賢者の孫with超宇宙刑事ギャバンインフィニティ   作:弩城怜慈推し

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第9話 愚かな戦争

 ブルースフィア帝国軍が動き出したのを見て、アールスハイド王国軍も動き出す。

 両軍の様子を見ていく。

 まず、ブルースフィア帝国軍側は、アールスハイド王国軍よりも早く動いていた。

 その晩。

 

「……陛下。斥候部隊から報告がありました。王国は依然、自国にて魔物の対応に追われている様です」

「……ふん」

 

 兵士はそう報告する。

 兵士からの報告を、ブルースフィア帝国の皇帝、ヘラルド=フォン=ブルースフィアは鼻を鳴らしながら聞いていた。

 それを聞いたヘラルドは。

 

(アールスハイドが手に入れば、アールスハイドにいるであろうギャバンが余の物になり、帝国の軍事力に敵うものは無くなる。余が歴史上初めて、世界を掌握した皇帝となるのだ)

 

 そんな風に思う。

 ヘラルドがアールスハイドに攻め込む理由は、レイジ/ギャバンインフィニティを狙っていたのだ。

 右頬には、レイジによって付けられた傷がまだ残っていた。

 そんな中、閣僚の一人が進言する。

 

「し……しかし、陛下……。何も全軍を率いて出兵する必要は……ま……魔物が減ったとはいえ……これでは帝都を守る者が……」

 

 閣僚の1人はそう言う。

 ヘラルドは全軍を率いて、アールスハイドに向かっていたのだ。

 つまり、今は帝都を守る存在が何もいないのだ。

 そう進言するが、ヘラルドは剣を抜刀して、斬り捨てる。

 

「ぎゃあ‼︎」

「ひっ……!」

「何の権限があって、皇帝である余に意見する?貴様らは黙って余の命令に従えば良い」

 

 閣僚の一人が斬られ、他の閣僚が怯える中、ヘラルドはそう吐き捨てる。

 まるで、ヘラルドが世界の中心であるかの様に。

 すると。

 

「陛下。斥候部隊のゼストが」

 

 兵士がテントの中に入ってくると、ゼストという人物も入ってくる。

 すると、ゼストは口を開く。

 

「失礼致します。王国は変わらず、我々帝国の動きを察知出来ておりません。このまま進軍を続ければ、勝利は間違い無いかと」

 

 ゼストがそう言うと、ヘラルド皇帝達はニヤリと笑みを浮かべる。

 報告を終えたゼストは、テントから出ると。

 

「……裏工作のみで成り上がっただけの愚物が……」

 

 誰にも聞こえない様に、そう吐き捨てていた。

 果たして、ゼストのその言葉の意味とは……。

 


 

 一方、アールスハイド王国軍。

 ドミニク達は、現状を確認していた。

 

「宣戦布告は未だに無し……か。戦場は見通しも良く、奇襲や搦手も恐らく無し。別働隊の存在も確認出来ん。……分からん。帝国は一体何を考えている?侵略とも言える行為にも拘らず、帝国(奴ら)には何一つ利は無い状況……裏でもあるのか?」

「しかも向こうは、総力八万の軍隊……つまり、国にほぼ軍を残していない。その間起こる魔物対策は完全に放ったらかしって訳だ」

 

 ドミニク達は、帝国軍の思惑を図りかねていた。

 王国軍側からしたら、帝国は国の守りを捨て、愚直に侵攻しようとしているのだ。

 

「正直、愚かとしか言いようがない……」

「愚かな皇帝の愚かな判断による侵略……その可能性が最も高いと思うぜ?何せ相手は……自己顕示欲が強いだけのあの無(・)能(・)だからな」

 

 ドミニクがそう言うと、ルーパーはそう吐き捨てる。

 ヘラルドが自己顕示欲が強いだけの無能だと思われているのだ。

 そう言われている事は、ヘラルドは知る由もなかった。

 


 

 それからしばらくして、王国軍が準備を終え、待っていると。

 

「敵軍、見えました!」

「っ!」

 

 兵士がそう報告し、ドミニク達は気を引き締める。

 だが、帝国軍の様子がおかしかった。

 騒めいていたのだ。

 

「っ⁉︎(何だ?奴らの反応が……)」

 

 ドミニクは帝国軍の様子がおかしい事にそう思う。

 どうしてそうなったのか。

 時は、帝国軍がアールスハイド王国軍と接触する直前にまで遡る。

 

