賢者の孫with超宇宙刑事ギャバンインフィニティ 作:弩城怜慈推し
シュトロームの元にオルトが訪れている頃。
魔法学院では、シンが考え事をしていた。
すると、シシリーが話しかける。
「……」
「シン君、考え事ですか?」
「え?あ、あぁごめん。改良する剣の事を考えててさ。なあマーク、今から君の家行っても良いか?」
「え?ウチッスか?」
「さっき言った武器の新調の事で色々聞きたいんだけど……」
「ああ、良いッスよ!」
シシリーに話しかけられると、シンはそう答えた。
マークと話していた剣の改良案について、考えていたのだ。
シンがマークにそう聞き、マークが了承すると、トニーが口を開く。
「僕も行って良いかい?」
「トニー。騎士になるのは嫌でも、やっぱりビーン工房は気になるのか?」
「騎士養成士官学院が嫌なのであって、騎士や剣士が嫌いな訳じゃないよ。やっぱり剣を見るとワクワクするからねぇ。でも、Sクラスから落ちると騎士養成士官学院に強制連行だからね、僕は。あまりそう言ってられないけどね」
「トニーも意外と苦労してんだな……」
トニーがそう言うと、シンはそう聞く。
すると、トニーは苦笑しながらそう言う。
トニーは騎士や剣は嫌いではなく、剣を見るとワクワクするようだ。
ただし、魔法学院にはSクラスを維持するという条件で通っているのだ。
それを聞いたレイジはそう呟く。
マークは、シンに聞く。
「それでウォルフォード君は、どう言う剣を考えてるんスか?」
「薄い刃ってのが大前提だけど、それじゃ折れやすくてさ。替えを沢山用意するのもお金掛かるし……」
「賢者様の孫でもお金に困るのかい?」
「そうはいかないんだよ。小遣いしか貰ってないからね」
「まあ、小遣い程度で十分だからな」
「え⁉︎そうなのですか⁉︎」
マークがそう聞くと、シンはそう答える。
薄い刃であることを前提としているが、薄いと折れやすい欠点を抱えるため、出費が激しくなるのだと。
トニーが意外そうに言うと、シンとレイジはそう答え、トールが驚く。
その理由は……。
「婆ちゃんが、常識的な金銭感覚を身に付けさせる為にそうしろって爺ちゃんに……」
「俺は常識的な金銭感覚を学んでるし、王都に来る前は、買い出しを手伝ってたからな」
「流石は導師様!節制と鎧は身に付けておいて損はないで御座る!」
「それはそうだけど……」
シンとレイジはそう言う。
お小遣いしかもらっていない理由は、メリダがマーリンに、シンに常識的な金銭感覚を身に付けさせる様に伝えているからだ。
レイジとしても、各地を旅していたり、買い出しを手伝っていたというのもあり、常識的な金銭感覚が身についていた。
それを聞いたユリウスも同意する中、シンはそう呟く。
すると、マークが口を開く。
「持ち手まで一体型の剣を大量に鋳型で作るのはどうッスか?柄の加工も幅けるし、コストも抑えられるッスよ。」
「それは俺も考えたけど、柄まで一体型だと振動がね……」
「そうなると……シンまで震えるからな……ぷっ」
「「ブッ!」」
「想像して笑うなよ!」
マークがそう言うと、シンはそう言う。
持ち手まで一体化した剣を鋳型で作れば、柄の加工も省けて、コストも抑えられるが、超振動を付与する関係上、持ち手も振動してしまうのだ。
レイジがそう言うと、振動するシンを想像して、レイジ、トニー、マークの3人が吹き出して、シンはそう突っ込む。
すると。
「じゃあ、刃だけ簡単に交換出来るようにすれば良いんじゃないのかい?」
「「「それだ!」」」
トニーはそんな風にアイデアを口にする。
トニーがそう言うと、シン、レイジ、マークの3人が叫ぶ。
「出来ればワンタッチで交換したいんだけど……」
「それはそれで開発にコスト掛かるッスね……」
「確かに……ワンタッチで交換する機構もつける必要があるからな」
