魔法少女まどか☆マギカ 廻天の残響   作:ATARU 2025

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なぎさが見せたのが「スターウォーズ」だったらまた違ったのかもしれません。










第二十五話 ワルプルギスの夜が来ない

「ターゲットスコープオープン!

因果応砲! 発射用意!」

 

「目標、敵母艦。」

 

「因果エネルギー注入開始!」

 

戦艦の艦首。そこにつけられたピエロの仮面が大きく口を開く。

 

「エネルギー注入80⋯90……100……120」

 

インキュベーターの先遣艦隊が突撃隊系をとった。

ひと回り大きな艦からは、人型の機動兵器が次々と射出される。

 

「因果応砲発射っ!……なのです!」

 

「ティロ・フィナーレ!!」

 

カチリ。

 

船首のピエロの仮面の口のなかが光った。

 

発射されたのは、それがこの宇宙に存在することそのものを否定するエネルギーの放流。

 

突撃隊系をとっていた艦隊がまず、その不条理の渦に巻き込まれた。

 

強靭なシールドも船体を構成する超金属も。

一瞬ののちには、バラバラになって消えていく。

そのまま、エネルギーは母艦に突き刺さった。

 

インキュベーターたちの視点から見ても十分な防御力と質量をもった機動要塞を、歪んだ因果が推し包んだ。

 

 

「むちゃくちゃだよ」

白い獣はふるふると首を振った。

「たしかに彼女たちのもっているのは魔法の力だ。たんなる物理現象ならいくらでもねじ曲げることができる。だがそれはそのことをイメージできてこそ、のはずだ。なぜ、宇宙艦隊を消滅させるような力を想像できたんだ?」

 

「プリュ、ヤ!」

 

母艦が。

直径6000キロはある球体が。

大きくえぐれていた。

 

内部の機構がむき出しになっている。そここで、光が点滅するのは、爆発だ。

 

「だけど、いくらなんでも連射は出来ないよね?」

 

インキュベーターは、言った。

 

「母艦を後退させよう。母艦にはこのまま、衛星軌道上に留まって、この先も人類を監視する役目がある。ここで失うわけにはいかないよ。

第一打撃群、遊撃空母第二、第三艦隊へ。あの船を沈めてしまうんだ。」

 

母艦の両脇に展開していた艦隊が動き出す。

 

 

 

「みんな!」

なぎさは叫んだ

「準備はいいのですか?」

 

「……御心のままに」

「うん、がんばるよ!」

「まかしとけって!」

「準備、できてる」

「いっちょ派手にいくぜえ!」

 

砲塔をそなえた巨艦の群れが、迫る。

 

その主砲が発射された。

 

いかなる金属でも。

 

そのまえには無力。そのように計算されていた……はずだった。

 

たが、そのビームは船体に達する前に、弾かれて、向きを変えた。

 

「セルマのバッチワークなのです!」

艦橋でツインテがはしゃいでいる。

「セルマのパッチワークは次元の抜け道だって塞げるのですよ!」

 

 

「各員、発進どうぞ、なのです。」

 

艦橋のなぎさが言った。

 

コクピットで黒いロングヘアの少女が呟く。

「暁美ほむら……ホムリリィ出るわ!」

 

青髪のショートヘアーの少女はもっと戦闘的だった。

「美樹さやか! オクタヴィア、発進するよ!」

 

「すべてに弱き者に救いを。悪しきものに神の鉄鎚を……我らこそ神の意志の地上代行者。我は神の雷、神の銃剣なり、エエエエイッメン!!」

縦ロールの美少女は、焦点の合わない目をしていた。

いったん挫けたマミは、なかなかもとに戻らなかった。いつもは懸命に、気丈に『先輩』を演じている彼女は、むしろ魔法少女のなかでもとりわけ、繊細な心をもっていたのかもしれない。

 

“マミにだけ特別コースを観てもらったのです”

なぎさはうなった。

“完全に効きすぎているのです!”

