賢者の孫with超宇宙刑事ギャバンインフィニティ   作:弩城怜慈推し

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第8話 破天荒な新英雄

 練兵場にて、シンとレイジは、カートを魔人化させ、ネガエモルギアを渡した張本人であるシュトロームと遭遇した。 

 それからしばらくしたある日、アールスハイド王国の王城では。

 

「帝国に動きがある?」

「ええ。国が町や村から食料をかき集めているそうです。軍に動きがあるという情報も……。これはひょっとすると……」

「戦争の準備か……⁉︎」

 

 ディセウムは、廊下でドミニクからの報告を受けていた。

 帝国が攻めてくるというのを察知したそうだ。

 それを聞いたディセウムは。

 

「しかし……何故今?」

「魔物の増加に加え、数十年ぶりの魔人の出現……更にはそれを裏で手引きしていたというシュトロームという理性を保った魔人。この度重なる王国の騒動……帝国は我が国を攻める好機と見たのかもしれません」

「(……しかし、それによって混乱が起きている訳ではない……。)確証はないが……我が国も戦争に備えねばなるまい。準備を進めておく様に」

「はっ!」

 

 ディセウムがそう呟くと、ドミニクはそう言う。

 実際、アールスハイド王国では、そんな騒動が立て続けに発生しているのだ。

 ディセウムは、ドミニクにそう言う。

 ドミニクがそう答える中、ディセウムは。

 

(もしや、帝国はレイジ君のギャバンシステムを狙いにきたのか?)

 

 ディセウムはそんな風に考えていた。

 以前、レイジがヘラルド皇帝の顔に傷をつけた事を把握している為、あり得ると考えていたのだ。

 


 

 そんなやり取りの中、レイジ達はビーン工房へと向かっていた。

 ちなみに、行く面子は、レイジ、シン、シシリー、マリア、オーグ、トール、ユリウス、フルールだ。

 

「ビーン工房って、まだ遠いんですか?」

「もうすぐそこで御座る」

「けど、トニー殿は残念でしたね。来られないなんて……」

「それはしょうがないよ」

 

 シシリーとユリウスがそう話して、トールとフルールはそんな風に話していた。

 新たな剣の発案者であるトニーは、用事で来られなかったのだ。

 そんな風に話している中、レイジとシンは考え込んでいた。

 気づいたオーグが話しかける。

 

「さっきからどうしたんだ、二人とも?」

「オーグ、シュトロームは多分生きてる」

「何⁉︎」

 

 オーグがそう聞くと、レイジはそう答える。

 シュトロームは生きているのだと。

 オーグが驚く中、シンが口を開く。

 

「お前も見ただろ?俺の熱光線の跡を」

「ああ……」

「あの後、荒野で使ってみたけど、普通はああやって凹みが出来るだけで、爆発なんて起きないはずなんだ」

「っ!つまり、あの時爆発を起こしたのは……!」

「十中八九、シュトロームだろうな」

「警戒は……しておくべきだと思う」

 

 シンがそう尋ねて、オーグがそう答えると、シンはそう言う。

 本来、シンのあの魔法は、地面に凹みを作るだけで、爆発はしないのだ。

 それ故、シュトロームが生きていると確信していた。

 それを聞いたオーグが口を開く。

 

「……シン。工房に着いたら、作りたい物を発注しろ。資金は王家が出す」

「え?」

「今の話を聞いてしまうとなぁ……。シュトロームと対等に戦えるのは現状、お前とレイジだけだ。装備は充実させておこう」

 

 オーグは、資金は王家が出すから、作りたい剣を発注するように言う。

 シュトロームが生きていると聞いて、備える必要があると判断したのだ。

 しばらくすると、ビーン工房へと到着する。

 

「ビーン工房にようこそ!歓迎するっス!」

「お、おはようございます。皆さん」

 

 シン達が到着したのを見て、マークは歓迎するかのようにそう言う。

 すると、マークの後ろからオリビアが顔を出した。

 

「おはようマーク、オリビア」

「休日なのに、マークと一緒なのか?」

 

 シンとレイジは、そんな風に言う。

 そう。

 今日は休日なのだが、何故かマークとオリビアが一緒にいたのだ。

 そんなオリビアを見て、シシリーとマリアがきゅぴーんと来た。

 フルールも、興味深そうな反応をしていた。

 

「おはようオリビア。では早速♡」

「ええ、これはお話を伺わせて頂かなければ♪」

「そうだね!話を聞かせて!」

「うう……お手柔らかにお願いしますぅ……」

 

 マリア、シシリー、フルールの3人はそんな風に言って、オリビアに詰め寄る。

 そして、3人はオリビアの腕をがっしりと掴んで、どこかへと連れていったのだった。

 それを見て、シンとレイジは呆然としていたが、すぐにレイジ達は工房の中へと入る。

 マークは大声を出す。

 

「父ちゃん!とーちゃーん!」

「何だバカ野郎!デケェ声で呼びやがって!工房ん中じゃ親方って呼べって言ってんだろうが!」

 

 マークがそう叫ぶと、親方らしき人物はそう叫んだ。

 彼はハロルド=ビーン。

 マークの父親にして、ビーン工房の工房主だ。

 ハロルドが怒鳴った事に、オーグを除く全員が驚く。

 オーグは、ハロルドに話しかける。

 

「忙しい所をスマンな。私はアウグスト=フォン=アールスハイドだ」

「ア……ア……アウグスト殿下ぁぁぁ⁉︎」

 