「国境付近だ。このままアールスハイドまで進軍を……っ⁉︎」

 

 そう言いながら進軍する中、帝国軍は思わぬ物を見た。

 それは、準備万端で待ち構えていたアールスハイド王国軍の姿だった。

 

「あ……あれは……⁉︎まさか……アールスハイド王国軍……⁉︎」

「き……聞いてないぞ、そんな情報……!」

「ま……まだ全く戦闘準備が……!」

「とにかく、陛下に報告を……‼︎」

 

 前情報だと、アールスハイドは帝国の動きを察知していなかったとの事だった。

 だが、現実は違う事に驚き、ヘラルド皇帝にこの事が伝わる。

 

「どういう事だ!なぜ王国軍(やつら)がここにいる⁉︎」

「ま……魔物の対処に追われていたんじゃ……⁉︎」

「完全に我々を待ち構えているじゃないか……!」

「それより、早く陣を……!」

 

 ヘラルドがそう叫ぶ中、兵士達は急いで戦闘準備を始める。

 ヘラルドは閣僚に叫ぶ。

 

「ゼストを……ゼストを呼べ‼︎」

「そ……それが……昨夜から奴の率いていた斥候部隊諸共、居所が掴めていません……」

 

 ヘラルドがそう叫ぶと、閣僚はそう答える。

 ゼストとゼストの率いている斥候部隊は消息を絶ったのだと。

 それを聞いたヘラルドは、自分たちがゼストに騙されていた事に気づく。

 

「おのれぇ……平民風情が……よくも……余を謀ったな……‼︎」

「陛下!既に我らは大軍を率いて王国領内に踏み入っております!これは王国軍にとって攻撃を仕掛けるには十分な理由……もはや退く事は敵いません!」

 

 ヘラルドがゼストへの怒りを見せる。

 平民の分際で、自分を騙したゼストに対しての。

 それに対して、閣僚はそう叫ぶ。

 ヘラルドは大きく叫ぶ。

 

「全軍に告ぐ!どうせ王国軍は排除する予定だったのだ!突撃せよ!」

 

 ヘラルドはそう叫ぶ。

 それと同時に。

 

「突撃っ!突撃ーーーっ!」

 

 そう叫びながら、帝国軍は、アールスハイド王国軍へと向かっていく。

 それを見ていたルーパーは。

 

「マジで正面から突撃してきやがった。何考えてんだ、アイツら。予定通り迎え撃つぞ!魔法師団!初撃を放て!」

 

 ルーパーがそう呟く。

 正面から突撃してきた帝国軍に呆れたのか。

 そう命令すると、魔法師団は突撃中の帝国軍に向かって、魔法を放つ。

 それにより、帝国軍の一部が倒されていく。

 

「右翼、左翼は帝国軍の側面に回れ!包囲して攻め落とすぞ!」

 

 それに続き、ドミニクはそう命令する。

 右翼と左翼は、帝国軍の側面に回り、包囲して攻撃していく。

 戦況は、王国軍が圧倒的に優勢だった。

 そんな中、王国軍の兵士の一人が、帝国軍の兵士に剣を折られる。

 

「っ!!」

 

 だが、王国兵は別の王国兵が帝国兵を抑えている中、束のトリガーを引く。

 そこから折れた剣先を取り、別の物に交換する。

 

「はあっ!」

「がっ……⁉︎」

 

 新しい剣先に交換した王国兵は、帝国兵を倒す。

 トニーが考案した剣が、王国軍で採用されていたのだ。

 

「すげーな、この剣!」

「折れようが刃毀れしようが、怖いもん無しだ。何せ、賢者のお孫さんの剣と同じ仕様だからな」

 

 王国兵はそう話す。

 そんな王国軍が優勢の争いはしばらく続き、帝国軍の数が半数を切ろうとしていた。

 そんな中、ブルースフィア帝国軍のテントでは。

 

「何だ、この醜態は!」

 

 ヘラルドはそう叫びながら、机を叩く。

 ヘラルドの理想図では、何も出来ない王国軍を蹂躙し、アールスハイドを制圧するという物だった。

 だが、現実は違った。

 ヘラルドは、ゼストへの怒りを湧き上がらせる。

 

「ゼストめ……!薄汚い平民の分際でよう謀りおったな!今度会ったら………必ず八つ裂きにしてやる!」

 

 ヘラルドはそう叫ぶ。

 ゼストには、必ず報復するのだと。

 すると、兵舎の中に兵士が入ってくる。

 