 

「いくついるんだよっ!」

杏子はコクピットで叫んでいる。

モニターの光点は、敵を表しているのだろうがそれが、周り全てを埋めつくしていた。

 

「数えるよりも暴れろっ、なのです!」

なぎさが返した。

 

「そりゃもちろん!そうするが……ソウルジェムが限界がきたら……」

 

「そうですね。円環の理が不完全のこの時間軸では、みんな魔女になるしかないのです。」

なきざの答えは冷淡だ。

「でも魔女の姿は、もうあなたたちの乗る機動兵器に与えてあるのです。たとえ魔女化してもそれは、杏子が機動兵器と一体化するだけなのです。」

 

杏子は顔を顰めて、なきさの言葉を反芻する────

それはそれでろくでもないような気がしたが、その気分を押し殺した、

 

「わからねえなっ。でもいいや、とにかく暴れればいいんだよなっ!?」

手袋に包まれた手が、レバーを握った。

「佐倉杏子、オフィーリア、出るぜ」

 

「まどかは無理をしたらダメなのです。」

念のため、なぎさはまどかに釘をさした。

「その姿を失えば、まどかは円環の理に還元されるのです。宇宙はあるべき姿に戻るのですが──」

それならそれで。

しかたの無いことではあるのだが。

「なぎさはもっとチーズケーキが食べたいのです。マミにかわいがってもらって、みんなと遊ぶのです!」

 

「わかったわ、なぎさちゃん。

わたし、がんばるね。

────鹿目まどか、クリムヒルト・グレートヒェン、いっきまーす!」

 

 

どこかデザインに禍々しさを残す魔法少女たちの機動兵器だが。

まどかの機動兵器だけは、凛々しい甲冑武者を思わせるわりとシンプルな装甲だ。

カラーも白を基調に、ピンクやブルーのラインがあしらわれている。

 

「なあに、アレ!」

セルマがモニターに映るクリムヒルトを眺めながら、バカにしたように言った。

「主人公機……ってやつ? あんまり強そうには見えないよねえ?」

 

「本来のクリムヒルト・グレートヒェンのサイズでは。この船に乗らないのです。」

なぎさは言い返した。

「それに本来、クリムヒルト・グレートヒェンは無差別の救済を目的とする魔女なのです。そのまま顕在させたら、わたしたちまでマズいのです。」

 

「あなたはもともと円環の理に導かれたものじゃない?

もといたところに帰るだけじゃないの?」

 

「セルマ……また傷がほしいのですか?」

なぎさがチラリと見せた刃物に、セルマのかおいろはみるみる青くなった。

「なぎさは、この世界が好きなのです。

何回も何回も。暁美ほむらが好き勝手したおかげでたどりついたこの世界が」

 

「セ、セルマも」

言いにくいことを告白するように、視線をそらせながらセルマも、言った。

「役たたずでも笑っててくれるバカなセルマでいい……って言ってくれたあんたと一緒にいたいよ。」

 

「ならば! がんばるのです!」

 

 

 

先行するほむらのホムリリィの傍を、ビームの火線が走り抜けた。

先頭の機動兵器は、十機。

まずはアレを潰そう。

 

「美樹さやか。接近戦はまかせるわ。」

ホムリリィが加速する!

 

放たれるビームを巧みな機動でかわしていく。

 

「無茶すんなっ! 暁美ほむら!」

さやかもオクタヴィアを加速させた。

 

「わたしはどうなってもいい。」

加速するホムリリィから広がる光の粒子がヴェールのようにひろがる。集中して放たれるビームをそのヴェールが弾いた。

さらにリボンのようなものが、延び、のたくり。

相手のモビルスーツを切断する。

「だから、あなたはまどかを守って!」

 

「ばか言うな!」

さやかは、ビームをオクタヴィアの剣で払い除けた。

そのまま突っ込んで、すれ違いざまに一輝を両断する。

「ひとりぼっちになっちゃダメだって!

