魔法少女まどか☆マギカ 廻天の残響   作:ATARU 2025

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天と地。光と闇。
すべてが逆転する。








第二十八話 廻天のワルプルギス

マルグリート。

そう呼ばれた少女はにっこりと微笑んだ。

顔立ちは、ほむらちゃんそっくりなんだけど。

 

まどかは思った。

 

ほむらちゃんもこんな風に笑ってくれればいいのに。

 

マルグリートが立ち上がる。

噴水の中に寝込んでいたのだから、服も髪もびしょびしょだ。

 

ブルっと身震いをするのと、コートから水が弾けた。

そのまま、まどかに向かって歩く。

 

マルグリートの手が伸びた。

 

ぐい。

と、まどかの下唇をひっぱる。

歯茎の色をみて、満足そうに微笑む。

 

「な、なに!?」

 

「ごめんなさい。癖ですわ。 健康状態をみるのに、歯と歯茎を見るのがいちばんいいので……」

 

「そうなの?」

 

「修道院で飼ってた羊や山羊にはみんなそうしていましたわ…人間にもついしてしまうのはわたくしだけですけど。」

 

「マルグリートさんは昔のひとなの?」

 

「そうですね……」

難しい質問を受けたように、マルグリートは眉間に皺を寄せた。

「わたくしはわたくしと言うものを忘れてしまって久しいのです。あなたに名前を呼ばれるまでわたくしは…いえ、わたくしたちは救いを求めてさ迷っていたような気がします。

もうずっと。」

 

「うん、大丈夫。」

まどかも微笑んで、マルグリートの手を取った。

「もう大丈夫だよ。わたしがいるから!」

 

マルグリートは困ったような顔をした。

「でも、あなたがここにいるということは、円環の理が不完全だということを意味します。」

 

「それは……」

 

 

「まどかっ!!」

突っ込んできたのは、ホムリリイだった。

さすがに、ホムリリィの武器で、マルグリートを攻撃すれば、まどかも巻き添えにしてしまうことは判断できたのだろう。

ぶつかる様な勢いで、ホムリリィを着地させると、そのままの勢いで、ほむらはコックビットから飛び出した。

 

「そいつとの戯言はやめて!!」

 

盾の内側から取り出した拳銃は、S&W M29。

少女の手には、明らかにゴツすぎる代物だった。

 

「ダメだよ! ほむらちゃ……」

 

ほむらは躊躇わす、引き金を引いた。

 

マルグリートの赤い瞳が、自分に迫るマグナム弾を凝視する。

 

ガキイイイイイッ!!

 

すんでのところで、銃弾は槍の穂先に弾かれた。

槍を握った杏子が叫ぶ!

「暁美ほむらっ!!

まず話を聞けえっ!」

 

ずウウん!

 

重い音が、ワルプルギスを揺さぶる。

杏子のオフィーリアが着地。というか墜落した音だ。

杏子自身は、オフィーリアの着地を待たずに、コクピットから飛び降りて、ほむらとマルグリートの間に割って入っている。

 

たかが槍の穂先で44マグナムを弾き飛ばしたのは、魔法少女ならでは、だろう。

 

続いて、美樹さやかのオクタヴィアが。

巴マミのディ・ハイリゲが続いて着地する。

 

「まどかっ!」

「鹿目さん!?」

 

コクピットが開いて、ふたりが飛び降りた。

 

マミのマスケット銃の銃口は。

さやかの剣の切っ先は。

杏子の槍の穂先は。

 

ほむらを向いていた。

 

そしてまどかは、マルグリートを護るようにその前に立ちはだかっていた。

 

なんでこうなる?

 

ほむらが泣きそうな顔をした。

 

 

**********

 

「ワルプルギスの夜が、敵対行動にでないっ!?」

インキュベーターの赤い瞳がまたたいている。

そいつがこの生き物の狼狽を表すものだ────ということを、なぎさもセルマもわかっていた。

 

「はい、そうですよ。」

なぎさはしゃあしゃあと答えた。

「魔女になりかかった魔法少女たちを救済してたのは、円環の理というシステムではなく、鹿目まどかという女の子だったのです。

『前回』でワルプルギスの夜はそれを完全に理解したのです。」

 

「ブリャ!」

 

「はい、そうですよ、グレーダー。

ワルプルギスの夜は敵ではなくなったのです。これで、約束は果たしたのです。

あなたたちの『艦隊』は引き下がるしかないのです。」

 

あとは。

 

なぎさは艦橋のメインスクリーンを見やった。

グレーダーの母艦。

月ほどもある巨大な球体が、移動をはじめていた。

 

あとはあれを始末すれば!!

 

 

*************

 

 

 

マルグリートは、ほむらに向かって近づいた。

手を伸ばして。

 

ぐい。

 

下唇を押し下げる。

 

「……タンパク質と鉄分が不足していますわ、暁美ほむら。」

姉が妹を気遣うような口調で、マルグリートはそう言った。

たしかにそっくり顔をしたマルグリートとほむらは姉妹に見えないこともない。

「マルグリート特製の山羊の乳のオートミールでも食べさせたいところだけど

……残念。いまは時間が無いわ。」

 

その指が高く上がり、天空を指さした。

そこには再び前進をはじめた球体。

グレーダーの母艦があった。

 

「あれが地球への落下軌道に入っている。あれを止めない限り、また時は巻き戻る。」

 

 

**********

 

 

「因果応砲をパワーアップさせる!?」

 

艦橋に戻った杏子たちは、なぎさの発言に驚いた。

 

「いいですか? こんなときにはこう言うのです。

『こんなこともあろうかと思って』

さん、ハイッ!」

 

「「「「こんなこともあろうかと思って」」」」

 

「……まあ、ウソなのですが」

 

椅子からコケる。口に含んだジュースを吐き出す。振り向こうとしたとたんに肘をぶつける。

思い思いのリアクションをとる魔法少女たちを、なぎさは満足げに見つめた。

 

「実際には、マミのマスケット銃に過負荷をかける手段を参考にしたのです。この船にいくら負担をかけてもいいのなら、さらに因果律をめちゃめちゃにねじ曲げることも可能なのです。

天体一個をなかったことにするくらい。」

 

「……でもそうしたらこの船は?」

 

杏子がおそるおそる尋ねた。

 

「ぶっ壊れるのです。ですが、みんなはそれぞれの機動兵器で脱出すればよいのです。」

 

「あんたはどうすんのさ!」

さやかが怒ったように言った。

 

「この戦艦はなぎさの思念で出来ているのです。ぶっ壊れても再生します。脱出するくらいの時間はかせげるのです。」

 

なぎさはちらりと時計を見た。

 

「調整に少し時間がかかるのです。30分後にここに集合するのです。」

 

 

 

 

 




今回、短めです。
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