ここで1番要らないのは脚本にもストーリーにも関わっていない…ハジメだ
「………千舟からしてもありがたい話ではあるわね…」
やはり豊穣の忌み物に対しては将軍は容赦ないらしい
凛とした顔で爻光がそう告げる
「ッ…でも…それじゃ…」
言葉を詰まらせているのは銀狼
彼女は優しい子だ
「銀狼…それがこいつの選択なら見送ってやるべきだ」
刃は少し遠くを見る目でそう告げる
「………ダメ。アンタと満願の関係は分からないけど…結局また置いてくってことじゃん。さっきあんなに口説いてたのに」
「ッ…別に口説いてるわけじゃあ……だけど……」
確かに…自分から死にに行くなんて満願に言った言葉をすぐに裏切ることになる
それでは14年前の蒸し返しになるだけだ
「だが…一緒に貪欲に飛び込むなんて悠長なことも言えないぞ?」
「ちょっと待って…ここにいる人達ならなんか出来るかも…」
星核ハンター2人に千舟の将軍、しがない探偵に星穹列車の2人…
「………もしかしたら…何とかなるかもしれない…」
声を上げたのは爻光
「……良いのか?あんたらにとっては一石二鳥じゃないか?」
「ここまでやってもらったのに勝手に死なせるほど千舟は落ちぶれてないわ。まぁ…出来ると言ってもかなり運任せになってしまうけれどね…」
彼女の提案した作戦は彼女の病でもある「時相乖離」…時間がズレ、別のどこかへと飛ばされてしまう
今回はそれを使うという
「まず、貴方はどうにかしてニ相楽園から離れる。その時、私も同行するわ」
「おい待て…俺はアンタを危険に晒す気はないぞ」
「そこは危険を孕んだ作戦が一番吉に近いだけよ。貴方の意見は求めてないわ」
ビシッと言われ、シュンとするハジメ
他のメンバーもいろいろ案を考えるが爻光の案に勝るものは出なかった
「じゃあ、早速始めましょう。もう時間が無いの」
そう言いながら手を広げる爻光
彼女の言わんとすることを察してお姫様抱っこするハジメ
「ちょっとハジメ、どうやって外に出るの?」
「方法ならあるさ」
ハジメは深呼吸すると全身に力を入れる
ハジメの体の所々から紫色の炎が溢れる
背中には4枚の蟲のような翅を炎が象り、その翅を高速で動かして一気に飛翔した
「え…あれ…何…」
「確か…ホタルは「グラモスの負の遺産」、「女皇の罪」って言ってたっけ…」
銀狼がポツリとそう零す
その言葉にその場にいる人が目を向ける
「グラモスに…1人の漂泊者が流れ着いたことがあったらしい」
刃がゆっくりと語り始める
星核ハンターとして歩んできた人生の話とホタルの話を照らし合わせて話を始める
「女皇はその漂泊者を…兵器として利用しようとしたらしい。見慣れぬ服を纏ったその男は、繁殖に高い適性を持っていたようで、すぐに体に繁殖の力は馴染んでいった」
「……つまり…あのカンパニーの彼は…」
不死途が空を見上げる
もう見えないほどの高度に上昇した彼は紫の光として地上から見えている
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「随分速いわね…もうみんながあんなにちっこくなってるじゃない」
腕の中にすっぽりと収まり、ハジメの首に手を回している爻光は下を見てそうつぶやく
この高度でも彼女は余裕そうだ
「怖くないんですか?」
「こんな高さにいるのなんて日常茶飯事よ。私が何回空に飛ばされて落ちてると思ってるの?」
「……踏んでる場数が違いましたね…」
今から決死の作戦を行うとは思えない落ち着いた会話
爻光は相当自信があるようだ
(……そうでもないか…)
気丈に振る舞っているが、細かく彼女の肩は震えていた
心なしか顔も青い
「……今ならまだ引き返せますよ?」
「問題ないわ。凶となる事柄でも進めばおのずと吉となる…」
そう言いながら首にさらに強く抱き着いてくる爻光
そして、二相楽園の大気圏を超え、宇宙空間に出た
「…呼吸できてますか?」
「ええ。これは貴方の能力?」
「まぁ…宇宙を彷徨うのに一番困るのは呼吸ですからね」
そんな話をしていると、遠くに青い光が見えた
「来るわよ…」
青い光は爛々と光り、段々と近づいてくる
「5…」
爻光はギュッとハジメの腕を掴む
その手は未だに震えている
「4…」
宇宙空間なのに肌が焼けそうなくらいの熱量が近づいてくる
ハジメは爻光を離さないようにギュッと抱きよせる
「3…」
もう星すら飲み込みそうな巨大な青の光が目の前にある
「2…」
頼む…上手く行ってくれ…
その瞬間、爻光の体が大きくドクンと脈動した
「イ………」
カウントよりも早く訪れた光
そのままハジメと爻光のいた場所を貫く
光は数分続き、ようやく収まったころにはその場に何も残っていなかった