「普通、刃の柄はブレない様しっかり付いてるけど……振動する事が前提だからねぇ。外れなければ装着も簡単で良いんじゃないのかい?」
「「「それだ!」」」
シン、マーク、レイジはそう言う。
実際、ワンタッチで交換する場合、そのための機構も作らなければならなく、それはそれで開発にコストがかかるのだ。
すると、トニーは再びそう言う。
それを聞いた3人は再び叫ぶ。
「いやぁ、トニーが居てくれて助かったな!」
「冴えてるな」
「早く工房行きましょう!試してみたいアイデアが止まんないッス!」
レイジ達はそう言って、トニーを称賛する。
実際、トニーのアイデアは、かなり使える物だったからだ。
すると、マリアが口を開く。
「ねぇねぇシン、レイジ」
「ん?」
「何だ?」
「シン達が工房行ってる間、私達はオリビアの店に居ても良い?」
「ん?」
「もっと色々聞きたいんだよね!新しいメニューの事とか、新しいメニューの事とか!」
「メニュー目当てかい!そういうのはやめておいた方が良いだろ!」
「お手柔らかにお願いします……」
マリアはそんな風に話しかける。
シン達が工房に行っている間、女性陣は石窯亭に向かうと。
新しいメニューのことを聞き出そうとするマリアに、レイジがそう突っ込む中、オリビアは苦笑しながらそう言う。
すると、シンは口を開く。
「良いよ。工房に居ても女の子はつまらないだろうし」
シンは了承した。
そうして、ビーン工房へと向かう事になった。
一方その頃、オルト、カルロス、シュトロームの3人は、練兵場に到着した。
オルトが頷き、カルロスが先に入る中、シュトロームも馬車から降りる。
「シュトローム先生、到着しました」
「……?」
「無理に連れ出して、すみません」
「いえ……それは構いませんが……」
オルトがそう言う中、シュトロームは何かを感じたのか、首を傾げる。
オルトの謝罪にそう答えつつ、シュトロームはオルトと共に歩いていく。
しばらくすると、練兵場の開けた場所へと到着する。
「ここは?」
「警備隊の詰所の中にある練兵場です。ここで検分をしようと思いまして」
「……こんな所で?」
「ええ」
シュトロームがそう聞くと、オルトはそう答える。
警備隊の詰所の練兵場で検分をすると聞いて、シュトロームは違和感を感じていた。
すると、オルトが指を鳴らすと、大勢の騎士や魔法使い達が現れ、シュトロームを取り囲んだ。
「……遺体の検分をすると言う雰囲気ではないようですね」
「しますよ。あなたの検分をね」
「私の?何故?」
「ようオルトォ!お前ん所の隊員に呼び出し食らったけどよ、これは一体何なんだ?」
シュトロームは周りの気配を見て、そんな風に呟く。
シュトロームの呟きにオルトはそう答えると、魔法師団団長のルーパー=オルグランと騎士団総長のドミニクが顔を出した。
ルーパーの疑問に、オルトは口を開く。
「今から説明しますよ、ルーパー様」
「私は何故この様な仕打ちを受けているのでしょうか、オルトさん?やはり元帝国貴族にはこの様な扱いが相応しいと?」
「そんな理由ではありませんよシュトローム先生。シュトローム先生、あなたの証言は見事でしたが、一つだけミスを犯しましたね。ドミニク局長、魔人化したのは誰でしょうか?」
「カート=フォン=リッツバーグだろ?」
ルーパーの問いにオルトがそう答える中、シュトロームはそう言う。
元帝国貴族には、この様な扱いが相応しいのかと。
それに対して、オルトはシュトロームにそう言いながら、ドミニクにそう聞くと、ドミニクはそう答える。
それを聞いたオルトは頷いた。
「そうです。ここに居る皆は当然知っている。しかし、ここに居る人間以外は知らないはずなんですよ。『魔人化したのはカート』だと言う事実は」
「……ほう?」
オルトがそう言うと、シュトロームはそう反応する。
