やはり俺が魔女裁判に参加していたのは間違っている。 作:大魔女様が見てる
少し、昔の話だ。今から1年ほど前、俺こと
……そこでの環境はまあ、酷いものだったと思う。飯は不味いし、バケモンは徘徊してるし、ろくでもない呪われる本みたいな物があったし。
挙句の果てには、そこにいると自分もバケモノになっていき、殺意や悪意を覚えやすくなって他人を殺したくなるだとかいう話だった。
……そこで、殺人が実際に起きて、裁いたり裁かれたり。そういう話もあったような気がする。
気がする、という曖昧な表現を使ったのは、俺自身が経験をした訳では無いからだ。厨二病乙なんて言われるかもしれないが、それを経験した別世界の俺の記憶が色々あって流れ込んできたからなんとなく環境とかを理解している、それだけの話。
……酷いもんだったと思う、仲良くなったと思った人が殺人を犯してたり、無惨にも殺されていたり。ろくな思い出ってやつが流れ込んできた記憶にはなかった。
それでも、あの場で出会えた奴らと育んだ時間は今となってはかけがえのないもの……だと思う。まあ、実際の時間は僅か数週間の出来事だったのだが……記憶の年月も含めれば1年分ほどはあったしな。もしもの世界の記憶を含めていいかは色々考えものだが、悪いものではなかった、とは思う。……酷いこともあったし、されたこともあったが。それはそれ、というやつだ。
……美人も多かったしな。てか、俺以外全員超美少女しかいなくてビビったのはいい思い出である。男の俺としては役得であった。……多分。居心地が悪くて【魔法】で姿を隠していたことが結構あったが。
まあ、こんなことを話しているのは単純な話で。
「まさか、二階堂と学校が一緒だとは思わなかったんだよなぁ……」
「まだ言っているのか。……いい加減現実を受け止めてくれ。逃避は正しくない。……それに、それはこちらの台詞だ。八幡。……あんなに綺麗に別れた筈なのに、なんだか台無しになった気分だったんだからな」
呆れたような顔でため息を吐きながらこちらを見つめてくる黒髪赤目の少女。
……彼女もまた、俺と同じくその孤島に軟禁されていた少女であった。
歳が一緒だとは知っていたが……まさか、入学してた高校が一緒だったとはなあ。たしかに総武は高校としちゃ進学校だし、二階堂が来るのは全然おかしくない学校ではあるのだが。
「それ言っちゃいます? 俺だって、
「1年は色々な事情を鑑みて、様子見をされていて、特別措置として授業等はリモートで教えて貰っていて……2年になって改めて、という話は聞いていたが……本当にまさかだったよ」
「ホントにな」
しかも同クラスである。恐らく学校の上の方の人が対応するの面倒くさがって俺と二階堂を同じクラスにしたのであろうことは容易に想像できるが……。
「…………というか、二階堂はいいのか。俺とこうして飯食ったりして」
「何を今更。……この性格だからな。物事をきっぱり言う手前、友人は作りづらい側だと理解している。そんな中で……苦楽と生死を共にした友人が居るなら、其方を優先したって構わないだろう」
正直に言えば、二階堂は男子人気はとても高い。品行方正で大和撫子といっていいほどに顔も整っている少女だ。……その上、学級委員長で生徒会に所属もしている。……これほどの優良物件を狙う者は少なくないだろう。というか女子人気も高いタイプだよネ、二階堂さん。ソースはあの牢屋敷での記憶。
「あくまで別世界の記憶だけどな」
「私にとっては実際に経験した記憶だ。君に何度も助けられたことも含めてな。……学級委員長だったり、生徒会に入ったりはしているが。それはそれだ。友人との時間は大切にすべきだろう。その方が……」
「正しい、ってか?」
「よく分かってるじゃないか。さすがだな、八幡」
満足そうに彼女は笑みを浮かべて、弁当の中身を口に入れて咀嚼した。
私語すら食事中しなかった奴だったのに、随分とまあ、丸くなったもんだ。……少し懐かしく感じてしまう。
「まあ、その友人を蔑ろにして一方的に嫌っていた時期がある私が言うなという話かもしれないが」
「その話題俺が触れづらいからやめない?」
桜羽と二階堂の関係性はそれなりに聞かされたので知っている。色んな意味で苦労させられたんだな、としか俺からは口にしてやれないことだが。二階堂にとってはくっそトラウマもいいとこの話だろそれ。ここが牢屋敷なら魔女化進行してるぞ、多分、知らんけど。
いやまあ、それを自虐ネタとして昇華できるようになったことは喜ぶべきなのだろうか。
「ん……それに……君が他の女子に奪われないとも限らないからね」
それは困る。と口にする二階堂に、俺はえぇ……と困惑する。何お前、俺のことめっちゃ好きじゃん。
「いやいや、俺なんかを好きになる女子なんざ居ませんよ。そりゃ余程の節穴だろ。俺の目以上に」
「それは、あの屋敷にいた私たち全員に贈る言葉で相違はないか?」
