こんにちは!新人ハンターのユキノです。なんと私、今日からユクモ村のハンターさんにお世話になることになったんです!!
ユクモ村のハンターさんといえば、牙竜種の中でも強力な雷狼竜ジンオウガを筆頭に、広大な砂漠を泳ぐ古龍種ジエン・モーランや、出会ったら撤退が鉄則という最凶の怪物イビルジョー。
そして、何と言っても外せないのが、嵐を生み出す古龍アマツマガツチの討伐伝説です!!
私がハンターを志すキッカケとなった今を生きる伝説のハンターに新人教育をしてもらえるだなんて!紹介してくれた教官さん、普段金にがめついた体育会系のおっさんだなんて裏で陰口言ってすみませんでした。
「ふんふふ~ん♪」
「お客さん、ずいぶんご機嫌だにゃ。やっぱり、お目当ては例のハンターさんかにゃ?」
「へへ、正解ですアイルーさん。私、ハンターになろうと思ったのは、ユクモ村のハンターさんの伝説を聞いたのがきっかけで……だから、すごく嬉しくて!!」
「そんなに嬉しいのかにゃ。まあ、実物はアレなんだけどもにゃ……」
ユクモ村へ向かう街道、私はガーグァの荷車を操る商人アイルーさんに声をかけられ、自分の事情を話していました。最後に何やら小声でつぶやいていた気がしますが、それよりも少し先の方に湯気が立ち上っているのが見えてきました!
「さあ、お客さん。もうじき着くにゃよ」
あれが、温泉で有名なユクモ村。実はこれも密かに楽しみだったんだよね。伝説のハンターさんに鍛えられて、流した汗を温泉で綺麗さっぱり洗い流す。そして、冷たいドリンクで乾杯して……想像するだけで夢が膨らむ~!!
そうこうしているうちに荷車はユクモ村の入口に到着し、私は商人アイルーさんにお礼を言って荷車を降りました。改めて村の建物を見上げると、思わず感嘆の声が漏れます。独特な造りの木造家屋はそれだけで一見の価値があり、石造りの家が多かった地元では珍しかったため、辺りをキョロキョロと見渡しながら長い階段を登っていきます。やがて頂上に辿り着くと、大きな建物が目に飛び込んできました。その大きさと立ち上る湯気から、ここが有名な温泉を擁するユクモ村の集会所なのでしょう。そんなふうに呆気に取られていると、不意に誰かが私に声をかけてきました。
「あら、もしかしてあなたが今日からここに配属された新人ハンターさん?」
わぁ、綺麗な竜人族の人だ。あっ、挨拶しなきゃ!
「はい!今日からこちらのハンターさんに新人教育を受けるために派遣されました、ユキノです!ところで、ハンターさんはどちらにいらっしゃいますか?」
この村の村長さんに挨拶をしてから、キョロキョロとお目当てのハンターさんを探すが、近くにいるのは行商人のおばあちゃんくらいで、ハンターらしき人の姿は見当たらなかった。
「あの人は今、火急のクエストに出向いていて、帰ってくるのはまだ先だと思うわ」
「そうですか。あっ、ではハンターさんのことを聞かせてもらってもいいですか!?」
「ハンター様の?」
「はい!私、この村のハンターさんに憧れてハンターになったんです。だから、この村のハンターさんについて知りたくて。例えば、今向かっているクエストがどんなものなのか、古龍と戦う前はどんな様子だったのか、聞きたいことがいっぱいなんです!それと、やっぱりハンターといえば装備ですよね!昔は双剣使いだったけれど、今はガンランスに変えて古龍を討伐したって聞きました」
「え……ええ……」
「双剣使いだった頃はナルガクルガ装備で“黒き風”と呼ばれていたのに、なぜかガンランスの装備は噂になってないんですよ?あっ、もしかしてガンランスにしてから討伐したモンスターが強くて、装備をどんどん変えていったから、噂になる前に変わってしまったんですね!きっとそうです。そうじゃなければ、村や世界を救った英雄の装備が語り継がれていないはずがないですよね!」
「いえ……それはその……」
「?」
最初は微笑ましい表情を浮かべていた村長さんだったが、ハンターさんの装備の話題になった途端、急に顔が引きつり困った様子を見せた。そんな急な質問には答えにくいだろうと思った私は、その質問を取り消し、別のことを尋ねることにした。
「すみません、質問攻めをしちゃって……えっと、ハンターさんがこの村に戻る前にできることってありますか?」
「そうね。あっ、それならまずオトモを雇うのはどうかしら?ほら、あそこにいるおばあちゃんに話しかければ、オトモを紹介してくれるわ」
名案を思いついたように、村長さんは行商人のおばあちゃんを指さし、その方へ向かう。
その際に、小声で「あのハンター様の姿を見て──」と後半はよく聞き取れなかったけれど、どうしたんだろう?