オルトが感じた違和感。
それは、魔人となったのがカートである事を知っていた事だ。
「ウォルフォード君とウォーカー君から話を聞いた陛下は、直ぐ様箝口令を敷かれました。魔人化した人間の名を口外してはならぬと。今回の魔人及びエモンズの出現には、幾つか不可能な点があり、そのせいでカートの家族が不当な扱いを受けぬ様に。あなた達に会う前にリッツバーグ邸に伺いましたが、物静かなものでしたよ。魔人に対し脅威を感じる国民性から言って……魔人化したのがカートだと知れれば人が殺到するでしょう。箝口令が機能している証拠です。『高等魔法学院に魔人が出現し、偶々居合わせた英雄の孫シン=ウォルフォードと、その親友であるレイジ=ウォーカーがそれを討伐した』……王都に広まっているのはその話だけです。知っているのは、軍部と警備隊の一部、魔法学院の関係者だけ。さて、ではあなた達は、何処でカートの件を知っていたのですか?」
オルトはそう語っていく。
中等学院で話を聞いた時点で、その違和感に気づき、鎌をかけたのだ。
ディセウムの箝口令には、リッツバーグ家が不当な扱いを受けない為の措置でもあったのだ。
カートが人体実験を受けてしまった被害者であるが故に。
それを聞いて、魔法使いや騎士達がざわつく中、シュトロームは何も返さなかった。
すると。
「クク……ハハ……アハハハハハハ!」
これまで黙秘していたシュトロームが突然、笑い始めた。
シュトロームは大笑いをやめると。
「まさか、箝口令が敷かれているとは思わなかったですねぇ。そうですか。騒がれているのはウォルフォード君とウォーカー君だけですか」
シュトロームはそう呟く。
箝口令が敷かれていたというのは、シュトロームにとっては想定外だったからだ。
すると、シュトロームから魔力が増幅した。
それを見たルーパーは。
「舐めてんじゃねえぞ!」
そう叫びながら、魔法をシュトロームに向けて放った。
しかし、シュトロームは魔力障壁を張って、ルーパーの魔法を防いだ。
「チッ!これを防ぐか……テメェ何モンだ⁉︎」
「答える義務はないですね。そこを退いてもらいましょう……!」
ルーパーは自分の魔法を防がれて、舌打ちをしながらそう聞く。
すると、シュトロームはそう言って、魔法を放った。
「離れろルーパー!!」
それを見たドミニクはルーパーにそう呼びかけ、2人はすぐに魔法を避けて、地面に飛び降りた。
2人がいた所は、魔法によって破壊された。
「さて……」
そう言うと、シュトロームは浮遊していく。
それを見た人たちは。
「う……浮いている……⁉︎」
「そんな魔法見た事も……⁉︎」
「絶対に逃がすな!奴を逃せば、また犠牲者が出るぞ‼︎」
シュトロームが浮いたのを見て、周りの人たちが驚く中、ルーパーはそう叫ぶ。
シュトロームを放置すれば、また新たな犠牲者が出かねないからと。
周囲の魔法騎士と騎士達が一斉射撃を開始し、シュトロームに全弾命中した。
だが……。
「さて、ここでの実験は全て終わりました。そろそろ失礼させて頂くとしますね」
シュトロームは障壁で防いでおり、無傷だった。
すると、シュトロームの言葉を聞いたオルトが叫ぶ。
「実験だと……⁉︎カートを実験に使ったと言うのか!未来ある少年の命を!お前の身勝手な目的の為に!」
「そうですね。まあ、私達に目を付けられた時点で、彼には運が無かったんですよ」
シュトロームの言葉を聞いたオルトは激昂する。
これから、大人になっていくはずだったカートの命を身勝手な目的の為に利用したシュトロームに。
オルトの問いに対して、シュトロームはそう答える。
それを聞いて激怒したオルトが、剣を抜いて走り出す。
「彼の家族がどれだけ傷付き、苦しんでいるのか分からないのか!」
「オルト!止せ‼︎」
「正義漢は鬱陶しいですね……」
