賢者の孫with超宇宙刑事ギャバンインフィニティ 作:弩城怜慈推し
カートが悪意を滾らせる中、シンは制服を見ていた。
「えーと……制服に付与されてる魔法は『魔法防御』、『衝撃緩和』、『防汚』。この三つか。中々上級の魔道具だな。だが書き換える!」
シンは高等魔法学院の制服に付与されている文字を見てそう言う。
上級の魔道具ではあるが、シンからしたら不満である模様だ。
シンはそう言うと、ペンを取り出す。
すると、メリダが入ってくる。
『入るよシン』
「婆ちゃん」
「上手く行きそうかい?」
「うん、丁度今から書き換える所」
メリダはシンにそう聞くと、シンはそう答える。
シンは書き換えを開始した。
まずは付与されてる魔法を浮かばせる。
「お次はっと」
鉛筆型の魔道具で、制服に付与してある魔法効果を無効にする。
この鉛筆型の魔道具は、消しゴムが魔法効果を無効にし、鉛筆の芯が魔法効果を有効に付与する物である。
それを見ていたメリダは。
『全く、とんでもない子だね。魔力を通して浮かび上がる元々付与されていた文字を、魔力を無効化する魔道具によって、剥がした上で再び新たな魔法を付与する。そんな発想が出来るのが、そもそもアンタ位だよ』
『この制服の場合、付与可能文字数は最大で20文字……。新たに付与するのは……『絶対魔法防御』、『物理衝撃完全吸収』、『防汚』、『自動治癒』、問題は此奴だ。『絶対魔法防御』。全ての魔法を防ぐ事が前提だが、火と水じゃ防御方法も違ってくる。付与する文字にイメージが追い付かなきゃ魔法は発動しない。何かないか……全てを防ぐ具体的なイメージは……‼︎』
メリダがそう思う中、シンは付与する魔法を考えていた。
万が一に備えて、あらゆる物を防ぐ魔道具を作るために。
しばらくして、防汚、自動治癒、絶対魔法防御、物理衝撃完全吸収、この4つを付与された最強の制服が完成した。
「出来たーーーー!!あ〜〜〜すっげー集中した〜〜〜!!」
「『この時点でシンの制服の価値は既に……』シン」
「ん?」
「制服の事、絶対に人に言うんじゃないよ」
シンがそう叫んでベッドに倒れる。
そんな中、メリダは制服に付与された魔法を見てそう思い、シンに釘を刺す。
果たして、メリダはシンの制服を見て、何を思ったのか。
その翌日、遂に入学式の日になった。
「マーリン様、メリダ様、シン様、レイジ様。王宮から馬車の迎えが来ております。出立の御準備は宜しいですか?」
「準備は出来てるけど……………コレ、こんな感じで良いのかな?」
「流石に緊張するなぁ」
「バッチリだよ。よく似合ってるじゃないか」
「いい感じだよ」
スティーブがそう言うと、シンとレイジはそう言う。
レイジとシンは、高等魔法学院の制服を身にまとっており、リアムはそう言う。
そして、馬車に乗って学院に向かう。
「学院に到着致しました」
「さて行くかの」
しばらくして、学院に到着して、御者の人がそう言って、レイジ達は馬車から降りる。
馬車から降りた瞬間。
「おい、あれ……国から勲一等と共に送られるマントだぞ……!」
「2人共それを羽織ってるって事は……あれは……まさか……‼︎」
「賢者様ーーーーー!」
「マーリン様ーーー!」
「導師メリダ様ーー!」
マーリン達の姿を見た人たちがそう言って、マーリン達の方へと駆け寄る。
それを見たマーリンは。
「ぬあっ!またか!」
「あっ⁉︎ちょっ!まっ!」
「おわっ⁉︎」
群衆がマーリン達に群がる中、レイジとシンの2人は群衆から放り出されてしまった。
そこに、教師がやってくる。
「マーリン様!メリダ様!入学式場まで御案内致します!ウォルフォード君とウォーカー君は集合場所に……あれ?居ない?」
「スマンのう、シンとレイジ君の晴れ舞台なのにこんな騒ぎになって……おや?シンとレイジ君は?」
「ええい、離れな!」
「ほっといて行こう……」
「頑張れよ」
教師がそんな風に言いながら駆け寄る。
レイジとシンの2人が居ない事に気づき、マーリン、メリダがそう言う中、レイジとシンはそそくさと集合場所へと向かった。
「はぁ………………」
「まあ、予想通りだよな」
「やあシン、レイジ。緊張していないか?」
2人がそうやって息を吐く中、そこにオーグがやってくる。
「どうも」
「いや……まあ大丈夫だけど……」
「今日は生徒以外にも国王である父上やこの国の貴族、重鎮が勢揃いしてるが、何も緊張しないで良いんだぞ?」
「いや……だから……」
「主席君はさぞ素晴らしい挨拶をするんだろうな。楽しみだ」
オーグの挨拶に、レイジがそう言う中、シンはそう答える。
オーグは、わざとプレッシャーがかかる事を言って、爽やかな笑みを浮かべ、肩を叩く。
それを見たシンが叫ぶ。
「テメェ!喧嘩売ってんのか‼︎」
「はははっ。おいおい何の事だ?」
「主席取られたのは実は根に持ってんだろ!」
「賑やかだな」
「コラ!もうすぐ式だろ、何騒いでる!整列しろ!」
シンがそう叫ぶと、オーグは惚けて、シンは叫び、レイジはそう言う。
すると、教師がそう叫ぶ。
それを聞いたシンは、小声でオーグに言う。
「この野郎……!初日から怒られたじゃねえか……!」
「くくく……まあそう言うな。お陰で緊張が解れただろう?」
「え?(オーグ……俺の為にわざと……?)ありが……」
「まあ偶然だけどな」
「てめーなあ!」
「シン、流石に落ち着けって!」
シンがそう言う中、オーグはそう言うと、シンは感心しかけるが、オーグはすぐにそう言って、シンはオーグに絡む。