 オーグはハロルドにそう話しかける。

 オーグの姿を確認したハロルドを始めとする職人達は、一斉に跪く。

 

「凄い勢いだな……」

「ああ、手を止めさせてすまない。工房主に話があるだけだ。作業を続けてくれ」

「は……話って言うのは?」

「実は、ここに居るシンの武器開発を手伝って欲しいのだ」

「このボウズ…………いや、坊ちゃんの武器ですか?」

「紹介しておこうか。彼はシン=ウォルフォード。賢者マーリン様の孫だ」

「っ!……って事は、彼が魔人を討伐したって言う……⁉︎」

 

 オーグがそう言うと、ハロルドは要件を聞く。

 オーグはそう頼み込むと、ハロルドは坊主と言いかけたが、すぐに訂正する。

 オーグが紹介する人物という事もあってか。

 オーグがそう言うと、ハロルドや他の職人達も驚いた。

 

「頼めるか?」

「そりゃ願ってもねえ!新英雄様の武器を作れるとなりゃ、これ以上の誉れはねえ!それで、どんな武器を作るんですか?」

「シン」

「あぁ」

「どんな武器が出来んのかな?」

 

 オーグの問いに対して、ハロルド達は快く引き受ける。

 そこから、シンはハロルドに武器のアイデアを伝えていき、レイジはそう呟く。

 


 

 一方、アールスハイドから離れた国、ブルースフィア帝国の帝城。

 そこでは、1人の男が口を開いた。

 

「ゼスト、貴様の持っていたアールスハイドの情報を何処から仕入れて来たのだ?」

 

 その男は背後にいる男にそう尋ねる。 

 ブルースフィア皇帝のヘラルド=フォン=ブルースフィアだ。

 その皇帝に話しかけているのは、ゼストという名前の人物であり、帝国の諜報部隊のリーダーだ。 

 ヘラルドの問いに対して、ゼストは口を開く。

 

「王国内に協力者が居りましてね。魔物の増加で国中が混乱していると報告があったのです」

「対して我が国の魔物は急激に減っている。王国が魔物の手を焼いている今……確かに攻め入る好機か。フン、お前如き平民の意見。本来ならば聞く耳を持たぬが、まあ、今回は我々帝国貴族が有意義に使ってやる。光栄に思え」

「はい。ありがたき幸せ」

 

 ゼストはそう答える。

 王国内に協力者がおり、報告を受けているのだと。 

 それを聞いたヘラルドはそう言うと、ゼストは頭を下げる。

 ヘラルドが去っていく中、ゼストはニヤリと笑っていた。

 ブルースフィア帝国は、アールスハイド王国に攻め込もうとしていたのだ。

 


 

 一方、ブルースフィア帝国の魔の手が迫っている事に気付いていないレイジ達はというと。

 

「じゃあ親父さん、後はお願いします」

「おう任しとけ!試作が出来る頃にまた来てくれ!」

 

 シンの武器のアイデアを伝え、試作を作ってもらう事になった。

 シンがそう言うと、ハロルドはそう答える。

 レイジ達は、外で待っているシシリー達と合流した。

 

「あ、あっちも終わったみたい!」

「お話済みましたか?」

「あぁ。そっちは?」

「まぁ一応」

 

 フルールがそう言うと、シシリーはそう問いかける。

 それに対して、シンがそう聞くと、マリアとシシリーは満足気な笑みを浮かべていた。

 だが、オリビアはボロボロだった。

 

「オリビア、大丈夫か?」

「何とか……」

(恋バナをする女子って、怖いな……。ていうか、こうなるまでやるのは、やめてやれって)

 

 レイジがオリビアにそう問いかけると、オリビアはそう答える。

 ボロボロのオリビアを見て、レイジがそう思っている中、シンはマークに話しかける。

 

「ところで……マークの店って、他に何を売ってるんだ?」

「2階は生活用品で、3階はアクセサリーとかッスね」

(アクセサリーか……。防御魔法を付与して制服と併用すれば更に防御効果を高められるな……)

 

 シンがそう問いかけると、マークはそう答える。

 ビーン工房は、生活用品やアクセサリーなども取り扱っているのだ。

 それを聞いたシンが考え込んでいると、シシリーが話しかける。

 

「どうかしましたか?」

「いやぁ。ねえシシリー、何か欲しいアクセサリーない?」

「え⁉︎ア……ア……ア……アクセサリー……ですか⁉︎えと、あの……ゆ……指輪とか……?でもいきなりそんな!と……取り敢えずネックレスとかブレスレットも捨て難いし……あ、ピアスも嬉しい……」

 

 シシリーがそう話しかけると、シンはシシリーにそう問いかける。

 シンからそう言われたシシリーは、慌てだして、欲しい物を言っていく。

 それを見ていたレイジは。

 

(あ、シシリーの奴、絶対に勘違いしてんだろ)

「そ、そんなに沢山欲しいの?」

「あ……いえ!そう言う訳じゃなくて!シ、シン君に貰うなら何が良いかなって……」

「いや、実はアクセサリーの魔法付与について考えてて……付与して皆に渡すなら、何が良いかと思ってさ……」

「あ、そうですよね……」

「あれ⁉︎」

 

 それを見て、シシリーが勘違いをしているのではと察した。

 シシリーがそう言う中、シンはそう告げる。

 シンの言葉にシシリーが涙を流しながら落ち込み、シンは驚いた反応をする。

 すると、レイジ達はシンに非難の視線を向ける。

 