オルトは激昂してそう叫び、シュトロームへと向かっていく。
ドミニクが止めようとする中、シュトロームはそんな風に吐き捨てる。
オルトの剣を避け、シュトロームが魔法でオルトを消そうとした。
すると。
「オルト!」
ドミニクが間一髪でオルトを助け、魔法が練兵場の壁に向かう。
その少し前、レイジ達は、ビーン工房へと向かっていた。
「え⁉︎マークと付き合ってるの⁉︎」
「そうなんだ!」
「マークとは幼馴染みで、その自然と…………。」
「そこ、詳しくお願いします!」
「詳しくですか⁉︎」
女性陣が恋バナで盛り上がっていた。
オリビアはマークと付き合っており、マリアとフルールがそう反応する中、シシリーは追求しようとしていた。
すると、背後で爆発が起こる。
「何だ⁉︎」
「壁が……⁉︎」
突然、壁が崩れた事に驚き、破壊された壁の奥を見る。
そこには、シュトロームが居た。
「おや」
「何の騒ぎだこりゃ……⁉︎(大勢で1人を取り囲んで………それに、この巨大な魔力は……⁉︎)」
「両目に眼帯の男……オーグ、あいつが?」
「間違いない、オリバー=シュトロームだ……!」
「これこれは、アウグスト殿下に英雄シン=ウォルフォード君にレイジ=ウォーカー君ではないですか」
(俺達の事を知ってる……⁉︎いや……そもそもあいつには目が見えていないのに何で……⁉︎)
シンがそれを見て驚く中、レイジはオーグにそう聞く。
それに対して、オーグはレイジの問いにそう肯定する。
シュトロームがそう反応するのにシンが驚く中、ドミニクが口を開く。
「お逃げ下さい、殿下!奴は魔人騒動の首謀者です!」
「なっ……⁉︎」
ドミニクがそう叫ぶと、オーグは驚く。
シュトロームが魔人騒動の首謀者である事を聞いて。
すると、シンとレイジが口を開く。
「お前がカートに何かしたって事か⁉︎カートの今までの不自然な行動も、魔人化したのも……!」
「ネガエモルギアを渡したのも……全てお前の仕業か!」
「そうですよ。いやぁ面白い程思い通りに踊ってくれましたねぇ。とは言え、魔人化したにも拘らず、彼処まで弱かったのは計算外でしたけどねぇ」
「っ!」
シンとカケルがそう言うと、シュトロームはカートを嘲笑いながらそう言う。
それを聞いたシンは怒りを露わにして、レイジも表情には出さなかったが、怒りの気配を出した。
「此奴が全ての元凶か!」
「おや、あなた達も私が許せませんか?」
「ああ、許せねーよ!」
「お前を放置してると危険だし、色々と聞きたい事があるんだよ!蒸着!」
『ゲキドー!アクティベート!』
シンがそう叫ぶ中、シュトロームがそう聞くと、シンとレイジはそう叫びながら、動いていく。
シンは異空間収納からバイブレーションソードを出して、魔法を発動する。
レイジは、ギャバンインフィニティに蒸着しつつ、右手にギャバリオンブレードを持ち、左手にギャバリオントリガーを持って、銃撃する。
蒸着。
それは、ギャバンシステム発動コマンド。
コマンドと共にエモルギーは臨界点を超え、充填されたギャバリオン粒子と融合。
僅か1ミリ秒でコンバットスーツへと投射形成され、蒸着を完了するのだ。
シュトロームは障壁で2人の攻撃を防ぐ。
「ふっ。……っ⁉︎」
シュトロームは余裕の笑みを浮かべるが、それはすぐに無くなる。
何故なら、シンが背後から迫っていたのだ。
「っ!」
バイブレーションソードを振ったシンだが、シュトロームが間一髪避けた。
すると。
「レイジ!」
「おう!ハァァァァァ!」
シンがそう叫ぶと、レイジも別方向からギャバリオンブレードを手に、シュトロームに攻撃しようとする。
レイジの攻撃を躱すと。
「その剣、魔導具ですね」
「さあね!」
「これでも食らえ!」
シュトロームは、バイブレーションソードとギャバリオンブレードを見て、そんな風に呟く。
