっていた。
「アンタたち、戻ってきたのかい…?」
V‐メイの声にハッとして大地たちは体を離す。
「ばーちゃん…。」
「ばーさん…。」
怒られるかな…怒られるよな…と大地とラビは身を固くする。
けれどV‐メイは2人の傍まで来ると、短い腕をいっぱいに伸ばして2人のことを抱きしめた。
『??!!』
突然のことにビックリし過ぎて、更に体を強張らせる大地とラビ。V‐メイはそんなことお構いなしに、ぎゅうと抱きしめる力を弱めない。
「アンタたちったら、ホントにもう!!どれだけ心配したと思ってるんだよ!!ガスから、アンタたちが大変なことになってそうだって聞いたときはホントに、あたしもサユリさんも、もう心配で心配で…!!こっちだって大変だったっていうのに、全くもう!!」
まくし立てるように言われて、大地は涙腺が熱くなり、ラビは初めて罪悪感を抱いた。
「ゴメン、ばーちゃん…。心配かけて……ごめん、なさい…。」
「……んな心配しなくたって、オレたちなら大丈夫なのに…。でも、ごめんなさい…。」
素直に謝ったあと、大地は先程のV‐メイの言葉を思い出して聞き返した。
「ばーちゃん、今大変だったって言ったけど、ばーちゃんたちも大丈夫だったの?シャマンたちから聞いたけど、たっくさんの邪動族たちが攻めてきたんでしょ?」
「そーだよ、ばーさん!ラビルーナは大丈夫だったのか?!怪我したやつとかいねーのか?!」
大地に続けてラビも早口に言うと、V‐メイは手を離して、あぁ、と頷いた。
「あたしらはこの通り大丈夫、掠り傷1つしてないよ。ガスのおかげさ。ガスがスーパーウインザートを呼び出して、コイツら全員のしちまったんだからね。」
「えぇ?!1人でこの人数を?!」
「マジにかよ!!いくらコイツらの邪動力が弱っちいからって、よく1人で相手出来たよな!!」
大地とラビがビックリ仰天していると、ガスが大地くんたちのおかげですよ、と言った。
「大地くんとラビくんの声が聞こえて、言われるがままに光の呪文を唱えたら、今までにないくらいの力がみなぎるのを感じたんです。それでスーパーシュトルムカイザーを放つと、この人たちの乗っていたマシーンを一撃で全て倒すことが出来たんです。」
ガスの言葉に、自分たちもまた光の呪文に救われたことを思い出して嬉しくなった。
「なーんだ、じゃあ全部片がついてたんだね。俺たち、急いで戻ってきたけど出番なかったな!」
「まぁ、みんな無事だったんだからよ!終わり良ければ全て良しだよな!」
大地とラビが目を合わせてクスクス笑い合っていると、サユリが近づいて来た。
「確かに、終わり良ければ全て良し、とは言いますけれどね。マリウス!!」
サユリの怒声にビクッとするラビと、あっ、と口を開ける大地。
「こんなにも大勢の人たちに迷惑をかけて、大地くんたちまで巻き込んで、おまけに持ち出し禁止の魔動器を勝手に…!もう、今日という今日は許しませんからね!!」
「うわぁ!!ごめんって、母さん許してよー!!」
サユリに腕を掴まれて捻り上げられ、悲鳴を上げるラビ。ちょっと気の毒にも思えるが、よく考えると今回のことは、ラビが聖地ルナを家出した挙げ句、大地に駆け落ちなんてものを持ち掛けて宇宙へと逃げ出したことが原因なわけで。自業自得と思いつつ、結果としてラビルーナは無事、ガラスの星も救われて緑豊かな星に戻ったわけだし、シャマンたちにも会えたし、やっぱり良かったのだと大地は思った。
(今回のことがなかったら、俺はラビのことを友達以上に思うことはなかっただろうな…。)
それはそれで良かったのかもしれないが、今はこんなにも温かくて幸せな想いで満たされているのだから、まぁいっかと思った。
(それにしても、ばーちゃんたちに今度の冒険のこと話したら、きっとビックリし過ぎて腰を抜かすだろうな!)
