反町先輩と話を終えた私は、足に重しが付いているような
反町先輩の熱い気持ちは、物凄い熱量があった。それは、態度、言動、などから、
全員が苦しみから解放されるには、私が憧れを捨て去るか、私が絶望に
それだけで全てが解決する。
前者は簡単だ。私が憧れを捨てればいいだけだから。
問題は、後者だ。
「……雫さんとパートナーになった後、か」
そんな想像したことがなかった。
妄想はしたことあるけど、妄想なんて、自分に都合のいいことばかりを並べた夢物語でしかない。
想像しただけで、私は息が詰まるほどに苦しかった。反町先輩と臼井先輩は、どれほどの地獄を味わったのだろう?
分からない。怖い。
「ん。神崎さん」
「ひゃっ! ひゃい!」
考え事に没頭していた為、不意に声をかけられた私は驚きに満ちた返事を返してしまう。
左に首を捻ると、少し眠そうな眼をした臼井先輩の姿が。
「ん。渚と何の話をしていた?」
「ふぇ!? えっと、その、あ、あはは……ちょっと、お菓子をご馳走に」
私は乾いた笑みを浮かべながら、その場を取り繕《つくろ》った。
先程の内容は、反町先輩から口止めはされていないものの、わざわざ、二人だけで話す機会を作ったのだ。
それは、暗に誰にも口にしないでと言ってるのと同義だ。
「ん。本当に?」
臼井先輩は私の言葉が信用ならないのか、ジト目で疑いの眼差しを向けてくる。
「ほ、本当です!」
「ん。じゃあ、私の予想を推理していい?」
「す、推理って……」
臼井先輩は完全に私の言葉を信用してない感じだった。
――なんか、私の言葉って全然信用ならないのかなあ。この学院に来て、凜ちゃん以外に信用されてない気が……。
いや、まあ。嘘をついている私が悪いんだけれども。
「ん。まずは前提として、渚は休みの日は絶対に私をどこかに遊びに行こうと連絡してくるのが、常。でも今日はそれが無かった。ということは、渚はそれ以上に優先することがあったと推測」
臼井先輩は淡々と推理を私に披露する。
「ん。渚は誰かと遊ぶときも、必ず私に一言、誘うことを連絡する。口頭でもメールでも。それは神崎さんの場合でも同じなはず。しかも、神崎さんとは昨日の今日で顔見知り、渚が私に連絡しないなんてありえない。と言うより――」
そこで一拍置き、臼井先輩は小さく首を振った。
「絶対に私の部屋まで突撃してくるはず。渚のことだから……はあ」
頭が痛そうに心底疲れたようなため息を漏らす臼井先輩。
その反応だけで、これまで
もはや予想ではなく、積み重ねられた実績に裏打ちされた確信なのだろう。
「ん。神崎さんと一緒ならなおさら。昨日の任務で、ある程度は顔見知りになったわけだから。それなのに、私の部屋に突撃しないってことは、私に聞かれたくない話を神崎さんとしている可能性が高い」
そこまではいつもの調子だった。けれど次の言葉を口にする瞬間、臼井先輩はわずかに眉をひそめる。
「渚は知ってる。私が五日前のパートナー選抜で、神崎さんが雫ちゃんに憧れを壊され、絶望のあまり発狂する姿も、それを見た私が……恥ずかしいから言いたくないけど、耐えかねて涙を流してしまったことも」
苦々しさと気恥ずかしさが入り混じった、なんとも複雑な表情をする臼井先輩。
冷静沈着な彼女からすれば、自分が取り乱した過去を口にするのは相当居心地が悪いのだろう。
「ん。渚はああ見えて、
反町先輩が、人情に厚い人物だということは、先の一件で痛いほど理解させられた。
あれほどまでに容赦のない罵声を浴びせれば、彼女の印象が
相手からどのような目で見られることになるのか、想像するのも容易ではない。