「おや、どうしたんだい?」
「実は、オトモを雇いたくて……」
「オトモなら、そこにいるニャツキちゃんがオススメだよ」
「にゃっ!?」
行商人のおばあちゃんにそう言われると、驚いた鳴き声と共に横の棚の陰から一匹のアイルーが現れる。
黒猫の毛並みに緑色の瞳をしているアイルーは可愛くて、なんだかお腹にハートみたいな模様をしています。
「初めまして、ユキノです。あなたは?」
「……ニャツキにゃ」
「そっか、ニャツキちゃんっていうんだね!オトモになってくれるんですか?」
私が尋ねると、ニャツキは行商人のおばあちゃんの方を見る。私もつられて顔を向けると、行商人のおばあちゃんは嬉しそうに笑顔を見せます。
「あんたはいい目をしてる。きっと、ニャツキちゃんと一緒に立派なハンターになれるよ」
「ありがとうございます!これからよろしくね、ニャツキちゃん」
「はいにゃ!」
初めての村で出会った初めての私の相棒。そしてこれから出会う憧れのハンターさん。私のハンターライフはバラ色になる。この時は本気でそう信じていた。
あの後、ハンターさんが広く拡張した農園を見て回ったり、この村に来るまでの疲れを癒すために、ハンターさんの活躍で効能が増した温泉に浸かったりして、ユクモ村での初めての一日はあっという間に過ぎていった。
翌朝、ついに憧れのハンターさんと会えるかもしれないと胸を高鳴らせて目を覚ました私は、顔を洗い身支えを整え、朝食を済ませてから村の広場へ向かうと、村長さんと話している人物がうっすらと見えた。
きっとあれが憧れのハンターさんだと確信し、居ても立ってもいられず駆け出した。
「おはようござま~……す……」
第一印象は大事、そう思って元気いっぱいの挨拶で好感を持ってもらおうと近づいたのだが、その姿がはっきりと見えると同時に、声が尻すぼみになってしまう。
「おや、君が今日から僕が新人教育する予定の新米ハンターかい?」
「そ……村長さん。へ……変態がいますぅぅぅ!!!?」
「…………」
挨拶で差し出された手を無視して、私は目の前の変態を指さして叫んでしまった。
いや、だってしょうがないじゃないですか。まさか憧れていたハンターさんが……モヒカン風のヘルムに、アイルーがよく着るどんぐり鎧、そして手足の防具や武器のガンランスはハンターらしい装備なのに、全体的にはどう見ても変態なんです。
全身の装備がバラバラで、確かこういうのをキメラ装備って呼ぶんだったと思います。
てっきり、ユクモ村らしい和風の煌びやかな着物風の装備とか、がっしりとした重厚な鎧姿とかを想像していたのに、まさかこんな変態装備が私の憧れのハンターさんだったなんて。
思わず落ち込んで地面に崩れ落ちる私を誰が責められようか!?
「まあ、そんな落ち込まんと。これでも腕の方は確かですので」
「そうですか……はぁ……」
立ち上がってもう一度ハンターさんに視線を送る。噂が本当なら、この人が凄腕なのは間違いない……のだけれど。
立派ではあるものの、モンスター素材ではなく鉱石で作られたらしいその武器が本当に古龍に通用するのかは疑わしい。鉱石よりモンスター素材の方が性能が高いのは、新人でも知っている常識だ。特に古龍を討伐するようなハンターは、名のある強力なモンスター素材で作られた装備を身に着けているとよく聞く。
さらに言えば、防具に至ってはふざけているとしか思えない格好で、むしろよくあんな姿で堂々と人前に立てるものだと逆に感心してしまうほどだ。
「私、あなたみたいになりたくてハンターになったのですが、どう考えても騙されたとしか思えないので、やっぱり帰ってもいいですか?」
憧れのハンターさんが私の新人教育係だと聞いて期待していたのに、まさかこんな変態が伝説のハンターだったなんて失望した。それ故、私は断りを入れたのだが……、
「う~ん、信用されてないみたいだね。まあ、だったらお試しはどうかな?」
お試し?と首を傾げていると、村長さんが一枚のクエスト依頼の紙を差し出してきた。
その内容はドスジャギの討伐で、ここから近くの渓流に出没した個体らしい。
「さすがに、新米の君を僕が行くようなクエストには参加させられないけど、逆に君が行けるクエストには僕も参加できるからね。そこで僕の実力を見せるよ。もし満足してくれたなら、この村で僕の元に残ってほしい。どうかな?」
「……わかりました、そこまで言うなら仕方ありません」
差し出された手を握り返す。正直、こんな我がままを言う私に怒ることもなく、丁寧に対応してくれるハンターさんへの印象は良くなりつつある。ただ、第一印象があまりにも悪すぎたせいで、このハンターさんを本当に尊敬できるかどうか、まだ迷ってしまうのだ。
なんか思いついたから書いてしまった。続くかは謎