親睦会を終えた私たちは、そのまま任務のために校舎五階の会議室へ向かっていた。
先ほどまでの賑やかな時間のおかげか、私はもう先輩たちに対して必要以上に緊張することはなくなっていた。
「もう~はーちゃん。そんなにつんけんするなら、神崎さんになでなでしてもらいなよ。ずっと羨ましかったんでしょ? 神崎さんなら喜んでやってくれるよ。ね?」
「は、はい! 臼井先輩が良ければ、私がんばります!」
「羨ましくなんてない。神崎さんも、バカ渚の言葉に乗せられなくていいから」
臼井先輩は親睦会から――正確には反町先輩が私に撫でられた時から不機嫌を露にしていた。
反町先輩はその後も「もっと~」と何度も催促し、そのたびに猫みたいに蕩けた表情を浮かべていた。
そして、その様子を見るたびに、臼井先輩はオレンジジュースのストローをぎりっと噛みしめ、じっとりとした目で反町先輩を睨んでいた。
親睦会が終わった今でも、その不機嫌は継続中だった。
「ん~? ほんとかな~? ほれほれ~正直に白状した方が楽になるよ」
反町先輩はにやにやと意地の悪い笑みを浮かべながら、臼井先輩の頬をつんつんと指先でつついた。
「ん!? 頬をつんつんするな! 鬱陶しい!」
臼井先輩は眉をひそめ、反町先輩の手を乱暴に払いのけた。
けれど、反町先輩は気にした様子もなく、私の傍へと近づく。
「ほら神崎さんも、はーちゃんの頬を触ってみてよ。ぷにぷにして気持ちいいから」
反町先輩はその気持ち良さを私にも共有したいのか、腕をがしって掴んできた。
「そ、反町先輩!?」
「いいから、いいから」
私が戸惑う間もなく、反町先輩は掴んだ私の腕を強引に引っ張る。
そのまま私の手は、まっすぐ臼井先輩の頬へと導かれて――
ぷにっ。
おまんじゅうのようにふわっと、ぷにっとした感触が私の指先に伝わる。
反町先輩の言う通り、凄く気持ちよかった。
「気持ちいいでしょ?」
「あ、はい」
反町先輩の言うことに半ば反射的に肯定した私に、突き刺すような鋭い
「ん! か・ん・ざ・き・さ・ん?」
臼井先輩は、一音一音にたっぷりと怒気を滲ませながら、ゆっくり私の名前を呼んだ。
その鋭い視線に射抜かれ、背筋がぴしりと凍りつく。
「ちち、違います! 今のは、その……言葉の綾というか……! べ、別に気持ちよくなんてありません!」
慌てて弁解する私に、臼井先輩はふっと目を細める。
その瞬間に自分が墓穴をほってしまったことを遅まきながら気が付いた。
「ん。私の頬を触っておいて、気持ち良くないとは何とも不敬。許さない」
「は、はわわ……!」
「ありゃりゃ、はーちゃんの逆鱗に触れちゃったね。神崎さん」
そんな私と臼井先輩の様子を元凶である反町先輩は、まるで他人事のように楽し気に傍観していた。
「それ、反町先輩のせいですよ~! 見てないで助けてください~!」
「ん。逃がさない」
悲鳴じみた声を漏らしながら、私は五階へ続く階段を駆け上がる。
背後からは臼井先輩の足音が迫り、いつの間にか鬼ごっこのような追走劇になっていた。
――もっとも、捕まったら待っているのは“鬼ごっこ”では済まないのだけれど。
必死に階段を駆け上がり、勢いのまま五階のフロアへと身を乗り出したとき――、
「廊下は走っちゃだめだよ」
川のせせらぎのように澄んだ声が耳に届く。
私は鬼ごっこのことも忘れて、その声に引き寄せられるように視線を動か――
「っ!?」
「ん。捕まえた」
つぎの瞬間には、臼井先輩に私の身体をがっちりホールドされていた。
ようやく自分が追われていた立場だったことを思い出したけれど、もう遅い。
耳元で囁かれた冷ややかな声に背筋が震え、私は現実逃避をするように
どんな罰を受けるのか――まるで死刑囚のような気分で身を固くしていた、その時。
「ん。し、ずくちゃん……」
臼井先輩は私に罰を与えることはなく、廊下で立ち往生している雫さんに意識を割かれていた。
その声は、いつものような淡々とした口調ではなく、少し震えていた。
「葉月ちゃんも、校舎は走っちゃダメ」
「ん……ごめんなさい」
私に続き臼井先輩も雫さんに注意され、臼井先輩はしおらしく声を零す。
雫さんの声を聞いて、思わず視線をそっちに向けようとした。
――けど。
よくよく考えてみれば、憧れの人の前で、こんな子どもじみた醜態を晒してしまった。
追いかけ回され、騒ぎ立て、あげく直接注意までされるなんて――恥ずかしすぎて、いっそ、消えてしまいたい。
冷静になればなるほど、後悔と羞恥が胸の中でぐちゃぐちゃに混ざり合っていき、気づけば私はただ俯いたまま、黙って立ち尽くしていた
「二人共~って……しず、くちゃん」
「こんにちは、渚」
「あ、うん。こんにちは」
場違いなくらい呑気な声を出していた反町先輩も、雫さんの姿を認めた途端、少し真面目な声音になる。
「もしかして今日の光ちゃんの初任務のパートナーは二人が?」
「あ、うん。そんなところ」
「そっかあ。ちゃんと後輩のこと守ってあげてね?」
「うん」
「じゃあ、頑張ってね。私は行くから、ばいばい」
「うん、ばいばい」
雫さんは反町先輩と短い会話を交わすと、私たちの前から姿を消そうとする。
――もし、もしも、今日で自分が死んでしまうとしたら? 雫さんとの最後の記憶が、この無様な姿になってしまうのだろうか。
ちゃんと話すこともできず、情けない姿だけを見せて終わるなんて、そんなの嫌! 絶対に嫌!