「お前、それはないだろう……!」

「上げて落とす……鬼ですか⁉︎」

「シシリー可哀想……!」

「最低だな、シン」

「それは流石に無いと思うけど……」

「え⁉︎え⁉︎……あっ!(そうか、さっきの聞き方じゃまるで……!)あ〜〜……シシリー?」

「何ですか……?」

「ちょっと……良い?」

 

 オーグ、トール、マリア、レイジ、フルールが軽蔑の視線を向けながらそう言う。

 シシリーに期待させておいて、一気に落としたシンの所業を見て。

 それを聞いて、シンはシシリーの意図をようやく把握する。

 その後、シンがシシリーを連れて、工房の3階へと向かう。

 それを見ていたマリア達は。

 

「ハァ……まったく、シンは魔法の才能は天才的なのに、乙女心に関してはどんだけ鈍感なのよ……」

「はは……まあ、自覚がない分、タチが悪いのは確かだな」 

 

 マリアはそう呟くと、オーグはそう呟いた。

 それを見ていたフルールは。

 

「大丈夫かな……シシリーは……」

「それよりも……フルール。あんた、レイジのことはどう思ってるの?」

「ぶっ⁉︎い、いきなりどうしたの⁉︎」

 

 フルールはシシリーの事を心配していたのか、そう呟いた。

 すると、マリアはニヤリと笑いながらそう問いかけ、フルールは吹き出した。

 

「だって……フルールって、魔空空間ってのに吸い込まれそうになった時、レイジにお姫様抱っこされて助けられたでしょ?そこから、レイジに積極的に話すようになったし、もしかしたらって思ってさ!」

「ちょっ……⁉︎」

 

 マリアはそんな風に言う。

 魔空空間に吸い込まれそうになった時、レイジにお姫様抱っこをされてから、フルールが積極的にレイジに話しかけるようになったのを見て、マリアはそう察したのだ。

 フルールが慌てる中。

 

(フルールの奴、大丈夫か?マリアに変な事を吹き込まれてるみたいだが……)

 

 レイジはフルールとマリアの様子を見て、そんな風に思っていた。  

 それを見ていたオーグ達は。

 

「……あの、殿下。これは……」

「そうだな。あいつの顔を見れば分かる。フルールが熱を出したのではと心配している顔だ」

「そうでござるか?」

「レイジさんって……フルールさんの気持ちに気づいていないんでしょうか……」

「あの様子だと、気づいていないだろうな」

 

 トールがそう話しかける中、オーグはそう答える。

 レイジは明後日の方向に、フルールを心配しているのだと。

 ユリウスがそう言う中、オリビアがそう呟くと、オーグはそう言う。

 

「……やれやれ。フローレスの好意なんて、周りから見ればダダ漏れだろうに……あいつが察しないせいで、進むものも進まんな」

「……とりあえず、様子を見ましょうか?」

「そうだな」

 

 オーグはレイジが鈍感な事に呆れていた。

 それを聞いて、トールがそう聞くと、オーグはそんな風に言う。

 そんなやり取りが行われていたのだった。

 


 

 そんなやりとりからしばらくが経過した。

 遂に、シンとレイジの叙勲式の日がやってきたのだ。

 王城の控え室にて、レイジとシンは待っていた。

 

「いよいよだな」

「緊張するな……」

「シン」

「何だよ?」

「もう、なる様になれだよ。ヘマをしなければ大丈夫だ」

「お前、何でそんなに緊張してないんだよ……」

 

 レイジがそんな風に言うと、シンは緊張しているのか、そんな風に呟いていた。

 それに対して、レイジがそう言うと、シンはレイジに恨みがましい視線を向ける。

 レイジは、シンの視線を気にしていないのか、そっぽを向いていた。

 すると、係員が入ってくる。

 

「ウォルフォード殿、ウォーカー殿。お待たせしました」

「分かりました」

「いよいよだな……」

 

 係員が入ってきて、2人にそう話しかける。

 それを聞いて、2人がそう言う中、二人は扉の前に案内される。

 扉が開かれると、声がする。

 

「救国の勇者!新たなる英雄!シン=ウォルフォード様とレイジ=ウォーカー様!ご到着!」

 

 儀仗官のその声と共に、周囲の人が拍手をする。

 その数は多く、貴族が集まっていたのだ。

 

(マ、マジかよ……⁉︎)

(すっげぇな。人が一杯だ……)

 

 シンとレイジは前に進む。

 その中には、ドミニクとルーパーの2人や、マーリンやメリダの姿もあった。

 一番奥にはディセウムが居て、二人は跪く。

 

「シン=ウォルフォード、レイジ=ウォーカー。此度の働き、誠に見事であった。その働きに敬意を表し勲一等に叙する」

「つ……謹んでお受け致します」

「謹んでお受け致します」

 

 ディセウムはそう告げる。

 それに対して、シンが緊張気味に言う中、レイジは比較的冷静に言う。

 二人は、勲一等を叙勲される。

 

「見事であった」

「あ、ありがたき幸せ……」

「恐悦至極にございます」

(や……やりづれーよディスおじさん……‼︎)

 

 ディセウムがそう言うと、2人はそう答える。

 二人の叙勲が終わると、ディセウムは大声で宣言する。

 

「皆の者よく聞け!このシン=ウォルフォードは我が友、賢者マーリン=ウォルフォードの孫であり、我にとっても甥の様な存在だ!彼らがこの国に居るのは彼らの教育の為であり、決して我が国に利を齎す為ではない!彼らを我が国に招く際、賢者殿と約束した事がある!彼らを政治利用も軍事利用もしない事だ!もちろん、この事はレイジ=ウォーカーも同様だ!その約束が破られた際、英雄の一族はこの地を去る!その事努々忘れるな!」

(約束してくれた事……本当に言ってくれたんだ……。こう言う所はカッケーな、ディスおじさん)

(流石は陛下だな。)

 

 ディセウムはそう宣言すると、周囲は騒めく。

 それを聞いて、シンとレイジがそう思う中、ディセウムは二人に対して、笑みを浮かべる。

 

『それでは、これにて叙勲式を終了致します』

「ほっ……」

「これで帰れるな」

『この後大ホールにてパーティーが催されます!皆様ご参加下さい!』

((終わってなかった〜〜〜〜〜!))