それに対して、シンとレイジはそう答えると、2人は魔法で攻撃していく。
「やはり君達は、危険ですね!」
シュトロームはそう言うと、左手から黒い電撃を放つ。
2人はバックステップで回避する。
「これならどうだ!」
「っ!」
シンが地面を強く踏むと、地面から棘が生成され、シュトロームに迫る。
シュトロームが回避すると。
「はっ!オラァァ!」
レイジはギャバンシステムの武器の一つ、ギャバリオンドリルを取り出すと、地面に当てる。
ギャバリオンドリルによって、地面が一部掘り出されると、レイジはそれを蹴ってシュトロームに向けていく。
「何っ⁉︎」
「ふっ!」
「はあっ!」
まさか、地面を掘って、蹴り飛ばしてくるとは思っていなかったのか、シュトロームの動きが止まる。
そこに、シンが魔法を、レイジはギャバリオントリガーによる銃撃を行う。
シンの魔法とレイジの銃撃が、シュトロームへと向かう。
だが、シュトロームは無傷だった。
「なっ……⁉︎」
「無傷かよ……!」
「宙に浮かぶとか反則だと思うんですけど?(浮遊魔法……?そんなの流石に俺でも使えねーぞ……⁉︎)」
「今のは焦りましたよ。流石は英雄の孫とギャバンインフィニティとやら。魔人を討伐するだけの事はある」
2人がそう反応する中、シュトロームはそう言う。
流石のシンも、浮遊魔法は使えないのだ。
すると、2人は頷くと。
「そりゃどうもっ!」
「ハアッ!」
シンはそう言うと、ジェットブーツで飛び上がる。
そして、レイジも両足のブースターを出して飛び上がる。
「何っ⁉︎」
「一瞬なら、俺でも飛べるんだよ!!」
「同じくな!」
それを見て、シュトロームが驚く中、シンとレイジはそう言う。
シンはバイブレーションソードで、レイジはギャバリオンブレードで攻撃する。
シュトロームが攻撃を受けると。
「もう一丁!」
「ふっ!」
シンは魔法で、レイジはギャバリオントリガーで銃撃していく。 2人の攻撃の激しさに、シュトロームの眼帯にヒビが入る。
すると。
「調子に……乗るなああああああ‼︎」
「グッ………!」
「ううっ………!」
シュトロームはそう叫びながら魔力を放出して、レイジ達は怯む。
だが、すぐにレイジ達は驚愕した。
何故なら、シュトロームの両目は、赤く染まっていたのだ。
「赤い目……⁉︎」
「魔人……!」
「そんな……まさか……!」
「嘘だろ……⁉︎」
それを見たシン、カケル、ドミニク、ルーパーはそう言う。
絶対にあり得ない光景に目を疑っていた。
「やってくれましたねぇ。ウォルフォード君、ウォーカー君。出来れば、正体を知られずにこの国から出たかったのですがね」
「完全に理性を保ったままの……魔人⁉︎」
シュトロームがそう呟きながら、残った眼帯を破壊する中、レイジはそう言う。
シュトロームは、カートとは異なり、完全に理性を保った魔人なのだ。
「そんな事がありえるのか……⁉︎理性を失った魔人でさえ国を滅ぼし掛けたんだぞ……!」
「それが……意識を保ったまま……⁉︎」
「ひ……!」
「マ……マジかよ……!」
それを見たドミニク、オルト、兵士たちもそう言う。
理性を失った魔人でさえ、国を滅ぼしかけたのにも関わらず、目の前にいる魔人は理性を保っていたのだ。
その言葉には、恐怖が滲んでいた。
すると、シュトロームが口を開く。
「ウォーカー君。君の言う理性が人間である証拠なら、私のそれは、ちょっと違いますね」
「どういう意味だ?」
「理性があるって事は、好き勝手暴れ回るって訳じゃないんだろ?」
「確かにそれはそうです。無秩序に力を使えば討伐に来るでしょう?そんな面倒で愚かな事はしませんよ」
「っ⁉︎人間に害を与える気はないって事か?」
「だが、こいつはカートを……」
シュトロームはそんな風に話しかけると、レイジとシンはそう問いかける。
