最近、生活に変化があった。
一つはイゾルデが俺と練習する様になった事。
貴族としての教養やらで毎日ではないが、時間があれば俺の元に来ては試合や稽古を行うようになった。
因みに、イゾルデと呼び捨てにしているのは本人からの要望で『水神やその伴侶は将来家名を捨てるので、家名ではなく名前で呼んで欲しい。』との事だ。
「なるほど、つまり俺達はライバルだな。」
「…まあ、良いでしょう。」
(今は剣士として実力を伸ばしながら、周囲への牽制と異性としての意識付けが大事ですし。)
同世代の剣士との稽古は普段と違う発見がある。
子供同士で体格が似てる為、参考になる動きが多い。
他にも同年代の剣士はいるが殆どが下級に届くかどうかの習いたての子供が多い。
俺が異常なのはともかく、やはり上級剣士のイゾルデは天才らしい。
特に参考になるのは力の受け流し方だろう。
水神流は守りを主とする流派だが、守りには敵の攻撃を受け流すだけでなく、受け止める事を求められる場合がある。
イゾルデは自らに掛かる力の受け流しが上手い。
相手の攻撃に合わせて身体を引く、敢えて脱力することで衝撃を地面へと逃がす。
これが上手いと相手は水でも切ったかのような、手応えの無さに身体がついていかず、隙が生まれる。
イゾルデは前者が得意で俺は後者が得意としている。
(やはり、体格が近く実力が近いと学べる事が多くて良いな。)
そんな感じで最近は共に稽古するライバルを得ることが出来た。
もう一つは師匠の供回りとしてアスラ王国を回る事になった。
水神流はアスラ王国中にいくつもの支部を持つ。
師匠は定期的にそれぞれの支部を周り、将来有望な剣士に指導を行なっている。
水聖となった俺は師匠について行き各地を回る事になる。
「なら衣装はしっかりしたもので無くてはなりませんね!」
イゾルデにも供回りの件を伝えると何故か張り切り出した。
「道着ではダメか?」
「ダメです。
貴方は最年少の水聖級剣士。
憧れる事はあっても舐められてはいけません。
さて、デザインはどうしましょうか?
いや時間が無いのであれば、刺繍だけにするのも…」
俺は最年少で水神流聖級剣士らしい。
イゾルデは既に俺の衣装のデザインの構想を練り始めていた。
「…任せる。
鎧は要らないからな。」
「ああ、確かにレインの魔術なら鎧は不要でしょう。
剣の方はどうしますか?
流石に鋳造品では格好がつかないでしょう。」
正直、今まで道場にある木刀や剣で充分なのだが、そろそろ自分の剣が欲しいという気持ちも否定出来ない。
「そうだ。
折角なら衣装を決めるついでに武器屋に行って剣を買いましょう。」
「流石に服はともかく剣の方は師匠の許可がいるだろう。」
「では取りに行きましょう。」
(女の買い物は長くなる。
特に服に関しては。)
これは前世での常識だが、俺の感が正しければイゾルデも買い物が長引くタイプだろう。
恐らく買い物に同行すればその日は修業が殆ど出来ない可能性が高い。
せめて服だけで終わらそうと師匠の名を口に出したが、イゾルデはニコニコと許可を貰いに俺を引っ張って師匠の元に向かって行った。
「良いじゃないか。
修行ばっかで引き篭もって、アスラのアの字も知らないんだ。
イゾルデに色々教わりな。
剣に関しても良し悪し位は分かるだろう。」
あっさりと師匠から外出の許可が出てしまった。
「そもそも禁止にした覚えが無いからねぇ。
もっとガキの頃でもアンタが見たいって言えば誰かしらと一緒に町くらいは歩かせたさ。」
確かにそう言われると、初めて魔術を発動してぶっ倒れた時に姉弟子達から制限されたが、師匠との修行開始からは外出について特に制限された覚えがなければ、自分から出たいと言い出したことも無かった。
(…剣と魔術の練習が楽しすぎて忘れていたが、そもそも俺はこの世界の通貨も知らないな。)
言語は赤子の時から聞いていた為、自然と身に付いていたし魔術は魔術の教本を読む為に覚えているが、この世界というかアスラ王国の通貨や常識については殆ど知らない事に今気づいた。
「通貨を知らない?
ああ、そういえば教えた事も無かったね。
アンタが聡明過ぎて忘れてたよ。
ならより良い機会じゃないか。
次はエスコート出来る程度には学んできな。」
結局、師匠からも言い含められてしまい俺はイゾルデと買い物に行くことが決まってしまった。
イゾルデをヒロインにするか迷い中。
というか主人公が外出してない事に書いてて気付いたとうね。