レイジが落ち着かせようとする中、後ろから声がかけられる。
「あ……あの……シン君、お、お久し振りです」
「ん?」
シンは声をかけられて、後ろを振り向く。
そこに、シシリーとマリアが来た。
「シシリー!君も合格したんだね!後マリアも!」
「ついでみたいに言うな!」
「いやぁ、2人が合格発表の時に見当たらなかったから、ずっと心配してたんだ。シンが」
「え?そうなの?」
「まぁそんな所だ。それより2人共ここに並んでるって事は……」
「そ!私達もSクラスよ。主席さん」
「はい。一緒のクラスです」
それを見たシンはそう言い、マリアが突っ込む。
レイジはニヤニヤしながらそう言う。
シンは少しレイジを睨んで、そう聞くと、マリアとシシリーはそう答える。
すると、オーグがシンに話しかける。
「シン、お前が捜していた女性とは彼女の事か?」
「ギクッ⁉︎」
「おや?確か君達は……」
「ご無沙汰しております、アウグスト殿下。メッシーナ伯爵家のマリアでございます」
「クロード子爵家のシシリーでございます」
オーグがそう言うと、シシリーとマリアは、スカートの裾を持ち上げ、そう挨拶する。
それを聞いたレイジとシンは。
「伯爵に子爵って事は……」
「2人とも貴族⁉︎シシリーは兎も角マリアも⁉︎」
「何それどう言う意味⁉︎」
「くすくす」
レイジがそう言うと、シンはそう叫ぶ。
失礼な事を言うシンに対して、マリアが突っ込んで、シシリーは笑う。
「何で言ってくれなかったのさ?」
「だって貴族の娘なんて言ったら、急に態度が変わる人が多いんだもん」
「ふーん……………そんなもん?俺は別に…………」
「お前が特殊なだけだ。2人共、此奴には権威とか世間の常識とか通用しないから気軽に接して良いぞ」
「「?」」
「静かにしろ!入場だぞ!」
「そろそろ行こうぜ」
『それはそうと…………例の賢者様のお孫さんは何処に…………!?』
シンがそう聞くと、マリアはそう答える。
シンが首を傾げる中、オーグはシシリーとマリアにそう言う。
教師がそう言うと、レイジはそう言って、マリアは周囲を見渡す。
入学式が始まり、新入生が入場して、座席に座る。
校長と在校生代表の挨拶が終わり、新入生代表挨拶に入る。
「それでは、続きまして新入生代表挨拶です。今年度、入学試験主席合格者、シン=ウォルフォード君」
「はい!」
教師がそう言うと、シンは立ち上がる。
それを見て、周囲がざわつく。
「ウォルフォード……⁉︎」
「と言う事は……彼が……賢者マーリン様の……⁉︎」
周囲がそう言う中、シシリーとマリアも驚いていた。
「え⁉︎え⁉︎どゆ事⁉︎まさかシンが……⁉︎」
「……⁉︎」
「何だ、聞いてなかったのか2人共」
「あいつが例の英雄の孫だよ」
「えええっ!?」
マリアとシシリーが驚く中、オーグとレイジはそう言って、マリアは更に驚く。
カートがシンの事を睨む中、シンは挨拶を始める。
『ご紹介に与りました、新入生代表、シン=ウォルフォードです。今日この良き日に皆様に見守られ、このアールスハイド高等魔法学院に入学出来た事を大変嬉しく思います。私は幼い頃より、祖父母や知人から様々な事を学んで参りました。しかし共に暮らす祖父が森の奥に隠居していた為、私は世間を知らずに育ってしまいました。そんな折、とある方に言われたんです。『学院に入って常識を学んで来い』と。王都に来てから私の環境は劇的に変わりました。既に何人かの友人も出来ました。私にとって人との出会いこそ、大切で重要な事です。ですので皆さん!世間知らずだからと言って、仲間外れにはしないで下さいね?そんな事されると泣いてしまうかも知れません。そして保護者及び御来賓の皆様そして在校生・教師の皆様何卒、3年間、御指導御鞭撻の程宜しくお願い致します。新入生代表、シン=ウォルフォード』
シンがそう言う中、周囲が一瞬ざわつくが、シンは挨拶を終える。
すると、凄まじい拍手喝采が起きる。
席に戻ると、オーグが笑いを堪えていたが、笑いだす。
「くっくっくっ……!あっはっはっはっ!」
「何だよ、何笑ってんの?」
「くく……だってお前、代表挨拶に冗談を交えるなんて前代未聞だぞ?他の挨拶見てなかったのか?」
「え⁉︎そうなの⁉︎」
「あまり聞いた事はないですね……」
「あまりって言うか、私は初めて聞いたわ!」
「まあ良いんじゃねぇか?」
『マジか〜〜〜またやっちまった!?確かに前世じゃ挨拶はユーモアを交えた方が良いって聞いたから……』
オーグが笑うのを見て、シンがそう聞くと、オーグはそう言って、シシリーとマリアもそう言う。
レイジがフォローする中、シンはそんな風に頭を抱える。
「でも生徒にはウケてたし、良かったと思うよ」
「え?」
「俺的には面白かったぞ」
「それより!何で自分がマーリン様とメリダ様の孫だって教えてくれなかったの⁉︎」
「ああゴメン……。入学早々目立つのもどうかと思って……」
「……ま、言われてみれば納得だったけどさ」
マリアがそうフォローして、レイジもそう言う中、マリアはそう叫ぶ。
シンがそう答えると、マリアは納得する。
その後、ディセウムの挨拶に入る。
『今年は、英雄の孫と言う規格外が紛れ込んでいる。同級生達は彼らから色々と学ぶと良い。きっと皆の固定観念を吹き飛ばしてくれる事だろう』
「国のトップも冗談ブッ込んできたけど……」
「流石父上。早速取り込むとは」
「面白い人だな」
『皆が大きく成長してくれる事を切に願っている』