「違くて」
いや、ほら、二階堂たちはアレじゃん? さっきお前が言った通り生きるか死ぬかの極限の環境で苦楽を共にしたわけじゃん? それによる吊り橋効果が高いと俺は思ってましてね。いや、まあお前らみたいな美少女に好かれてることに関しては男冥利に尽きる話なんですけども。こんな腐った目の野郎を好きになりませんよ。普通は。
「……君はもう少し自分の魅力を理解した方がいい。吊り橋効果である可能性は否定できないが。……自己を犠牲にしてでも、私たちを助けようとしていた姿に惹かれる者は確実にいるだろう。君らしく言えば、ソースは私だ」
君にとってはその記憶は泡沫の夢のような感覚かもしれないけどね。と、二階堂は呟く。
……それを言われると、弱いんだよなあ。俺が臆病なだけ……より正確に言えば【禁忌】というやつが他者を好きになる事に由来しているせいで、簡単に信用できていないだけで。……二階堂を含めたあの屋敷にいた少女たちを助けた数は、多分凄く多いはずだ。そういう所でやだ、好きになりそう。となる奴はきっといる。俺もそんなこと
「振られる前提なのが君らしいな……彼女なら寧ろ、喜んで承諾しそうだが」
「そうなる可能性の方が高くて困ってるんだよなぁ……」
テレビで大活躍してる今をときめく女優とそういう関係になったらスキャンダルまっしぐらですからね。俺が死んじゃうし、蓮見のキャリアも死んじゃう。だからなしなし。絶対ナシ。蓮見の事考えるなら尚更だ。
「……そういうところだぞ、八幡」
「何処のこと言ってるんですかね」
「……全く……自覚なしとは……正しくない。
はぁ……これではレイアが落ち込む姿が容易に想像できてしまうな」
「やめて? それを言われるとおれが罪悪感で死んじゃうから」
アイツ割と大型犬の気があるんだよ……。サモエドとかそっちタイプの。だから露骨に落ち込まれると俺まで申し訳なさで死ぬまである。あれで演技も上手いから嘘泣きだったとしても騙される気がするわ。ソースは二階堂が歩んだ別世界の俺の記憶。
劇をやろう! って言葉に最終的に俺が言いくるめられた話である。見事にあの大型犬っぷりに騙されて懐柔されたのである。おのれ蓮見 レイア。俳優としてのポテンシャルをここぞとばかりに発揮しよって。
……おかしいなあ、俺猫派だった気がするんだが。カマクラがいるし。
「……それはそうとだ。八幡」
「ん? なんだ?」
「放課後は空いているか?」
「……まあ、空いてると言えば空いてるし、空いてないと言えば空いてないな」
「つまり、予定はないんだな?」
「ッス……ないッスね……はい」
俺の事などとうに理解している。といった様子で、言い切ってくる二階堂に俺は頷いた。はい。その通りです。予定なんてありませんよ。年がら年中暇です。帰宅部だし。いや、家に帰ったら最愛の妹の
「まったく……最初からそう言えばいいものを。……なら放課後を空けておいてくれ。少し
「???? なんと?????」
あの二階堂ヒロが?? 寄り道を提案???
「お前、本当に二階堂か?
「絶妙に失礼だな君は……私に対してもマーゴに対しても……」
「いやだって、お前……」
下校中に寄り道なんて正しくない、とか言いそうじゃん。下校中はちゃんと下校するべきだ。って。言うタイプじゃんお前。
「時と場合によるだろうそれは。私だって、ああ、そう言えばシャーペンの芯の予備を買っていなかったな。と思い出せば買いに寄るぐらいはする」
「逆に言えばそれぐらいでしか寄らないだろ」
「それはそうだが」
ほらー。そういうタイプじゃん。
「……たまには構わないだろう。それに、今日は生徒会などに予定があるわけでもないからな。……久しぶりに君と、一緒に帰りたくなった。……では、ダメだろうか?」
「ッスー…………そういうことなら、仕方ないか」
その頬赤らめ上目遣いは卑怯だろ。くそう。ここぞとばかりに自分の美貌を利用しやがって。蓮見じゃないでしょあなた。──そういうところだと思うよ、ヒロちゃん!
おっと、心に飼っている桜羽 エマがうっかり顔を出してしまった。本人が聞いたら、ボクを飼ってるってなにかな!? からの八幡くんになら飼われても……いいよ……? って承諾してくれるまである。 承諾しちゃうのかよ。しないだろ。やはり桜羽 エマは
「余計なことを考えていただろう」
「……ソンナコトナイヨ」
ジト目で二階堂が見てきていた。やはり二階堂ヒロにはお見通しである。略してニヒアル。
────
「すまん。本当にすまん」
「…………君は、本当に。何があったら呼び出しなんて食らうんだ」
生徒指導室へ呆れた様子で付き添ってくれる二階堂に申し訳なさで縮こまる。ただでさえ猫背で縮まってるのにこれ以上縮こまったら俺はダンゴムシになるしかないのでは? もしくはモーフボール。そしてゼーベスの奴らよろしく骨をバキバキに複雑骨折するまである。するなよ。氷上はもういないんだが?