その様子を想像して思わず笑みがこぼれると、
「大地、アンタ、さっきから何をニヤニヤ笑ってるんだい?おかしな子だねぇ…。」
とV‐メイに変な顔をされてしまった。ガスも不思議そうにこちらを見ている。
「ごめん、ごめん。いやぁ、今回俺たちさ、スッゲー色々あったんだよ!スッゲー大冒険で、驚きの連続だったんだよ!何から話したら良いかなぁ!」
大地が興奮しながら言うと、V‐メイにはぁ〜とため息をつかれてしまった。
「ちょっと落ち着いて話しとくれ。でもね、アンタのその顔を見れば、なんとなくだけどわかるよ。とっても良いことがあったんだね?」
「良いこと…か、うん、そうだね!話したらきっとビックリすると思うよ!俺とラビのことなんだけどね、実はさ、俺たち……。」
「大地ーーー会いたかったグリ〜〜!!」
「うわぁ?!」
大地がまさに話し始めようとしたその瞬間、グリグリが凄い勢いで大地に飛びついてきたのだ。
「グリグリ!!相変わらず元気だなぁ!!」
「僕いつも元気いっぱいグリ!!」
「ハピも元気そうじゃん!」
グリグリを抱き止めながら大地がハピを見ると、ハピは大地を見た後、シャマンとエヌマの方に視線を移した。
その途端、グリグリの頭の上から飛び降りて、シャァーと威嚇を始めた。
「駄目だよ、ハピ!シャマンとエヌマは今は敵じゃないよ!今度の冒険では俺とラビのこと、いっぱい助けてくれたんだから!」
慌てて大地がハピに声を掛けると、ハピは大地をキョトンと振り返り見る。
「ハピ、おいでグリ〜!!」
そして、グリグリの呼び掛けに反応して頭の上に戻って大人しく丸まった。大地はホッと息をつきつつ、再度グリグリを見て、付け加えるように言った。
「それにしてもグリグリ、お前、前より背が伸びたみたいだな!」
「うん、僕セイチョウキグリ〜!どんどん大っきくなってるグリよ〜!」
「うんうん、可愛く成長してるじゃん!」
「大地はオトコマエになったグリ!」
「へぇ~言うようになったじゃないか!」
「ラビに教わったグリ〜!」
「あ~ナルホドね…。」
大地が納得したように頷くと、V‐メイが怒鳴る。
「ラビ!!グリグリに変なこと教えるんじゃないよ!!」
「オレが教えたのは、男に可愛いって言われたら、男前って言い返せってことだけだ!!」
「余計に良くないよ!!全くアンタって子は、何をやってるんだい!!」
「ラビくん…それは自業自得というものですよ…。」
未だサユリから説教を受けてるラビが叫ぶと、ガスが至極真っ当なことを言いながらため息をついた。
「そういえばさ、ばーちゃん。祭典どうするの?やっぱり今年も中止?」
大地が気になって聞くと、V‐メイがいいや、と首を横に振った。
「祭典のことなんだけどね、あたしったらウッカリしちまって、1日夏至の日を間違えちまってたんだよ。だから、本当に祭典をやる日は明日なんだよ。悪いね。」
オッホホホ。なんて笑うものだから…。
ズコーーーーッ
大地とラビはもちろん、今初めて聞いたとガスも勢いよくズッコケた。
「それでは、我らの配下の侵攻は特に問題がなかったわけか。」
シャマンが言うと、V‐メイが頷く。
「あぁ。大丈夫さ。予定通り開催出来るよ。アンタたちも、よく知らせてくれたね。」
「二度とこの地には来るまいと誓ったのに、すまない…。」
「この者たちの暴動も止められなかった…。悪かったわね、V‐メイ…。」
シャマンとエヌマが同時に頭を下げる。すると、縛りあげられていた邪動族の1人が声を張り上げた。
「シャマン様!エヌマ様!何故、何故そのような者たちに頭を下げたりするのです?!そいつらは、そいつらは、ナブー様を殺した挙げ句、あなた方までをも葬り去ろうとしたのですよ!」
全員が声を上げた邪動族の方を振り返る。
「何を言っているのよ!あたしたちが帰ったとき、全部説明したでしょう?!ナブーを殺したのはあたしたちが復活させようとしていた暗黒大邪神で、それを命じたのは我らが総帥として崇めていたアグラマントであると!この者たちは関係ないわ!!」
「アグラマントは耳長族だった!しかもこのラビルーナの最高位の魔法使いでもあった!関係ないわけがない!!」
エヌマが再度説明するも他の邪動族からも反論の声が上がった。そうだそうだと、それに便乗するかのようにあちこちからも反論の声が聞こえ始める。
「私たちは皆、シャマン様やエヌマ様、そしてナブー様に忠誠を誓い、尊敬の念を抱いております!だからこそ、このラビルーナの者たちが憎い!!あなた方を騙し利用し、挙句の果てに葬り去ろうとするなど断じて許せません!!」
