いつの間にか彼女面が増えている件   作:怒飲焼

14 / 15
第14話

「………………」

 

「ねぇねぇ知ってる?兵器開発部から来たあの人…」

 

「ええ。確かパールさんが…」

 

周囲から視線とヒソヒソと話し声が聞こえてくる

それから逃げるようにさらに早足で進んでいく

 

「あ!あの人…」

 

「確か戦略投資部からヘッドハンティングされてるんだっけ?」

 

どこに行ってもカンパニーの社員の視線から逃れられない

何とか珠星ビルに入り、そのままの勢いでパールCEOの部屋まで行く

 

「ちょっと失礼します!パールさん!」

 

「はい。どうぞ」

 

ノック無しでドアを開けるが、パールさんは咎めてこない

逆にニコニコとお茶を準備し始める始末だ

 

「パールさん!?なんですかあの噂!?」

 

「噂と言うのは?」

 

「俺が兵器開発部から戦略投資部に移籍するとか!パールさんと俺は恋仲とか!あることないこと言われてますよ!?」

 

「理解。問題はありません」

 

「………もしかして…」

 

あまりにも落ち着きすぎているパールの様子に嫌な予感がする

その予感通り、パールさんはにこりとしながら答えた

 

「肯定。この噂は私が流布しました」

 

「なんでですか!?別に意味無いでしょ!?」

 

「否定。これは倫理的思考に基づいた行動です」

 

パールさんの言葉に固まる

精密機械であるパールさんにエラーはあまり起こらないことはこの数ヶ月で理解している

だからこそこの突飛な行動が彼女自身の思考からもたらされた行動だということを理解して頭を抱える

 

「えっと…一応聞きますね?なんで…こんなことをしたんですか?」

 

恐る恐る聞いてみる

聞かれたパールはニコリとしながら答えた

__________________________________________________

 

「何が既成事実を作るため…だよ…使い方間違ってるよ…」

 

『あはは…やっぱりパールには難しかったか…』

 

その日の夜、パールからのひょうきんな答えを珍しくトパーズに電話をかけて吐き出していた

答えた時のパールのドヤ顔はなんと綺麗だったことか

ムカつくほど清々しい答え方に逆に責められずに仕事をしてから帰ってきた

就業中ずっと隣で作業するし書類を届けに行く時とかはずっと隣を歩いて来た

そのせいで視線とコソコソ話は増えるしいつの間にかカンパニー外にも話は出たらしい

 

『ま、まぁ…パールは天然なところあるしさ?許してあげて?』

 

「あの純粋な顔見ると責められねぇよ…ホントに思ってそうでさ…」

 

意味の分かってない「彼女面」と言うべきか

他の人にやっていたのなら可愛らしいの一言で終わるはずだったろうが…自分の身に起きたことだと笑えない

 

「まぁ…まだこっちでやることあるらしいし、エレーナも少しの間出張だろ?」

 

『そうよ。2ヶ月後には帰ってるだろうしその時は…♡』

 

電話越しでもちょっと甘い空気を感じた

まぁ…数ヶ月離れているからハジメも満更ではないが…

 

「せんぱ〜い?ご飯できましたよ〜?」

 

「あ」

 

『は?』

 

下から満願の声が聞こえ、携帯の向こうから底冷えするような声が聞こえた

 

「早く来ないと冷めちゃいますよ〜?」

 

「あ、ああ!すぐ行く!てことでエレーナ、もう切るぞ!?」

 

『ちょっと待って?まだ話が…』

 

電話を切り、部屋から出てそのまま1階に降りていく

1階には白髪のままだが人間の姿になった満願がエプロンを外して夕飯を机に並べていた

 

「それにしても随分長く話してましたね」

 

「あ、ああ…会社の上司でな。色んな相談してたんだ」

 

食卓に座り、満願の作ったご飯を食べ進める

彼女の作るご飯はまさに絶品だ

 

「そっか……女の人?」

 

「ま、まぁな…いっ!?」

 

机の下で、足を踏まれている

かなり強く踏まれており、脂汗が流れ始める

 

 

「浮気…じゃないですよね?」

 

「違う違う違う!違うから足離して!」

 

「………良いでしょう」

 

「ふぅ……」

 

満願の足が離され、ハジメは大袈裟に大きく息をする

だがそのくらいには焦っていた

目の前の満願は前はしなかった黒い笑顔をしている

 

「……私、プロポーズしましたよね。14年前」

 

「ッ…そう…だったな…」

 

「忘れてました?」

 

「い、いや…帰ってくるとはあの時思って無かったから…」

 

卒業旅行に行く前、満願からプロポーズを受けていた

卒業したら結婚して欲しい

死告魔事件も事前に防いでいたつもりだったハジメは卒業旅行から帰ってきたら改めて答えを言わせて欲しいと言っていた

まぁ、結局言うタイミングは来なかった訳だが

 

「……良いです。今はまだ答えをくれなくても」

 

「…いいのか?」

 

「はい。今は一緒にいれるだけでいいので」

 

満願は幸せそうに手の中のお茶碗を握る

前までは一人で食べるか接待で食べたくもない人と一緒に食べていたらしい

そんな彼女にとってこうしてご飯を食べるということは思った以上に特別なことなのかもしれない

 

「だから…絶対に…浮気しないでくださいね?」




イカれたメンバーを紹介するぜ!
偏った知識から外堀を埋めて彼女面している強行型物理的彼女面オムニック!パール!
14年前の恋仲!未だプロポーズの答えを貰えていないが今はただハジメと一緒にいれればいい!今最大の勝ち組!満願!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。