「申し上げます!」

「あぁ⁉︎何だ!」

「は……はい!魔物が……帝都に魔物が大量に出現したと!」

「バカな!帝国領の魔物は少なくなっていたのではないのか⁉︎」

 

 兵士が入ってきたのを見て、ヘラルドが睥睨しながらそう言うと、兵士はそう報告する。

 帝都に魔物が大量出現したのだと。

 魔物が現れた事に、動揺するヘラルドだった。

 閣僚は、すぐに皇帝に進言する。

 

「へ……陛下!これは戦争所ではありません!一刻も早く帝都に戻らなければ‼︎」

「くっ……!全軍に告げよ!急ぎ帝都に引き返し、魔物共を駆逐しろと!」

「「「はっ!」」」

 

 閣僚の言葉に、ヘラルドは帝都に戻る事を選択する。

 こうして、帝国軍は撤退を開始する事になる。

 一方、アールスハイド王国軍では。

 

「戦況は変わりなしだ」

「一体、何日こんな無意味な戦いを続けるんだ?」

「帝国軍の兵も半数を切る頃だろう」

「敵とはいえ、同情するぜ。上が無能なばっかりによ。このままじゃ全滅するまで……」

 

 ドミニクとルーパーは、そんな風に話していた。

 すると、その二人がいる天幕の中に、斥候兵が血相を変えて駆け込む。

 

「ド……ドミニク局長!ルーパー師団長!」

「斥候か。……どうした?」

「た……大変です……!帝国国内において、ま……魔物が大量に発生し……侵攻を開始しております……!な……中には、虎や獅子などの災害級の魔物も……‼︎」

「「っ⁉︎」」」

「斥候部隊の調査によると、行き先は恐らく……ブルースフィア帝国帝都……!」

 

 斥候兵が血相を変えて入ってきた事に訝しむドミニクとルーパーだった。

 すると、斥候兵の報告には、驚愕の表情を浮かべる。

 

「何だと⁉︎一体何が……⁉︎」

「そ……それだけではありません……!更に……ま……魔物に加え……魔人の存在が確認されました……‼︎」

「魔人……だと……!?(やはり、何かがおかしい……!帝国で……何か起きている……⁉︎)」

 

 ルーパーがそう聞く中、斥候兵はそう報告して、ドミニクとルーパーは更に驚愕の表情を浮かべる。

 魔人と聞くと、先日現れたシュトロームの事を思い浮かべる。

 すると、兵士が入ってくる。

 

「局長!帝国軍が……!」

「恐らく、向こうにも同じ情報が入ったんだろう」

「全軍撤退か……」

「王国軍(オレら)はどうする?」

「……魔人を放置は出来ん。しかし、帝国が我々との共闘を受け入れるとも思えん……。我々も帝国軍の後方に位置し、帝都へ向かう。戦況を見て、場合によっては帝国に加勢しよう」

 

 兵士がそう言うと、帝国軍が撤退を開始したのが目に入る。

 ルーパーはそう聞くと、ドミニクはそう判断する。

 帝国が王国軍と共闘する事を選ぶとは考えにくいが、帝国軍の後方に位置して、いざとなったら加勢すると。

 一方、兵士たちは。

 

「……局長からの伝令はまだか?」

「なんで急に帝国軍は引き返し始めたんだ?」

 

 そんな風に話していた。

 すると、物音がする。

 

「?」

「……どうした?」

「……マジかよ……!うわあああっ!」

 

 物音がしたのを聞いて、一人の王国兵がその方を向くと、狼の魔物が多数現れる。

 

「魔物だっ!数が多いぞ!」

「隊列を組めっ!急げ!」

 

 狼の魔物が多数現れ、王国兵たちはすぐに応戦する。

 騒ぎが聞こえて来て、ドミニクも外に出ると。

 

「っ!」

 

 ドミニクの目の前に、狼の魔物が迫っていた。

 ドミニクはそれを剣で斬る。

 

「オイっ!離れろ!」

「くそっ!近すぎて魔法が放てないぞ!」

「ひいいっ!」

 

 その他の王国兵は、狼の魔物の奇襲により、かなりの乱戦状態になっていた。

 魔法師団も、近くに味方がいて、魔法を撃てずにいた。

 そんな中、一人の王国兵に狼の魔物が噛みつこうとしていたが、ルーパーの魔法により吹っ飛ぶ。

 