 

 儀仗官がそう言うと、ホッとすると同時に、二人は嘆く。

 パーティーが開かれ、二人は話を聞かされたり、周囲に女性が集まっていた。

 その後、二人はバルコニーに居た。

 

「ふぅ……」

「疲れた……」

「お疲れのようだねシン、レイジ」

「マーリン様、メリダ様」

 

 二人が疲れた様子を見せていると、メリダが話しかけてくる。

 その横には、マーリンの姿もあった。

 

「私らが傍に居なきゃ、今頃囲んでた女にお持ち帰りされてたんじゃないのかい?」

「流石にそれはないよ……」

「やめてくれって、そう言うの」

「どうだかねぇ。婚期を逃し掛けてる貴族の女相手に逃げ切れるかね?マーリンだって昔……」

「その話は止めんか?シン、レイジ君、明日も学院あるし、そろそろ自宅へ戻った方が良いと思うぞ!」

 

 メリダが笑みを浮かべながらそう言うと、シンとレイジはそう呟く。   

 メリダが何かを言おうとすると、マーリンは遮って、そんな風に言う。

 

「そうだね、帰って早めに休むよ」

「うんうん!それが良いじゃろ!」

「じゃあ、メリダ様。その話はまた今度、聞かせてくれ」

「いいよ」

「それはよくないじゃろ⁉︎」

 

 マーリンの言葉に、シンがそう頷く中、レイジはそう言う。  

 メリダが了承する中、マーリンはそう叫んだのだった。

 


 

 その翌日。

 

「ふぁ〜……」

「眠い……」

「お疲れみたいですね」

 

 シンとレイジは制服に着替えて、シシリー達と合流すると、欠伸をする。

 シシリーがそう話しかけると。

 

「昨日の叙勲式の後、パーティやら何やらでバタバタして……」

「じゃあ行くか」

 

 二人はそう話す。

 昨日の叙勲式の疲れがまだ取れていないのだ。

 レイジが玄関の扉を開けた瞬間。

 

「おお!シン様とレイジ様が出て来たぞ!」

「キャア!シン様ー!」

「シン様こっち向いてー!」

「レイジ様!握手して下さーい!」

 

 2人が出てくるのを見た国民達が護衛を放り飛ばして、レイジとシンへ向かって走る。

 それを見たレイジがすぐに玄関を閉めた。

 

「なんで⁉︎」

「嘘だろ⁉︎」

「叙勲はしたけど、陛下のご配慮で国民へのお披露目はされなかったから。家に押し掛けて来たんじゃない?」

「マジかぁ……」

「これじゃ学院へ行けないなぁ……。しょうがない、今日はゲート使うか。」

 

 シンとレイジがそう言うと、マリアはそう言う。

 ディセウムの配慮により、国民へのお披露目は無しになった為、ウォルフォード邸にまで押しかけてきたのだ。

 そうして、ゲートを使って、Sクラスの教室へと向かう。

 

「うわっ⁉︎

「わぁ!びっくりしたぁ!」

 

 すると、目の前にユーリが居て、シンとユーリの2人は驚いた。

 レイジは口を開いた。

 

「悪いな、皆。驚かせて」

「何だい⁉︎この魔法は⁉︎」

「信じられない!どういう事⁉︎」

 

 レイジが謝る中、ゲートの魔法を知らない人たちは驚く。

 すると、レイジ達が口を開く。

 

「いやぁ、家の前に人が凄い集まってて、出られなくなったから……」

「大行列だったぜ……」

「ああ、それでゲートで来たのか」

「そう」

 

 シンとレイジがそう言うと、オーグは察したのか、そんな風に言う。

 すると、ゲートという単語を聞いて、リンが反応する。

 

「ゲート⁉︎何それ!詳しく教えて!」

「これ、ゲートって魔法でね、任意の場所と場所を繋ぐんだ」

「凄い!もしかしてウォルフォード君は転移魔法が使えるの?」

「正確には転移じゃないよ。移動魔法ではあるけど」

 

 リンはシンにそう聞くと、シンはそう答える。

 リンはシンの説明を聞いて、ゲートが転移魔法なのかと思った。

 それに対して、シンはそう答えて、それを聞いたリンは首を傾げる。

 

「どういう事?」

「転移って物体そのものを移動させる魔法だろ?」

「これは違うの?」

「これは場所と場所の距離を縮めただけ」

「ん〜……」

「まあ、解らなくてもしょうがないよ。この魔法は爺ちゃんも理解出来なかったからね」

「賢者様も⁉︎」

「まぁ、訓練すればリンもその内使えるようになるさ。究極魔法研究会の一員だろ?魔力の暴走には気を付けろよ?」

「ん!頑張る!」

 

 リンが首を傾げる中、シンはゲートの概要について説明する。

 それを聞いて、リンが考え込む中、シンはマーリンも理解できなかったと聞いて、驚いた。

 シンがそう言うと、リンはやる気を見せる。

 

「やる気だな」

(リンもやる気を見せてるし、やはりここは1つ……近々合宿でもやって全員を扱き上げる……‼︎ふっふっふっふっふっ!)