ディセウムは、シンに触発されたのか、冗談を早速入れた。
それを見て、シンは呆れ、オーグとレイジは感心した。
そうして、入学式が終わった。
「やっと入学式終わった〜……」
「さて、Sクラスにはどんな奴が居るんだろうな」
「っ⁉︎」
「ん?」
シンとレイジがそう言う中、2人は異様な気配に気づく。
周囲を見渡すと、カートが2人を睨んでいた。
「カート?」
「レイジ、カート君のあの表情って……」
「まさかな……」
「まさか俺が挨拶で冗談なんか言ったから怒ってるんじゃ……⁉︎」
「そこかよ⁉︎『……それはともかく、凄まじい悪意だな。これ、大丈夫……だよな?』」
レイジがそう言うと、シンは的外れな事を言って、レイジは突っ込みながら考える。
この学院のクラスは学年毎にS・A・B・Cの4つに分かれており、A〜Cは30人で、Sクラスのみ12人の少人数クラスで、入試上位12人がそのままSクラスに入れる。
「ここがお前達Sクラスの教室だ」
担任の人がそう言って、教室に案内する。
この12人が、Sクラスのメンバーだ。
主席 シン=ウォルフォード
第2位 レイジ=ウォーカー
第3位 アウグスト=フォン=アールスハイド
第4位 マリア=フォン=メッシーナ
第5位 シシリー=フォン=クロード
第6位 フルール=フローレス
第7位 アリス=コーナー
第8位 トール=フォン=フレーゲル
第9位 リン=ヒューズ
第10位 ユーリ=カールトン
第11位 トニー=フレイド
第12位 ユリウス=フォン=リッテンハイム
この構成だ。
教室に入ると、担任の先生が口を開く。
「入学おめでとう。Sクラス担任のアルフレッド=マーカスだ。元魔法師団所属だ。宜しくな。今日は授業はないから、学院を見て回るなり他の生徒と交流するなり好きにしろ。明日の午前中は学院案内、午後からは実技講習に入る。では解散!」
アルフレッド先生は、そう言う。
そんな中、Sクラスの生徒の一人、フルールは。
「よ〜し!Sクラスになったし、頑張るぞ〜!フレフレ、私!」
そんな風に気合を入れていた。
シンとレイジが、異空間収納に教科書などを仕舞う中、マリアが話しかける。
「シン、レイジ、ちょっと良い?」
「ん?どうしたの?」
「シシリーの事で相談があるの」
「何か困り事か?」
「うん」
マリアは2人にそう話しかける。
それに対して、シンとレイジがそう聞くと、マリアは気まずい表情を浮かべているシシリーを見ながらそう答える。
マリアは、事情を2人に説明する。
「実は…………シシリーに付き纏ってる男が居るの」
「なっ!」
「いつからだ?」
「シンとレイジに初めて会った後位からかな……。シシリーは何度も断ってるのに、そいつ、実家の権力を笠に着て脅しまで掛けて来てるの」
『シシリーを脅すだと……⁉︎許せん!』
マリアがそう言うと、シンは驚き、レイジは冷静にそう聞く。
レイジの質問にマリアがそう答えると、シンは憤慨したのか、そんな風に思う。
「権力を振り翳してか……」
「えぇ。でもシシリーが自分の思い通りにならないのが相当頭にキテるらしくて……そろそろ無茶な手段に出て来そうなのよ」
「なるほどな。で、そいつはどこに居るんだ?」
「その男って言うのが……この学院に居るの」
「となると、新入生の中にいるのか」
レイジとマリアはそう話す。
レイジは、マリアからの情報を冷静に分析する。
シシリーに付き纏う男が、新入生の中にいるのではと。
すると、シシリーが口を開く。
「ごめんねシン君、レイジ君…………こんな話聞かせて…………」
「何言ってんだ。寧ろ知らせてくれて良かったよ!」
「困ってるのなら、力を貸すぜ」
「ああ!」
「『やっぱり……シン君がそう言うと……。』ごめんなさい……」
「ん?」
シシリーが謝る中、レイジとシンはそう言う。
それを聞いたシシリーは、小声で謝る。
それを見て、シンが首を傾げる中、怒鳴り声が響く。
「おいシシリー!貴様、俺の婚約者でありながら他の男と話すとは何事だ‼︎」
シシリーの後ろ側から聞こえてきた声の主は、カートだった。
シシリーが震える中。
「カート⁉︎」
「マリア。あいつが例の男なのか?」
「そうよ!あいつよ!あいつがずっと付き纏って、勝手に自分の婚約者だって言い触らしてるの!」
シンが驚き、レイジはマリアにそう聞くと、マリアは肯定する。
カートがそんな風に言っていたのだ。
怯えるシシリーがシンの後ろに隠れる。
それを見たカートがカッとした。
「こっちに来い!」
カートはシシリーを無理矢理連れて行こうとしたが、シンに腕を掴まれた。
「グアッ!」
「懲りねえなお前も!」
「自分が何をしてるのか分かってるのか?」
「無礼者めが……!いいか!そこの女は俺の婚約者だ!貴様なんぞに話をする権利はない!引っ込んでろ‼︎」
「っ……!」
カートはシンに阻止され、シンが怒り気味に、レイジが呆れ気味にそう言うと、カートはそう叫ぶ。
すると、レイジは口を開く。
「それは、両親への謁見はしたのか?」
「ああ⁉︎」
「だって、シシリーもカートも、貴族だろ?なら、挨拶は済ませたのか、気になったんだけどな」
「黙れ!貴様如きに話す必要性などない!」
「……」
レイジはそんな風に聞く。
貴族同士なら、両家で挨拶をしているのではと思ったのだ。
レイジがそう指摘すると、カートはそう叫び、レイジは呆れた表情を浮かべる。
シンは、シシリーに聞く。
「あんな事言ってるけど、どうなの?」
