後、いろいろ設定おかしいかもですが許してください。
2004年 イギリス ロンドン
「久しいなウェイバー」
「ええ、お久しぶりです。しかし、貴方からの用事とは珍しいですね。レナードさん」
イギリス、ロンドンのマンションの一室。
時計塔と呼ばれる魔術組織の12の君主の一人、ロード・エルメロイⅡ世はかつての第4次聖杯戦争を戦ったレナード・ルシュコフを訪ねていた。
「今日はいつもの嬢ちゃんはいないのか……。まあ、いない方がいいな」
「いない方がいいとは?」
「たまの休日くらい、血生臭い話から無縁の生活を送ってほしいという若者への老人からのささやかな願いさ」
老人、そういうには十分すぎる年齢を重ねているはずの男は未だ、20代半ばのような雰囲気をしていた。
しかし、老人は二度の大戦を生き抜き、聖杯戦争に参加してなお、生き残っている猛者であった。
ただまあ、身分が高いものが一人で行動するのはいただけないがな、とでも言うかのような視線でレナードはエルメロイを見つめる。
「なあに、そんな心配そうな顔をするなって。ただ、俺の昔話を聞いてほしいのさ。俺の最初で最後の恋の話をな」
それだけ言うとレナードは語り始める。
***
約100年程前
ロシア サンクトペテルブルク
この頃、俺はとある国の皇族に仕えていた。
まあ、場所から分かるようにロシア帝国だがな。
その日も、いつも通り仕事に励んでいた。
「全く、レナードもそう思うだろ?」
「何がだ、無駄話をしてないで手を動かせ。手を」
「そんな、怒んなって、せっかく、親衛隊に入れたっていうのに、毎日毎日、掃除ばかり、訓練の時間も取れやしねえ。ああ~、皇女様。今日も麗しいって感じで皇女様といい感じの仲になって、皇女様と結ばれて、晴れて皇族の仲間入りって言うのが俺の夢なのに」
この冗談のようなことを本気で言っている男はサミュエル・アシモフ。
俺の同期で幼馴染だ。
「どちらにせよ、仕事もこなさん阿呆に惚れる女などいないと思うが」
「さっきからひどくね?レナード!離れるなよ。俺をおいて次の場所に行くな~!」
「訓練の時間に関しても無駄話をせずに仕事をこなせば時間が余るだろうが」
「や~い、や~い、堅物!万年童貞!単細胞!将来ハゲ!」
「親がハゲだからとハゲになるわけではないぞ」
「うるせえ!イケメン!イケメンは全員ハゲちまえばいいんだ!」
そんな馬鹿な会話をしていると少女が通りかかった。年の頃は10代前半といったところの少女だった。
この時、俺達が掃除していた建物のすぐ側の建物で貴族たちのパーティが開かれていた。
おそらく、貴族の娘だろうと判断した俺たちは少女を追いかけることにした。
「追いかけるぞ、レナード!」
「全くだ」
職務の放棄なら上官からの叱責で済むが、貴族の娘がこれで行方不明になどなられては俺たちの首が物理的に跳びかねないので追いかけることにしたのだ。
しばらく追いかけていると少女は庭に出て行った
「待ってくれ~、俺の将来の妻よ~!」
「お前は暫く黙ってくれ!まじで死ぬ!」
そんなこんなで追いかけることになったのだが、庭に出た瞬間、先を走っていたサミュエルの姿が消えた。
「サミュエル!」
「大丈夫だ!」
声のした方を見てみると落とし穴にサミュエルが落ちていた。
深さは30cmほど。
「あの嬢ちゃん絶対に捕まえてやる!」
サミュエルはそんなことをほざいていたが、落とし穴から這い上がるのに苦労していた。
「貴様ら!職務を放棄して何をしている!」
「げぇ!」
「はい!落とし穴に落ちていました!」
「なぁにが落とし穴に落ちていただ!……落とし穴?」
後ろから上官に怒鳴られたので、上官に経緯を話すと、上官の顔がみるみる優しくなっていった。
「はっはっはっは!それは災難だったな。皇女殿下のお遊びに付き合わされたか」
「皇女殿下?」
「お遊び?」
「ああ、この落とし穴を掘ったのはアナスタシア皇女殿下だ」