「どうなってやがる⁉︎どっから湧いて出たんだ、こいつらっ⁉︎帝国軍を追うどころじゃねェぞ、こりゃっ!」

「やむを得ん……魔物の殲滅を優先する!」

 

 ルーパーがそう言う中、ドミニクはそう判断する。

 王国軍は帝国軍の追跡を諦め、魔物の討伐を行う事になった。

 しばらくして、負傷者が多数出たが、殲滅する事に成功した。

 

「被害は多くねェが……兵士の疲労は相当なもんだろう」

「……仕方あるまい。出立は夜明けを待とう」

「完全に魔物に足止めされた形だな……。(偶然とは思えん……。だが、魔物を操る事など、出来るとは……)」

 

 ルーパーとドミニクはそう話す。

 魔物の対処で体力を奪われ、出立は夜明けを待つ事にした。

 そんな中、ルーパーはそう考えていた。

 

「帝都は大丈夫だと思うか?」

「……斥候からの報告はまだない。祈るのみだ……」

 

 ルーパーがそう聞くと、ドミニクはそう返す。  

 


 

 一方、ブルースフィア帝国の帝都は、文字通りの地獄絵図と化していた。

 ある男はライオンの魔物に襲われ、ある女性は猿の魔物に食われた。

 もちろん、魔物ハンターが何もしていない筈がなく。

 

「はっはあ!見たか!俺たち魔物ハンターの魔法をよぉ!」

 

 魔物ハンターは、魔法で狼の魔物を倒した。

 だが、後ろからオランウータンの魔物がその魔物ハンターを掴み、腕力でその魔物ハンターの上半身と下半身を千切る。

 そんな中、シュトロームとミリアの二人が、そんな地獄絵図と言える帝都を平然と歩いていた。

 

「……自国の国民が殺されているというのに、涼しい顔をしていますねぇ。ミリアさん」

「コイツら帝都民は……『自分達だけが選ばれた人間だ』などと周りの帝国民ですら蔑んでいた連中ですから、そんな輩がどれだけ殺されようと、心苦しさなど露ほども感じませんわ」

 

 シュトロームがそう言う中、ミリアはそんな風に吐き捨てる。

 帝都の人は、自分達だけが選ばれた人間であると思っており、周りの帝国民すらも蔑んでいたのだ。

 

「フフフ……それは素晴らしい。どうですか?ミリアさん。魔人になった感想は」

「はい。これまで感じた事が無い程、力が溢れて来ます」

「それは良かった。さて、出兵した帝国軍が戻って来るまで2〜3日程ですが、その間に、ゼスト君達も戻るでしょうし、帝国軍を迎え撃つ準備でもしましょうか」

「はい、シュトローム様」

 

 シュトロームの問いに、ミリアはそう答える。

 ミリアもまた、魔人と化していたのだ。

 シュトロームとミリアがそう話す中、殺戮は続いていた。

 


 

 数日後、ブルースフィア帝国は、壊滅寸前まで追い詰められていた。

 帝城では、ヘラルドが憤慨していた。

 

「おのれぇ……!魔物如きが余の帝都を踏み躙りおって!」

「先行して帰還した部隊が、既に魔物の討伐を始めております。この騒ぎも、いずれその内……」

「今日中だ!陽が落ちるまでに片を付けろ!」

「た、直ちに!」

 

 ヘラルドは、閣僚に対してそう叫ぶ。

 今日中に魔物を討伐しろと。

 幕僚はそう言って、走り去っていく。

 その間に、考えていた事は。

 

(何としても、奴らを片づけ………ギャバンを、我が手中に……‼︎)

 

 ヘラルドはそんな風に思っていた。

 まだ諦めていなかったのだ。

 ヘラルドは自室に戻ろうとする。

 すると。

 

「お待ちしておりましたよ。皇帝陛下」

 

 そんな風に声をかけられ、ヘラルドは部屋の中を見る。

 その部屋の中には、シュトロームの姿があり、玉座に座っていて、ヘラルドを待ち構えていた。

 ヘラルドはシュトロームを見ると、驚愕の表情を浮かべる。

 

「き……貴様は……⁉︎オリベイラ⁉︎」

 

 ヘラルドはシュトロームではなく、オリベイラという名前を呼ぶ。

 シュトロームは指を鳴らすと、ヘラルドの背後の扉が閉まり、ヘラルドは驚く。

 

「っ⁉︎」

「あなただけは……どうしても私自身で始末しておきたくて」

 