「俺だって心当たりないんだが……」
「だが余程だぞ、
「だよなあ……」
二階堂に言われて振り返る。担任の平塚先生から後で生徒指導室に来るように。と呼ばれた時のあの呆れたような視線は、俺は余程のなにかをやらかしてしまったようだ。
「失礼します、平塚先生。比企谷 八幡を連れて来ました」
『開いている、入ってきてくれて構わんぞ』
「……俺は囚人か?」
「だった時期はあるだろう。囚人番号で呼んでおこうか?」
「勘弁してくれ」
冗談だ。とうっすらと笑みを浮かべながら、二階堂は生徒指導室の扉を開ける。
そこには
ん、あの紙どっかで……。
「来たな、比企谷。二階堂もわざわざすまんな」
「いえ、当然のことなので」
「で、平塚先生……俺はなんで呼ばれたんですか?」
「ふ、余計な雑談はせず本題に入るやつは好きだぞ。だが、この場においては悪手だったのではないか?」
平塚先生は不敵に笑いながら、ちら、と二階堂の方へ視線を向ける。
……何故二階堂の方を?
「……帰った方がよろしいでしょうか?」
「いや、この際だ。お前も聞いておけ、二階堂。コレの人となりを多少知っているお前がいた方が話はスムーズだろう」
「人をコレて」
「コレで充分だ。こんなものを作った生徒にはな」
呆れたような声を出す平塚先生。それを聞いた二階堂は、何をしたんだ君は、というジト目をこちらに向ける。いや知らんが……何もしてないが……?
「『青春とは嘘であり悪である』」
「──あっ」
平塚先生が手に握っていた紙の内容を読みはじめて俺は声を漏らす。
ごめん、あったわ。心当たり。めっちゃあった。そりゃ呼ばれますよね。妥当である。
「『──結論を言おう。リア充爆発しろ』
初めてだよ、爆破予告まで書き込んだレポートを高校生活を振り返れと出した課題で提出してくる生徒はな」
「ッスー……そう……ッスねぇ……」
「………………………………八幡?」
「はい、すみません。俺が悪かったです。だからその今にも
平塚先生の読み上げた俺の課題レポート文……もとい怪文書を聞いて、冷ややかな視線と黒い圧を掛けてくる二階堂 ヒロさん(15)
あー困ります! 困ります二階堂さま!! ジャスティス先制アタックする顔にならないでください! あー困ります! 正しくない! 正しくない!! って言い始めるジャスティスモードにならないでくれ!! ズゴックに乗って駆けつけてくるぐらい不機嫌な顔じゃん!!
今にも魔女化しそうというか、魔女化してた時ぐらい圧があるんですが!!?
「はぁ……君の捻くれっぷりは理解していたつもりだったが……まさか課題にまで及ぶとは……」
「くく、こういう事だ。比企谷や二階堂に色々な事情があることを此方も理解してはいるが……これは流石に看過できるものではなくてな」
「あ、やっぱ知ってたんですね」
「触りぐらいだがな。全ての事情は私は知らんよ。そんなものを聞いて何になる。大事な生徒に余計な色眼鏡をつけたくはない。……それに、私にとっては手のかかるだけのただの生徒に過ぎんよ」
2人ともな。とくつくつ、と笑う平塚先生に、俺も二階堂も少し目を丸くする。
なるほど。彼女が俺や二階堂の担任になった理由がよく分かった。こんな教師が世の中にはいるんだなあ、と感心すら覚えてしまう。
「……本来なら君と二階堂に関しては此方も仕方ないと目を瞑るつもりだったんだが。多少指定より字数が少なくてもな」
1年分。俺と二階堂は総武高校での経験がない。それ故に、多少は温情を与えるつもりだった。と平塚先生はそう口にする。え、そうなん? じゃああんな長々と恨み辛みを書かなくてよかった……ってコト?!
「書き損じゃね」
「比企谷」
「はい、すみません、黙ります」
やだ、二階堂さんの声音が氷点下に落ちちゃった。なんなら八幡呼びすらしてくれなくなった。嘘、俺の株一日で下がりすぎ……!? FXにでも溶かされちゃったかな?
「時に比企谷、君は部活に入ってはいなかったな?」
「え、まあ……入ってませんけど」
なにせ部活とは1年目でだいたい決まっちゃうものである。俺はある意味出遅れたので部活なんて入っていない。え、二階堂は生徒会に入ってるだろって? コイツは例外中の例外みたいなもんだから……その気になれば部活と生徒会で7種類ぐらい掛け持ちできそうなやつだし……。
「友人は?」
「隣にいますけど」
「……む」
なんでちょっと不服そうな顔した? 二階堂さん?
「他には?」
「えーっと……11人ぐらい?」
桜羽達の顔がぼんやりと浮かぶ。友達換算していいかは分からんが。友達だろ、多分。え、そんなつもりなかった。とか言われたら泣いちゃうかもしれんが。あんなに一緒に頑張ってきたのに……! いやまあ頑張ったの別世界の俺なんですが。
「……言い方を変えようか。この総武に来て、二階堂以外での学友はできたか?」
「…………いない、っすねえ……」
「やはりか。君のその腐った魚のような目とこの文を見れば大まかには理解していたが」
してたのかよ、こえーよこの人。【千里眼】でも持ってた? 大丈夫? 一人称、あてぃしにする? ……やめとこ、あとで鋭利な言葉のナイフが飛んできそうだ。
「で、恋人……彼女は?」
「え"……彼女すか……?」
ぴく、と隣に立っていた二階堂の身体が跳ねる。なんならちょっと横でソワソワしだした。おい、ソワソワすんな、隣で。髪が手に当たってくすぐったいから。
彼女、彼女なあ……。覚えのある12人の顔が頭に過ぎる。隣の二階堂も含めて。いやまあ、好意的に見てくれているのは自覚しているんだが……。
「あー……検討中デスね……」
「…………」
「いったっ!?」
「ふん……」
こいつぅっ……!? 隣にいるのをいいことに思いっきり踏んづけやがったな!? 不機嫌そうに鼻を鳴らすなそして……! どうせ先延ばしなど正しくない。とか思ってるんでしょうけど……! 仕方ないだろ、俺だって産まれてこの方こんなモテ期なんて経験したことないんだから。このまま100人彼女目指しちゃうまである。嘘。さすがにそれは無理。俺はあんなに責任と覚悟を持てるほど肝が据わってない。マジで。
「チッ……モテるものめ」
何その持てる者、持たざる者みたいな言い方。獅子戦争に参加しちゃうの? 俺はベオルブ家の嫡男だった? そんで先生は聖剣技が使える英雄王だったりするの?
