孤児転生〜孤児スタートから水神目指す   作:ボリビア

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6話

(ああ、綺麗だ。)

 

 無様にも気絶した私は素振りの音で目を覚ました。

 レインの素振りは雑念が無く、無駄なく理想的な美しい素振りだった。

 身体を起こしてレインの素振りが終わるのを待った。

 

(本当に自分が情けない。)

 

 代々水神となるものは己の名を捨てる。

 男ならレイダル・リィア、女ならレイダ・リィアを名乗る伝統がある。

 当代の水神は初代が遺した奥義のうち最も難しい二つの奥義を重ねた六つ目の奥義を持つ歴代でも類を見ない剣士であり、30年以上水神の座なら降りたことがない最長の水神である。

 私、イゾルデ・クルーエルはそんな当代水神の孫に当たる。

 周囲は私を次代の水神だと持て囃した。

 実際、才能もあった。

 齢12にして上級の位を認められ、王級にも手が届く自負があった。

 

(故に慢心していたのでしょう。)

 

 私は次代の水神になる事が当然だと思っていた。

 そこに彼が現れた。

 私の耳に彼の話が届いたのは1年前くらいだろうか。

 

『水神流は次第の水神を孤児にしようとしている。』

 

 なんとも許せない噂であった。

 話を聞いてから調査すると彼は孤児だった。

 始めに分かったのは緑髪というだけで捨てられた哀れな子供。

 雨の日に拾ったからレインと名付けられたらしい。

 それだけなら同情の対象に成っただろう。

 私は家に専用の道場があり、水神流の道場に顔を出す事は少なったが彼に会っていたら姉として親しくしたかもしれない。

 だがまあ、彼に会う事は無かった。

 今思えば私の周りが彼との接触を良しとしなかったのかもしれない。

 私はイゾルデ家の娘であり、彼は孤児だからだ。

 

(本当に下らぬ配慮だと今なら切って捨てていた。)

 

 お陰で、私の鼻は高く伸びすぎていた。

 自分を次代の水神だと思い、他者を見下し、水神流の心を御座なりした間抜けが私だ。

 そして叩き折られた。

 私は彼の発言に顔を赤くし、水神流にあるまじき感情的な剣を振った。

 彼は己の剣を私の剣に軽く添えて受け流し、返しの剣で私の意識を刈り取ったのだ。

 

(見事な『流れ』だった。)

 

 技の完成度が私とはまるで違う剣。

 鍛錬を重ねた人間の美しい剣だった。

 

「起きたか。」

 

 目覚めた私に気付いたレインが素振りを止めて、此方に視線を向けた。

 目が合った私は両手を地に付けて頭を下げた。

 

「敬意を欠いた振る舞い、申し訳ございませんでした。」

 

「俺は気にしていない。

 孤児なのも事実だからな。」

 

「いえ、身分を問わず実力こそが剣士の全て。

 下らなぬ慢心でそれを忘れていました。」

 

「…分かった謝罪を受け入れよう。

 頭を上げてくれ。」

 

「ありがとうございます。」

 

 顔を上げて改めてレインの姿を視界に収めた。

 

(あれ?顔が良い。)

 

 始めに思った感想としては私自身どうかと思うが、冷静になって見ると顔が良い。

 長く無造作に纏められた髪は残念だが、前髪から覗かせる鋭い眼差しが特徴的で端正な顔立ちをしている。

 

(顔が良くて、強くて、努力家。

 あれ?)

 

 顔が赤くなっていく自覚がある。

 偏見を抜きに考えると、彼は理想的な男性ではないだろうか?  

 一度考え出すと止まらない。

 共に成長し大人になった自分の隣に立つ彼の姿。

 

(あ、良い。

 すごく良い。)

 

 素材は良いのだ。

 後は着飾れば彼は化ける。

 

「…どうした?

 打ち所が悪かったか。」

 

 どうやら、少し妄想に耽ってしまったらしい。

 剣士として、この場に居ることを思い出せ自分。

 

「い、いえ!

 大丈夫です!

 時間を取らして申し訳ありませんでした。

 失礼します!」

 

 私は赤くなった顔を隠す為に、小走りで彼の元から立ち去った。

 

「…それで、目的は果たせましたか?」

 

「なんだい気づいていたのかい。」

 

 イゾルデが立ち去ったと同時に、部屋の隅へと視線を向けると居ないはずの師匠が姿を現した。

 

「俺の剣に反応しましたよね。」

 

 俺がイゾルデに一撃加えた時、僅かだが師匠から闘気が漏れていた。

 

「いやなに、孫娘が傷物にされかけたからね。

 つい反応しちまった。」

 

 嘘つけ。

 師匠は俺を試すためにワザと闘気を漏らしたのだろう。

 気付かなければそのまま姿を現さなかった筈だ。

 

「あの子は才能はあるんだが、どうにも周りが腐っていてね。

 このままじゃ駄目だと思ってアンタをぶつけたが上手く行ったね。」

 

 どうやら俺と彼女の試合は師匠によって組まれたらしい。

 周りが腐っているとは言っているが、師匠は元は貴族の出かもしれないが家名を捨てて水神となった身、直接口を出せば要らぬ波紋を呼ぶ為、このような遠回しなやり方をしたのだろう。

 

「さて、問題も解決したし稽古でもするかね。

 嗚呼そうだ『流れ』に関しては合格だ。

 今度から水聖を名乗りな。」

 

 師匠が称号を与えるということは、どうやら俺を道場の外へと出すつもりなのだろう。

 

「承知した。」

 

「それと、あの子の事を頼んだよ。

 どうにも調子に乗りやすいタイプでね、慢心したら叩きのめしてやりな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




難産。

流れは奥義の一つで行きます。

水王ではなく水聖にしました。
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