「外にでたいです。」
「ダメ!
絵本を読みましょうね〜」
「トイレいきたいです。」
「こっちの壺にしーしーしまょうね〜。」
「汝の求めるー」
「めっ!」
「過保護過ぎる!!」
「難しい言葉使えてすごいけど、あと1週間いや一カ月は安静です!!」
初めての魔術から1週間たったがこのザマだ。
24時間交代制の監視付きかつ外出禁止。
監禁と呼ぶに相応しい体制に俺は囚われていた。
気絶した時は道場中大騒ぎになったらしく、擦り傷一つ無かったのに教会の僧侶を拉致してくるわ、騒ぎを聞きつけた衛兵が乗り込んでくるわのカオスだったとか。
結果、女性剣士の総意だとかで俺は囚われの身となった。
夜中に目を覚ました時に、目の前に顔が合った時は文字通りチビッた。
数日で解除されるだろうと思ったら、1週間たっても解除されなかった。
(抗議をスルーして笑顔で甲斐甲斐しく世話をしてくる姿は一種の恐怖さえ覚え始めた。)
辟易としていると、ヌルリと誰かが室内へとやってきた。
「その辺にしときな。」
「師匠!?」
慌てて今日のお世話担当が礼をした。
師匠と呼ばれた老婆は見た目は一見すると編物でもしてそうな小柄な女性にしかみない。
「ちょいと二人にさせてくれ。
後、この子の世話はおしまいだ。
さっさと修行にもどりな。」
そんな!と抗議しようとする女性剣士を老婆は一目で睨みつけると、敵わないと悟った女性剣士は俺を涙目で見つめた後にゆっくりと立ち去った。
「はぁ、ガキの世話するより作る相手をさっさと探せってんだ。
私は水神レイダ。
文字通りここのトップさ。
あんた水球を発動させたんだって?」
「ちゃんと放てなかったから違う。」
「初めてにしては上出来だよ。
で、どう思った?」
「おもしろい。
魔力が水になるって事は、水は魔力になる?」
「さぁね、アタシは剣士だから魔法云々の事はさっぱりさ。
まあ、水が魔力になるのは聞いたことないね。」
「ふーん。」
「さて、レイン。
普通のガキは2歳でこんな会話出来ない。
アンタは恐らく神子か呪子のどっちかだろうね。」
神子と呪子という言葉に聞き馴染みはないが、魔術があるせかいだ、生まれつき魔術的な障害がある者を指す言葉だろう。
(有用な障害を持てば神子、有害であれば呪子といった所だろうな。
転生も一つの障害として見れば俺もどちらかに当てはまるのだろう。)
俺の表情から話した内容を理解している事を読み取った水神レイダはニヤリと笑って口を開いた。
「もう少し経ってたから聞こうと思ったが、ウチは金はあるが穀潰しを育てる気はないよ。」
どうやら俺は水神のお眼鏡に適ったらしい。
(俺は惰性で生きたくない。
二度目の生での生き方は決めている。)
俺は姿勢を正して、水神へと向き合う。
「なら、俺に剣と出来れば魔術を教えて下さい。」
「おいおい、何で二歳の捨て子のガキに剣を教えなきゃならないんだい?」
覚悟を問うなら敢えて大きく吠えてやろう。
「…取り敢えず貴女を超えます。
超えてさらに高みを目指し、水神レインとして天下を覆い隠す雨雲となります。」
「大きく出たね。
アタシを超える…その意味を分かって言ってるんだろうね?」
重圧が襲いかかる。
身体が勝手に震えるのを歯を食い縛り、無理矢理抑え込む。
(ここで、ブレれば俺は前世と何も変われない!
恐怖に流せるな、安易で虚無な昔を思い出せ!)
苦を避けた結果、誇れる能力もない。
人の和を避けた結果、魅力が無く友もなし。
ただ死んでないだけの日々。
(戻りたくない。
二度目の生を得て同じ屍になりたくない!)
重圧の中、全身を支配し震えを抑えて水神レイダへと真っ向から顔を合わせる。
冷や汗が止まらない。
今すぐ折れろと心の何処かが叫んでいるが、過去を思い出せば自然と小さくなる。
「…」
「…」
数秒か或いは数十分か。
突然、水神レイダは圧を引っ込めた。
「…、…!!」
重圧が消えた瞬間、呼吸を忘れていた事を身体が思い出したようで酸素を求めて激しく息を吸っていた。
「ふぅ、良いだろう。
身体は未熟だがアタシの弟子にしてやる。
明日から日の出と共に起きな。
それと、水神の名は世襲だよ。」
「なら…直ぐにレインの名とはお別れだ…!」
「剣の一本も振れない身体で吠えるとは可愛いねぇ。」
取り敢えず、当代の水神レイダは性格が悪いらしい。