ハンバーガーショップを出てから、時間潰しをするために近くのゲーセンに寄っていた。対戦ゲームを一通り楽しんだ後、次は何をやろうかとゲーセン内を回っていると…。
「可愛く撮れたね!」
「やっぱりプリっていいよね!」
「デコるのも終わったし次どこ行く?」
「お昼食べない?お腹すいちゃった。」
2人の女の子が手元の小さな、おそらく今撮ったばかりの写真を覗き込みながら楽しそうに話している。
ラビがそちらをじっと見ているので、大地はコホンと小さく咳払いする。
「ラビ〜?俺たち今駆け落ち中ってことなんだよね?だったら女の子に目移りしてちゃ不味いんじゃないかなぁ〜?これじゃあナンパも無理だね〜。」
ニヤニヤ笑いながら大地が言うと、図星を指されたラビは不貞腐れてうるせぇよ、と言いながらそっぽを向く。と、急にそうだ、と何かを思いついたようにゲーセンの奥に設置されている写真機を指差しながら言った。
「おい大地、オレたちもあれ撮ろうぜ!」
「ええっ?!あれって、さっきの女の子たちが撮ってたやつ?!だってあれ女の子が撮るためのものじゃん!何で俺たちが…?」
「別に男がやっちゃならねぇって決まりはねぇだろ。写真撮るだけなんだからさ、ほら早く行こうぜ!」
「ちょっ、わかったから引っ張るなよ!」
大地の腕をギュッと掴んでスタスタと歩いて行くラビに、半ば引っ張られながら着いていった。
「それにしてもこれ、どうやって撮るんだよ?」
「やり方書いてあるぜ。えっと、まずはお金を入れて…撮る人数は2人、と…。それから写真のモード?を選択して…。」
と、こんな感じで手探りしながら、なんとか写真を撮ることが出来た。終わった頃には2人ともだいぶ疲れてしまっていて、ゲーセン内のベンチに2人で腰掛ける。
「ラビ…これ、すっごいめんどかったんだけど…。」
「んなの、オレだってそう思ったよ…。」
「よくこんなの撮ろうって思えるよな、女の子って…。」
「でもまぁ、そんなところがさ、可愛いんだよな〜。」
「…はぁ~全く…。」
「けどよ、操作がめんどかったのは置いといて、中々上手く撮れてんじゃねぇか。」
ほら、とラビが見せてくれた小さな写真は、肌色や顔のパーツに多少補正がかかっていて、確かに普通の写真よりも綺麗に撮れていた。
「けど、大地こんな男前じゃねぇのにな!見合い写真に使ったら絶対詐欺だぜ!」
笑いながらそう言われたので、大地も言い返す。
「そんなのラビだっておんなじだろ!というかさ、ラビの場合肌綺麗になり過ぎだよ!これじゃあ男の子か女の子かわからなくなるぜ!」
「なんだと?!」
「なんだよ?!」
2人して顔を近づけて睨み合って……一周回って可笑しくなってきて同時に吹き出した。
「アッハハハ、何やってんだろうなオレたち!」
「ハハハッ、ホントホント!」
昔は憎たらしいと思ったときもあったが、今はこんなにも楽しい。一緒にいられることが、こんなにも穏やかな(追われているため穏やかとも言い難いが)時間を過ごせていることが嬉しくてたまらない。
ずっとこんな時間が続けばいいのに…。
2人同時にそう思ったが、言葉に出ることはなく胸の内に秘めたまま、心の奥底へと消えていった。
「あぁっ!!」
「なっ、なんだよ?!どうした?」
と、そのとき大地が急に声を上げたのでラビはビックリして立ち上がる。
「あれ!!」
大地はそう言って立ち上がると1つのクレーンゲームの前まで走って行く。
「これ、この時計!!」
「なんだよ、時計が欲しかったのか?」
「こういうデジタル式の時計って分解するといろんな応用の利く部品のパーツが手に入るんだよ!しかも非売品!絶対欲しい!これやるからちょっと待ってて!」
「分解するために取るのかよ…。」
若干引きながらラビは呟く。大地はもう取る気満々でクレーンゲームと格闘している。仕方ねぇなとラビはさっきのベンチまで戻る。座ったまま大地の方を頬杖をつきながら見る。大地はラビが見ていることなど気付きもせず一生懸命に、でも楽しそうにクレーンゲームをやっている。
(ちっ、メカや設計が絡むとすぐこれだ。今はオレと一緒にいるってのに、なんなんだよ大地のやつ…。)
付き合ってらんねーぜ、とラビは不貞腐れるかのように足を組む。すると、さっき大地とラビが写真を撮っていた場所から別の女の子が4人出て来たのが見えた。その子たちは近くの台の上にあったハサミで写真を細かく切っているようだった。
「?!」
これはさすがにラビもビックリして、思わず凝視する。
…と。
「よし、綺麗に切れたわ!」
「ありがとう、上手!」
「あっ、あたしこれがいい!」
「えっ、ズルーイ!その写真私が狙ってたのよ?」
細かく切り取った小さな写真をみんなで選んでいるようだった。
「こういうのがプリの醍醐味よね!」
「小さく可愛く撮れて友達で分けられるっていうのがね!」
「あたし携帯に貼ろうっと!」
「私は財布に入れとくわね!」
そんな話をしながら女の子たちは行ってしまった。ラビはポケットに手を突っ込んでさっき撮った写真を改めて見る。
そんなゴテゴテとしたものでも細かく分けられてるものでもない、2つの縦の背景にそれぞれ違う写真が2枚ずつ載っているものだった。
背景は1つが海で、もう1つはキャンプファイヤーという夏らしくもシンプルなデザインを、写真は3回撮ったうちの上手く撮れた最後の2枚を選んだ。1つは肩を組みながらピースしてる写真、もう1つは魔動力を使うときみたいに印を結んでいる写真。それが軽く左斜めと右斜めにそれぞれの背景に貼り付けられている。
(そうか、真ん中のこの白い縦線は単に背景を仕切っているだけじゃなかったのか。)
ラビはおもむろにベンチから立ち上がり、台の所まで行くとハサミを手に取った。
「ワリィワリィ、お待たせ!結構手間取っちゃってさ、でもほら、ちゃんと取れたぜ!俺も中々やるだろ……ってどうかしたか、ラビ?」
「なっ、なんでもねぇよ!お前が遅いから待ちくたびれちまっただけだ!」
「ふぅん?まぁ、何もないんなら良いんだけどさ。」
急に大地が戻ってきたので、ラビは思わず切ったばかりの写真をポケットに隠してしまった。少しばかり挙動不審に見えてしまったようだが、誤魔化せたみたいで大地はそれ以上何も聞いてこなかった。何故写真を隠してしまったのかは、ラビ自身にもよくわからなかった。
(なんでだろ…なんか恥ずかしいような…気まずいような…そんな気がしたんだよな…。ハァ~…にしてもせっかく上手く線に沿って半分に切れたってのに、渡しにくくなっちまった…。)
そんなふうに考えていたが、隠してしまったものは仕方ないと割り切ることにした。座っていたベンチから腰を上げる。
「目当てのもんが手に入ったんなら、そろそろ行こうぜ。つーか、駆け落ち相手をいつまでも1人で待たせんなよな!」
「だから待たせたのは悪かったって!ちゃんと謝ったじゃん!」
「謝るんならもっと心を込めて謝れよ!」
「ど、う、も、す、み、ま、せ、ん!!」
そんな会話をしながら、2人はゲーセンを後にした。