「おっと、すまん。つい僻みが。最近の男は軟弱なやつばかりでな……理想に合わん……」
「偏見……」
おっと、二階堂の正しくないスイッチが入りそう。
──そういう時はこっそりうなじをくすぐってあげるといいよ! 八幡くん!
サンキュー、心の中の桜羽。でもセクハラを提案するのは俺どうかと思う。
──きゃん……!?
イマジナリーでもバカ犬になっちゃうのかよ、可愛いな畜生。結婚してくれ。嘘、それ言ったら絶対外掘りガッツリ埋めてきそうだから保留でお願いします。
──残念。
ねえ今残念って言った? ねえ? イマジナリーなのに怖いんですけどこの桜羽エマ。本当は翼生えてたりしない? 魔女になってない? ねえ?
「こほん。ともかくだ。真面目な授業でこういう事をやらかす問題児には更生の場が必要だと思っていてな」
「更生て……」
「本当に【囚人】みたいになったな?」
「やめてね」
横でくすくす、と笑う二階堂に対し、俺は露骨に嫌な顔になる。今にも戦闘力が53万ありそうな声の梟が飛んできそうで本当に嫌なんですけど。
「比企谷、君に奉仕活動を命じる」
「はあ……奉仕活動っすか……?」
「ふむ……平塚先生、奉仕活動とは具体的になにを?」
「まあ着いてきたまえ。そこで話そう」
席を立ち、案内しようとする平塚先生に、俺と二階堂は顔を見合わせてきょとん。と首を傾げるのだった。……やっぱり可愛いよな、二階堂って。
───
「此処だ」
「此処は、空き教室……?」
二階堂は不思議そうに、何も書かれていないプレートを見上げながら零す。
……どうやら生徒会の方ではここの事は知っていなかった様子である。
「入るぞ、
「……はあ、平塚先生。入る時はノックを……と、事前にお願いしていたはずですが?」
ノックもせずガラガラと扉を開けた平塚先生に部屋の奥から、呆れたような声が掛かる。
そちらに視線を向ければ。男であれば誰もが目を奪われてもおかしくないような美少女が座っていた。……いやまあ俺は見慣れているんだが。美少女には、訳あって。
「……彼女はたしか……
「……なんだ、知ってるのか二階堂?」
「ああ、学期テストで総合成績で2位の生徒だよ。それから……少し、家の事情で付き合いがあったことが」
「……マジか」
二階堂ってたしか、結構なお嬢様だったよな。家関係で付き合いがあるってことはあちらさんも相当なお嬢様なのでは? え、なにこれ、新手の罰ゲーム? 俺だけ場違いなんですけど。
「ノックしても返事をした試しがないだろう?」
「返事をする間もなく、平塚先生が入ってきているのですが」
平塚先生の言葉に少しため息を吐いたあとに、彼女はこちらに視線を向ける。
おお、本当に絵になる美少女って感じだな……ちょっとした仕草だけでも綺麗に見えるというやつだろう。蓮見でよく学んだ。
「……二階堂さん? それに、貴方は……たしか……比企谷くんね?」
こちらの名前をスパッと言い当ててきて、少し目を丸くする。なにこの人、【魔法】でも持ってるの? なんで俺のこと知ってんだよ、結構存在感隠してるはずなんだが。
「驚いた顔をしているわね。……でもこれは当然の帰結よ? 学年首位の成績の二階堂さんの隣によくいる男子生徒、となれば貴方しか居ないもの。そうでしょう、比企谷 八幡くん?」
【悲報】俺、二階堂のせいで存在バレバレだった。バレた理由お前かぁ〜……自慢のステルスが台無しになるぐらいには目立っていたらしい。くそう、あんまり目立ちたくないんだが。過去の黒歴史的には。
「なんだ。なにか文句でもあるのか、八幡」
「いや、なんにも。ただ、そんなに俺って二階堂の傍に居るイメージあるのか、って思って」
「あるわよかなり。巷では
「腰巾着て」
まあ、あながち間違いではないが。二階堂 ヒロという圧倒的強者の恩恵に肖っているのは事実なわけで。そこは否定できないだろう。牢屋敷でも使いぱっしりみたいなことやったしな。蓮見と一緒に。
……だってだいたいコイツが容疑者として疑われるんだもの。状況証拠だけ見ると。
「む、その噂は正しくないな。……少なくとも、八幡は腰巾着などではない。少し捻くれてこそいるが、いざという時には頼れる人物だ。他ならぬ私が保証できる」
「そうでしょうね。二階堂さんがそこまで信頼を置いている時点で、腰巾着などではないと私は理解しているつもりよ」
「……なんか俺の評価が分不相応なまでに上がってないか?」
俺別にそこまで有能ではないだろ。文系科目でならともかく。理系は完全に捨ててるし。それで二階堂に勉強を呆れられながら見てもらってたまである。