「「「っ!!」」」

 

 レイジがそう言う中、シンはそう思っていた。

 すると、後ろからのシンの気迫にトニー、リン、ユーリはゾクッとした。

 

「お前、絶対何か企んでるな、最近」

 

 それを見たオーグは、そう突っ込む。

 すると。

 

「おはよう、レイジ君!」

「おう。おはよう」

 

 フルールはレイジにそう話しかける。

 レイジがそう答えると。

 

「叙勲式、お疲れ様!」

「おう。色々と疲れたな」

 

 フルールとレイジはそんな風に話をしていた。

 それを見て、他の面々は微笑ましく見守っていた。

 


 

 放課後、究極魔法研究会では、一同が集まっていた。

 すると、黒板の前にいたシンとレイジは口を開く。

 

「今日は、皆のレベルアップを行おうと思う!」

「私たちの……?」

「レベルアップ?」

「何か思い付いた顔をしていたが、それだったか」

「ここの所、異常な事件続きで、まだ何か起こる可能性は十分に考えられるので、それに備えて皆のレベルアップを図ります!」

 

 レイジがそう言うと、アリスとフルールは首を傾げる。

 オーグがそう言うと、シンはそう言う。

 実際、シュトロームによる人体実験だったりが起こっているので、備えがあった方がいいと判断したのだ。

 

「なるほど。想像していたより変な考えではなかった」

「おい!」

「確かにな。シンならやらかしそうだよな!」

「おい!」

 

 オーグとレイジがそう言うと、シンはそう突っ込む。

 あまりにも酷い言い様をしてくるオーグとレイジに対して。

 オーグは、シンに聞く。

 

「そのレベルアップとは何をするつもりだ?」

「皆がある程度の攻撃、防御魔法を使えるようになる事と、アクセサリーの防御魔法の付与」

「そうすれば、今後の事件が起こったとしても、対処が出来るからな。」

「あぁ、シシリーの指輪みたいな?」

「おほん、まずは、どの位の魔法が制御出来るか調べさせて貰えるかな?」

「魔力制御?何故だ?」

 

 オーグがそう聞くと、シンとレイジはそう答える。

 皆がある程度、攻撃魔法と防御魔法を使える事と、アクセサリーに防御魔法を付与する事を目標とするのだと。

 マリアがシシリーの指輪を見ながらそう言う中、シンは咳払いしてそう言うと、オーグは首を傾げる。

 

「何故って、高度の魔法には似合った魔力制御が必要だろ?」

「高度な魔法に必要なのは、詠唱の工夫と、明確なイメージじゃないんですか?」

「いやいや、そもそも魔法を使うには、燃料となる魔力が必要で、高度な魔法を使うには、それなりの魔力制御が出来ないと……」

 

 シンがそう言うと、トールはそう言う。

 シンはそう説明するが、レイジ以外は理解出来てないのか、ピンときていなかった。

 

「これは一から認識を改めないとダメだな……」

(ジェネレーションギャップって奴だな。魔法の主流は、マーリンさん達の時代と今では、大分違うからな)

 

 シンがそう呟く中、レイジはそう思う。

 実際、マーリン達の時代では、魔力制御が必要なのだが、今は高度の魔法を使うには、詠唱の工夫と明確なイメージが必要だと認識されているのだ。

 そして、シン達の近くに集まる。

 

「マリア、魔力障壁を展開してみて。」

「え?いいけど……ほい!」

 

 シンにそう言われたマリアは、訝しげな表情を浮かべつつも、魔力障壁を展開する。

 それを見たシンは。

 

「ふむ……」

 

 シンはそう呟くと、マリアが展開した魔力障壁を突っ突く。

 

「ダメだね。障壁が薄い。これじゃ殆ど魔法を防げないぞ」

「ええ⁉︎」

「じゃ今度はシシリー。この前付与したアクセサリーの防御魔法を展開してくれない?」

 

 シンはそう評価すると、マリアは驚く。

 シンにそう言われたシシリーは、防御魔法を展開する。

 すると魔力障壁が二重になって展開される。

 

「わぁ!凄い魔力障壁!」

「壁が二重に⁉︎」

「あ、物理障壁も付与されてるぅ!」

「これには俺の魔力制御のイメージが付与してある。そのイメージに沿って、付与してある魔法が必要な魔力を集めて魔力・物理障壁を展開してるんだ」

「確かに制御されている魔力が凄い……」

 

 シシリーが展開させた魔力障壁を見て、皆がそう反応するながらシンはそう説明する。

 シンの魔力制御のイメージも付与してあり、それを用いて、魔力障壁と物理障壁を展開しているのだ。

 

「この前、シュトロームがレイジの攻撃を防いだだろ?あれ、魔力障壁だったんだぜ?」

「何だと……⁉︎」

「魔力障壁って、純粋な魔力だけで壁を作る一番簡単なものだよね?」

「もっと別の強力な防御魔法とばかり……」

 

 シンがそう言うと、オーグ、アリス、トールはそう言う。

 レイジのギャバリオントリガーによる銃撃を防いだのは、魔力障壁だったのだ。

 すると、シンが口を開く。

 