シンの問いに対して、シュトロームはそんな風に答える。
無秩序に力を使えば、討伐に来られるので、面倒なことはしないと。
それを聞いて、シンがそう言う中、レイジがそう呟くと。
「ふふふ……あははは!何を期待しているのですか?君は!この身体になってから、私にとって人間なんて心底どうでもいい存在に成り下がったのですよ!利用しようが!騙そうが!殺そうが!この身体になってから何とも思わくなったんですよ‼︎」
シンの呟きに対して、シュトロームはそう嘲笑いながら、語っていく。
シュトロームにとって、人間は心底どうでもいい存在に成り下がったのだと。
それを聞いたシンは。
(狂ってる!カートと違ってアイツは真に魔人だ……!人類の敵になる存在だ……‼︎アイツはここで仕留めなければいけない‼︎)
シンは、シュトロームがある意味で対話が通用しないタイプであると悟った。
動こうとすると。
「待て」
「レイジ?」
「あいつには、最後に一つ聞いておきたい事がある。攻撃すんのは、その後だ」
「えっ?あ、ああ……」
レイジがシンを止める。
シンが困惑する中、レイジはそう言う。
シュトロームに聞きたい事があるのだと。
シンが攻撃をしようとする体勢のまま止まると。
「シュトローム。お前には聞いておきたい事が一つある」
「何ですか?まさか、私が人間を実験台にするのをやめるのかとかですか?」
「いや。お前の発言から、止める気がないのは分かってるさ。俺が聞きたいのは……ネガエモルギアについてだ」
「ネガエモルギア?……あぁ……あれですか」
レイジはシュトロームにそう問いかける。
シュトロームはそんな風に聞くと、レイジは先ほどのシュトロームの発言から、それが無駄だと分かっているからか、ネガエモルギアについてを問いかける。
「お前がカートにネガエモルギアを渡したのか?」
「ええ。彼にネガエモルギアを渡したのは私です」
「………っ!」
レイジがカートにネガエモルギアを渡したのかと聞くと、シュトロームは肯定する。
それを聞いて、レイジがそう反応すると。
「ふふ……私ひとりを追って満足している場合ですか? 世界の『闇』が招き寄せたのは、私だけではありませんよ……」
「何?」
「君のその鎧……コンバットスーツとやらですか?それに呼応するように産み落とされた『黒い影』の存在に、まだ気づいていないのですか?」
「………」
シュトロームは嘲笑うかの様にそう言う。
レイジがそう聞くと、シュトロームは他にも協力者がいる事を仄めかす様な発言をした。
そんな中、練兵場の近くの建物には、デス・ギャバンがいた。
すると。
「……そうか。なら、今はお前を倒すだけだ!シン!」
「おう!」
それを聞いて、レイジはシンに向かってそう叫ぶ。
シンが魔法を放つと、天井の方へと向かい、穴を開ける。
そんな中、レイジはある物を出していた。
「ギャバリオンレーザー!」
『ギャバリオンレーザー!』
レイジがそう叫ぶと、その音声が流れ、水色の部分が二又に突出した形状の遠距離戦闘用銃型デバイスが現れる。
これが、ギャバリオンレーザーだ。
「ハァァァァァ!行っけーーーーーっ!」
「何っ⁉︎」
レイジはギャバリオンレーザーにエネルギーをチャージしていき、レーザービームをシュトロームに向かって放つ。
「グッ……!なかなかやりますが……これでは私は倒せませんよ!」
シュトロームは魔力障壁を発動して防御する。
そして、レーザーが消えたと同時に魔力障壁を解除して、レイジの方に向かおうとする。
だが、レイジは動かなかった。
「何故、動か……っ!」
レイジが動こうとしていないのを見て、シュトロームは訝しんだが、何かに気付いたのか、上を向く。
すると。
「そこでじっとしてろ!俺の魔法は既に完成してるんだよ!」
