これからも楽しんで頂けると幸いです!
「……なぁ、なんでここにいるんだ」
「あら?ダメかしら?たまたま飛んでしまったのが貴方の所だったの」
ある日の昼下がり、部屋で読書をしているハジメの隣には爻光が座っていた
彼女はハジメの左手を握っており、ニギニギと力を入れては抜いてを繰り返している
「……本当に嫌な体質になったもんだ…」
「あら?不満?」
「不満も不満。大不満だ」
何故、爻光がハジメの隣にいるのか、それは前回の宇宙空間での転移が原因である
結果から言えば、転移は成功し、嵐の矢から逃れることに成功した
それから12時間、何故かひたすら転移し続け、最終的に二相楽園に帰還することが成功したのだ
だが、何の因果か、12時間連続で転移したのが悪かったのか爻光将軍が転移した時、高確率でハジメの左側に現れるようになった
それだけならば良かったのだが、転移し続けた時に握っていた左手を握った形で現れるのだ
「……まぁ、まだ転移先が絞れるなら良かったのか?」
「ええ…もうこれ以上先の分からない恐怖に怯える必要は無い…」
そう言いながら左腕に抱きついて垂れかかってくる爻光
先程よりも強い力で抱きつかれて少し骨がミシミシ言っている
「………ねぇ、やっぱり仙舟に来ない?私が待遇は約束するわよ?」
「断る。あのイカレ女がいるのは分かってんだ。俺があいつにクソみたいなことされたの知ってんだろ?」
10年前、ある星で遭遇した鏡流に四肢を切り落とされ、そのまま数年間強制的に一緒に旅をしていた時期があった
ハジメの繁殖に目をつけた鏡流は本編より10年も早く仙舟に合流
今は捕まっているらしくその間にハジメは逃げ出していたのだ
他でもない爻光の元から
「別にアンタには何もされてないが…後ろの奴らがな…」
豊穣を殺すためならなんでもやる仙舟…豊穣の忌み物とグラモスの繁殖という明らかに厄ネタしかない存在が目をつけられないはずがない
ただでさえメモキーパーにルアンと色んな奴らから追われているのに
「まぁ、これからはいつでもどこでも私は貴方の隣にいる。言いたいことは分かるわよね?」
「……………」
しっとりとした視線
心做しか爻光の体温が上がっている気がする
「もしかしたら…貴方が他の人といる時に…」
口が耳元に寄せられ、耳に息を吹きかけられる
背筋がゾクッとする
「なんてね…冗談に本気になっちゃったかしら?」
パッと笑顔になり、手を離す爻光
そのまま立ち上がると部屋のドアの前に立つ
「今日はお邪魔したわね。またお邪魔することになるかもしれないから今度私物を持ってくるわね♪」
「おいやめろ」
ハジメの言葉をなんのそのと受け流して爻光は去っていく
その足取りはまるで何処かへと飛び出してしまいそうな軽やかさだった