「魔力が大きければ、魔力障壁だけで十分防げる。じゃ、俺が制御出来る魔力の一部を見せようか」

「ビビるなよ?」

 

 シンがそう言うと、部室内だけ魔力を集中させた。

 すると、レイジ以外の全員が”ぞわっ”と恐怖心が上がった。

 

「……っ‼︎」

「凄い密度です……‼︎

「嘘……こんなに濃いの……⁉︎」

「嘘……⁉︎」

 

 その魔力の密度には、オーグ、トール、ユーリ、フルールの四人はそう言う。

 シンが魔力を解除すると、ユーリの膝が崩れ、アリスが尻餅を付いた。

 

「はぁ……はぁ……」

「こんな感じで魔力制御出来ないと、話にならないんだ。と言う訳で、これから毎〜日魔力制御の練習な!サボんなよ?」

 

 レイジ以外が息を荒くしていると、シンはそう言い、全員頷く。

 そうして、魔力制御の特訓が始まったのだった。

 


 

 一方、ブルースフィア帝国領のある場所。       

 そこには、シュトロームの姿があった。

 シュトロームはベッドの上にいて、体には包帯が巻かれていた。

 

「ほう……それでは、王国も戦争の準備に入ったと」

「はい。帝国軍の動きがあからさまですから、すぐに気付いたようです」

「ゼスト君は上手くやってるみたいですねぇ。さて、どうなると思います?ミリアさん」

 

 シュトロームがそう聞くと、その場に居た女性はそう答える。

 ミリアと呼ばれた女性は、シュトロームの質問に答える。

 

「私には分かりかねます。シュトローム様。包帯を取り替えを」

「私自身の魔力で回復を図っていますし、じきに動けるようになりますよ」

 

 ミリアはそう答えながら、包帯を交換しようとする。

 シュトロームがそう言うと、傷が自己治療で治る。

 

「皆さん、ちゃんと踊って下さいよ?フフフ……アハハハ‼︎」

 

 シュトロームは、そう笑う。

 一方、アールスハイド王国。

 

「……動き出した様だな。このどさくさに紛れて、ネガエモルギアをばら撒くとしよう。己の感情に従う者が……俺を呼ぶ」

 

 デス・ギャバンはそんな風に呟いていた。

 デス・ギャバンも、暗躍を続けていた。

 


 

 一方、高等魔法学院では、レイジ達が帰ろうとしていた。

 学院を出ようとすると。

 

「あ!来たぞーーーー‼︎」

「シン様ーーー‼︎」

「レイジ様ーーー‼︎」

「ウォルフォード君!一言ーー‼︎」

「ウォーカー君!抱っこしてーーー‼︎」

 

 校門の前には、たくさんの国民が待ち構えていた。

 

「げっ‼︎」

「嘘だろ⁉︎」

「学院まで押し掛けるか……」

「な、なんて凄まじい……!」

「凄い執念……って言うか私達学院から出られないじゃん‼︎」

「しょうがない、ここはまた……」

 

 国民の凄まじい執念には、シンとレイジも辟易する。

 シンはそう言うと、ゲートの魔法を使う。

 

「おやシン、レイジ。おかえり」

「ただいま」

「ただいま〜」

「ゲートで帰ってきたんだね」

 

 メリダが反応すると、シンとレイジもそう言う。

 リアムがそう反応する中。

 

「はわあっ!けけ、賢者様だよ!」

「導師様も!本物!」

「感激〜〜‼︎」

「どうかしたか?沢山友達を連れて来て」

「皆、Sクラスのクラスメイトだ」

「下校しようと思ったら、校門前も凄い人集りでさ……仕方無いから皆連れて来た。騒ぎ過ぎだよ全く……」

「ほっほっほ!その内収まるじゃろうて」

「だと良いんだけどな……」

 

 一方、アリスにリン、ユーリといった面子は、実際にマーリン達に会えたことに感激していた。

 マーリンの問いにそう答えつつ、辟易したのか、疲れた様にそう言うシンとレイジだった。

 しばらくして、マーリン達から話を聞く事になった。

 

「ほう、シンとレイジ君の指導で魔法の練習を始めたか」

「はい、早速扱かれてしまいましたけど……」

「シン君とレイジ君に魔法を教えたのって賢者様だよね?それじゃあ私達は、賢者様の孫弟子⁉︎」

「賢者様の孫の弟子でもあるで御座るなぁ」

「何だかややこしい……」

 

 マーリンがそう言うと、トールは苦笑気味にそう言う。

 すると、それを聞いたアリス、ユリウス、リンがそう言う。

 すると、マーリンが口を開く。

 

「まぁ、確かに最初に教えたのはわしじゃが、シンとレイジ君はイメージの仕方が特殊での。」

「どういう事ですか?」

「そこはワシとも違っていてのう。シンとレイジ君は魔法の『結果』ではなく『過程』をイメージしとる。皆は、何故火が燃えるのか知っておるか?」

「えっと、それは……火を点けるから?」

「そういう事じゃないと思うんですけど……」

「何故かと聞かれると、明確には答えられません……」

「わしもよく分からん」

 

ズコッ!

