いつの間にか彼女面が増えている件   作:怒飲焼

10 / 11
第10話

屋上では、様子のおかしい満願が1人佇んでいた

 

「……満願…」

 

「ッ……先…輩…」

 

だが、何か様子がおかしい

本編の全てを振り切り、全てを壊そうとするような気概が感じられない

満願の体は震え、苦しそうに俯いている

 

「なぁ星…お前は何で満願を止めに来たんだ?」

 

「……さっき言ってた黒い奴らが満願を攫ったの…その時、彼女には狂ってもらわないと…ってアイツらが言ってたから…」

 

「そういうことかよ…」

 

つまり…満願は…

 

「間に合わなかったのか…」

 

苦しそうにしているのは倏忽の肉片を打ち込まれたか…

 

「先輩……私…もう…」

 

首筋に太い血管が浮き出ている

もう力が入らないのか膝を地面に着いている

 

「………満願…俺を信じろ」

 

「ッ…何を…」

 

目の前で震えている満願に告げる

 

「大丈夫だ。俺は死なないしお前も死なせない」

 

銃ではなく、大剣を取り出す

仙舟で掠め取ってきた魔剣と呼ばれる剣の1種

 

「ッああ…あああああ…」

 

満願が肉に覆われていく

そして、現れたのはゲーム内で散々見たまるで肉の華の上に咲き誇る満願の姿

 

「星…力を貸してくれないか」

 

「うん…元々そのつもり」

 

星もバットを取り出し、構える

相対する満願は理性無く笑い、唸る

 

「まだ満願は呑まれてない!早く決着をつけるぞ!」

 

ハジメは駆け出し、満願の伸ばしてきた触手を叩ききっていく

跳躍して満願の胴体を攻撃しようとするが、硬い花弁に防がれる

 

「はぁッ!」

 

星もバットを振るっているが有効打にはならない

やはり他に人がいないからか触手の処理で精一杯になってしまう

 

「…あ゛ああっ!」

 

「キャッ!?」

 

「星!」

 

満願の触手が横薙ぎに振るわれ、星が外に落とされてしまう

助けに行こうと一瞬体が動きかけるが、その後に愉悦の力に目覚めることを思い出し、そのまま満願に向き合う

だが、その一瞬が不味かった

満願が近くまで来ていた

そのまま首を掴まれる

 

「がっ…」

 

「先…輩…」

 

満願と目が合う

やはり彼女の芯はまだ折れていない

先程の唸り声しか上げない様子から変わり、苦痛に歪む…ずっと苦しんでいた14年前の少女の顔が現れた

 

「満…願…」

 

「なんで…なんで今まで帰ってきてくれなかったんですか…」

 

涙ぐんだ声で満願は語り始める

ずっと苦しかったこと、何回も帰ってきて欲しいと願ったこと

だが、ハジメは帰ってこなかった

 

「……すまない…」

 

「私がッ…私がどんな思いで…」

 

「……そうだよな」

 

満願はハジメの首を締める

満願は力を込めているようだが、ハジメは顔色を変えない

 

「お前に…全部責任投げつけただけだよな…」

 

人は、怖かったんだ

誰か、死告魔に、恐怖の象徴に打ち勝つシンボルが欲しかった

ハジメも、姫子も空に飛び出し、残ったのは満願だけ

人は彼女に悲劇のヒロインを求めた

涙を浮かべながらも笑みを顔に刻み、強く進む姿を

人は彼女に恐怖を許さなかった

唯一勝てた人が負けたら、自分たちには何も出来なくなってしまうから

 

「本当に…すまなかった」

 

ハジメは満願を抱き寄せる

満願は不意を突かれてハジメの首から手を離してしまう

 

「あの時…みんなの危険を言い訳に逃げてしまった…自分の責任を…見れてなかった」

 

腕の中の満願がピクリと震える

ただ死告魔を倒して、みんなに危険が及ばないように離れれば良いと思ってた

人の心に目を向けずに、机上の空論で動いてしまっていた

 

「うるさい…今更そんなこと言ったって…」

 

満願の爪がハジメの肌に突き刺さる

だが、ハジメは怯まず、逆にさらに強く抱き締める

 

「だから…償わせて欲しい…今までずっと1人にしてしまった分…」

 

満願の触手の勢いが落ちる

そして、もう1人、この場に招待された主人公が、幻月と共に現れた

 

「主人公…頼む…終わらせてくれ」

 

「わかった」

 

愉悦の力を得た主人公がハジメごと満願を切る

その瞬間、ハジメは魔剣を使い、満願と華が繋がってる部分を切り取る

満願は華と切り離され、ハジメの胸にもたれかかる

 

「よし…上手くいった」

 

この後起きることに備えるために一応頂戴していた魔剣の能力が上手く働いてくれたようだ

 

「満願、大丈夫か?」

 

「先…輩…?」

 

髪の色や肌の色は治っていないが、しっかり満願は生きている

 

「大丈夫!?」

 

「ああ。もう彼女は問題ない…だが…」

 

ハジメが目を向けた先には、満願から切り離された倏忽の血肉

まるで抜き取られた一部を埋めるためなのか周囲から血肉を集めている

 

「……もう1回切れば…」

 

「いや、待て」

 

もう一度攻撃しようとした星を止める

そして満願を星に預け、前に出る

 

「俺が止める」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。