それでも反町先輩は、それを承知の上で、人が救われるのならと、自らその役目を引き受けた。
自分がどう思われるかなど後回しにして、私に鋭い言葉を突きつけたのだ。
その行為が、どれほどの反発や悪評を招くのかも分からないままに。
ひょっとすれば「酷い先輩だ」と陰口を叩かれ、誰かに告げ口され、それが学院中に広まり、
やがては孤立し、息の詰まるような日々を強いられていたかもしれない。
それでも彼女は、その全てを引き受ける覚悟を選んだのだ。
そして、すべての“罪”を自分に背負うようにしてでも――。
私が彼女と同じ絶望に沈まないように。
雫さんが、これ以上の苦しみを抱え込まないように。
臼井先輩が、大切な友達が、そして“パートナー”が、これ以上傷つかないように。
私達を救うために、反町先輩は自己犠牲の覚悟をもって、私に真正面からぶつかってきた。
「たぶん、神崎さんは渚からこう言われたと思う――『雫ちゃんに”憧れ”を抱くのを諦めてって』」
「!?」
臼井先輩が予想した反町先輩の発した言葉は、ほとんど模範解答で、私は心臓をきゅっと掴まれた感覚に陥った。
「ん。私の推理、間違ってる?」
臼井先輩は小首を傾げて、今の推理の合否を私に確かめてくる。
今の推理に穴はない。全くもって。
満点以外の何ものでもない。満点以上だ。
「ん。沈黙ってことは、合ってるってことで言い?」
「そ、それは……」
あまりにも完璧すぎて言い訳の余地が無くて、私は口ごもる。臼井先輩は自分の推理に自信が表情に物語っている。
たぶん、私が反論しようが、沈黙を貫こうが、臼井先輩の考えは変わることはないだろう。
それに、私はあまり嘘を吐くのが得意でないことは、入学してからしみじみと実感している。
「そう、ですね。臼井先輩の推理は合ってます」
私は観念して、臼井先輩の推理に正しさを肯定した。
「ん。そう。だったら、神崎さんに一つだけ伝えとく。”私のことは気にしないでいい”」
気にしないでいい。
臼井先輩のその言葉の真意は、たぶん、選抜パートナーの時の罪悪感に押しつぶされたことを言ってるのだろう。
「ん。確かに私は、罪悪感に耐えきれず、涙を流した。でも、あれは私の覚悟が足らなかっただけ。私は渚と罪を背負うと決めた。それに、もう、私はあんな失態は犯さない。だから、神崎さんは、私のことなんか気にせず、自分の決めた道を突き進めばいい。それだけ」
臼井先輩の黄色の瞳は、陰りは無く、そこにあるのはただ、毅然とした覚悟だけだった。
「……臼井先輩。私、どうしたらいいんでしょうか」
私は気づけば、臼井先輩に自分の気持ちを吐露していた。
「ん? どうするって?」
「私、反町先輩に言われて、白雪先輩とパートナーになった後のことを想像したんです。それで、その、ずっと背中に追いつかない日々を送る私が、絶望に堕ちる姿が目に浮かんだんです」
臼井先輩は私の話を遮ることなく、黙って真剣に聞いてくれる。
「私、怖くなって。そこから、気持ちが揺らいじゃって、どうしたらいいのか分からなくなって……臼井先輩、私、どうしたらいいんでしょうか?」
反町先輩との話を終えてから、私の脳裏に焼き付くのは、雫さんとパートナーになった後の自分の姿だった。
臼井先輩は自分のことなんか気にしないでいいと言うが、それ以前の問題で、私は、パートナー後の未来に
「ん~? どうしたらいいって……。今の言葉で答えは出てる気がするけど……」
「え!? そ、そうなんですか!?」
臼井先輩は気持ちを零した私に、小首を傾げて疑問符を浮かべる。逆に『何で分からない?』といった風な雰囲気すら漂っていた。