そうなれば、きっと私は、一生後悔する――いや、きっとじゃない。必ず後悔する。
「あの、雫さん!」
「? なあに、光ちゃ――!?」
呼び止められた雫さんは足を止め、こちらを振り返る。
――けれど。
私の名前を呼びかけたその声は途中で途切れた。
大きく見開かれた瞳。
その黒い瞳には、驚愕と、信じられないものを見るような色が浮かんでいる。
「どうして……!?」
「え……?」
突然向けられた言葉の意味が分からず、私は困惑する。
「どうして、どうしてどうしてどうして……! 光ちゃんは、どうして、まだ私に憧れてるの!? あの戦いで、私は確かにあなたの憧れを壊した! それなのに、どうして……!? どうしてなのっ!!」
雫さんは、今まで聞いたこともないほど激しい声を上げた。
今にも掴みかかってきそうなほどの気迫に、私は思わず身をすくめる。
その時だった。
未だ私を抱き留めていた臼井先輩の腕の力が、少しだけ変わったのを感じた。
逃がさないための拘束ではなく、怯える私を守ろうとするような、優しさを含んだ抱擁へと。
「雫ちゃん! 落ち着いて! これから神崎さんは初めての任務なんだから、怖がらせちゃダメだよ!」
反町先輩の制止に、雫さんははっと息を呑む。
我に返ったようだったが、それでも胸の内で荒れ狂う激情までは消し切れていないのだろう。
行き場を失った感情を抱えたまま、苦しげに顔を歪めていた。
それでも一度、深く息を吸い込み、ゆっくり吐き出す。
その呼吸と共に、表情もわずかに落ち着きを取り戻していった。
「ありがとう、渚。あなたのおかげで、少し落ち着けたわ」
「ううん。別にお礼を言われるほどでもないよ」
反町先輩は、あえていつも通りの軽い調子で返す。
「それと、光ちゃんごめんなさい。任務の前に怖がらせちゃったね」
「あ、いえ……だ、大丈夫です」
ぎこちなく答えた私の返答に、雫さんはほっとした様子。
笑顔を取り戻した雫さんだけれど、その笑顔はどこかぎこちなかった。
「迷惑かけたね。じゃあ、私は行くね。任務がんばってね」
雫さんはそう言い残し、再び歩き出す。
向かう先は、私たちがこれから向かう方向と同じ。
しかし、雫さんは私たちの入る会議室ではなく、別の部屋の前で立ち止まった。
入室する直前、雫さんの瞳がちらっと私を捉えた。
一瞬だけ向けられたその黒い瞳は、まるで底の見えない闇のようだった。
憎悪にも似た、
雫さんは静かに部屋の中へと消えていった。
取り残された私達三人は、少しの間静けさに身を委ねていたが、その空気を霧散させるように、
「さて! まあ、いろいろあったけど、私達も会議室に行こっか!」
反町先輩の明るく元気な声が冷え切った空気を穏やかな空気に変えて、私達三人は、指定された会議室へと赴くのであった。
*
(どうして、どうしてどうしてどうして……! 光ちゃんは、どうして、まだ私に憧れてるの!? あの戦いで、私は確かにあなたの憧れを壊した! それなのに、どうして……!? どうしてなのっ!!)
雫さんの悲痛な叫びが、残響のように何度も頭の中で鳴り響く。
何が彼女をあそこまで追い詰めているのか、私には分からなかった。分かるはずもなかった。
けれど、一つだけ確かなことがある。
雫さんは、“憧れ”という感情を酷く憎んでいる。
会議室へ入る前に見せた、あの憎悪に染まった黒い瞳が、それを何より雄弁に物語っていた。
自分へ向けられる憧れを、あそこまで憎悪できるほどの出来事が、きっと彼女にはあったのだろう。
それにあのパートナー選抜、雫さんは何かと”憧れ”について語っていた。
――本当にあの戦いはパートナーを選定するための戦いだったのだろうか?
