「満願!?起きたの!?気分は!?」
目の前に鮮烈な赤が広がっている
姫子先輩だ
「あ…先…輩…」
声が上手く出ない
周りを見回してもあの黒髪は見当たらない
目元が熱くなるのを感じた
「医者を呼んで!」
姫子先輩が誰かに医者を呼びに行かせている
その間も姫子先輩はずっと手を握ってくれている
「ごめんなさい。1人ぼっちにして…」
姫子先輩の目尻には涙が浮かんでいる
何を…今更…
『お前を一人ぼっちにしてしまった…本当にすまない…』
あの時、言われた言葉
朦朧とした意識の中で、それだけははっきりと聞こえていた
辛かった、怖かった、苦しかった、寂しかった
周りから賞賛される度に何かが壊れる音がした
泣かないでって言われる度に心が締め付けられた
いつしか涙は出ずに、引きつった笑みしかできなくなっていた
(そっか…もう泣いていいんだ…)
頬をつたる感覚
それは止まらずに、視界がボヤける
ただ泣いた
一日中
姫子先輩はずっと隣に寄り添ってくれた
でも、あの人は来なかった
_________________________________________________
「今日は帰るわね。満願もゆっくり休みなさい」
夜になり、姫子先輩は帰っていった
やっと泣けたからか、心は随分スッキリしていた
でも、まだ1つ心残りはある
(なんで来てくれないんですか…先輩…)
まだ寝ない
寝付けない
あんな気恥ずかしくなるようなことを言ってきた男がまだ来てないから
「………また…ですか…」
恨み節のような言葉が漏れてしまう
だが、許して欲しい
14年放ったらかしにされてて、もう1人にしないって言われたのにすぐこれだ
(まだあの話も終わってないのに…)
14年前、恋仲だったハジメに告げたある告白
まだ答えを貰う前に死告魔事件が起こり、なぁなぁになったままだ答えを貰ってない
「はぁ…先輩のバカ…」
布団を被り、窓に背を向ける
前みたいに窓から登ってくるなんて馬鹿なことを考えなければ良かった
(もう14年も経って…あの人には大切な人ができたんでしょうか…)
少し寂しい気持ちになる
もしかしたら忘れ去られたのかもしれない
枕に冷たい感触が落ちる
「ッ!」
その時、冷たい風が病室に吹いてきた
急いで起きて窓の方を見る
窓は開いたまま
窓辺に誰も立っていない
「気のせい…かしら…」
沈んだ気持ちで下を見る
だが、その時横からずっと聞きたかった声がかけられた
「勘違いじゃないかもな?」
窓とは反対側
ドアは誰も開けてないはずなのに
そこに彼はいた
「もう…なんでいつも人を驚かせるんですか…」
「もっと驚くと思ってたんだけど…」
毎回毎回、変なところから来て驚かし、笑わせてくる
今日も、笑わせてくれた
「ただいま満願」
彼は…先輩は…ハジメはそう言って微笑んだ
「はい。おかえりなさい」
久しぶりに心の底から笑えた
ここまで読んでいただきありがとうございます!
これで満願編終了です!
このあとも書いていく予定なのでお楽しみに!
次からは少し彼女面フレンズがごった返すと思うのでお楽しみに!