今の言葉にどこに答えがあるのか、私にはさっぱり分からない。今も、自分の言葉を思い返してみるけど、やっぱり分からなかった。
「ん。神崎さんは、雫ちゃんとパートナーになる未来を想像した。そして、その先で挫折して、絶望している自分を想像し、怖いと思った」
「は、はい。そうです」
「ん。でも、それなら、普通、逃げる選択肢を取るはず。人は本気で無理だと感じたことに、そんなに長く悩まない」
臼井先輩は首を振る。
「才能の差も見えている。追いつけない未来も想像できている。諦める理由はたくさんある。それなのに、神崎さんはまだ悩んでいる。迷っている」
「……」
「それは、諦めたくないと言う気持ちが強いから。ううん。そもそも、もともと諦めてなんかない」
臼井先輩の真っ直ぐな眼差しが私を射抜く。
「もとも、と、諦めてない? わ、私こんなにも悩んでるのに……?」
「ん。神崎さんが悩んでいるのは、憧れを追い求めるかどうか、諦めるかどうか、その”答え”を知りたいわけじゃない」
「ど、どういう意味ですか?」
「神崎さんは、たぶん。誰かにその一歩を踏み出す背中を強引にでも押してもらいたかっただけ」
その言葉に胸が小さく震えた。
否定できなかった。
私はずっと、自分で答えを探しているつもりだった。
けれど本当は違う。
雫さんを追いかける未来も、そこで挫折するかもしれない未来も、想像した。怖かった。
でも、それは、諦めたいとかじゃない。
ただ、自分で決める覚悟が持てなくて、誰かに背中を押してほしかっただけだっただけ。
ただ、それだけだった。
「わ、たしは、どう、したら……いいんでしょうか?」
気づけば、私はもう一度同じ問いを口にしていた。
覚悟の決まらない私の背中を強引にでも押して、強引に一歩を進めてくれる、そんな言葉を求めて。
「ん。ごめん。それは言えない。言うつもりもない。その決断は神崎さんの今後の行方を決定づけることだから。私が無責任に背中を押して、もし、そのせいで、神崎さんの今後をめちゃくちゃにしたら、その罪は、背中を押した私にも襲い掛かる。私は、今でも自分の罪で一杯一杯なのに、これ以上はとても無理」
臼井先輩の表情は少しだけ、陰鬱とするも、すぐに淡白な表情に戻る。そして、私の方へと黄色い瞳を向けながら、
「ん。それに、この手の大事な決断は自分で決めるべき」
そう言った。
確かに臼井先輩の言う通りだ。
誰かに背中を押してもらうということは、その選択の責任の一端を相手に背負わせるということ。
ましてや、それが人生を左右するような決断なら尚更だ。
自分の未来を決める責任ですら重いのに、その責任を他人にまで負わせようとしていた。
それを理解した途端、なんて身勝手で、なんて浅はかなことを臼井先輩に訊いてしまったのだろうと、自分の愚かさ嫌気が差した。
「す、すみません! 私、臼井先輩になんて愚かなことを」
「気にしないでいい。私が伝えたいのはそれだけ。後は、神崎さん次第」
そう言って臼井先輩は踵を返し、私の目の前から去ったのであった。
*
「ふう~ もう夜かあ」
私は刀を振り下ろすのを止めて、訓練所から覗き込む満月を見て、夜を自覚する。
あの後、臼井先輩と別れた私は、丁度、三限目の授業が終わった凜ちゃんと合流。
凜ちゃんも私の時と同様、初任務でお世話になる先輩たちから親睦を深める連絡が来ており、その時間まで私たちは一緒に過ごしていた。
凜ちゃんは、まあ、人付き合いが得意な方ではないため、親睦会の時間までずっとそわそわしていたが。
凜ちゃんと別れた後は、訓練所へと赴き、強さを磨くことに専念。
実は師匠も、昨日、私と同じで初任務だった。今もおそらく、休養日を満喫しているに違いない。