 ヘラルドが驚く中、シュトロームはそういうと、両目を赤く光らせる。

 すると、ヘラルドの足元に魔法陣が出現して、ヘラルドは動けなくなる。

 

「ぐぅぅ……⁉︎」

 

 ヘラルドがパニック状態になってる中、シュトロームが左手に魔力を集めていた。

 

「い、嫌だ……!こんな所で、世界を掌握する皇帝である余が、死んでたまるかぁぁぁぁぁ‼︎」

「エモ〜〜!」

「おや?」

 

 ヘラルドはそんな風に叫ぶ。

 すると、ヘラルドのそばに何かが現れる。

 それは、ネガエモルギアであった。

 それを見たシュトロームがそう反応する中、ヘラルドのネガティブ波動を吸収したネガエモルギアから、エモンズが誕生する。

 カートのネガティブ波動を吸収して誕生した物と同じ個体が。

 

「こ、これは……⁉︎」

「ブルースフィア皇帝、ヘラルド=フォン=ブルースフィア殿」

「き、貴様は……⁉︎」

 

 突如として現れたエモンズを見て、ヘラルドが戸惑う中、そんな風に声をかける存在がいた。

 デス・ギャバンであった。

 ヘラルドがそう反応する中。

 

「よろしいのですか?こんな所で死ぬのはごめんでしょう?この力……アールスハイド王国に居るギャバン・インフィニティにぶつけてはどうでしょうか?彼には、屈辱を与えられたのでは?」

「そ、そうだ……!あの男は……絶対に許さん!連れて行け!」

 

 デス・ギャバンはそんな風にヘラルド皇帝に囁いた。

 レイジに借りを返すチャンスが来たのだと。

 それを聞いて、ヘラルド皇帝はエモンズに掴まり、アールスハイド王国へと向かう。

 それを見ていたシュトロームは。

 

「……やってくれましたね……」

「己の感情に従う者が……俺を呼ぶ。あいつの感情に従っただけだ」

「……そういう事にしておきましょう」

 

 シュトロームはデス・ギャバンに対してそう呟きながら睨むと、デス・ギャバンはそう返す。

 それに対して、シュトロームはそう呟く中。

 

「シュトローム様」
「おや、ゼスト君ではないですか」
 

 シュトロームの背後に、誰かが現れる。

 現れたのは、ゼストであり、彼も魔人となっていた。

 シュトロームがそう言うと。


「よろしいのですか?皇帝を放置して」

「もちろん、私も後を追いますよ。王国軍が着くまでには時間がありますし、今の皇帝なら、そこまで時間がかからずにアールスハイドに着くでしょう。それに、ウォーカー君にも、挨拶をしておきましょう。後は頼みますよ、ゼスト君」

「はっ。」
 

 ゼストがそう聞く中、シュトロームはそう答える。

 シュトロームはヘラルド皇帝の後を追いかける中、ゼストはそんなシュトロームに頭を下げる。
 それを見ていたデス・ギャバンは。

 

「……さあ、どう対応する。レイジ=ウォーカー」

 

 デス・ギャバンはそう呟いた。

 


 

 一方その頃、アールスハイド近郊では。

 

「オラっ!はあっ!」

 

 レイジはある存在と戦っていた。

 それは、エモンズであった。

 

「なっ……なんだよ、お前!」

「お前こそ、ネガエモルギアをどこで手に入れたのか、吐いてもらうぜ!」

 

 その近くには、ネガエモルギアを持った犯罪者の姿があった。

 少し前、この犯罪者がエモンズを使って、強盗を行っていたのだ。

 レイジがそう言うと。

 

「ギャバリオンドリル!ハァァァァァ!」

 

 レイジはギャバリオンドリルを出すと、ドリルを回転させながら突進攻撃を行う。

 それを受けたエモンズは、爆散した。

 

「ば……バカな……⁉︎」

「はい、没収。アンタはこの国の法が裁くさ。(……俺にこいつを裁く権利はないからな)」

 

 それを見て、犯罪者が唖然となる中、レイジは蒸着を解除して、ネガエモルギアを没収してからそう言う。

 その脳裏には……。

 

『やめろ!そいつはこの国の法が裁くべきだろ!』

『何?こいつは犯罪者に成り下がった奴だろ!正義の元に俺が裁いただけだ!』

 

 かつて、レイジの過去に起こった出来事が脳裏を過っていた。

 そして、レイジは犯罪者を突き出し終えると。

 