ぷにっ。
「ひゃっ!?」
「んふふ。神崎さんのほっぺたぷにぷにして気持ちいい」
臼井先輩は私の頬を人差し指でつつき、その感触を楽しむように笑っていた。
考え事に没頭していた私は、大げさなくらい驚いてしまう。
けれど、私が反応しても臼井先輩の“つつき攻撃”は止まる気配がなかった。
「う、臼井先輩、やめ、やめてください」
「ん。どうして? 神崎さんも私の頬をつついた。お返しをしてるだけ」
「それにしたって、突きすぎだと思います」
「ん。やられたら倍で返せってドラマで学んだ。だから、私はその教えに則って神崎さんに仕返しをしている」
“倍返し”というわりには、明らかに倍以上つつかれている気がするが、そこは触れないでおくことにした。
そんな私を見ながら、臼井先輩はふっと真面目な表情になる。
「ん。それに、今から任務。考え事をするなら任務が無事達成した時の方がいい。もしかしたら、今日が命日ってこともありうる。今は、今だけは、考え事に没頭するんじゃなくて、少しでも楽しむことをした方がいい。これ、先輩としてのアドバイス」
ひょっとしたら臼井先輩が私の頬を何度も突いたのは、先程の出来事の内容から意識を逸らすための配慮だったのではないかと私は思った。
もちろん、本当に仕返しだった可能性もあるけれど。
――でも、臼井先輩の言う通りだ。
任務に絶対はない。
今日が命日になる可能性だって、ゼロじゃない。
そうなれば、今ここで抱えている悩みも、全部徒労に終わってしまう。
だったらせめて今くらいは、少しでも楽しいことに心を使った方がいい。
「そうそう、はーちゃんの言う通り。はい、お茶でも飲んでリラックスでもしなさいな」
反町先輩は三人分のお茶を乗せたお盆から、それらをそれぞれの前へと置いていく。
湯気に含まれるお茶の香りが鼻腔をくすぐり、考え事で凝り固まった頭の中をゆっくりとほぐしていく。
「す、すいません! 本来ならその仕事は後輩である私の役目なのに、先輩にやらせてしまって」
考え事に没頭していた為に、後輩である私がやるべき仕事を反町先輩にやらせて、申し訳なさが立つ。
ルールとして決まっているわけではない。
それでも、こういう雑務は後輩が担うべきだろう。
「いいのいいの。気にしないで。ほら、冷めないうちに飲んで?」
「は、はい」
反町先輩はにこやかに笑って軽く首を振った。その言葉に甘える形で、私は差し出されたお茶をそっと口に運ぶ。
「……おいしい」
渋みや苦みが角立っておらず、代わりにほんのりとした甘みが舌に残る。温度も熱すぎず、ちょうどいい塩梅で自然と息が抜けるような味だった。
「お口に合って何よりだよ~」
「ん。むかつくけど、渚の入れてくれるお茶はおいしい……むかつくけど」
臼井先輩はそう言いながらも、湯呑みを大事そうに抱えている。その言葉の端々には、長年の付き合いが生んだ遠慮のなさが滲んでいた。
「はーちゃん。そんなにむかつく言わないでよ。次からは、はーちゃんの分入れるのやめようかな~?」
「ん!? それはだめ。謝る、ごめん」
即座に頭を下げる臼井先輩。
その反応の早さが、このお茶がどれほど美味しいものかを何より雄弁に物語っていた。
その気持ちは完全に同意するところだ。
私たちは反町先輩の入れてくれたお茶を堪能しながら、初任務の時間まで雑談という名の臼井先輩と反町先輩の漫才を満喫した。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
時計の針は十九時を回り、窓の外はすっかり闇夜に包まれていた。会議室を包んでいた談笑も次第に落ち着きを見せ始めた頃。
――十九時五分。
静かに扉が開き、一人の男性が入室する。
瞬間、会議室内の空気がぴりっとした緊張感に覆われた。
てっきり現場指揮官のような人物が来るのかと思いきや、姿を現したのは、この学院の頂点に立つ人物――金山理事長その人だった。
予想斜め上の人物に私の心は驚愕に包まれた。
「さて、諸君。今日も今日とてゴースト討伐に励んでもらう。さて、早速だがこれを見てもらおう」
理事長が手元のリモコンを操作すると、室内のカーテンが閉じられ、照明が落とされた。
薄闇の中、正面のスクリーンだけが白く浮かび上がり、そこへ日本地図が映し出される。
「人工衛星《レイ》によって特定された、ゴーストの出現地点だ」
スクリーン上には、日本列島を覆うように無数の赤い点が散らばっていた。
ぽつり、ぽつりと灯るそれらは、まるで夜の地図に滲んだ血痕のようで、見ているだけで胸の奥がざわつく。
五十近く存在する赤点――その一つ一つが、討伐対象のゴーストを示していた。
金山理事長は手に持つレーザーポイントで九州地方を囲むように円を描く。
「君たちは九州地方を担当してもらう。各々担当する場所はこちらで決めさせてもらった――反町君、臼井君、そして、神崎君には鹿児島を担当してもらう」
「「了解!」」
二人の声は寸分の狂いもなく重なり、会議室に鋭く響いた。