「故郷でもシャマン様たちのことを悪く言う者がいます…。ラビルーナを制圧出来ずに逃げ帰ってきた臆病者だと…!そんなことはないと証明するためにも、シャマン様たちの配下である我々がラビルーナを征服しなくてはならないと、皆で心を1つにしてここまで来たのです!」
「私は、ナブー様に忠誠を誓っていました!誰よりも尊敬していたのです!それなのに、それなのに…!この手で殺さないと気が済みません!アグラマントの子孫であり、ラビルーナの魔法使いであるその2人を!!」
最後の言葉はサユリとラビに向かって投げかけられた。ラビを叱っていたサユリが、顔を強張らせてラビを守るようにその肩を抱く。
黙って話を聞いていたシャマンとエヌマだったが、我慢できなくなり怒声を上げた。
「馬鹿者!!そんなものはただの逆恨みだ!!こんなことをして、もしもお前たちの身に何かあったらどうする?!ラビルーナを征服出来なかっただけではなく、自分たちの配下までをも管理出来ず、犠牲にしてしまったなどということになれば、我らは今以上に故郷に居づらくなるだろうな!!」
「そうよ!!それに、ナブーを死なせてしまったことに関してはあたしたちにも非はあるのよ!!ナブー1人を魔動戦士たちと戦わせて、あたしたちはそれを傍観していただけなんだから!!あたしたちも一緒に出撃していれば、もしかしたら、もしかしたら…!!」
エヌマが声を震わせながら俯く。シャマンはそっとエヌマの肩を抱いた。
「お前たちの我らへの想いは嬉しい。だが、もういい…。私はもう、無益な争いで仲間が傷ついていくのを、見たくはないのだ…。」
シャマンがそこまで言うと、邪動族たちは水を打ったように静まり返った。所々で嗚咽が聞こえ始める。シャマンとエヌマが再度V‐メイに頭を下げた。V‐メイはことの様子を見守っていたが、1つ頷くと言った。
「どうだろう。アンタたちも今度の祭典に参加していかないかい?」
「私たちが?!」
「あたしたちが?!」
シャマンとエヌマは驚きのあまり声が上ずってしまった。うんうんとV‐メイはにこやかに頷く。
「あたしが許可する。だから参加しておいきよ。後悔はさせないと思うからさ。」
「メイ様がお許しになったのですから、是非参加していってくださいね。」
含みを持たせた言い方に疑問を抱くが、サユリもV‐メイも許すと言っているのだから断る理由もないと判断し、誘いを受けることにした。だがその前に、と未だ縛られている邪動族たちを振り返る。
「その前にこの者たちを、我らの故郷に連れ帰らねばならない。」
「ここまでのことをしでかしたんですもの。帰ったらちゃんと、お仕置きしなくちゃね。」
「心配するな。明日の朝にはこちらに戻る。」
「そしたら謹んで参加させてもらうわ。」
シャマンとエヌマが言うと、V‐メイとサユリは頷いた。
「シャマンたち、もう帰るの?」
大地が駆け寄りながら言うとシャマンが微笑んだ。
「明日にはまた来る。約束だ。」
「……うーん、わかったよ!その代わり、今度はホントに約束守ってよね、シャマン、エヌマ!」
「今度って何よ。あたしたちはいつだって、ちゃんと約束守ってるじゃない?」
「すんげーギリギリだったけどな!」
ラビがサユリの横からヒョイと首を出して言うと、エヌマが睨んだので、ラビはまたサユリの後ろに隠れた。べぇーと舌を出すのも忘れずに。
「あんのクソガキ!!」
早口の上に凄い小声だったが、すぐ近くにいた大地とシャマンにはしっかり聞こえていたわけで。シャマンは肩をすくめ、大地はクワバラクワバラと口の中でモゴモゴと言った。
「でもさ、シャマンはもう1つ約束あったのにさ、まだ果たしてないよね?」
大地が言うと、シャマンはそうだったか?と明後日の方向を見ながら、さっさと邪動族たちの方に行ってしまった。
「じゃあ我らはこれで。また明日会おう。」
「ちょっと待ちなさいよ、シャマン!」
エヌマがその後を着いていく。ったくもう!と大地は思いつつ、また明日ね、と手を振った。
「ちゃんと明日の朝には戻って来てよ!約束だからね!」
「わかっている。また明日な、大地。」
「えっ?!」
大地がシャマンの言葉に驚いて固まっている内に、シャマンとエヌマは大勢の邪動族たちを連れてレーヴェの道に入り、ラビルーナを去っていった。
ポカンとしている大地の横に、いつの間にかラビが来ていて肩に手をポンと置いて言う。
「一本取られたな、大地?」
「…………クッソー!!明日になったら覚えてろよ!!」
こんな言い逃げのような形で約束を果たした、だなんて絶対に認めないからな!と大地は強く思った。