「落ち着いた?」
リビングで夕食を食べた後、トパーズはハジメに語りかける
ハジメは帰ってきた直後よりは回復しているが、それでもやはりまだ憔悴している
「……何があったの?」
「……少し…自分の愚かさを叩きつけられただけだ。ただの…自業自得だから気にしないでくれ」
そう言うとハジメはフラリと立ち上がってそのまま玄関の方へと向かう
足取りも覚束無く、その背中は目を離したら消えそうな儚さがあった
「待って!」
トパーズはハジメの手を握る
だが、ハジメはトパーズの手を振り払って行こうとする
トパーズも引かない
全身全霊でハジメを引き留めようとする
「放してくれ!もう…関わるわけにはいかないんだ…お前にも…」
「理由を説明しなよ!そんな急に言われても納得できないよ!」
何故、彼が傷ついてるのか
何故、離れるなんて言うのか
何故、彼は今泣いているのか
「私に隠しごと!?私は信用出来ない!?」
「そういうわけじゃない!お前には…っ……」
何かを言いかけ、言い淀み、黙ってしまう
トパーズは泣きそうになって何かを言おうとした時、地面が揺れた
「っ!?」
千星シティが揺れていた
遠く…生研院の方から爆発が起きていた
「生研院の方で爆発!?何が!?」
トパーズは鳴り止まない携帯を出して各所に連絡し始める
ハジメは周りを見回す
そして気づく
二相楽園で起こったことは、8日以内に起こることを
こんなことをしている暇はなかったことを
「トパーズ!家入ってろ!」
「ハジメ!?どこ行くの!?」
「生研院!」
ハジメは走り出す
逃げ惑う民衆を避け、走る
嫌な予感が胃を揺らして気分が悪い
「クソ…移動手段が…」
移動するための乗り物が止まっている
生研院に行くにはこれを使うしか…
「一か八か…」
背中から紫の炎の翅を生やし、飛行する
爆発の炎や煙を避け、生研院の方へと向かう
全身に外骨格を纏い、壁を貫通する
そのままアポリの実験室に直行する
「アポリ!」
研究所に、脳が、ない
水槽は真紅に染まり、不穏な空気が満ちている
「アポリ!?いないのか!?」
周囲を見渡して叫ぶが、帰ってくる声はない
その時、急に研究所の電源が消える
真っ暗になり、周囲が見えなくなる
ザリッ…
「ッ!?」
首筋に、誰かに舐められたような感覚がする
急いで振り返るが、そこには誰もいない
だが…ハジメは何かを目で追う
暗闇を進むそれは…見覚えのある姿で…
ガブッ
「ガアッ!?」
首筋に噛みつかれる
血が溢れ、後ろから誰かに抱きつかれる
左後ろを見ると、目元に何か仮面のようなものをつけた女
その顔には見覚えがあった
「ア…ポリ…」
「ああ、美味しそう」