迷いも淀みもないその返答には、幾度も任務を潜り抜けてきた者だけが持つ歴戦の
「りょ、了解!」
私も二人に倣うも、緊張のせいで声はわずかに裏返り、語尾まで情けなく揺れてしまった。
三十人近く集まった会議室の中で、その拙い返事を晒したせいで、私の中の羞恥心がぐつぐつと沸き立った。
その羞恥心をひた隠すため、私は誤魔化すように小さく俯き、膝の上でそっと拳を握りしめた。
私が羞恥に飲まれている間にも金山理事長は次々と担当する区域を分けていく。
「さて、任務の概要は以上だ――最後に、諸君へ一つだけ伝えておこう。一年生はもちろん、二、三年生も初心に帰ったつもりで改めて聞いてほしい」
やがて説明を終えると、理事長はゆっくりと会議室を見渡した。
静まり返った室内に、穏やかでありながら芯の通った声が響く。
「一年生の諸君にとって、今日は初めての任務だ。緊張も、不安も、恐怖もあるだろう。だが、決してそれらの感情を対処してはいけないよ。恐怖を知る者は慎重になる。不安を知る者は備える。緊張を知る者は油断しない。だからこそ向き合いなさい。そして制しなさい。それらは弱さではない。むしろ――君たちを生かす”力”だ。」
理事長はそこで一度言葉を区切り、私たち一人ひとりを見据えるように目を細めた。
「人は慣れる生き物だ。任務を重ねれば、そう言った感情は自ずと薄れていく。だけど私はそれを良しとは思わない。慣れは慢心を生み、“今まで大丈夫だった”という油断が、いつか取り返しのつかない結果を招く。任務に絶対はないからね。だからこそ、それらの感情は大事に持っておきなさい。それこそ、君たちを生き残らせる最後の
穏やかな口調だった。
けれど、その言葉には数え切れないほどの経験と、私たちを想う真摯な重みが込められていた。
「――さて、長話はこれくらいにしよう。諸君らの健闘を祈っている」
「「「「「はい!」」」」」
会議室に響いたその声には、不安を抱えながらも覚悟の灯った強い意志が表れていた。
その返答を受け、金山理事長は柔らかな笑みを浮かべると、静かに踵を返し会議室を後にした。
――いよいよ、本格的に任務が始まる。命を懸けた、最初の一歩が。
私は緊張、不安、恐怖を抱きながら、任務に赴くため、会議室から身を脱したのだった。
*
「す、凄い……」
「あはは。凄いよねえ、ここ。いつ来ても圧倒されるというか」
「ん。渚に同感。初めての任務から一年経ったけど、未だにこの圧倒感はぬぐい切れない」
私たちの目の前に広がっていたのは、無数のヘリコプターが整然と並ぶ壮観な景色だった。
ここは訓練所のさらに奥――任務用の発着場。
等間隔に並べられた機体は、地平線の彼方まで続いているように見える。
任務以外では立ち入ることのない場所だからこそ、初めて足を踏み入れた私は、そのあまりの規模にただ息を呑むしかなかった。
一年経験を積んだ先輩たちですら圧倒されるのだから、この感覚はきっと、これから先も薄れないのだろう。
そんなことを考えながら、私たち三人は広大な発着場を歩いていく。
どこまで進んでも視界に映るのはヘリコプターばかり。変わり映えのしない景色が延々と続き、まるで出口のない迷路を歩いているような感覚だった。
やがて三百メートルほど進んだところで――
「ん。ここ……」
臼井先輩は立ち止まり、一つのヘリに視線を向ける。そのへりには”JA7132"の文字が記されていた。
作戦会議後に端末へ送られてきた機体番号と一致している。どうやらこれが、今回私たちを現地へ運ぶ機体らしい。
操縦士側にも事前に私たちの情報は共有されているとのこと。
「よし、じゃあ。はーちゃん、神崎さん、私の順で乗ろっか」
「ん」
「わかりました」
反町先輩の発言した通りの順に、私たちはヘリへと乗り込んだ。
*
ヘリに乗り込んだ私たちは、操縦士に軽く挨拶を交わす。そして、しばし待つと低く重たいエンジン音が機内へ響き渡った。
ボォォ……という唸るような音と共に、プロペラがゆっくり回転を始める。
ぱたぱたぱた、と羽音が徐々に勢いを増し、それに合わせるように機内全体が細かく震え始めた。
「……」
私は緊張した面持ちで、離陸の瞬間を待っていた。
中学の修学旅行で初めて飛行機に乗った時のことを思い出す。
離陸時の、身体がふわりと浮く感覚。まるで足場を失い、生き死にの狭間へ放り出されるようなあの感覚が、どうしても苦手だった。
あの時は肘掛けを必死に掴んで耐えていたけれど、ヘリにはそんな“心の
不安、恐怖、緊張。
ぐるぐると渦巻く感情を、私は必死に押し殺していた。
今日の任務で本当に危険な場所へ向かうのは先輩たちだ。
私はただの見学者で、二人より遥かに安全な立場にいる。そんな私が離陸前から怯えているなんて、情けなさすぎる。
それに何より――。
高校生にもなって乗り物が怖いなんていう、子供っぽい姿を先輩たちに晒すのは恥ずかし過ぎるということだ。
――大丈夫だよ、私。先輩たち方がよっぽど怖いんだから。先輩たちに比べたら些細なことだよ! だから、無視、無視、無視!