「っ⁉︎上か!そうか……先程の魔法……わざと天井に……!」
シンがそう叫びながら、腕を振り下ろす。
それを見て、先ほどのシンの魔法が、天井に向かった理由を悟った。
すると、シンの熱光線魔法がシュトロームに襲いかかる。
「グゥ……アァ……アアッ!」
すると、シンの魔法を受けたシュトロームが大爆発する。
カケルとシンが爆発に怯んでいると。
「やったか⁉︎」
「それ言っちゃダメ!」
「ん?」
(典型的な生存フラグだしな……)
オーグがそう言うと、シンはそう叫ぶ。
レイジはオーグの発言に苦笑して、そのまま蒸着を解除する。
そのまま、魔力探知で探す。
「こっちは引っ掛からなかった。そっちはどうだ?」
「こっちもだ」
「そうか。(だが、なんだ……この違和感は?)」
「お……おお……魔人を……それも理性を保ったままの魔人……討伐してしまうなんて……!」
「うおお!!やったぞーーーーー!!!」
「流石、賢者様の御孫さんとその親友だ!」
レイジとシンはそう話す。
魔力探知には、シュトロームの反応は引っ掛からなかったのだが、レイジは違和感を感じていた。
2人がそう話す中、兵士達はそう叫ぶ。
すると。
「シン君!」
「レイジ君!大丈夫?」
「大丈夫だって」
「ああ、俺は大丈……夫……って、え⁉︎」
「ほ……本当ですか⁉︎け……怪我とかは……?」
シンの元にシシリーが、レイジの元にフルールがやってきて、2人はそう答える。
すると、シシリーはぺたぺたとシンの身体を触って傷を確かめる。
(ん?な……何かシシリーがやたらと……)
「し……心配させないでくださ……ごにょごにょ」
シンがそんな風に反応する中、シシリーはそう呟く。
それを見て、マリアはニヤリとしていた。
シシリーは、メリダのアドバイスを実践していたのだ。
ドミニクとルーパーが跪きながら口を開く。
「ご無沙汰しております。アウグスト殿下。一体何故このような所に?」
「何、学校帰りに友人と街を歩いていただけだ」
「危のう御座います。お立場をお考え下さい」
「固ぇ事言うなよドミニク。護衛に加えて彼らまで付いてたんだぜ。見たろ?魔人を討伐しちまう程だぞ」
「討伐……ですか……」
「……」
ドミニクが跪きながらそう言うと、オーグはそう答える。
それを聞いて、ドミニクはそんな風に苦言を呈すと、ルーパーはそう言う。
ルーパーがそう言う中、シンとレイジは浮かない表情を浮かべていた。
「何だぁ?浮かない顔してよ。魔人とは言え、人を手に掛けるのは気が滅入るか?胸を張りな。君達のお陰で魔人と相対しながら生き延びる事が出来た。改めて礼を言うぜ、ウォルフォード君。ウォーカー君」
「はぁ……」
ルーパーはそんな風に言う。
2人が浮かない表情をしているのは、人を殺めた事を気にしていると判断したのか。
それに対して、レイジは頭をかきながらそう言う。
「にしても、噂通りスゲェ強ぇな!」
「新英雄と言われるだけありますね」
「ウォルフォード君とウォーカー君の剣の腕も一流だ。ミッシェル様に聞いていた通りだな」
「ミッシェルさんの事ですか?」
「ミッシェルおじさんを知ってるんですか?」
「ああ、自己紹介が遅れたな。私はドミニク=ガストール。ミッシェル様の後任の騎士団総長でね。将来が楽しみな少年達が居るとよく聞いていたんだよ」
「そうだったんですか……。(若作りだったんだ……ミッシェルおじさん……)」
ルーパー、オルト、ドミニクがそう言うと、レイジとシンが反応する。
ドミニクは、ミッシェルの後任なのだ。
そんな中、それを聞いたシンがドミニクを見ながらそう思っていると、ルーパーも口を開く。
「俺はルーパー=オルグラン。魔法師団の団長だ。俺もジークフリードに聞いていたがな。常識外れな魔法を使う子だと」
(ジークフリード?誰だその格好良い名前の人は?)
