佐倉今回も出す予定だったけど思ったより話が進まなかった⋯
ホームルームが終わった後、クラスはトラブルの話でもちきりになっていた。
「またCクラスが絡んでるんだな。中間テストの時もうちのクラス邪魔してたし、Cクラスが悪いんじゃないか?」
「でも、Dクラスの人はCクラスの人に一方的に暴力を振るったって話だし、もっと駄目じゃない?」
「確かにそうだけど、Cクラス側が先に喧嘩を売ってきたって話が本当なら自業自得だよ」
現状うちのクラスだと、Cクラスには中間テストの時にあったトラブルという明確なマイナス要素もあり、ややCクラスの方が悪そうという考えになっている様だ。
「水無瀬くんはどう思う?私は正直、Cクラスの言ってる事が100%真実とは思えないかな」
一之瀬も前の件があってCクラスの言い分に懐疑的らしい。
「どうだろうね。まだ先生からの話以外で判断材料が無いし、何とも言えないかな」
当たり障りの無い返答をしておく。今回の件については下手に関わる必要も無いと感じるので、僕が見た事についてはクラスメイトには話さない事にした。
放課後、色々調べる為に先生には伝えておこうと思い、教室を出て職員室に向かう。それと入れ違うようにして僕のクラスにDクラスの人が入ってきて、うちのクラスの人と話しているのが見えた。
(あれは確か⋯櫛田さんだっけ)
うちのクラスでも何人か連絡先を知っているくらいには交友関係が広い人だったはずだ。ちなみに僕は交換していない。なんなら僕が彼女を少し避けていると言ってもいい。
(勘だけど、坂柳に近い感じがするんだよなぁ⋯手を貸したらろくな目にあわなそうな感じが特に)
一之瀬のような感じで誰にでも優しくしているように見えるのに、あの坂柳と同じで関わったら後悔する予感に頭の中で警鐘が鳴り響いていた。幸いな事に彼女から話しかけられることも現状無かったので、今後も出来るだけ避けたいところだ。
ひとまず急いでその場を離れて職員室に行き、星之宮先生に僕が喧嘩の現場を見ていた事を話す。
「まさかうちのクラスに目撃者がいるなんて、ビックリしちゃった」
流石に先生も驚いたらしい。まああんな人のいない場所にわざわざ足を運ぶ人なんてそうそういないだろうし当然の反応だろう。
「ちなみに、これを話した事で当日に呼び出しとかはあるんですか?」
「水無瀬くんが承諾すれば、話し合いにも事件の関係者として参加する事になるわね」
どうやら参加必須になったりはしないらしい。とりあえず話し合いの具体的な中身について詳しく聞いてみることにする。
「その話し合いって、どうやってするんですか?」
「生徒会室で、加害者側と被害者側がそれぞれお互いにあった事を話す。証言をしてくれる人がいたら、その人からも話を聞いて、最終的に生徒会が判決を下すの。あと、加害者側も被害者側も、証言をしてくれる人とは別に弁護人を付けることが出来るよ」
聞く限り形式的には変則的な裁判のようなものらしい。お互い弁護士を呼ぶとなると、ハッタリまみれの裁判になる気がしなくも無いが。
「じゃあ、その話し合いには参加しないでおきます」
先生に何か言われる前に先んじて言っておく。
「なんで?わざわざ話してくれたし、参加すると思ってたのに」
「僕が見た部分を話したところで、何か変わる要素は無いでしょう」
あくまで僕が見たのは須藤が暴力を振るった瞬間だけなので、証言をしたところで特に意味は無いと思う。せいぜいDクラスが少し不利になる程度だろう。
それでDクラスとの軋轢が出来る、なんて事になるのも避けたい。
「そっかぁ⋯サエちゃんに貸しが作れると思ったんだけどなぁ」
そう先生がボヤくが、今の話から貸しを作ろうとするのはかなり証言捏造することになると思う。