そんな風に自分を奮い立たせていると、不意に反町先輩がこちらを覗き込んできた。
「もしかして神崎さん。ヘリ乗るの怖い?」
「そ、そそ、そんなことないですよ!? 全然平気です! 子どもじゃないんですから!」
あまりにも図星すぎて、思わず言葉がもつれてしまう。
「ほら、手握っててあげる」
反町先輩が私の右手へ伸ばしかけたその瞬間、私は慌てて首を振った。
「だ、大丈夫ですから! 高校生にもなって乗り物が怖いなんてあるわけ――」
「うん? でも顔に書いてあるよ? “怖い”って」
「え?」
私は咄嗟に自分の顔を触る。その行為が運の尽きだった。反町先輩はひっかかったと言わんばかりににやりと笑う。
「んふふ。ほんとに書いてあると思ったの? かわいい~」
「そ、反町先輩っ!」
私はいたずらに成功した子供のような反町先輩に怒りが湧くと同時に、その子供だましの単純ないたずらに引っ掛かってしまったことによる羞恥心が相まって、それらの激情を吐き出すように言葉に上乗せさせる。
「ごめんごめん。でも、触ったってことは、やっぱり怖いんだよね?」
「うっ……」
図星だった。
けれど、その不安を二人へ伝えることで、余計な緊張を与えたくなかった。
「ち、違いますよ? 私は怖くなんか――」
「えいっ」
言い訳を並べる私を目もくれず、反町先輩は私の右手を掴み取った。
言い訳ばかりに意識を割いてしまい完全に油断した私は、瞬時に反応は出来たものの、脳からの指令を受け取る前に捕まってしまった。
反町先輩が私の右手を掴んだ瞬間に、意識外から私の左手に生暖かい感触が伝わった。
「ん。私も握っててあげる」
「臼井先輩まで、反町先輩の悪ノリに乗らなくても……」
「ん。悪ノリ? 違う。渚との会話で神崎さんの心情を把握したから手を握ってる。だって怖いんでしょ? ごめんね気づかなくて。私、そういう人の心を読むのが苦手だから」
「気づくも何も何度も言っているように私は怖くないです。だから、そんな申し訳なさそうにしないでください。本当に大丈夫ですから」
否定しても、二人は手を離さない。むしろ何かを確信しているように、顔を見合わせて微笑んでいた。
「神崎さんって、本当に無自覚だよねぇ」
「え?」
「ほら」
反町先輩は下方向に視線を流し、それにつられ私もその流れに従い視線を泳がしていく。
私と反町先輩の繋ぐ手と手。
一見すると繋いでいるように見えるも、それは偽りで、私が離したくないと言わんばかりに強い力で反町先輩の手を握っていた。
反町先輩は一切の力を入れていないのに、私の握力が強すぎて、意思とは関係なく指は折れ曲がり、私の手を握らされている構図に。
「――っ、こ、これは違くて!」
「何が違うのかにゃ~?」
「ん。正直に言った方が楽だよ? 神崎さん、ヘリ怖いんでしょ?」
二人に言い詰め寄られ、私は言い逃れが出来ないことを悟る。
現に私が強く握っているのを体感している二人だ。もう誤魔化したところで意味はない。
私は小さく息を吐いて、観念する。
「……そう、です。飛行機の離陸の浮遊感が苦手で……。ヘリでも同じ感じになるのかなって考えたら、怖くなっちゃって」
「もう、それなら言ってくれればいいのに~」
「だって、恥ずかしいですし、何より……」
「何より?」
臼井先輩が続きを促す。
「怖いとか不安とかこれからゴーストと戦う先輩たちに、伝染させて、もしものことがあったら嫌だったので……頑張ってそれらの感情を消化しようと奮闘したのですけど、その前に、反町先輩に悟られてしまいました」
私の赤裸々の白状に、反町先輩はいつものおちゃらけたような笑顔ではなく、穏やかな笑顔を私に見せた。
「ありがとね、私たちのことを想ってくれて。けど、私たちは大丈夫だから。なんせ私たちは先輩だからね。逆に神崎さんは気を遣わず先輩に頼ってよ。些細な事でも、ね?」
「ん。大船に乗ったつもりでどんどん頼って。私達は神崎さんが思っているよりやわじゃない。それに、今日はチームメンバー。神崎さんが多くの不安を抱えているなら、その不安の荷物を他のメンバーと分かち合う。それがチームというもの。渚の言った通り、どんなことでも頼って」
「先輩方……」
二人の真っ直ぐな言葉に、胸の奥がじんわり熱くなる。