昨日、私が初任務を終えてヘリポートに着いたときに、たまたま、任務終わりの師匠の姿を見かけた。
私は無事に生還してくれたことに、自分が生還した時よりも、安堵を浮かべていた。
師匠に教えを乞いたいのは山々だが、休養日なこともあるし、初任務で疲労があるだろうと思った私は一人で鍛錬をすることに決め、せこせこと、今の今まで研鑽を磨いていた。
雫さんがいつ私にアプローチを仕掛けてくるのかは分からない。だが、流石に今日ではないだろう。
それに、一度心を空っぽにして、ちゃんと自分の気持ちと向き合いたく、私は懸命に鍛錬に打ち込んでいた。
運動で汗を流したおかげか、頭の中を覆っていた
高鳴る胸の鼓動は収まらないままでも、少なくとも今は、落ち着いて考えられそうだった。
――ぐううう~。
胃から魂の嘆きが。
「その前にちょっと、お腹を満たそう」
私は、自分の気持ちと向かい合う前に、お腹が空いた~という胃のわがままに付き合うことにする。
刀を鞘に抑め、私は準備を整えると、疲れ切った足を動かして訓練所から去って行く。
「今日の夕飯は何食べようかな~」
そんな呑気な言葉を零し、私は空腹を
そんなのほほんとした思考に浸っていると、正面の奥から――こつ、こつ、と規則正しい足音が私の耳に響く。
じゃっかん天井方向に視線を向けていた私は、その音につられて、ゆっくりと視線を正面に――
「……光ちゃん」
「しず、くさん……」
雫さんに遭遇した私は胃の機嫌を取ることも忘れ、正面の人物にただただ意識を割かれた。
――これは何の因果だろうか。
この学院にはたくさんの生徒がいる。
にもかかわらず、どうして、よりにもよって雫さんと出会うのだろう。
この状況じゃなければ、私は、きっと喜んでいた。
運命に感謝していた。
憧れの人と少しでも長く言葉を交わせることに胸を躍らせ、緊張しながらも必死に話題を探し、その時間が終わってほしくないと、心のどこかで願っていたはずだ。
そんな相手だった。
そんな相手だからこそ。
雫さんに対して抱いたこの感情は、ひどく皮肉だった。
私が最も会いたかった人は。
今の状況に限っては、最も”会いたくない”人だった。
まだ、私は自分自身の気持ちに向かっていない。何もできていない。何も定まっていない。
勇気も覚悟も、何一つとして、持ち合わせていない。
このまま、雫さんが何も言わず、私を素通りしてくれることを願うばかりなのだが、そんな私の浅はかな願いは儚く砕け散る。
「ちょうどいいわ」
雫さんのちょうどいい、という言葉に、私の心臓は大きく跳ねた。
雫さんは、いつかの時と同じ、真っ黒の憎悪の瞳を宿したまま、こちらを見下ろしながら口を開く。
「明後日、日曜日。私は午前中にこの訓練所を貸し切りにしている。そこで光ちゃんを待つ。流石に今回は大々的にせず、二人っきりで、あなたと戦う。条件は前回同様で、ね」
雫さんは眼差しを鋭くさせて、私を射抜きながら、右手をぎゅっと爪が食い込むほどに強く、握りしめる。
「今度こそ、必ず、絶対に、あなたの憧れを潰す……!」
全ての憎悪を煮詰めたような声だった。
低く。
重く。
聞いてるだけで胸の奥が冷えていく。
雫さんは私と出会う前から憧れを憎み、今もその憎しみは健在なのは御覧の通りだ。
もし、ここで私が引いたら、雫さんは来年も同じ催しを開催し、自分に憧れてきた人を絶望に叩き落すのだろう。
そして、反町先輩も臼井先輩もまた、その凄惨な悲劇を目にして、また罪を積み重ねる。
この悪夢に終止符を打つのは私が絶望に堕ちなければいい。それだけだ。
それはずっと変わらない。