アナスタシア。いたずら好きで有名な皇女だった。最近も石を雪玉に入れて投げたりしていたと聞く。
「上官殿、皇女殿下ならばこのまま、誘拐などということになればまずいのでは?」
「安心しろ。周りに親衛隊を配置している。必ず捕まえてくれるだろう」
恐らく、新人ではなく、古参の親衛隊だろう。これ一種の洗礼のようなものだったのだろうと推測している。
それからしばらくして皇女殿下は無事確保されたそうな。
***
「レナード・ルシュコフ。貴殿をアナスタシア皇女殿下の護衛に任じる」
「いきなりですね」
「親衛隊に辞令への疑問は必要ない。ただ、一つ必要なのは──」
「皇族への忠誠でございましょう?上官殿」
「分かっているならばよい」
「では、失礼いたします」
上官殿に退室を促され、退室する。
しかし、何故、私なのだ。
問題児の相手はサミュエルだけで十分だというのに。
しかも、恐らく、身代わりがいない。
しばらく廊下を歩いているとヒソヒソと声が聞こえる。
「裏切り者の子が護衛だと?」
「皇女殿下の身に何かあってからでは遅いぞ」
「今ならば、丸腰だ排除も出来る」
「いや、あいつは熊にも勝つんだぞ。人間に相手は出来ない」
「いやいや、兎よりも飛ぶと聞いた」
「いや、狐よりも素早いと聞いたぞ」
後半の内容についてはマジで知らないんだけど?
「レナード!皇女殿下の護衛の任務への着任、おめでとう!」
「お前か、噂を流したのは。まだ、正式に公開されていない情報をべらべらと」
「いや、アナスタシア皇女殿下だぞ。流したのは」
「胃が痛い」
「どんまい」
俺が知るアナスタシア皇女殿下の評判はいたずらっ子、姉思いの2つしかないんだぞ。いらん心労を増やさんでくれ。
「しっかし、大丈夫なのか?お前の親父殿、ドイツに亡命したと聞いたけど」
「問題しかない。あんのハゲは軍の中佐という立場にありながらドイツに情報を流した挙句、亡命したのだ。皇帝陛下の慈悲がなければ俺たちは死んでいただろうさ」
俺の父親はロシア陸軍の中佐だったが、ドイツへのスパイ行為を行っていたためドイツに亡命したらしい。
10年以上前のことなので詳しくは覚えていない。
おかげで、先祖代々積み重ねてきた一族の名声が崩れたと祖父がぼやいていたのは覚えている。
「まあ、俺は職務をこなすだけだよ」
「そうか。そういや最近は虎との格闘戦で勝ったんだって?」
「誰だ、そんな根も葉もない噂を流した馬鹿は」
聞くとサミュエルが舌を出して頭にこつんと拳を当てていた。
「お前か」
「だってさ、暗い噂ばかりだと詰まんないだろ?」
「もう少し、まともなのはないのか」
「そうだなぁ、射撃戦で負けなしとか?」
「事実だろ」
「……うわぁ」
何で、そんなこいつやばいみたいな顔をしている?
本当のことだぞ。
***
そんなこんなでアナスタシア皇女殿下の護衛任務の初日がやってきましたと。
「貴方がレナード?」
「はい、レナード・ルシュコフです。アナスタシア皇女殿下」
「本当に?虎を素手で倒したという大男にはとても見えないわね」
サミュエル、お前は後で半殺しにしてやる。
「いえ、私が虎を倒したのは銃でです」
「やっぱり嘘なの?」
良かった。まだ、良識のある方で。
「熊を剣で殺したのでしょう。今度、山に行くことがあれば見せなさい」
「……き、機会がありましたら」
やっぱり駄目かもしれない。
簡単な人物紹介
レナード・ルシュコフ
本作の主人公。1914年時点で21歳。
2004年では時計塔周辺のマンションの一室に居を構えている。
幼少期は父親のスパイ容疑や亡命のせいでサミュエル以外友達が出来なかった。
ロシア帝国設立時からの軍人の家系だったが父親のやらかしで没落している。(一応、祖父が頑張っていたが)
銃の腕前は誰にも負けない自負があるらしい。
サミュエル・アシモフ
レナードの親友。1914年時点で21歳。
レナードについての噂をあることないこと風潮している。
サボり魔でよく皇女に見初められて皇族に入る夢を見ているらしい。