「……さて。俺も帰るか」

 

 レイジはそう呟いた。

 すると、レイジが持っていた警察手帳に通信が入る。

 

「ん?どうした?」

『レイジか⁉︎今、どこにいるんだ⁉︎』

「今は、家に戻ろうとしてたとこだが」

『ちょうどよかった!現在、ブルースフィア方面から、ネガエモルギアの反応がアールスハイドに向かっている!』

「何だと⁉︎」

『到着地点の予想座標を送る。すぐに向かってくれ!』

「おう!」

 

 そこに、リアムから通信が入る。

 ネガエモルギアの反応がアールスハイドに向かっているのを聞いて、レイジは予想座標にすぐに急行する。

 


 

 しばらくすると。

 

「ここだよな……」

 

 レイジはその予想座標に到着して、周囲を見渡す。

 すると。

 

「うぉぉぉぉっ!」

「っ!エモンズ!……と……⁉︎」

「久しいな……!ギャバン・インフィニティ……!」

「帝国の皇帝……⁉︎」

 

 そこに、エモンズが現れる。 

 そして、その横にはヘラルド皇帝の姿があった。

 

「何でアンタがここに……⁉︎」

「決まっておろう……!貴様に復讐をする為だ!やれ!」

「ぐぉぉぉぉっ!」

 

 レイジが困惑しながらそう聞くと、ヘラルドはそう叫んで、エモンズをけしかける。

 それを見たレイジは、エモンズの攻撃を躱しながら、ゲキドーのエモルギアのボタンを押して、ギャバリオントリガーに装填する。

 

『ゲキドー!チャージ!』

 

 そんな音声が鳴る中、レイジにエモンズ・パウンドが向かってきて、レイジは攻撃を躱すと。

 

「蒸着!」

 

 レイジはそう叫びながら、トリガーを引く。

 

『ゲキドー!アクティベート!』

 

 そんな音声が鳴ると、レイジに光の粒子が集まり、姿が変わっていく。

 そして、ギャバン・インフィニティへと蒸着する。

 

「宇宙刑事ギャバン・インフィニティ!只今、臨場!」

 

 レイジはそう叫びながら、エモンズと応戦していく。

 蒸着!

 それは、ギャバンシステムの発動のコマンドだ。

 では、蒸着プロセスをもう一度見てみよう!

 

『ゲキドー!チャージ!』

 

 蒸着コマンドを受けて、臨界点を越えたエモルギーがトリガー内に凝縮されたギャバリオン粒子と融合。

 

「蒸着!」

 

 僅か1ミリ秒でコンバットスーツへと投射形成され、蒸着を完了するのだ!

 

『ゲキドー!アクティベート!』

 

 これが、ギャバン・インフィニティへの蒸着プロセスだ。


「ふっ!はっ!おらっ!」

 

 レイジはエモンズの攻撃を避けながら、的確に攻撃をしていく。

 すると。

 

「貴様の……貴様のせいで、我輩はこの様な目に遭っておるのだ!全て……貴様のせいだ!」

「あ?勝手に人のせいにしてんじゃねぇよ!」

 

 ヘラルド皇帝はそんな風に叫んだ。

 全ては、レイジが悪いのだと。

 それを聞いて、レイジは困惑しながらも、そう叫んだ。

 そして。

 

「ギャバリオンセイバー!

 

『ギャバリオンセイバー!』

 

「ふっ!はっ!オラァァァァ!」

 

 レイジはギャバリオンセイバーを出すと、X字になる様に斬撃を出して、そこから斬撃波を放つ。

 

「ぐぁぁぁぁぁっ⁉︎」

「のわっ⁉︎」

 

 それを受けたエモンズが爆発する中、ヘラルド皇帝は吹き飛び、持っていたネガエモルギアはレイジの元に転がる。

 レイジはネガエモルギアを拾い上げると。

 

「これで終わりだ。さぁ、吐いてもらうぜ。このネガエモルギアをどこで手に入れたのか」

「渡さぬ……!ギャバンとやらは、我輩が世界を統一する為の物だ……!寄越せぇぇぇぇっ!」

 

 レイジは蒸着を解除しながら、そう問いかける。

 それに対して、ヘラルド皇帝はそう叫ぶと、レイジに襲いかかる。

 レイジが身構えると。

 

「ぬわぁぁぁぁぁぁぁぁ⁉︎」


「っ⁉︎何が起こってるんだ……⁉︎」
 

 