「ほら、ちゃんと言ってごらん? どうしてほしいのか」
促され、私は恥ずかしさを堪えながら、小さな声で口を開いた。
「は、はい。えっと、反町先輩、臼井先輩。こ、怖いので、その、手を握ってくれ、ませんか?」
改めて言葉にするのが恥ずかしくて、むず痒くて、声のボリュームが小さくなってしまった。
けど二人はそんなことを気にせずに、
「はーい!」
「ん。わかった」
二人は優しく返事をして、私の手をぎゅっと握ってくれる。その温もりに包まれたまま、ヘリはゆっくりと――離陸したのであった。
*
学院を出発してから約一時間半。
時刻は二十一時を周ろうとしていた。
私達は鹿児島県にある、とある高層ビルの屋上にいた。
眼下に広がる街には、ぽつぽつと灯る明かりが散らばり、まるで地上に広がる星空のように美しい。だが、その静かな夜景を切り裂くように――。
「きしゃあああああああッ!!」
夜の海の底から、背筋を凍らせるような、おどろおどろしい叫び声が響き渡る。
「へりの音を嗅ぎつけて、やってきたみたいだね」
「ん。急いで対処すべき。神崎さん準備はいい?」
「は、はい!」
私たちはビルの縁に並んで立つ。
眼下までの高さは、およそ六十メートル。
普通の人間なら、飛び降りるなど自殺行為に等しい高さだ。けれど、三つ葉女学院のローファーには特殊な衝撃吸収素材が使われている。
例え、何百、何千メートルから飛び降りようとも、着地時のかかる負荷を限りなくゼロに近づけてくれる
もっとも、安全なのは“足から着地した場合のみ”。体勢を崩せば、その瞬間にお
入学してすぐに校舎から飛び降りる訓練を受けた。
常軌を逸した内容に、誰もが恐怖で足をすくませたが、朝倉先生から『ここから飛び終わるまで帰らせないから』という鬼畜発言により、生徒たちはなくなく飛び降りる羽目に。
因みに、飛ばなかったら飛ばなかったで、一定時間で鞭でしばかれるという鬼の所業。
皆、朝倉先生の鬼さに耐えかねて、意を決して次々と飛び降りていった。
私は「どうか生き残れますように」と、必死に神へ祈りを捧げながら飛び降りるも、何事もなく着地。
しかも全くと言っていいほど衝撃が足に伝わることがなかったため、思いの外、あっけなかった。
その事実と直面した瞬間、私の中の恐怖心が薄れていった。
そこから、何度も、何度も、飛び降りている間に、飛び降りることへの恐怖感や抵抗感は皆無に。
この訓練のお陰で一年生全員が、平然と飛び降りられるようになり、中には授業後に命綱なしの“バンジーごっこ”を楽しむ者もいた。
百メートル以上ある校舎の高さから飛び降りる訓練をしていたので、それに比べたらたった数十メートルのビルから飛び降りることなんて、造作もない。
「せーの!」
反町先輩の合図とともに私たちは夜の海へと身を躍らせた。
*
私たちが高層ビルから着地すると、少し離れた曲がり角の向こうから、耳を割くような奇声が響いた。
「きしゃああああああ!!」
現れたのは、白いウサギの着ぐるみ。
丸みを帯びた輪郭に、
どこかの遊園地のマスコットキャラクターを彷彿とさせる外見――しかし両手に握られた二本のナイフによって、完全に異質なものへと変貌を遂げていた。
「きしゃしゃしゃしゃ!」
ウサギは狂気じみた嗤い声を漏らしながら、ナイフを目の前でクロスさせる。
鋭い刃先からは、隠そうともしない殺意が滲み出ていた。
その光景を目にした瞬間、心臓を鷲掴みにされたような感覚が走る。
私は恐怖から喉が張りつき、思わず立ち
「安心して神崎さん。私たちが指一本触れさせないから」
反町先輩は勝ち機に溢れるような覇気ある口調でそう言いながら、右肩にそっと手を置く。
「ん。神崎さんは、私たちの勇姿を見てればいい」
臼井先輩も反町先輩同様、芯のある口調で言いながら私の左肩に手を重ねた。
二人の手には微かな震えすらない。
堂々として、頼もしく、揺るがない強さがそこにあった。
その温もりに触れた瞬間、胸を侵食していた恐怖が、ゆっくりとほどけていく感覚に陥る。
先輩たちは私を守るように一歩前へ出て、鏡写しのように腰から刀を抜く。
二振りの刀もまた、地上に広がる
「きしゃ!」
先輩たちが構えを取るや否や、ゴーストは地を蹴った。