シンはシシリーにそう聞くと、シシリーは恐怖しているのか、震えるだけで何も答えられなかった。
震えるシシリーに対し、シンが彼女の肩に手を置いて落ち着かせる。
「大丈夫だよ。何かあっても、俺が守ってやる。だから、思った事を言ってみな」
「シン君……」
シンは、シシリーにそう言う。
すると、シシリーは深呼吸して、勇気を出してカートに刃向かう。
「あなたからの求婚をお断りしました!付き纏われるのも!勝手に婚約者と言われるのは迷惑です!」
『震える位怖かったのに……よく言ったぞ、シシリー』
「貴様……この俺に逆らうと言うのか⁉︎」
「逆らいます!私はあなたの言いなりになるつもりはありません!」
シシリーはそう叫び、シンはそう思う。
逆らったシシリーの両肩をガッと掴んだカートは叫ぶ。
「何様のつもりだ……!貴様ら女は男の傍で愛嬌でも振り撒いてりゃいいんだ!しかもこの俺の傍に侍らせてやろうと言うのに!巫山戯るなバカ女が‼︎」
「ふざけてるのはどっちだよ」
カートがそう叫ぶと、レイジはそう言う。
その声は、かなり冷えていた。
「あぁ⁉︎貴様、今何と言った⁉︎」
「シシリーにはシシリー自身の意思があるんだ。それを抑えつけて自分の思い通りにしようとするなんて、思い上がってるにも程があるだろ」
「ぐぎぎ……貴様ら……!」
カートがそう聞くと、レイジは毅然とした態度でそう言う。
カートが歯軋りする中、突然、ニヤリと笑みを浮かべる。
「く……くくく……そんな事言って良いのか?」
「ん?」
「シシリー、貴様の父親は財務局の管理官だったな?」
「っ!」
「俺の父は財務局の事務次官だ‼︎俺が父に一言掛ければ……くく……どうなると思う?」
カートがそんな笑みを浮かべると、レイジは首を傾げる。
すると、カートはそんな風に言う。
シシリーの父親が財務局の管理官なのに対して、自分の父親は財務局の事務次官なのだと。
つまり、身分を盾にした脅しだった。
「っ!」
『此奴……何処まで!』
シシリーが唖然とする中、シンは激昂する。
すると、レイジが口を開く。
「……それって、お前は権力がないと何も出来ないって事じゃないのか?」
「あぁ⁉︎」
レイジがそう呟くと、カートはレイジの事を睨む。
カートの睥睨に対して、レイジは怯まずに諭す様に口を開く。
「権力を使って、自分の思い通りにするなんて事は出来ないんだ。貴族なら、貴族の模範となる様に行動しろよ。それに……ノブレスオブリージュ。権力とかを持つなら、それ相応の責任って物が発生するんだ。そんな奴に女が振り向くと思うなよ」
「うるさい!貴様ごときが知った様な口を聞くなァァァァァ‼︎」
レイジはそんな風に諭す様に言う。
貴族には、貴族なりの考え方であるノブレス・オブリージュがあるのだと。
そして、権力に傘を着て好き勝手する奴に、女は振り向かないとも言う。
カートが激昂して、レイジを殴ろうとすると。
「いい加減にしろ!」
そんな叫び声が聞こえてくる。
叫び声の主はオーグであり、それを聞いたカートは怯んだ。
「ア……アウグスト殿下……!」
「先日の私の言葉を忘れたか?」
「そ、それは……!」
「しかも、親の圧力を振り翳す事は言語道断。王国貴族にあるまじき行為だ。この事は父上を通して財務局長に伝えておく。万が一にも可笑しな行動を取らんようにな」
「そ……そんな……⁉︎」
「異論は認めん。もう行け」
「くっ……!分かりました……!」
カートが怯む中、オーグはそう言う。
王国貴族にあるまじき姿を晒すカートに対して、財務局長に伝えておくと。
自分の家よりも遥かに権力があるオーグにそう言われては、カートは何も返す事が出来なかった。
カートは拳を握ると、そのまま走り去っていく。
「ありがとうございました、殿下!」
「助かったよ」
「何。お前達がどうするか先程から見ていたんだがな。妙な方向に話が進みそうだったから介入させて貰っただけだ。シン、お前がキレたらどうなるか見てみたかったがな」
「さっさと入って来いよ!」
シシリーとタケルがそう言うと、オーグはそう言う。
それを聞いたシンは、右手でオーグの頭をグリグリする。
「まあ怒るな。お前が居ればクロード達に危険は無いと確信していたからこそだ。『大丈夫、何かあっても俺が守ってやる。』……だろ?」
「っ⁉︎」
「格好良かったじゃないか。なあクロード?」
オーグはシンのその言葉を振り返すと、シシリーにそう聞く。
それを聞いたシシリーは。
「えぅっ⁉︎……あ……その……か……格好良かった……です……」
「だそうだ。良かったなシン!」
『あぁもう、可愛いなチクショウ!』
シシリーがそう言うと、オーグはそう言う。
またまたシシリーに見惚れてしまったシンであった。
オーグはレイジに話しかける。
「……権力などを持つと、それ相応の責任が発生する……か。よく言ったものだな」
「……色々と、力を持つことへの責任感というのを学ぶ事があったんだ」
オーグがそう言うと、レイジはそう答える。
レイジの心の中には、ハルトとのやり取りがあった。
力を持つという事は、それ相応の責任を持つのだと。
すると、マリアが口を開く。
「これでもう彼奴、シシリーを諦めたと思う?」
「いや、あの様子だとまだ気は抜かない方が良いと思うよ」
「多分、あいつはまだ諦めてないと思うぜ」
「やっぱり?」
マリアがそう聞くと、シンとレイジはそう言う。
まだ、カートが諦めてないと分かっていたからだ。
すると、シンが口を開く。