 

 マーリンがそう言うと、リンは首を傾げる。

 マーリンは、シンとレイジのイメージの仕方をそう説明すると、アリス、オリビア、オーグの3人はそう言う。

 その直後のマーリンの言葉で、全員がずっこける。

 全員がずっこける中、マーリンが口を開く。

 

「じゃがシンとレイジ君はそこに疑問を持つんじゃ。『火とは何か?』『何故燃えるのか?』結果としての事象を思い浮かべるのではなく、その仕組みを理解する事で、これまでに無かったイメージを作り上げ、より強力な魔法を生み出しておる。例えば、この様に」

 

 マーリンはそう説明する。

 シンとレイジの2人は、仕組みを理解する事で、これまでにない強力な魔法を生み出せているのだと。

 すると、マーリンはゲートの魔法を使う。

 

「あ!爺ちゃん、それ!」

「シンのゲートの魔法……‼︎」

「いつの間に使えるようになったんだ……⁉︎」

「ほっほっ、苦労はしたがの、紙を使った説明でようやっと理解出来たわい。シンの魔法はシンしか使えない訳ではない。仕組みを理解し、それに沿ったイメージと、魔力の制御が出来れば皆使えるんじゃ。シンは規格外であっても、決して理不尽な存在ではないよ」

(爺ちゃん……ありがとう……)

 

 マーリンがゲートの魔法を使った事に驚く中、マーリンはそう言う。

 シンの魔法は、シンだけしか使えないのではなく、しっかりとしたイメージと魔力制御が出来れば、誰でも使えるのだと。

 それを聞いたシンは、そんなふうに思う。

 その後の夕方。

 

「マーリン、アンタも偶には良い事をするじゃないか」

「偶にとは何じゃ?」

「アンタがゲートを覚えたのは、シンの為だろう?」

「何の事じゃ?」

 

 メリダはそう言うと、マーリンはとぼける様にそう言う。

 すると、リアムが口を開く。

 

「話は聞いています。シンは魔法を使う度に規格外だの無茶苦茶だの言われてるみたいですね」

「その様じゃのう……」

「でも、アンタがシンと同じ魔法を使えれば、シンは特別じゃないって言えるからね。他の子達にとっても良かったじゃないかい?皆、シンの様に魔法が使えるかもって、目を輝かせてたからね。あの子が孤独で感じる様な事もないさ」

「そうかの?」

「そうだと思います」

「フフ」

 

 マーリン、メリダ、リアムの3人は、そんな風に話していた。

 マーリンがシンと同じ魔法を使えれば、皆のモチベーションにも繋がるのだと感じていたのだ。

 それを、廊下でレイジが聞いていた。

 

(本当に良い人だよな、マーリンさん)

 

 レイジはそう思っていた。

 


 

 その翌日、魔法学院。

 リンが顔に絆創膏を貼り、髪がチリチリの状態で教室に入ってくる。

 

「リン、それどうしたんだ……?」

「何があった?」

「魔力制御の練習をしてたら暴走した」

「大丈夫かよ!」

「よくある事。問題無い」

「慣れって、恐ろしいな……」

「でも結構周りにも被害あるだろ!?髪焦げてるし絆創膏貼ってあるし……」

「お父さんは宮廷魔法師!家に暴走させても大丈夫な練習場がある!」

「それは大丈夫……なのか?」

 

 シンとレイジがそう聞くと、リンはそう答える。

 リンの父親は宮廷魔法師であり、練習場があるのだ。

 リンがそう言うのに対して、レイジがそう言うと、シンが口を開く。

 

「でもしょっちゅうやらかしてるだろ?飛んだ暴走魔法少女だな」

「どんなあだ名だよ。それ言ったらリンが怒るんじゃ……」

「それ良い!これから暴走魔法少女と名乗る!」

「気にいるんかい」

 

 シンがそう言うのに対して、レイジがそう返すと、リンはそう言う。

 暴走魔法少女という蔑称にも聞こえるあだ名を気に入ったのだ。

 レイジが突っ込むと、アリスが入ってくる。

 

「おはようリン!」

「違うわ!暴走魔法少女よ!」

「え?」

「あははは……」

 

 アリスがそう言うと、リンはそう叫び、アリスは首を傾げる。

 それを見て、フルールは苦笑するのだった。

 


 

 放課後、究極魔法研究会の面々はビーン工房へと向かっていた。

 その理由は……。

 

「お!来たな?試作品出来てるぜ!」

 

 ハロルドはそう言うと、出来上がった剣を見せた。

 ちょうど、試作品が完成したので、呼ばれていたのだ。

 

「流石本職!仕事が早い!」

「当たり前ぇよ!そこの柄のトリガーを押してみな?」

「こう?」

 

 シンがそんな風に言うと、ハロルドはそう言う。

 シンは柄に付いてるトリガーを押す。

 すると、刀身が簡単に射出され、刀身は床に突き刺さる。

 

「おお。これなら、刀身だけに付与をする事ができるな」

「これは凄いね!僕はビーン工房の新製品開発の現場に立ち会ったんだね!」

「何言ってんだよトニー。元はお前のアイデアだろ?」

「あ、あはは」

「……」

 

 レイジがそんな風に言うと、トニーは試作の剣を見て感動したのか、そんな風に言う。

 シンがトニーにそう話しかける中、オーグはその剣を見つめていた。

 その後3階のアクセサリーショップでアクセサリーを購入して、女性陣と合流する。

 

「用事終わった?」

「あぁ」

「これ、お土産。待たせたお詫び」

「え!何何!?」

「皆の分のアクセサリーだ」

「っ!」

「後で防御魔法の付与して渡すから」

「あぁ、前に言ってた」

「けど、皆の分って事は……」

 