体力は……うん。牢屋敷での生活で身に染みたので最近は筋トレやジョギングをするように心掛けてるが。いやあ、証拠品を探したり脱出手段を探すのに必要な体力が本当になかったんだよな。蓮見や桜羽に心配された時は情けなくて涙が出てきたぐらいだった。ちなみに
「それで、平塚先生。何故この2人が此処に? 依頼、というわけではないでしょう?」
「ん? ああ。本題はこっちの比企谷のことでな。二階堂はただの付き添いだ」
「ども……」
「…………なるほど。その眼を治したいという話なら眼科に行くことを推奨するわ」
「ちげえよ」
ちげえよ。失礼だな何気に。というか眼科でどうにかさせようとすんな。俺の目は医者の世話にならないとダメなのかよ。
「冗談よ、特徴的な目をしていたからその線かと思いはしたけれどね」
「ちょっと頭に過ぎってんじゃねえか……」
「ああ、雪ノ下……依頼というわけじゃない。比企谷にはここに入部してもらおうと思ってな」
「「入部?」」
あ、二階堂と声が被った。
「って、入部ってなんすか。聞いてないんですが」
「言っただろう、現地で話すと。君にはペナルティとしてここでの部活動を命じる。異論反論抗議質問口応えは認めんぞ。あんな文章を書いたんだ。少しはここで頭を冷やすといい」
「お、横暴……!」
二階堂さん! これは所謂正しくない判定なのでは……!? と二階堂の方を見ると、複雑そうな顔をしながら視線を逸らされた。
……なん……だと……?
「……横暴なのはたしかに正しくはない。だが、元を辿れば君が妙なレポートを書いたのが原因だろう。その反省の機会を作ろうとしてくれているんだ。それを咎めることはできない」
「ぐう……」
ぐうの音も出ない。いや出たが。たしかに元を辿れば俺が悪いわけで、そのための場所を用意してくれているだけありがたい話なのだろう。……困った、ちょっと何も言い返せない。
「とまあ、品行方正の代表とも言える二階堂ですらこう言う始末な程に性根が腐っている捻くれ者だ。その上、人付き合いも苦手ときた。そこでだ、人との付き合い方を学ばせてやれば少しは真っ当になるだろうと思ってな。こいつを君のもとに置いてやってくれるか。この捻くれ者の更生が私から君へ出す
「それなら先生が躾れば良いのではないでしょうか」
「暴力反対」
「体罰を使った指導は正しくない」
俺と二階堂から非難の声が上がる。
「ご覧の通りだ。まあ、私も暴力で解決できるものでもないとは分かっているからな。昨今のご時世も考えれば尚更な。……それに、それ以上にワケありだ。比企谷はな。事情は話せんが、精神的な疾患に近しいものを抱えている。そこの二階堂もだ」
「……二階堂さんも、ですか?」
意外そうな顔で雪ノ下は二階堂の方に視線を向ける。
「ああ。だが詳しくは話せん。私も触りしか聞いていないからな。ともかく、そこを念頭に置いた上で、比企谷の更生を頼みたい。できるか?」
「……また、無理難題を押し付けましたね。かぐや姫ですか?」
「声だけで言えば君の方がそうだろう。それともあれか? 私にはいい男は巡ってこないと?」
たしかに。雪ノ下って某VTuberなアニメキャラにそっくりな声してるよな。今度ヤッチョとか言ってみて欲しい。
「そうは言っていませんが。……まあ、いいでしょう。なるべく努力してみます」
「そうかそうか、助かるぞ。雪ノ下!」
「はぁ……それで、比企谷くんだけでいいのですか?」
ちら、ともう一度雪ノ下が二階堂の方に視線を向ける。俺がそうなら、二階堂だってその対象じゃないか? といった様子だ。
「二階堂は生徒会などもあるからな。無理はさせられんだろう。それに、こちらと違って……自身の欠点を理解した上で向き合っている。更生などは必要ないはずだ」
「…………いえ、平塚先生。私も此処に入ろうかと」
平塚先生の言葉に二階堂が待ったを掛ける。
「む、何故だ? 二階堂には不要だと思っているが」
「たしかに。不要かもしれません。個人としては、ですが。……ですが、私は八幡……比企谷の欠点を理解していますし、それを矯正させるために付き添い続けた経験もあります。……そして何より、一度決めて、受け持ったことを放棄するのは
そう、二階堂 ヒロという少女はそういう人間だ。正しくないことは正すまできっちり付き添う。
「それに、生徒会と此方の両立は私ならできると思います」
「……ふむ。……そういう事なら構わんが、雪ノ下はどうだ?」
「そうですね……」
少し考えるような素振りを雪ノ下はみせる。俺と二階堂を交互に見返して。
「私は比企谷くんに関することを殆ど知り得ません。そういう意味でも、二階堂さんから色々と知れるのは依頼を熟す上では必要だと思います」
つまるところ。
「良いんだな?」
「ええ、二階堂さんが良いなら私が断る理由はないので」