正直、この場で気持ちを定める必要はない。
雫さんが提示した日曜日まで、あと一日ちょっとある。
その時までに、自分としっかり向き合い覚悟を形成していけばいい。
でも、私は、それまでに覚悟を決めれる未来が見えなかった。いや、そもそも自分で覚悟を決める、自分を想像できなかった。
自分の力だけで一歩を踏み出し、自分の意思で覚悟を定める。
そんな当たり前のことが、今の私には途方もなく難しく思えた。
誰かに強引にでも背中を押してもらえれば、覚悟を定められるというもの。
でも、それは臼井先輩から禁じられているため、私一人でどうにかする他ない。
私は足が竦みそうになるのを堪えながら、ふと、もう一度、確かめるように雫さんの瞳を覗き込んだ。
そこにあるのは、何度見ても変わらない、憎悪に塗り潰された黒。
反町先輩は言っていた。
雫さんは誰かの憧れを絶望へ突き落とすたび、その表情を苦痛に歪めているのだと。
もしあの話を聞いていなければ、私は今もこの瞳をただの憎悪だと思っていただろう。
けれど――今は違った。
黒一色に見えたその瞳の奥に、私は見つけてしまった。
苦しみを。
悲しみを。
誰にも届かない悲鳴のようなものを。
そして、それを見た瞬間だった。
私の胸の奥から、抑えきれない激情が溢れ出した。
――助けたい。
そんな綺麗な言葉では足りない。
――手を伸ばしたい。
――救いたい。
そうしたいと、どうしようもなく願ってしまった。
そして、同時に思ってしまった。
――雫さんに、そのような瞳は似合わない。
と。
命を救ってくれた、あの日の雫さんを私は思い出す。
私を抱きかかえていた時に見せた、慈愛に満ちた眼差し。
私の不安を和らげるように頭を撫でてくれた時に見せた。優しい眼差し。
私から離れ、ゴーストへと向かう直前に見せた、揺るぎない毅然の眼差し。
あの日見せた雫さんの瞳はどれもが眩しかった。
私の心に焼き付いて離れないほどの、強くて優しい眩しさが。
だからこそ――。
今、目の前にある深い闇は、あまりにも雫さんらしくなかった。
それはきっと、私のエゴだ。
勝手に憧れて。
勝手に理想を抱いて。
勝手に失望したくないだけの、救いようのない身勝手さだ。
でも、それでも、やっぱり、雫さんにはそんな瞳は似合わないと思ってしまったのだ。
――そう、思ってしまったのだ。
私の心は、未だに一歩踏み出すのは怖がっていて、勇気もなくて、覚悟だってまだ成ってない。
なのに、胸の奥で暴れ続ける衝動は、そんな理屈も恐怖も、すべて押し流していく。
「それじゃあね、光ちゃん」
雫さんは私に言いたいことを伝えると、何も言わない私の横を素通りした。
こつ、こつ、と雫さんの奏でるローファの音は、だんだんと遠ざかり私の耳に届く振動さえも弱弱しく、儚くなっていく。
「雫さん!」
気づけば、私は雫さんの名前を叫びながら、振り返っていた。
その呼び声に雫さんは踵を返す足を止めて、顔だけをこちらに向ける。
雫さんの背後では訓練所のグラウンドを照らすライトが白く輝き、その逆光によって雫さんの姿は黒いシルエットとなって浮かび上がっていた。
「怖くても、届かなくても……それでも私は、あなたに憧れ続けます! 日曜日の戦いで、必ず証明してみせます!」
私は誓いを立てるようにぐっと両手で握り拳を作る。
その言葉は、誰かに向けたものではなく、自分自身に刻みつけるための覚悟だった。
雫さんの返答はなく、コツコツと足音を奏でながら、グラウンドへと身を投げ出していき、シルエットは、光に包まれていった。
私は胸の奥に灯った小さな覚悟が、消えてしまわないように、その温もりを静かに抱き続けた。