「その事で俺、ちょっと思い付いた事があるんだけど、皆この後、ウチ来ない?」
『シン君の家って言ったら……!』
『シンの家って言ったら……!」
シンがそう聞くと、シシリーとマリアは顔を見合わせる。
「もし用事があるなら……」
「「行く!すぐ行く!絶対行く!」」
シンがそう言うと、シシリーとマリアはそう叫ぶ。
『……よっぽど爺ちゃん達に会いたいんだな……』
「では私も行くか。どうせ父上もシンとレイジの家へ行くだろうしな」
シンは、マーリンとメリダに会いたいと願うマリアとシシリーを見て、そんな風に思った。
オーグがそう言うと、トールが口を開く。
「ならば、自分たちもご一緒します」
「確か、トールとユリウスだよな?」
「ああ。2人とも、私の護衛だ」
「殿下の身に何かあれば大事ですから」
「その通り!拙者も伺うで御座る‼︎」
トールがそう言うと、レイジとオーグはそう話す。
トールとユリウスがそう言うと。
『何この人⁉︎武士⁉︎御座る⁉︎』
『武士の用語がこの異世界にも⁉︎』
「とにかく私達、両親に報告だけして来る!』
「ああ。騒ぎにならない様に爺ちゃん達来賓室に居るみたいだから、そこで待ってるよ」
ユリウスの口調に、シンとレイジは驚く。
マリアとシシリーはそう言うと、両親の許可を貰う為にその場から離れる。
それを見ていたフルールは。
「……なんか、かっこいい……!」
フルールは、レイジを見つめながらそう呟いていた。
その後、レイジ達は来賓室に向かう。
来賓館に行くと、マーリンとメリダとディセウムが待っていた。
「遅かったのう。何かあったかと心配しとったぞ」
「全くだ。私は君がまた何かヤラかしたかと……」
「悪い悪い」
「ゴメン爺ちゃん、ディスおじさん、それヒドい。あ、紹介しておくよ。クラスメートのシシリーとマリア」
「そして、トールとユリウスだ」
「ちょっとシシリー達も家へ連れて行きたくて」
マーリンとディセウムがそう言うと、タケルとシンはそう言う。
2人がそう言うと、シシリー達は固まる。
そして、慌てて自己紹介をする。
「っ⁉︎ははは初めまして!シン君と同じクラスのマママリア=フォン=メッシーナです!」
「あのその……は、初めまして!シシリー=フォン=クロードです!」
「トールです!」
「ユリウスで御座る!」
4人はそんな風に自己紹介をする。
すると、ディセウムが口を開く。
「フム……さてはその青い髪の子がシン君が捜していたと言う……」
『鋭いな』
「ほう、アンタがそうかい」
「??!?」
ディセウムがそう言うと、ユウトはそう思う。
そんな中、メリダは緊張するシシリーをじっと見る。
「だ〜〜〜もういいから!早く家行こう!早く!」
ディセウムとメリダの2人が、シシリーを見る中、シンはそう叫ぶ。
そして、屋敷へと戻り、事情を説明する。
カートという権力に傘を着た貴族がいて、巻き込まれていた事を。
事情を聞いたメリダ達は口を開いた。
「なるほど……式の後にそんな事があったのかい」
「ディセウム。この国の貴族には、まだそんなのが居るのか?」
「一部、選民意思の強い者がまだ居りますが、我が国の貴族の意識改革は、カレルを筆頭にして、順調に進んでいるはずです。そうだな?」
「ええ。それに、財務局のリッツバーグ事務次官と言えば公明正大で有名……その息子がそんな事になっているとは……にわかには信じられないね……」
「だとすると、カート自身に何かあったのかもしれないな」
「うむ。それしかあるまい」
「そう見て、間違い無いだろうね」
『そんな立派な父親が息子の勝手な都合を聞き入れるはずないのに……何でカート君はあんな事言ったんだ?』
メリダがそう言うと、マーリンはディセウムにそう聞く。
ディセウムがそう答えつつ、リアムに問いかけると、リアムはそう答える。
一部、選民思想が強い貴族は、アールスハイドにも居るが、カレルを筆頭にして、意識改革は進んでいる。
それを聞いたレイジがそう予想すると、ディセウムとリアムも同意する。
シンがそう考える中、オーグがシンに話しかける。
「……まあそれはそれとしてシン、思い付いた事とは何だ?」
「あ、そうそう。婆ちゃん、俺、この間制服の付与書き換えたじゃない?同じものをシシリーの制服にも付与してあげたいんだけど……良いかな?カート君の件でまだ不安があるし、彼女の守りを固めておきたいんだ」
「え?」
「付与を⁉︎」
「どう言う事だ⁉︎」
「凄いよこの記事。20文字も付与出来たし」
「へぇ」
オーグがそう聞くと、シンはそう言って、周囲の人たちは驚く。
トールとユリウスも首を傾げる中、メリダはシシリーをチラリと見て、口を開く。
「そうさねぇ……シシリーと言ったね?」
「は、はい!」
「シンの言ってる付与魔法とは、とんでもない代物だ。それにお前さんの制服にも付与しようとしている。この子は本気でアンタを守ろうとしてるって事さ。アンタはその守護を受け取る”資格”があると思うかい?」
「資格……ですか?」
メリダはそんな風に問いかける。
シシリーの真意を見抜こうとする様に。
メリダはそう言う中、シシリーは戸惑うように反応する。
それを見たシンが口を開く。
「大袈裟だよ婆ちゃん。俺がやりたいだけなんだから……」
「お黙り。アンタの制服、今どんな状態か分かっているのかい?」
「どんな状態って……?」
「それは既に国宝級の防具だよ」
『国宝級⁉︎』
シンがそう言う中、メリダは食い気味にシンの言葉を遮り、そう言う。