 突然上空から攻撃がヘラルドへと向かい、それを受けたヘラルドは、そんな断末魔の声を出しながら、消滅する。

 煙が晴れると、そこにはヘラルドの姿は無く、代わりにまるで隕石が落ちてできたクレーターがあった。
 

 それを見て、レイジが困惑していると。


 

「一体、どこから……⁉︎」


「やあ、レイジ=ウォーカー君」

「っ⁉︎」


 レイジが困惑すると、そんな風に声をかけられ、声がした方を向く。
 

 そこには、ある人物がいた。



「シュトローム⁉︎」

「お久しぶりですねぇ、ウォーカー君」

 レイジはそう叫んだ。

 そこに居たのは、オリバー=シュトロームだった。


 

「やっぱり、生きてたんだな」

「おや、分かっていたみたいですね」


「あの時、手応えがまるで無かったからな」
「ふふ……流石は、ギャバン・インフィニティとやら。見事な洞察力です」

 

 レイジがそう言う中、シュトロームはそう言う。

 シュトロームがそう言う中、レイジは口を開く。



「アンタが帝国の皇帝を殺ったのか?」

「ええ。あの男だけは、どうしても私自身で始末しておきたくて」
「……?それより、何の用だ?」

 

 レイジがそう聞くと、シュトロームはそう答える。
 

 その口調からは、ヘラルド皇帝への憎しみが滲んでいた。

 その口ぶりに首を傾げる中、レイジはそう聞く。



「そうですね。あの男の始末と、君への挨拶です」


「挨拶……?っ⁉︎」


 

 シュトロームはそう答える。

 すると、レイジはシュトロームの周辺を見渡す。

 そこには、斥候部隊と思われる服装を着た集団が居た。

 だが、レイジはそこに驚いたのではない。

 斥候部隊と思われる者たちの目が……赤色だったのだ。



「全員が……魔人……⁉︎」
「そうですよ。まあ、今回は挨拶に来ただけですので、私たちはお暇しますね。あと、ディセウム陛下にお伝え下さいね。私が生きていた事や、帝国はまもなく滅ぶという事を」


 

 レイジが驚愕する中、シュトロームはそう言って、斥候部隊の魔人を引き連れて、そのまま去っていく。

 それを見ていたレイジは。


「……とんでもない事になってきたな……」


 

 そんな風に呟き、いつかくるであろう危機を警戒する。


 


 

 その数日後、アールスハイド王国軍はブルースフィア帝国の帝都に到着する。

 

「手遅れ……か……。軍が出払ってた上に、災害級の魔物も居たんじゃ、無理ねぇが……」

「斥候部隊からの情報では、大量の魔物に襲われたとの情報だが、その報を受けて慌てて引き返した帝国軍もこのザマって事か……」

 

 帝都の惨状を見て、ルーパーとドミニクの2人はそう話す。

 すると。

 

『おや……これはこれは。アールスハイド王国軍の皆さん』

「……⁉︎何だこの声……⁉︎」

「どこから……⁉︎」

 

 そんな声が響いてきて、兵士たちは困惑の反応をする。 

 すると、顔を見合わせていたドミニクとルーパーのうち、ドミニクは口を開く。

 

「(まさか……!)オリバー=シュトローム……⁉︎生きていたのか……!」

『ふふ……まさか、私がウォルフォード君とウォーカー君に討たれたとでも思っていましたか?』

「どこだ⁉︎」

「……こりゃ、魔法で拡散させた声だ。恐らく、ここにはいない」

 

 ドミニクがそう言うと、声の主……シュトロームはそんな風に言う。

 兵士たちがざわつく中、ドミニクはそう叫ぶが、ルーパーはそう指摘する。

 すると。

 

「オリバー=シュトローム……!何故、帝都を⁉︎皇帝はどうしたのだ⁉︎」

『……ふふ。そうですねぇ……せっかくこんな所まで御足労頂いた事ですし……教えて差し上げましょうか。この国に何が起きたのかを……』

 

 ドミニクはそんな風に叫んだ。

 それに対して、シュトロームは語っていった。

 帝国の突然の侵攻には、ゼストが情報操作を行って起こした事。

 そして、皇帝をシュトローム自身が殺めたことを。

 それを聞いたドミニクとルーパーは。

 

「そういう事だったのか……!(帝国の突然の侵攻も、恐らく奴らが裏で手を引いて……!)」

(さっきから魔物が見当たらない……決定的だな。シュトロームの言っていた実験とは……生物を強制的に魔物化させる……そして、それを意のままに操る事が出来る……!王国(アールスハイド)に魔物が増加していたのも……その実験の結果に違いない……!)

