ニューヨークの街へ軽やかにパトロールへと繰り出したピーターを見送り、ボロアパートに残されたネッド・リーズは、いまや「椅子の男」としての真骨頂を発揮していた。
ブルックリン郊外に爆速完工した「アーク・リアクター搭載型・超巨大AIデータセンター」。その稼働状況のモニタリングと、なぜか自分たちの自作端末にプリインストールされていたスターク社の最新セキュリティシステム「E.D.I.T.H.」の解析作業である。
「ねぇE.D.I.T.H.、このプロトコルってスターク社の基幹フレームワークと直接同期してるの?」
『はい、ネッド様。現在、本システムは『Parker Innovations LLC』のマスター権限のもと、最高レベルの優先度で稼働しております』
「すごすぎる……! よーし、ちょっと防衛シミュレーションの負荷テストでもしてみるか!」
ネッドがノリノリでキーボードを叩き、E.D.I.T.H.と対話しながら仮想サイバー攻撃に対する防衛訓練を開始した――まさにその時だった。
【同刻:スターク・インダストリーズ本社 SOC司令室】
「出たぞ! 『レイヤー0』のマスター権限ノードがアクティブになった!」
「権限の奪還命令を発動! 全ノードから一斉にアクセスを叩き込んでソケットを塞げ! 相手のセッションを遮断するんだ!」
CISO(情報部門最高責任者)の怒号とともに、スターク社の全サイバー防衛部隊が一斉に攻撃を開始。何重ものプロテクトを突破すべく、膨大なトラフィックがネッドたちの回線へとなだれ込んだ。
【ボロアパート】
「うわっ!? 何これ、スターク社から大量のアクセスログが!? 権限を奪取しようとしてる!?」
画面に敷き詰められる赤色のアラート。しかし、ネッドの「椅子の男」としてのオタク魂に火がついた。
「させるか! 僕はスパイダーマンの『椅子の男』なんだぞ! E.D.I.T.H.、第3防衛プロトコル展開! スターク社のパケットをカウンター・ファイアウォールに誘導して!」
『了解しました。分散型サービス拒否(DDoS)パケットを無害なループバックアドレスへ迂回させます』
【さらにその頃:とあるヒーローのセーフハウス】
「……ん? スターク社のマスター権限が、ニューヨークの謎のIPアドレスに移動した……?」
モニターの前でドーナツをかじっていたアベンジャーズお抱えの凄腕ハッカーが、異変を察知して目を細めた。
「トニーの遺産を悪用しようとする不届きものか? どれ、確認させてもらうよ」
凄腕ハッカーがキーボードを叩き、高度なステルスプロトコルを使ってネッドたちのサーバーへとバックドア侵入を開始する!
【ネットの深層:犯罪組織A.I.M. 秘密サイバー基地】
「ヒッヒッヒ……スターク社の基幹システムと、謎のノードが激しくプロテクトを削り合っているぞ……!」
黄色い防護服に身を包んだA.I.M.(Advanced Idea Mechanics)のサイバー犯罪部門が、凶悪な顔で笑った。
「今こそ、我が組織が誇る自己増殖型乗っ取りウイルス『マルウェア・レヴァイアサン』を流し込む時! スターク社のインフラもろとも、そのアーク・リアクターデータセンターの制御権を奪い取ってやる!」
トラフィックの急上昇と、プロテクトが拮抗して生まれた一瞬の隙。そこへ、毒々しい紫色のログとともにA.I.M.の凶悪なウイルスが乱入してきた!
さらに、ネット上では「スターク社と謎の超技術サーバーがサイバー戦争を始めてるぞ!」「AIMまで参戦した!」「なんだこの激アツ展開!」と野良ハッカーたちが押し寄せ、ネット上は大混乱の極みに達していた。
【ボロアパート】
「うわあああ! スターク社だけじゃなくて、なんか怪しい黄色いアイコンの犯罪組織とか、野良の野次馬ハッカーまで大群で流れてきた!! 本物のヴィランに、テロリストだ!!」
頭を抱えたネッドだったが、瞬時に腹を括った。キーボードのエンターキーを強く叩きつけ、スターク社とヒーロー側ハッカーの通信ラインへダイレクトに割り込む!
「スターク社! それにそっちの腕利きのハッカーさん! 内輪揉めしてる場合じゃない! A.I.M.のウイルスが僕たちの共通ラインを破壊しようとしてる! 一度手を取り合おう!」
【スターク社SOC&ヒーロー側ハッカー】
CISO「何……!? 相手から緊急回線が開設されただと!?」
ヒーローハッカー「ふん、言われなくてもあの黄色いバカども(A.I.M.)を野放しにする気はないよ!」
ネッド「E.D.I.T.H.、僕がスターク社の帯域を束ねるから、ハッカーさんの迂回ルートを使ってA.I.M.の送信元IPを逆特定して!」
『了解しました。三者連携によるダイナミック・ルーティングを開始します』
ネッドの的確なルーティング指示のもと、【ネッド(とE.D.I.T.H.)× スターク社情報部門 × ヒーロー側ハッカー】という奇跡の三者連合軍が結成された!