 マリアがそう言う中、シンはアクセサリーが入った袋を見せる。

 オリビアが、何か気になるのかそう言う。

 トニー、ユリウス、トール、マークはポーズを取っていた。

 

「いや男子は指輪じゃないから……」

「「「「うっ」」」」

「ちなみに、俺はペンダントだ。」

 

 シンがそう言うと、トニー達は照れ、レイジはそう言いながら、ペンダントを見せる。

 すると、オーグがシンに話しかける。

 

「シン、先程の剣だが、軍に採用を進言しようと思うんだが。構わないか?」

「え?婆ちゃんが『うん』って言わないんじゃないかな?」

 

『何だって⁉︎』

  

 オーグは先ほどの剣の試作品を見て、そう言う。

 それを聞いて、シンがそう指摘すると、メリダのそんな声が聞こえた様な気がした。

 

「(何か、普通にそう言うのが想像つくな。)シンのバイブレーションソードを?そんな事をしたら、軍事利用になるんじゃないのか?」

「いや、シンのバイブレーションソードではなく、一般兵用として採用したいんだ。改良は必要だが、大量生産すれば、経費を抑えつつ、武装を強化出来る」

 

 レイジの質問に対して、オーグはそう答える。

 軍事利用になってしまうのではという懸念に関しては、あくまで剣のアイデアを出したのはトニーである為、問題はないのだ。

 経費を抑えつつ、武装を強化できる利点に目をつけたのだ。

 ちなみに、それもあってか、トニーには、王家の方からアイデア料が支払われる事になっている。

 シンが口を開く。

 

「あの剣のアイデアはトニーだから、トニーが良いんなら俺は良いけど」

「何でその話になるんだ?」

「実は、戦争が近いかも知れないんだ」

「え?」

「戦争?」

 

 シンがそう言う中、レイジはそう聞く。

 その問いに、オーグはそう答えると、シンとレイジが首を傾げる。

 すると、オリビアが口を開く。

 

「やっぱり……うちのお客さん達もよくそんな噂をしてます」

「戦争って、何処と?」

「ブルースフィア帝国だ」

「ブルースフィア帝国……か」

 

 オリビアがそう言う中、シンがそう聞くと、オーグはそう答える。

 ブルースフィア帝国とは、この世界にある国家の一つであり、アールスハイド王国、ブルースフィア帝国、エルス自由商業連合国、イース神聖国の4ヵ国が、大国と呼ばれているのだ。

 レイジがそう呟く中。

 

「それにしても、何でブルースフィア帝国は、アールスハイドを攻めるんだ?」

「そんな事は向こうに聞いてくれ。帝国では、大規模な出征の準備がされているらしい」

「何の目的で……?」

「案外、ギャバンシステムを狙ってたりね?」

「それは無い……とは言い切れないか。(……あの皇帝……まだ諦めてないのか……?)」

 

 シンがオーグにそう聞く中、フルールは首を傾げ、トニーはそう言う。

 トニーの発言に対して、レイジは考え込む。

 すると、トールが口を開く。

 

「まあ、帝国の目的は置いておいて、もし戦争が始まって長引けば、自分達学生にも動員が掛かるかも知れませんね……」

 

 トールはそう指摘する。

 戦争が長引けば、人員不足になり、戦争経験がない学生にも動員がかかる可能性があるのだ。

 トールの言葉に、周囲の空気が重くなる。

 オーグはそんな空気を変えようと口を開く。

 

「ま、まぁ、まだ始まってもいないんだ。気にしても仕方あるまい。特にシンにレイジ。魔人の襲来や、ネガエモルギアに関する事件が起こるなら兎も角、戦争にお前達を駆り出す事は絶対にしない。軍事利用になるからな」

 

 オーグはそんな風に言う。

 戦争にその二人を駆り出せば、それだけで軍事利用になるのだから。

 すると、それを聞いたシンとレイジが口を開く。

 

「確かに徴兵されないかも知れないけど、皆に危機が迫ったら俺は戦場に出るよ」

「右に同じく」

「「「え?」」」

 

 シンとレイジはそんな風に言う。

 皆に危機が迫ったら、迷わず戦場に向かうのだと。

 2人の宣言に、シシリーとマリア、フルールが驚く。

 

「ここで出会った皆は、掛け替えのない友達だからな」

「シン君……」

「ギャバンシステムは、誰かを守る為の力だ。守るのなら、使うだけさ。(……それに、俺が遠因かもしれないからな……)」

「レイジ君……」

 

 シンとレイジの2人はそう言う。

 レイジに関しては、帝国の侵攻の遠因が自分にあるのではと感じていた。

 そうして、シンは皆にアクセサリーを渡していく。

 


 

 一方、ディセウムの元には、ドミニク、ルーパーを始めとする人たちが集まっていた。

 

「そうか、帝国軍が我が国に向けて進軍を始めたか。降り掛かる火の粉は払わなければな。ドミニク」

「はっ!」

「全軍に出撃命令を出せ!」

 

 ディセウムは、ドミニクに出撃命令を出す様に命じる。

 ブルースフィア帝国軍が動き出し、アールスハイド王国も動きだす。

 アールスハイドとブルースフィアの戦争が幕を開けようとしていた……。




今回はここまでです。
今回は、帝国とアールスハイド王国の戦争が始まる直前までです。
帝国が攻め込む準備をする中、ビーン工房にて、新たな剣が完成する。
叙勲式があったりする中、レイジとフルールは少しずつ、距離が近くなっていきました。
そして、帝国との戦争が幕を開ける。
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