「ありがとう。そういう事なら、八幡共々よろしく頼むよ」
雪ノ下に二階堂は頭を下げる。それを見ていた平塚先生が、ぱん。と手を叩く。
「よし、話は纏まったようだな。あとは若い君たちに任せよう」
「平塚先生、少し待ってください」
去ろうとした平塚先生に二階堂が引き留める。
「ん? どうした、二階堂?」
「いえ、入部届の書類を貰っていないので」
「おっと、そうだった。用意しておこう。ああ、提出も私に出してくれて構わん。一応、ここの顧問……ということになっているからな」
「……分かりました。では、後ほど」
これは……なんで用意してないんだ、と、自分から無茶を振ったので強くは指摘できないってところだろうか。俺も随分と二階堂のトリセツに詳しくなったものだ。だいたいは桜羽直伝だが。
そのままささっと帰った先生を見届けて。取り残された俺と二階堂、そして元からいた雪ノ下の生徒組だけになる。
うーん、静かだ。俺自身あんまり自ら話題を切り出すタイプではない。寧ろ、苦手な方だ。二階堂は……どっちとも言い難い。場を指揮するのは得意なタイプだが、自分から話題を切り出すタイプか、と言われると怪しい。そういうのは多分蓮見の方が上手い。そして雪ノ下も多分二階堂タイプ。場を指揮するのは多分すごく上手いが、話題を自ら切り出すタイプかと言われるとおそらく微妙だろう。
まあつまり、割とコミュニケーションに難アリ人間が3人揃えば……
「「「…………」」」
沈黙が続くのである。頼む蓮見。来てくれ。今だけはお前の喧しさが必要だ。
──そんなこと言ったら「どういう意味だい!?」って憤慨してきそうだが。
……仕方ない、心底嫌だが。ここは俺が話題を切り出すとしよう。
「あにょ──」
嘘だろおい。初手噛んだんだが。恥ずかしい。死にて〜!!!
「っ……く……」
おい、ぷるぷる震えるな二階堂。笑わないでくれます? さては、牢屋敷での自己紹介の事思い出したなお前? やめろよあれ黒歴史なんだから。
「……なにかしら、比企谷くん」
「あ、ああ。……いや、どうしたもんかと思ってな。更生しろなんぞ言われたが……ここがどういうことをする部活か何も聞かされてなくてな」
俺の言葉に、そういえば。と二階堂は笑いを呑み込んで思い出したような顔をする。
おいそれでいいのか二階堂。
「そうね……なら、ゲームでもしましょう」
「ゲーム?」
「そう、ここが何をする部活なのか当てるゲームよ。どうかしら」
ふむ。と俺は考える。
……推理はまあ、得意ではないが、できなくはない。俺自身の経験と言われると微妙だが、それでもあの地獄の裁判を何度も切り抜けた記憶はある。その時と同じように、状況と言葉から、答えを見出せばいい。
「他の部員は?」
「いないわね。貴方と二階堂さんが初めての新入部員よ」
それって部活として成り立ってなくない?
ちら、と二階堂の方に視線を向けると「職権乱用……?」なんて独りごちっている。
まずい、このままだと「処スノート」に記入が増えてしまう。
俺は処スノートへの記載が増えないことを祈りつつ、推理の輪を広げる。
「文芸系……ではないよな?」
「どうしてそう思ったのかしら」
「単純な話だ。文芸系であれ、運動系であれ。必ず必要な道具がある。だが、この教室にはソレがない。……強いてあるなら、この椅子と長机。そんでお茶用のティーポットと紙コップだ。それじゃあ普通の部活じゃないってのは言い切ってるようなもんだろ」
「続けて」
「そんで、何をする部活か。だ。つまりただのんべりだらりとする場所じゃないってのは明確だ、あの平塚先生だからな。そういう怠惰なもんを許すとも思わん」
意外と厳格な人だ。折衷案を出したりしてくれる人ではあるが……サボるためだけの部活なんぞ許す人じゃない。それぐらいは俺レベルの人間観察があれば理解できる。
それを聞いて雪ノ下は続きを促すように視線を送る。
「……で、俺に更生しろ。と先生は言った。つまり社会経験を積めってことだろ。ってことは社会のためになる何かをする場所である。ってのは分かる。わざわざ【依頼】なんて形で、雪ノ下に俺を託すぐらいだからな」
その上、奉仕活動を命じてきた。つまり、本質はそこだろう。社会のための奉仕活動。即ちボランティア。それを行う場所。二階堂には不要、と言ったのもそれが理由だろ。……何故かって? 二階堂の場合誰かが何かを言う前に既に率先してボランティアを行っているタイプだからである。ノブレス・オブリージュを体現した少女である。
「ん〜……まあ、その辺の推察も含めればだ。ボランティアをする部活動。安直だが、ボランティア部。ってところか?」
俺の確信めいた言葉に、少し驚いた様子を見せる雪ノ下。
これは……正解を引けた、か?