それを聞いた一同は驚く。
「国宝級って……」
「この子がまたハッチャけてとんでもない効果を付与しちまったのさ。価値にしたら、一体幾らの値が付くか分からない。そんな処理をこの子はアンタの制服に施そうとしてる。それを受け入れる資格は……覚悟はあるのかい?」
「……」
またやらかしたシンに対して、レイジが呆れと驚愕の表情を浮かべる中、メリダはシシリーを見ながら、そう言う。
シシリーはそれを見て葛藤するが、すぐに答える。
「私……には……その資格は……ありません」
「ん?どう言う事だい?」
シシリーがそう言うと、メリダはそう問いかける。
シシリーはそう言いながら、目には涙を浮かべていた。
それを見て、シンは驚く。
「シシリー⁉︎」
「……」
「私は……シン君の優しさに付け込みました……。シン君に私の事情を話せば……私に同情してくれる……助けてくれる……そう期待して、私の事情を話しました……」
「違うの!これは元々私が……!」
「マリアは悪くない!聞いて貰うと決めたのは私だから……!」
それを見たシンが驚き、レイジがシシリーを見る中、シシリーはそう独白する。
マリアがフォローしようとするが、シシリーはそう叫ぶ。
それを聞いたメリダは口を開く。
「まあ、この子は強いからね。頼りになるのも分からんでもないさね」
「でも……!でも……シン君には関係ないのに……やっぱり助けてくれて……守ってやるって言ってくれた事が嬉しくて……期待して……全部自分の勝手な都合なのに……!」
『あの時の言葉は……そう言う事か……』
『あのごめんなさいは、そういう意味だったのか』
メリダがそう言う中、シシリーの独白は続いた。
それを聞いて、シンとレイジは、あの時の言葉の意味を察した。
すると、シシリーは立ち上がり、メリダに頭を下げる。
「メリダ様!お孫さんを利用しよとして申し訳ございませんでした!この後の事は自分で何とかします!」
「シシ……!」
シシリーはそう謝罪して、そのまま立ち去ろうとする。
それを見て、シンはそう叫ぼうとすると、メリダが大きく叫ぶ。
「お待ち!」
メリダはそう叫んで、シシリーを呼び止める。
シシリーが止まる中、メリダはシシリーに近寄る。
「シシリー、よく正直に話したね。シンを利用しようとしてるのはすぐに分かったよ。もしそのままシンの付与魔法を受けようとしたなら、叩き出してる所さね」
「……うう……ひっ……うぐっ……!」
「でもアンタは正直に話した。付与された防具の価値を知った後に……だ。それを手にするチャンスを自分で放棄する事は、誰にも出来る事じゃない」
「でも……でも……わた……私……シン君……騙して…………」
メリダはそう言うと、シシリーの方に歩み寄る。
シシリーが罪悪感が募ったのか泣く中、シシリーが落とした帽子を拾い上げ、シシリーの頭に戻しながら、メリダは口を開く。
「女が男を騙して何が悪いんさね。アンタのした事なんざ可愛いもんさ。シンを見てごらん?気付いてもいないよ。寧ろ可愛い女の子に頼られたもんだから張り切ってる位じゃないかい」
「悪かったな!」
「フッ」
「シシリー、俺は騙されたなんて思ってないよ。シシリーを助けようと思ったのは俺の意思だよ。だからさ、俺の意思を否定すんなよ。利用してくれて大いに結構だよ!寧ろ事情を聞かされないでシシリーに何かあった方が後悔するわ!」
「シ……シン……君……!」
メリダは、シシリーにそう言いながら、シンを見る。
シンは照れくさそうにそう言い、レイジはそう笑った。
シンはそう言うと、シシリーは涙目でシンを見る。
そして、メリダは謝罪と共に、シシリーを抱擁する。
「試す様な事をして悪かったねぇ。シンが付与する防具を渡すには、どうしても確認しなきゃいけなかったから、悪かったね」
「う……うぅ……うわああああん!」
メリダがそう言うと、シシリーは大きく泣いた。
シシリーが落ち着いた後、メリダがシシリーに言う。
「付与については、一切他言無用だからね」
「は……はい!」
「じゃあ早速付与しようか。シシリー、服とスカートを……」
「こ、ここで……?」
「はっ!」
「何言ってんだよ」
メリダがシシリーにそう言う中、シンはそう言う。
失言だった為に、シンはレイジにハリセンでぶっ叩かれた。
それを見ていたメリダは、口を開く。
「おいでシシリー。私の服を貸してあげる」
メリダはそう言うと、シシリーを別室へ連れて行く。
それを見ていたマーリンが口を開く。
「のうシン」
「何?爺ちゃん」
「ワシ、あの子がシンを利用しとるなんて全く気付かなんだわい……」
「何だよ爺ちゃん……俺もだよ……」
「メリダの奴、よく気が付いたのう……」
「女としての年季なんじゃない?」
マーリンがそう言うと、シンはそう言う。
それに対して、リアムはある事を言う。
「もし、事実を打ち明けずに効果を付与していたら、罪悪感で彼女の心は押し潰されていたかもしれないね」
「だからさ、そんな大事なの?俺の付与」
「気づいてないのかよ……」
「それより……あの婆さん、ここの権限握っとらんか?ワシ、さっき完全に空気じゃった……」
「頑張れ!爺ちゃん!」
リアムはそんな風に言う。
何も打ち明けずに効果を付与していたら、シシリーの心が壊れていた可能性があると。
シンはそう言うと、レイジは呆れる。
マーリンがそう言うと、シンはそう言う。
オーグ達も、空気と化していた。
一方、別室では。
「それにしても、よく正直に言ったもんだね。だって国宝級だよ?私の若い頃なら絶対黙ってたね」
