僕(ウマ娘♀)がヤンデレウマ娘に愛され過ぎて眠れない 作:あばなたらたやた
「……少し、味が濃いでしょうか。それとも、薄いほうが……」
あれ、ここって僕の家だよね?
「昨日は、少し疲れていらっしゃいましたから……食べやすいものがいいと思ったのですけれど。栄養も、大切ですし……でも、身体にいいものばかりでは、つまらないですよね」
昨日一緒に帰って、僕の家についてきてもらって、スティルは自分の家に戻ったよね?
「卵焼きは……甘いものと、出汁の利いたもの。どちらがお好きかわからなくて、両方作ってしまいました……ふふ。欲張りですね、私……おいしいと、思っていただけるでしょうか」
まぁ、美味しいとは思うけど、何度も食べさせてもらったからさ
「もし、お口に合わなかったら……いえ、そんなことを考えてはいけませんね。せっかく作ったのですから、自信を持たなくては……あなたが蓋を開けて、少し驚いて……それから、ひとくち召し上がって…………おいしい、と。そう言ってくださったら……」
事実は置いておいて、美味しいしか言えないと思うんだ。目覚めて起きたら当然のように家にいて、料理作ってるなんて。
材料も持ち込んできたの?
「……ふふ。いけませんね。まだ召し上がってもいないのに、そんなことばかり考えてしまいます。でも……あなたのお好きなものを考えるのは、楽しいのです。何を召し上がったら喜んでくださるのか。何を入れたら、明日も頑張ろうと思ってくださるのか……」
気持ちは嬉しいんだけどね、怖すぎて僕はベットから出れないよ。独り言を言いながら料理作る君の姿はホラーだよ。
「……明日は、何を作りましょう」
明日も来るんだ。
「明後日は……その次の日は……」
長く続くのこれ?
「毎日、あなたにお弁当を作れたら……毎日、おいしいと言っていただけたら……あら、私ったら……召し上がっていただくことばかり考えて、自分の分を忘れてしまいました。もし一緒に食べようと言ってくださるなら……明日は、二人分、作りましょうか」
うーん、一人で食べたいかな。
「あとは、彩りでしょうか。赤と黄色と緑……うん、これなら、蓋を開けたときにも綺麗に見えるはずです。あまり綺麗に詰めすぎても、食べにくくなってしまいますね。あなたが箸を伸ばしやすいように……こちらを少し、ずらして……」
努力家で誠実なのは良いんだけど、フルスロットルすぎるんだ、君は。
「ふふ……お弁当ひとつで、こんなに悩んでしまうなんて。でも、仕方ありませんよね。だって……先輩に食べていただくものですから。この煮物、少しだけ味見をしたほうがいいでしょうか。いえ、先ほども味見をしましたけれど……冷めると、味の感じ方も変わると聞きますし」
家庭的で素敵だけど、その前にやる過程あるんだよ、スティル。
「……大丈夫、でしょうか」
大丈夫ではないです。
「……本当は、少し怖いのです」
僕も怖いよ。
「先輩は、きっと……おいしくなくても、優しい言葉をかけてくださるでしょう? 私が一生懸命作ったことを知っていたら、なおさら……だから、ちゃんと知りたいのです。先輩が本当においしいと思ってくださったのか。それとも、私を喜ばせようとしてくださったのか……なんて。困らせてしまいますね、こんなこと」
困ってるよ。
「あなたに喜んでほしくて作ったのに、あなたを困らせてしまったら……本末転倒です。でも、もし……本当においしいと思ってくださったら。そのときは……もう一度、作ってもいいでしょうか。いえ。一度だけでは、足りませんね」
うーん、ううううん、うん?
「あなたのお好きな味を覚えて、少しずつ上手になって……今日は卵焼き、明日は煮物、その次は……あなたが以前、おいしいとおっしゃっていた、あのお料理も。ふふ。考えるだけで、楽しみになってしまいます。けれど……毎日では、飽きてしまうでしょうか。毎日同じ人が作ったお弁当なんて……」
いや、そっちではない。飽きるとしたら人ではなく弁当の内容では?
「……いえ。そういうことでは、ありません。先輩がどう思うかは、先輩に聞いてみなければわからないのですから。私が勝手に決めてしまってはいけません」
お。
「ちゃんと、尋ねましょう。明日も食べたいと思ってくださいますか、と」
スティル! スティル! スティル!! 良いぞ!! そう!! そういう感じ!!
「少し恥ずかしいですね。でも、あなたが『また食べたい』とおっしゃってくださったら……私、きっと……とても嬉しいのだと思います」
ん? んん?
「……ううん。きっと、ではありませんね。とても、嬉しいです。ああ、お弁当を渡してもいないのにこんな。早く、起きてお弁当渡したいです」
…………スティルインラブ、本当に愛情深いウマ娘だよ、君は!!
「おはよう。スティルと朝を迎えられるなんていい朝だ」