「提案。ハジメさん、戦略投資部に異動しませんか?」
「え」
二相楽園に出張しに来てから数ヶ月が経った頃
出社してから突然パールさんに部署異動の提案をされる
元々戦略投資部を希望していたハジメにとっては願ってもない話だ
「でも…」
入社してから数年間絶えず異動届を出しているが、受理された試しがない
それどころか出す度に
「問題ありません。時期が来れば自ずと異動することになります。ハジメさんの意思さえ確認出来れば時間の問題です」
パールさんは堂々と言い放つ
まるでこの先で何か起こるかを知っているかのようだ
(まぁ…パールさんはこの時からアポリに目を付けてたんだろうな)
将来、アポリはパールさんに殺される
別に直接手を下した訳じゃない
だが、パールさんが無関係とも言えない微妙な塩梅だ
「そう…ですか…」
なるべくクソ上司が貪欲に関わらないように色々しているが、あいつが俺が寝ている間にしていることは知らない
もしかしたらもう手遅れの所まで踏み込んでいる可能性もある
「まぁ……アポリさんが居なくなったらね」
「ええ…では楽しみにしていますよ」
パールさんの部屋を後にする
最後の顔…知っているパールとは少し違うように見えた
「今日は…ついに満願と会うのか…」
数ヶ月の業績から信頼を得て、パールさんから許可を貰った
満願テレビというテレビ会社を経営しているらしい
(まぁ…学生の時から優秀だったもんな…)
少し懐古厨みたいな言い方になってしまった
だが、学生時代の満願は優秀で、優しく、まさに優等生だった
「本当ならあんな思いさせたく無かったんだけどな…」
本来のストーリーとは違い、転生者が起こした死告魔事件
それもハジメが兵器開発部に就職が決まり、同期の学生と卒業旅行に行っている間の出来事
無理を言って1人だけ先に二相楽園で見た光景は地獄そのものだった
本来よりも酷い死告魔事件
学校どころか街全体がキャンパスのように赤く染っていた
狂ったように笑いながら人を殺す死告魔を前に、姫子達は地面に座り込み、睨んでいることが精一杯だった
(俺のせいか…)
結局、後先考えずやりたい事やった結果なのだ
その結果本編よりも酷い傷を心に負わせてしまったかもしれない
「…着いたか」
物思いに耽りながら歩いていると満願テレビの本陣にたどり着く
「初めまして。貴方がハジメ様でしょうか?」
「はい。今日はよろしくお願いします」
ドアの前で待っていた社員に挨拶をし、社内を案内してもらう
やはり探索していた会社と全く変わらない
「おい!火花大会がもう決勝があるらしい!早くカメラ持て!」
ドタドタとカメラを担いで出ていくディレクター達
そういえば昨日星穹列車が来たって言ってたっけ
(もう少しか…)
火花大会が起きたならもう少しで死告魔を装ったレイメイジャーが殺人事件を起こし、それを追っていく末に…
「ここが社長室です。満願社長は中でお待ちになっています」
「ありがとうございました」
礼をして下がっていく社員
少し深呼吸して、ドアをノックする
「どうぞ」
「っ…」
昔の声音とは似つかわない低い声で返される
やはり…
(ビビるな…俺がやったんだ…責任を持て…)
「失礼します」
意を決してドアノブを掴み、満願の待つ社長室へと足を踏み入れた