「私じゃどうしようもない状況なのは、確かなんですけど……。それでも黙ってるのは……やっぱり苦しくて……」
『成る程ねえ、良い娘じゃないか』
メリダはそう言うと、シシリーはそう答える。
それを聞いたメリダは感心しながら、シシリーに聞く。
「ところでシシリー」
「何でしょうか?」
「アンタ、シンの事はどう思ってる?」
「え……ええ⁉︎」
「アンタみたいな良い娘に、シンの事を頼みたいんだけどねえ」
「たたた頼むって⁉︎」
「その様子じゃ、満更でもないんだろ?」
メリダはそう言うと、シシリーは慌てる。
メリダがシシリーにそう聞くと、シシリーは口を開く。
「そ……それは……その……嫌いではないです……絶対……。でも、す……好きかって言われると……シン君の事は……優しいとか……なのに……強いとか……か……格好良いとか知りませんし……良く分かりません……」
「……それで十分な気もするけどねえ……」
「え?」
「いや、何でもないよ。『この娘は何とか確保したいねえ』」
シシリーがそう言うと、メリダはそう呟く。
シシリーが首を傾げる中、メリダはそう考えていた。
何としてでも、シシリーとシンをくっつけようと画策していた。
その後、メリダとシシリーも戻ってきて、制服に付与を始める。
「自分の常識外れを知る良い機会だ。シン、皆の前で付与しな」
「はいはい」
メリダがそう言う中、シンは魔道具を使って魔法文字を浮かび上がらせる。
「な……何だこれは⁉︎文字が浮かび上がって……魔法防御……衝撃緩和……まさか……制服に付与された文字……⁉︎」
「この様な光景を初めて見るで御座るな……」
それを見たディセウムとユリウスはそう言う。
そして、シンはペン型の魔導具の消しゴム部分を用いて、付与魔法を消していく。
「文字が……消えていく……!」
「まさか……付与魔法を削除してんの⁉︎」
「はぁ……何回見ても非常識な光景さね……」
「ほっほっ。誰も考え付かん事を平気でやりよる。成長したのう」
「アンタがそんなんだからシンはぁ!」
「落ち着いて下さい、メリダ様!」
「気持ちは分かるが、それくらいにしろって!」
シシリーとマリアが驚く中、メリダは呆れて、マーリンは笑う。
それを聞いたメリダが、マーリンの首を絞める中、リアムとレイジが落ち着かせようとしていた。
「……じゃあ、新しい魔法を付与していくよ」
シンはそう言うと、自分の制服に付与した物を付与していく。
「同じ付与を……続けて3つ別々の物に……⁉︎」
「普通は1つでも大変なのに……」
「見慣れん字だが……どんな効果を付与してるんだい?」
「絶対魔法防御、物理衝撃完全吸収、自動治癒、防汚……の4つ」
「何やら不穏な単語が聞こえたな」
ユリウスとトールが驚く中、ディセウムはそう聞く。
シンは日本語で付与しているので、ディセウムからしたら、判別不可能な文字に見えるのだ。
シンがそう答えると、オーグはそう呟く。
すると、ディセウムが驚く。
「絶対……魔法防御……⁉︎そんな事が可能なのか……⁉︎」
「俺も相当苦労したよ。そのイメージを作り上げるのにね。全ての魔法を防ぐ為に『堅い壁』をイメージしてたんだけど……上手くいかなかったんだ。火は防げても、電撃が防げなかったり。……で、発想を転換してみた。服を包むように魔力の障壁を展開させて……発動した魔法が、その障壁に触れると魔力が霧散するイメージを付与してみたんだ」
「魔力の霧散……⁉︎魔法使いの存在意義に関わる付与ね……」
「衝撃吸収の方は、服に向かって働いている運動エネルギーを消失させるイメージだよ」
「ぶ……物理攻撃も効かないで御座るか……!」
ディセウムがそう言うと、シンは付与をしながら、そう解説する。
それを聞いたマリアとユリウスは驚いた表情を浮かべていた。
しばらくすると、付与を終える。
「よし!出来た‼︎」
シンはそう叫ぶ。
それを見ていたオーグたちは。
「もう何でもありだな……」
「そもそも付与の書き換えって……」
「本当、常識を疑うわ……」
「あれ?」
『まあ、そうなるのも無理ないよな』
オーグ達がそう話してるのを見て、シンは首を傾げ、レイジは同情する。
シンは口を開く。
「でも、あくまでこれ魔法道具だから、魔力を通さないと発動しないでしょ?だから不意打ちとか防げないんだよね。それに制服以外の所はカバーされないから、手足と頭は無防備なんだよ」
「しかし……それを補って余りある魔法効果……メリダ師の仰った事がよく分かった」
「しかし父上、これは……」
「分かっている」
シンはそんな風に言う。
凄まじい効果を持っているが、魔道具である事には変わらないので、不意打ちには対処出来ないという欠点があった。
シンがそう言う中、ディセウムとオーグはそう話すと、ディセウムはシンに話しかける。
「シン君、その付与は素晴らしい物……いや素晴らし過ぎる。これが世に出回ったら大変な事になる。絶対に他言していけないよ」
「分かってるけど、そこまで念を押す様な事?」
「そこまでの事なんだよ。もしその付与の事が軍部に伝わったら……周辺国に宣戦布告を望む声が上がる可能性が高い!」
「宣戦布告……⁉︎」
「だろうな」
ディセウムはそう言う中、シンは首を傾げる。
ディセウムのその次の言葉に、シンは驚き、レイジは納得する。
「シン、考えてみろ。魔法も物理攻撃も効かず、怪我もすぐ治る。そんな防具を着た兵士が揃っていれば、他国の軍勢など圧倒出来るだろうな」