「行くぞ……一斉照射(フルバースト)!!」
ネッドの合図とともに、圧倒的なデータ濁流がA.I.M.の秘密サーバーへと逆流。
――ドカンッ!!(物理的な爆発音とともに、A.I.M.のサーバーラックが過電流で吹き飛ぶ音)
「ぎゃあああああ!? サーバーが燃えたアアアア!!」
A.I.M.の乗っ取りウイルスは跡形もなく消滅し、野良ハッカーたちは「すげええええ!!」「スターク社無双!!」と大狂乱ののちに蜘蛛の子を散らすように逃げ去っていった。
【スターク邸:とある部屋】
この圧巻のサイバー攻防戦を、ギャラリーとして野良観戦していた天才少女――モーガン・スタークは、自作端末の前で目を輝かせていた。
画面に流れる、圧倒的に美しく無駄のない防衛アルゴリズムのログ。
「この防衛アルゴリズム……パパのコードにそっくり……」
モーガンは画面を愛おしそうになぞり、小さな胸を躍らせるのだった。
【同刻:ブルックリン郊外・巨大AIデータセンター前】
サイバー空間が大激戦を繰り広げていた裏で、現地のリアル空間ではスターク社法務部と政府関係者(FBI・DHS)による混合調査チームが、厳重なセキュリティゲートの前に押しかけていた。
「開けなさい! 連邦緊急調査令状およびアベンジャーズ安全協定に基づき、当施設の一時立ち入り監査を行う!」
重厚な自動ドアがゆっくりと開き、中から出てきたのは……ヤマト運輸風の爽やかな挨拶を繰り出す男、ボブ(元ヒドラ、現デップーの専属配送員)だった。
ボブ「は〜い、どちら様ですか〜? あら?」
ぞろぞろと身構える調査チームと黒塗りの車列を見渡したボブは、群集の後方にいた男性を指さして親しげに声をかけた。
ボブ「あれ? そこに居るのは『Parker Innovations LLC 代理人』様じゃないですか?」
ハッピー「……え!?」
一瞬で、周りの政府担当官、スターク社法務部、武装警備員たちの視線が一斉にハッピー・ホーガンへと突き刺さる。冷や汗が一気に吹き出すハッピー。
ボブ「はい、どうぞ。入館許可証です。代理人様の分しかありませんよ?」
爽やかな笑顔で、ネックストラップ付きのVIP入館証をハッピーの首にひょいと引っかけるボブ。
周りの全調査チームからの「お前……まさか裏でグルだったのか!?」と言わんばかりの重圧と疑惑の視線を一身に浴びながら、ハッピーはポケットの胃薬を握りしめた。
ハッピー・ホーガン「聞いてないよぉ……なんで俺なんだよ……」
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(画面いっぱいに映し出される、真っ赤なデッドプールの顔面。カメラ目線で視聴者に指を突きつけている)
ウェイド(デップー):
「ハァ〜〜〜〜(クソデカ溜め息)。……聞こえるぞ。スクリーンの向こうで画面をスクロールしてるお前らの心の声が聞こえる。
『おいおいマヴカプの新作か?』
『ディズニーに買収されてまで、まだホーム(Home)に執着してんのかよ!』
『“No Way Home”でキレイに終わっただろ! ホームシックかよ!』
……ウルセー!! だからタイトルを『ホーム・インフォマティクス(Home Informatics)』にしたんだよ! “家(ホーム)の情報科学”だ! どこがホームカミングだよ! 完全にIT系実務講座だろーが!!
いいか? スパイディの歴代タイトルを振り返ってみろ。
1作目:『ホームカミング(家に帰る)』
2作目:『ファー・フロム・ホーム(家から遠く離れて)』
3作目:『ノー・ウェイ・ホーム(家に帰る道がない)』
で、今回の4作目(非公式)だ。
家を失って、友達も恋人も記憶も全部失ってボロアパートに一人ぼっちになったピーター・パーカーが、次にやることと言ったら何だ!?
――『在宅ワーク(Home Work)』だよ!!
職歴なし! 履歴書白紙! ソコヴィア協定のせいでアルバイトすら受からない19歳が、ボロアパートの自室(ホーム)で生き残るために立ち上げたペーパー会社……それが『Parker Innovations LLC』だ!
つまりこれは、親愛なる隣人が在宅起業して連邦政府とスターク社をITでハックする、超本格・在宅(ホーム)サスペンスなんだよ!
え? タイトルに『Home』って付けとけばソニーとマーベルの偉い人が喜ぶと思ってゴマすったんだろって?
……シーッ!!(口元に指を立てる)
大人の事情をバラすな! ソニーの弁護士が一番怖いんだからな!!
よし、前置きは終わりだ。ペンタゴンのアホどもが責任転嫁(タライまわし)の円陣組んでるシーンへゴー!!」
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