「行くよ。はーちゃん!」
「ん!」
そして、反町先輩と臼井先輩もゴーストに向かって駆けだした。
瞬く間に間合いが消えていき――、
「しゃっ!」
ゴーストはクロスさせていた二本のナイフを左右に薙ぐ。
先輩たちはその攻撃に対し、二者二様に対処する。
反町先輩は火花を散らしながらナイフを受け止め、臼井先輩はゴーストが薙ぐよりも早く
ゴーストは二人に挟まれる形になり、戦況は先輩たちに傾く。
ゴーストは背後を取った臼井先輩に気を取られ、前方に反町先輩が居るのを無視して、腰? を捻る。
二本のナイフを重ねるようにして、
「きしゃ!」
臼井先輩は冷静に軌道を見極め、綺麗に受け流した。
受け流されたゴーストは体勢を崩し、反町先輩はその隙を逃すことなく刀を振り下ろす。
振り下ろされた刃は、ゴーストの命の源――コアを両断した。
「き、きしゃ……あ、あ……」
コアを壊されたゴーストは小さな断末魔を上げ――やがて、ウサギの着ぐるみはその場に崩れ落ちた。
くしゃくしゃに折れ曲がった胴体の上に、ウサギの顔だけがぽつりと乗っている。
先ほどまで狂気を振りまいていたその姿は、もはやただの抜け殻でしかなかった。
ゴーストと遭遇してたった一分も経たないうちに、ゴーストは二人にあっけなく敗北した。
二人は予め作戦でも立てていたかのように、
まるで、芸術を見ているかのような美しさだった。
「ねえねえ、どうだった、どうだった? 私達かっこよかった?」
ゴーストを討伐した反町先輩は、弾むような足取りでこちらへ駆け寄り、戦いの感想を求めてきた。
「はい! 凄くかっこよかったです!」
それはお世辞でも気遣いでもない。
ほんの一分にも満たない戦いだったはずなのに、二人の連携は見惚れてしまうほど鮮やかだった。
まるで長年磨き上げてきた演目を披露する舞台役者のように、互いの動きを理解し合い、一切の無駄なく敵を追い詰めていく。
その姿は戦いというより、一つの芸術を見ているようだった。
「……そっかそっか、カッコよかったか~」
反町先輩は満足そうに頬を緩める。けれど、その表情が一瞬だけ
「ん。神崎さん、けがはない?」
少し遅れて歩いてきた臼井先輩が、真っ先に私の無事を確かめる。
つい先ほどまでゴーストと刃を交えていたとは思えないほど、その声音は落ち着いていた。
「あ、はい! 先輩たちのお陰で大丈夫でした!」
「ん。それはよかった」
臼井先輩は小さく頷き、わずかに表情を和らげた。
「さてさて~もうひと踏ん張りと行きますか! 神崎さんにもっと私たちのかっこよさを目に焼き付けてもらわないと!」
反町先輩はそう言って頬をぱんぱんと叩き、自らを鼓舞する。
「ん。私もがんばる」
臼井先輩は反町先輩の気合の入れように感化されたのか、ぐっと小さく握り拳を作って静かに気合を入れる。
先ほどの戦いだけでも十分すぎるほど格好よかったのだ。
あれ以上の活躍を見せられたら、きっと私はますます二人に目を奪われてしまうだろうと思いながら、私たちは次なるゴーストへの出現地へと向かった。
*
位置情報に従い、次なるゴーストを追跡していた私たちは、最初のゴーストの戦いの場所から三十分ほど歩き――。
「ん。このショッピングモールに二体のゴーストがいる」
臼井先輩が足を止める。
目の前には大型のショッピングモールがそびえていた。エントランスには休館日を知らせる看板が立てられている。
休館日だからか、照明は最低限で館内は薄っすら闇に包まれていた。
「開かないかあ」
休館日なので当然と言えば当然だが、扉は開かず反町先輩の落胆の声が響く。
私は、端末から『学生証』アプリを起動して、タブにある、『鍵』をタップする。
すると、充電部分の真反対から、”角”という名の鍵が生えてきた。
この鍵は”オールマスターキー”と言って、これ一つであらゆる全ての建物の施錠を解除できてしまう。
文字通り、万能キーとなっている。
「私も少しながらお手伝いをします」
「おー! 気が利くねえ。ありがとう」
「ん。ありがとう神崎さん」
二人の感謝を受け取り、私は鍵穴に鍵を突きさし反時計回りに回すとガチャッと音が立つ。
「どうぞ、先輩たち」
私は取っ手を引いて、扉を開けて先輩たち二人を先に入館させる。