「他国からしたら、厄介極まりないからね」
「レイジ君とリアム君の言う通りだ。人間は誘惑に弱い。他国より圧倒的に有利な状況で戦争を始められるとなれば、この誘惑に負けてしまう者は……確実に出る」
シンが驚く中、レイジとリアムとディセウムはそう言う。
この効果がある防具を着ていれば、他国を攻め滅ぼす事もできるのだと。
それを聞いたシンはようやく、事態の重大性に気づく。
「そ……そんな……!『俺は……皆の身を守られたと思っただけなのに……戦争の道具にされるとか考えもしなかった……。これも、この世界の現実なんだ……』ごめん、俺……そんな事まで全然考えてなかったよ……」
「っ!ああ……シンが……シンが初めて自分の非常識を反省してくれたよ!」
「ほっほっ」
「分かってくれれば良いんだよ、シン君」
シンはそう言うと、メリダは感動して、マーリンとディセウムはそう言う。
だが、ディセウムはシンの次の言葉に驚く。
「本当はオーグの制服にも付与しようと思ってたけど……これ以上広まるのはマズイよね」
「え?シン君⁉︎ちょっと待……!」
「オーグごめんな。お前の制服には付与してやれないわ」
シンはそんな風に言う。
それを聞いて、ディセウムが目を見開く中、シンはオーグにそう謝る。
オーグが納得している表情を浮かべる中、ディセウムは慌てて口を開く。
「ちょっと待とうかシン君!確かに口外はマズイが……運用さえ間違えなければ良いと思わないかい⁉︎」
「そりゃそうだけど……」
「そうだろう!身を守る手段としてこれ以上の物はない!そしてやっぱり王族にはそれなりの守りは必要だと思うんだよ!うん!だから息子には……はは……ダメ?」
「さっきまでのかっこいい姿はどこに行ったんですか……」
「まあ、気持ちは分かるけどな。でも、もうちょいかっこいい姿を見せてくれよ」
シンがそう言うと、ディセウムはそう叫ぶ。
先ほどとは打って変わった姿には、リアムとレイジも呆れていた。
結局、オーグ、トール、ユリウスの制服にも付与をする事になった。
シンが制服に付与し終えた後、屋敷の外に出る。
「結局追加で付与したのは、オーグとトールとユリウスの3人分か」
「僕らは護衛ですから必須です」
「かたじけないで御座る」
「マリアは良いのか?」
「いい。そんな国家機密の塊みたいなの着たくない」
トールとユリウスがシンに対してそう言う中、マリアはそう答える。
マリアはそんな理由で拒否したのだ。
それを見て、レイジは苦笑していた。
「じゃあシシリー、明日から俺とレイジがまず家に迎えに行くからマリアと待ってて。それで登下校中の心配はないよね?」
「シン君……ありがとう。まだちょっと怖い……でも、シン君が本気で守ってくれてるのが分かります。凄く嬉しいです!」
「……」
シンがそう言うと、シシリーはそう言う。
それを見ていたシンが見惚れると、口を開く。
「あ、後2日目からはゲートの魔法での移動になるからね。俺が1回行った場所にしか移動出来なくてさ。」
「ん?ゲートって何?」
「こーいう魔法」
「っ⁉︎」
「中入ってみて」
シンがそう言うと、マリアは首を傾げるが、シンはゲートの魔法を発動する。
それを見て、マリア達が驚く中、皆はゲートの魔法の中に入る。
すると、以前、シン達が住んでいた家が見える。
「ここか」
「えーと……ここ……何処?」
「俺と爺ちゃんが前に住んでた家」
「ちょっと待て!お前は森の奥に住んでたって言ってたな⁉︎」
「ここがそうだよ」
「まさか転移魔法⁉︎」
「転移とはちょっと違うんだけどね。場所と場所を繋げると言うか………」
「いや、ちょっと意味分かんない……………」
レイジがそう言う中、マリアが首を傾げ、シンとそう言う。
それを聞いて、オーグやマリアが驚く中、シンはそう説明する。
ゲートの魔法の理論は、そんな感じなのだ。
だが、マリアはそれを聞いて理解しきれなかったのか、頭を抱えていた。
その後、戻って来た。
「ゲートは1度行った場所にしか作れないから、家まで馬車で送って開通させるよ」
「は、はい……」
シンがそう言うと、シシリーは呆然としながら言う。
マリアは、頭を抱えながら言う。
「色々驚き過ぎて頭痛くなってきた……」
「皆が言う程の常識知らずではないと思ってましたけど……」
「魔法の常識知らず……」
「主席殿も一般常識は落第だな……」
「そんなに酷くはないだろ?」
「え……?」
「え?エヘヘ……あれぇ?」
マリアが頭を抱える中、トール、ユリウス、オーグの3人は、呆れた声を出す。
シンがそう言うと、全員驚いた声を出す。
そして、オーグは呆れ気味に言う。
「シン……お前、常識を学ぶ前に、自分の行動見直した方が良いと思うぞ」
「……な……何だよ皆して……」
「本当だよ」
「レイジまで……」
オーグが呆れ気味に言うのをシンが呆気に取られる中、レイジも呆れ気味にそう言う。
こうして、波乱の1日は幕を閉じた。
だが、悪意の気配は着実にレイジ達に近づいていた。
今回はここまでです。
今回は、シシリーの制服に付与をする所までです。
新たなオリキャラであるフルール=フローレスが登場しました。
元ネタは、HUGっと!プリキュアの主人公である野乃はな/キュアエールです。
シンの非常識に呆れる中、悪意は着実に迫っていました。
果たして、どうなるのか。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。