「……不正解。ただし100点満点中の90点ってところね」
「それは正解でいいだろ……」
頑張ったで賞で正解で良くない? 判定厳しくない? 二階堂かよ。もしくはガバガバの判断基準で黒幕扱いしてくる
「とはいえ驚いたわ。ここまで正確に状況と発言に残った証拠だけで正解に近いところまで持っていけるのは。貴方、探偵をやっていたりしたのかしら」
「勘弁してくれ、あんな怪力女にはなりたくねえよ」
「……怪力女……?」
何言ってんだこいつ、という顔で雪ノ下は此方を見つめてくる。
二階堂は二階堂で心当たりがあるからかああ……とちょっと遠い目をしている。
俺と二階堂にとっては探偵といえば、
さすがにあれと比べられるのは勘弁願いたい、マジで。
「いやこっちの話……まあ、探偵ではないが、推理は得意な方だ、色々あってな。……つっても、俺のなんちゃって推理よりは、多分二階堂の方が本格的だろうが」
「……まあ、そうだな。自負できるかは分からないが、できる方ではある、と思っている」
なあ? と俺が二階堂に話を振ると、二階堂は静かに頷いた。
もっと自信持っていいのよ。お前と桜羽の推理がなけりゃ俺たちは地球の80億という総人口と共に死んでたんだから。世界を救う推理をやってのけたんだから誇っていいぐらいだ。……まあ、その結果が親友の1人を失う羽目になったのだから、誇れるものではないのだろうが。
「そうなのね。……話が逸れたから本題に戻すわ。比企谷くんの推理は殆ど正解。名前が奉仕部というものであるだけ。主な活動は貴方の予想通り、ボランティアといって差し支えないわ」
奉仕部か。なんかいかがわしいな。
「──いッ!?」
「…………」
そんな俺の考えを見抜いていたのか、脇腹を抓ってジト目で二階堂が睨んでいた。すまんて。だって名前がさぁ……!
「ただし、少しだけ違うことがある」
「違うこと?」
「ええ。ここでの奉仕活動は釣った魚を与えるわけじゃない。釣り方を教えるの。言い換えれば、自立を促すためのボランティアよ」
「……なるほど」
つまり、ただ餌をやってぽい。ではなく、餌の取り方を教えると。そして自分で餌を取れるようになるまでを見届ける。それがこの奉仕部の活動指針であると。
「……二階堂みてえな部活だな」
「どういう意味だ、八幡」
「いやだって、ねえ?」
今まで二階堂がやってきていたことと変わらないからだ。城ケ崎や桜羽に対して見せた面倒見の良さというか。自分が面倒を見なくても大丈夫になるまでは付き添う二階堂の行動指針にこの部活はよく似ているのである。
「まあ、そうね。私が知る二階堂さんのやり方とよく似ている方ではあるかしら。
……例えば球技で手助けをするのも、助っ人として参戦するのではなく、元からいるレギュラーの選手や補欠の選手にコツを伝授することを主目的とする。そういう方法」
「私はそんなふうに見られているのか……」
「少なくとも俺はそう見てるな。でなきゃ俺に対してこんな付き添わんだろ、二階堂は」
「………………むう」
「……なるほど。これは確かに難敵ね。あの二階堂さんが傍に居てこれとは、先が思いやられるわ」
「おい、勝手に納得すんな」
二階堂の態度を見て、なにかに合点が行ったようで雪ノ下は苦労するわね。なんて二階堂に話しかけている。何に納得したんだよ。
「貴方が捻くれ者である、ということよ。……ここまで拗らせる人は珍しいわ」
「……うるせ、余計なお世話だ」
俺にも俺の【
「……まあ、それも含めて要検討ね。貴方の更生にはきっと必要なことだもの」
「誰も更生させてくれ、とは頼んでないんだが」
「あら、じゃあ貴方は二階堂さんの善意を踏み躙ると?」
「それは……」
これまで、友人として付き添いながらも面と向かって対話してくれた少女の善意を蔑ろにするのか、と。そう雪ノ下に問い詰められて俺は押し黙る。返しきれない恩すら仇にして返すのか。それは、できることならしたくない。……二階堂にとっては好きにやっていることだとしても、俺に割いたその全てを無にするのは俺自身が納得できないからだ。
「……分かった。降参だ。大人しくその更生とやらを甘んじて受ける。二階堂にも付き合わせてる以上はな」
「よろしい。1歩前進ね? 捻くれてばかりじゃ解決しないと分かったでしょう?」
「……へいへい、全くもってその通りで」
「八幡、いいのか?」
「……ん。まあ、二階堂には返しきれない恩があるのは事実だしな。恩返しの一環だと思っておく」
珍しく不安そうな顔をする二階堂に、俺はそうぼやく。
……まあ、二階堂にとっては俺の地雷に踏み込むのは躊躇していることなのだろう。あの時はそうしなければいけない状況で、必要だったから、自身の信条をねじ曲げてでも全員のトラウマに踏み込んで、その心の傷を抉って開いた。
……傷口を開く行為は正しくない。普段の二階堂ならそう考えるはずだ。だからこそ、全てが終わって以降は深くは踏み込まなかった。そういうことだ。彼処に居たヤツは大半が意外とタフで。トラウマを抉られてなお、前を向いて歩ける人間だった。けれど、俺だけはそうでもなくて。……きっと何処か測りかねていたんだろう。好意を向けながらも、どう接したらいいか分からないが故の、この距離感だったのだから。