 

 ドミニクとルーパーは、帝国軍の突然の侵攻に、アールスハイド王国に起こった魔物の増加などが、シュトロームが裏で手を引いていた結果なのだと。

 そう判断していた。

 すると。

 

『ところで、あなた方は一体何をしにここへ?……それっぽっちの戦力では、私(・)達(・)を攻め滅ぼす事など出来ませんよ?』

 

 シュトロームはそんな風に言う。

 すると、アールスハイド王国軍の前にある存在が現れた。

 それは、レイジも目撃していた斥候部隊の魔人だった。

 

「なっ……なんだあいつら……全員が魔人……⁉︎」

「帝国の……斥候兵……⁉︎存在を確認した魔人ってのは一体じゃなかったのか……!」

「街の破壊は奴らの仕業か……!(シン=ウォルフォードとレイジ=ウォーカーが居てようやく手に負えるレベルの相手が……集団で……⁉︎)」

 

 それを見たルーパーとドミニクはそう反応する。

 斥候部隊が魔人であるという事実に驚いたのか。

 すると。

 

『……そうそう。礼を言っておきますよ。あなた方が帝国軍の数を減らしてくれたおかげで……私(・)達(・)は楽に帝国を攻め落とせました』

 

 シュトロームはそんな風に言う。

 それを聞いたドミニクは。

 

(……っ⁉︎帝国の無策な侵攻……それによって我々を優位に立たせたことも……狙ったかの様なタイミングで我々の前に現れた魔物の群れも……全てはブルースフィア帝国を壊滅させる事が狙いだったという事か……!)

 

 ドミニクは、これまでの事象が全て、シュトロームによって引き起こされた事。

 そして、その全てがブルースフィア帝国を壊滅させる事が狙いである事を悟った。

 

「王国軍(オレら)は……まんまと利用されたってわけだ……!」

「……伝達する。直ちに全軍、王国へ帰還する。こ(・)れ(・)は最早……我々の手に負える事態ではない……!」

 

 それを聞いて、ルーパーも同じ結論に至ったのか、青筋を浮かべながらそう呟く。

 個人の目的の為に、手のひらで踊らされていた事が苛立ったのか。

 ドミニクは歯を食いしばりながら、撤退命令を出す。

 もう手に負えないと判断したのか。

 王国軍が撤退を開始する中、それを見ていたシュトロームにゼストが話しかける。

 

「……良いのですか?彼らをそのまま見逃して」

「……ふふ。構わないでしょう。当初の目的は果たしたのですから」

 

 ゼストがそう聞くと、シュトロームはそう答える。

 その後、レイジはディセウムにシュトロームの生存や、帝国を攻め落とした事を伝え、しばらくして、王国軍が帰還した。

 ドミニクからも、シュトロームの生存や大量の魔人の存在を告げられ、ディセウムは真実だと悟った。

 そして、その情報は直ちに、王国及び周辺諸国へと知らされる事となった。

 その情報は、カレルの元にも届いていた。

 

「……そうか」

「カレル様。どうされますか?シュトロームの背後には、ネガエモルギアをばら撒いている存在がいる可能性が高いと思います」

「……帝国の皇帝も、ネガエモルギアを持っていたらしいからな……」

 

 カレルがそう呟く中、リアムがそう言う。

 シュトロームの背後に、ネガエモルギアをばら撒いている存在がいる可能性が高いと。

 それを聞いたカレルは。

 

「……どうやら、使う時が来るのかもしれないな」

 

 カレルはそう呟いて、ある物を見る。

 それは、コスモギャバリオンに、竜を模したメカと巨大な機関車の姿があった。

 果たして、それらの正体とは……。




今回はここまでです。
今回は、帝国との戦争、そして帝国の滅亡についてです。
シュトロームが手引きした戦争によって、帝国は滅亡していく。
そして、レイジもネガエモルギアを回収する。
デス・ギャバンの暗躍は続いていく。
次回は、合同訓練の話に入るか、幕間の話をやるかのどちらかだと思います。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。
明日の放送で登場する機炎角……もとい、ギャバリオンドルベロスに関しては、この小説で出すかは検討中です。
ギャバリオンドルベロスの設定が明らかになり次第、出そうかなと思っています。
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