二人は感謝を述べながら、開けられた扉に体を通す。二人の後に続き私も入館。
中は静けさが染みわたり、私たちの足音のみが響く。この広大なショッピングモールからゴーストを探し出すのは骨が折れそう……と思っていたら――
「「きしゃああああああああああ!!」」
黒板に爪を立てたような鳥肌の立つ声と共に、上空から二体のマネキンが、どん、どん、と地面に衝撃を与えながら落下してきた。
頭のない二体のマネキンは人間の如くしなやかな動きでゆっくりと立ち上がると、片手に持つ包丁を私たちに見せつけるようにして前に突き出す。
先程のウサギのゴーストと対峙した出来事があったので、私は足が竦むことはなくなっていた。
再び反町先輩と臼井先輩は私の盾になるように互いに肩を寄り寄せ合って刀を構える。
「「きしゃあああああ!!!」」
二体のゴーストは、
中々のスピードではあるが、目で追えない程ではない。
間合いに入ると、二体のゴーストはそれぞれ別のターゲットに向かって乱雑に包丁を振るう。
カーン!!
ゴーストたちの
「「はあああああ!!」」
次はこちらの番と言わんばかりに臼井先輩と反町先輩は咆哮を発しながら、両者とも受け止めた刃を押し返した。
ゴーストは押し返された反動で、体が後ろに大きくのけ反りバランスを崩してしまう。
致命的な隙を晒したゴーストたちに追い打ちをかけるため先輩たちは、上へにと押し上げた状態――万歳からそのまま刀を振り下ろす動作に鏡合わせで移行した。
――決まった!
そう確信した私。
「「ぎしし!」」
まるで私の確信を浅はかだとでも言いたげな
彼らは、包丁を持たない反対の手を少し横に伸ばし、疑似的な
ひゅんっ!
先輩たちの刃を危機一髪で回避して退けたゴーストたちは、横に
そして、そのまま壁を蹴って、反撃へと転じる。
同タイミングで先輩たちも各々照準したゴーストに向かって駆けて
そこから、戦闘は
傍から見たら両者
時間が経つにつれ先輩たちの動きは洗練されていき、刃がマネキンに必中する数が増えていく。
気づけば、金属音よりもゴーストの悲鳴が多くなり――
盤面は最終局面へ。
「「きしゃああ!」」
もう何度見た光景か、ゴーストが悲痛と共に壁に叩きつけられる。ただ、さっきと違うのは、ゴーストは攻撃を仕掛けることをしなかったことだ。
「き、きしゃ、きしゃ」
「きしゃ、きしゃ! きしゃきしゃ」
まるで許してくださいと言わんばかりに、熱烈な
この戦いで先輩たちの強さを身をもって体感し、自分達では及ばないと判断したのか、もう戦意は
コツン!
先輩たちはゴースト二体の前で立ち止まる。それを合図にゴーストたちの鳴き声も止む。
あの激しい戦闘が嘘のように今は静寂に満ち溢れていた。
あれほど
私とゴーストたちが
ヒュン!
振るわれた二刀は同じ音が同時に重なった。
下された審判は無慈悲な一太刀。
その一閃は、息を呑むほど美しく、半年前に見た雫さんの一太刀を彷彿とさせた。
「「きしゃあ……ああ」」
ゴーストたちはどうして? と言わんばかりの哀愁に満ちた微かな断末魔を上げながら、姿を無数の小さな粒子に変えて、天へと召されていった。
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どさどさっと二体のマネキンは地にひれ伏し、それが先輩たちが勝者である確固たる証拠だった。
「どう? どう? 神崎さん。私達かっこよかった?」
倒れたマネキンに
「はい! それはもう、凄くかっこよかったです!」
私は先輩たちの凄さをもっと表現したいのだが、悲しいかな。語彙力が乏しい私には、凄いとしか表現できない
「やっぱり……だめか……」
「?」
「ううん、何でもない! よかったよかった、先輩のカッコいい姿を見せれて」
反町先輩はぼそぼそと何かを言っていたが、私は何一つ聞き取ることが出来なかった。
疑問符を浮かべる私に反町先輩は、今の言葉を誤魔化すように「何でもない」と言うと、私にカッコいい戦う姿を見せれて安堵する。
「ん。学院に任務達成の報告を入れたから、帰還する」
「りょうかーい」
「はい、分かりました!」
臼井先輩の言葉に私と反町先輩は頷くと、私たちは学院に戻るためヘリに向かうのであった。