「まあ、いい加減向き合う時なのかもな。……色々と」
ぽりぽり、とどうしたもんかなあ。と頭を搔く。俺には人付き合いというものが分からない。求めている物も、よく分からない。……その答えを探すには、きっとちょうど良かったのかもしれない。
「邪魔するぞ、雪ノ下」
「……ノックを」
「悪い悪い。入部届を持ってくるついでに様子を見に……どうした、この空気は」
ほんのりと、しんみりしていた空気に気付いたのか。先生が2枚の入部届を持ったまま何事かとこちらを見つめる。
まあ、色々ありまして。と適度に誤魔化しておくことにする。
「まあ、なんだ。それなりに仲良くやっているようで何よりだ。比企谷も二階堂もしっかり入部届に記入しておけ。既にここが何をする場所か分かっているなら、薄々気づいているだろう? 内申点は結構つくぞ? 貢献度次第だがな」
この人内申点を餌にしてきたんだが。いやまあ、ボランティアといえば内申点の法則はありますけども。……まあ大人しく記入しとくか。幽霊部員にでもなっておけば……無理か、絶対二階堂が正しくない。で一蹴するよな、そんなことすると。
そんで牢屋敷のグループトークで愚痴られて俺が全員からないわーって罵倒されるまである。泣いちゃう。
いやまあ多分そういう事するとしたら沢渡ぐらいで、他の奴らはしないだろうが。橘がマジレスしてきて反省させられる、はありそうだけど。
「それで、どうだ雪ノ下。比企谷は? なかなか面白いやつだろう?」
「そうですね。自覚はしている。……けれどそれに向き合う度胸がないヘタレ、という所でしょうか」
「おいこら」
誰がヘタレだこら。え? 好意をなあなあで流してる時点でヘタレだって? 黙らっしゃい。
「逆に、二階堂さんは既に私も多少知っているので、あまり口に出すものはありませんね。……強いて言うのでしたら、以前よりは色々と雰囲気が丸くなった、と言うべきでしょうか。棘のようなものがなくなったような」
「そうだろうか……?」
「ええ、昔の貴女だったらきっともっと噛み付いてきていたわ」
「あ〜……それは分かるかもしれん。俺が知り合った頃はそんな感じだった」
「でしょう?」
記憶の限りでは、だが。あの牢屋敷での生活が良くも悪くも俺たちに影響を与えていたのだろう。最初の頃と今を比べると、二階堂はだいぶ丸くなったものだ。本当に。
「……そんなに頑固者だったか。私は」
あ、ちょっと落ち込んでる。……いやまあ、頑固者ではあったよ、うん。桜羽への態度とか。ちょっとこっちが見てられなかったもの。
「まあ、色々あったんだよ、二階堂にも。……俺も、だが。その色々ってやつがなければ、お前とも多分もうちょい口喧嘩になってたと思う」
「……そう」
少し驚いたように、雪ノ下はこちらを見てくる。実際あの一件がなければもうちょっと捻くれ度合いが酷かったんじゃなかろうか、目の腐り具合も含めて。本当に良くも悪くも、あの牢屋敷の中での出来事が俺を変えたんだとは思う、変わってない情けない部分もありはするが。
「ふむ、仲も深まったようで安心だ。互いに主張を認め合わないようなことがあればバトル形式もやむを得ない……と言うつもりだったが。どうやらそうはならなかったようだな」
「なにさせる気だったんすか」
「此処に相談に来る者たちを君たちなりに導いて救い、そこで自身の主義主張を認めさせてみろ。とでも言うつもりだったよ。そうはならなかったようだがな」
意外と普通のバトルだった。ボランティア活動らしいバトルと言うべきか。
……まあ、【魔法】なんて非現実的なものを使ってた俺が言うことでもないだろうが。【魔法】ありバトル形式なら
……二階堂や黒部も手の内を理解できるって意味じゃ強いか?
おっと、話題が逸れた。
「ともかくだ。比企谷。……ここでなら、お前が探しているものも見つかるかもしれんぞ?」
「───」
まるで見透かしてるように、この教師は口にする。俺の探しているもの。
──それは手に入るのだろうか。二階堂と雪ノ下の方を交互に見て、俺はほんの少しの期待を覚えていたのは……きっと、気のせいではなかったのだろう。
比企谷 八幡
お馴染み俺ガイルの主人公。
拙作に置いてはぼっちをあまり自称しない。
何故なら友人がいるので。12人ほど。
牢屋敷の1件で少し成長したが本質は変わっていない。
なのでちょっとマイルドなだけ。
使っていた魔法は【存在抹消】
二階堂 ヒロ
まのさば側の主要メンバーの1人。
学年首位の超が付くほどの優等生。
トゥルーエンド後なので色々と丸くなっている。
本来なら雪ノ下雪乃同様のJ組、国際教養科だったが
牢屋敷の1件があったので八幡と同じF組になった。
牢屋敷ではよく八幡が助手側として
手を貸してくれていたこともありかなり心を許している。
どころか好意を隠していない。
八幡の矯正の為に日々頑張っているらしい。
使っていた魔法は【⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎】
雪ノ下 雪乃
俺ガイル側のメインヒロイン。
二階堂ヒロがお嬢様らしいので
幼い頃から少し付き合いがある設定が増えた。それぐらい。
ヒロがいること、八幡本人がマイルドなため
そこまで辛辣にはなっていない。