あのときまどかに言われただろ!」

 

オクタヴィアは、銛を投擲した。

次の機動兵器を発信させつつある敵の空母。そのカタパルトから艦橋へ、斜めに銛は貫通する。

 

 

 

「いつも! いつだって!

おまえはまどかの名前を呼んでやれ! 世界中が忘れても、おまえだけは、まどかを覚えてやるんだよ!

だって……おまえは、世界にたったひとりの……悪魔なんだろう!ֶ」

 

敵の人型機動兵器が、剣を振りかざして殺到する。

その数、四機。

魔女とも魔獣とも違う。宇宙空間での動き。

だが、さやかの剣は誰よりも疾い。だれよりも鋭い。

次々と爆散する敵機動兵器。

 

その爆発はもらたすエネルギーの火球をかいくぐり、さやかは叫ぶ。

 

「だから、まどかを決して離すな!」

 

投げつけた銛は、もう1隻の空母を船首から船尾まで貫通した。

 

 

 

「おい! マミ! マミさん!」

杏子は叫ぶ。

 

別に人型機動兵器の戦いなんて、知ってるわけがない。とはいえ、杏子はそっちの方もきらいではなかったので、ほむらのうちで見せられた「資料」はけっこう履修済みのものも多かったのだ。

 

だからわかる。

 

正気を失って吶喊していくのは、死亡フラグだ。

 

「ダメだってば。」

 

マミの人型機動兵器は、白と金を基調にしている。背中には光輪のように銃が円を描くように装備されている。

 

その目は、金色の輝きを帯び。

口元には笑みが浮かぶ。

 

魔法少女たちにふさわしい「戦いの姿」を揃えるのに、なぎさとセルマはもう一度、名塚底根に潜り、各自の有り得たかも知れない魔女の名前とその記憶を持ち出してきたのだ。

 

ちなみに、杏子のオフィーリアは、ケンタウロスを思わせる人馬一体のスタイルだ。

なぜか、マミの分だけは「魔女」ではなく、「もっとヤバい記録」があったとかでそれを持ってきていたのだが。

 

「まどか! 船の守りをまかせてもいいか?」

 

「うん! がんばってみるよ、杏子ちゃん。お願いだから無茶はしないでね。」

 

 

***********

 

「我は己に問う

汝は何ぞや!!」

 

「我は巴マミ。

見滝原の魔法少女なり!!」

 

「ならば巴マミよ

我は己に問う

汝の右手に持つ物は何ぞや!!」

 

「マスケット銃と弾丸なり!!」

 

「ならば巴マミよ!

汝らの左手に持つ物は何ぞや!!」

 

「紅茶セットとリボンなり!!」

 

「ならば!!」

 

マミが突っ込んでいくのは、ひと際大きくて頑丈そうな船団だ。

ほむらとさやかが向かった船団のように、人型機動兵器を送り出してはこない。

 

その艦体そのものに備わった武器で、

回転砲塔から吐き出されるビームが、マミの機動兵器を襲う。

展開した金色の粒子の翼が、それを弾く。

完全には防げてはいない。

 

「ならば巴マミよ

汝何ぞや!!」

 

「我は魔法少女にして魔法少女にあらず

聖女にして聖女にあらず

魔女にして魔女にあらず

我ら死徒なり

ただ伏して御主に許しを請い

ただ伏して御主の敵を

打ち倒す者なり

闇夜に銃を振るい

夕餉に毒を盛る者なり

我は神の雷なり

見滝原のマミなり!!

時来たらば我、名塚底根へと下り

隊伍を組みて布陣を布き

七百四十万五千九百二十六の魔女と合戦所望するなり

 

イエエエエエメンッ!!」

 

 

 

********

 

 

 

「何を見せたの?」

セルマが、なぎさを引きつった顔で振り返った。

 

 

 

 

 

 

 

 




次回、「夜来る」
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