ルーパーはそう名乗る。
ジークフリードという名前を聞いたシンは首を傾げる。
魔法師団長のルーパーは、ジークフリード……ディセウムの護衛であるジーク兄ちゃんの上司にあたるのだ。
すると、ルーパーはシンに聞く。
「それにしても、最後のあれは一体何をしてたんだ?」
「何って、太陽光を収束して熱線にしたものを撃ち込んだだけですよ。天井壊してすいません」
「太陽光?それで何であんな威力になる?」
「太陽の光って1種類だけじゃないんですよ。色んな種類の光の内、熱を感じる光を集めるイメージをしたんです」
ルーパーがそう聞くと、シンは答える。
シンの先ほどの魔法は、太陽光の一部を集束させた物なのだ。
だが、ルーパー達は首を傾げる。
「……スマン、俺にはよく理解出来ん」
「…………同じく」
「心配するな。オルグラン。ここに居る皆が理解出来ていない。聞けば賢者殿にも理解出来なかった魔法があると言う話だからな。此奴の頭の中は可笑しいんだ!」
「それは流石に酷くね⁉︎
ドミニクとルーパーは首を傾げてそう言う。
オーグは、2人をフォローしつつ、きっぱりとそう断言した。
それを聞いたシンが突っ込む中、レイジは考え事をしていた。
(それにしても、さっきの魔法は、以前、シンにも見せてもらったけど、あんな爆発は起こってない気がするんだが……)
(そう。撃ち込んだ魔法は超高熱の熱線……これを喰らってシュトロームが無事で居られる訳がない。ただ……熱光線で今まであんな爆発……起きたか……?何か違和感が……)
2人はそう考えていた。
感じでいた違和感というのは、先ほどの魔法は以前に使った際には爆発は起こしていなかった事なのだ。
なのに、今回は爆発を起こした。
それを考えていると。
「どうやら、片付いた様ですね」
「ああ」
「リアム、カレル。来てたのか?」
「ああ。ネガティブ波動を検知してね」
「状況は把握している。カートを魔人化させた存在が居たのだな?」
「ああ……その事について、少し話がある」
そこに、リアムとカレルの2人が現れる。
ネガティブ波動を検知して、2人も駆けつけたのだ。
すると、レイジは2人を壁の端に寄せつつ、口を開く。
「……カートにネガエモルギアを渡したのは、シュトロームだった」
「そうなのか⁉︎」
「ああ」
「……ふむ。だとすれば、ネガエモルギアがばら撒かれる事はない……とは言えなさそうだな。君のその表情を見ていると」
レイジは、カートにネガエモルギアを渡したのは、シュトロームであると告げる。
リアムがそう聞く中、カレルはそんな風に言う。
「ああ。あいつ、他にも協力者がいる事を仄めかしてた。その協力者を突き止めない限り、ネガエモルギアがばら撒かれる可能性はあるだろうな」
「っ!カレル様!すぐに調査を開始すべきだと思います!」
「……そうだな。こちらでも、調査を開始しよう」
「頼んだぜ」
レイジは、シュトロームに協力者がいる事を伝えた。
それを聞いたリアムはそう進言して、カレルは調査を開始する事を伝える。
そんな中、オルトが口を開く。
「……それにしても、これで2体目の魔人討伐ですが、勲一等でも割に合わない位ですね」
「まあ、これで今度の叙勲式にも箔が付くと言うものだ。益々騒ぎにはなるだろうが……」
「いい加減諦めついたわ……」
「勘弁してくれよ……」
オルトとオーグがそう言う中、2人は辟易とする。
2人の活躍で、シュトロームの撃退に成功した。
一方。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
シュトロームはある路地で座り込んでいた。
シュトロームは生きていたのだ。
無論、無傷ではなく、かなりの傷を負っていたが。
「ハァ……ハァ……やってくれましたね、ウォルフォード君。ウォーカー君。咄嗟の判断で自ら爆発魔法を放ち、爆風で逃れたのは良いが……浴び続ければ、体が消滅する危険があった……」
シュトロームはそんな風に呟いた。
あの爆発は、シュトロームが起こした物だったのだ。
すると。
「……随分と手酷くやられた物だな」
「……あなたですか。助けてくれてもよかったんじゃないですか?」
「……よく言う。本気を出していなかっただろう」
そこに、デス・ギャバンが現れて、そんな風に話しかける。
シュトロームがそんな風に苦言を呈すると、デス・ギャバンは素っ気なくそう返す。
協力者ではあるが、あくまで利害の一致の為に動いているに過ぎなかった。
「そうですか。よもやここまでの深手を負わされるとは……まぁ、お陰で良いデータが取れましたよ。私の計画を指を咥えて見ているがいいでしょう」
シュトロームはそう返すと、浮遊魔法を使って、アールスハイド王国から去っていく。
「フフフ……!アハハハハハ!」
そんな高笑いを残して。
それを見ていたデス・ギャバンは。
「……レイジ=ウォーカーよ。世界の闇は……そんな単純な物ではないぞ」
そんな風に呟いて、どこかへと去っていった。
シュトロームとデス・ギャバン。
2人の暗躍は、まだ続くのだった。
今回はここまでです。
今回は、シュトロームとの戦いです。
レイジもギャバンインフィニティに蒸着して、応戦しました。
そして、シュトロームから、デス・ギャバンの存在を仄めかす発言を聞いたレイジは…。
デス・ギャバンも、暗躍を続けていく。
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