というか、この先生なんかDクラスの担任に偶に絡みに行ってるけど、わざわざ貸しを作らせようとしたり、仲がいいのか悪いのかよく分からないな。
「⋯あと、この事はうちのクラスとかに話さないでくださいね」
「はーい。まあ、気が変わったらいつでも言ってね」
先生にそれだけ言われ、職員室を出る。
とりあえず先生に話した事で幾つか分かった。学校側は事件についてあくまで訴えを起こした生徒と相手以外からの情報を何も持っていない。つまり、監視カメラで見えない部分については本当に把握出来ていない。
そして、仮に情報を隠したとしてもペナルティがあったりはしなそうだ。あえて幾つかの情報を伏せているのにそこについて何も言われていない事から、まず間違いないだろう。
(あとは佐倉さんがどうするか次第かな。彼女の方が確実に見てるんだし、必要な証言は彼女がすれば十分でしょ。まあ本人が証言するかは知らないけど)
「ねぇ、水無瀬くんって人に聞きたいことがあるんだけど」
先生に話した翌日、昼休みに櫛田さんが教室にやって来て僕を名指しで呼んできた。とりあえず彼女について行くと、Dクラス前の廊下で何人か人が待っている。
暴力事件を起こした張本人に前に図書館で一緒に勉強してたメンバーが3人、あと一人はたしか⋯Dクラスを纏めてる平田くんだったか。
⋯何か面倒な事になる予感がする。
「それで、聞きたいことって?」
「須藤君が起こした事件を見たって聞いたから」
僕の質問に櫛田さんが答える。⋯いや、なんで先生に言わないように言ったはずの話が漏れてるんだ?
「⋯ちなみに、誰から聞いたの?」
「茶柱先生がホームルームでBクラスからは目撃者が出たって言ってたよ」
どうやら職員室で星之宮先生に話したせいで、近くの席だった他クラスの先生に漏れたらしい。聞こえてた先生全員に口止めするか、話す場所を変えるべきだったなこれ。
「⋯先に言っておくけど、僕は証言するつもりは無いよ」
「なんでだよ!」
僕が先に結論から言うと、事件を起こした張本人である須藤が怒りをぶつけてきた。
「須藤、落ち着けって」
「んな事言われても、納得いかねえだろ!」
「そうかもしれねえけど、心変わりしてくれるかもだろ?そんな態度とったら、もっと助けて貰えなくなるぜ?」
「⋯チッ」
須藤は隣にいた男子生徒に諌められ、舌打ちをする。いや幾らなんでも素行が悪すぎない?須藤の噂については既に学年中に広まってきてるが、この感じだとどれだけ真実に取られても文句は言えないと思う。
「⋯というか、その先生はなんて言ってたの?」
「えっと、『他のクラスから有力な証言があったぞ。今回の件に関わっていないBクラスの証言だから、信憑性は高いだろうな』って。その後、私達が誰か聞いたら水無瀬くんの名前出してくれたよ?」
凄いな、見事に大事な情報の中身を教えていない。昨日の僕の話でDクラスが有利になる情報とか何も無いのに⋯Dクラスの担任も捏造させる気か?
「⋯一応聞くけど、今回の議論はどこに結果を落とし込むつもりなの?」
「そりゃ無罪だろ!俺は正当防衛しただけなんだからよ」
「⋯櫛田さんと平田くんも同じ考え?」
Dクラスで意見を纏めているであろう2人にも確認を取る。もし須藤と同じように考えているなら⋯
「私は須藤くんが無罪になるように頑張るつもりだよ」
「⋯僕も、出来る限りそうなるようにするつもりだ」
「⋯なるほどね」
断言までしない辺り、この2人はあくまで無罪になれたら最高、というだけで実際になるかどうかは別と考えているらしい。正直かなり安心した。
「じゃあ1つ先に言っておくけど、無罪は絶対に無理だよ」
「あ?なんでだよ。正当防衛だって⋯」
「正当防衛と言ったところで、暴力が肯定される事は無いよ」
須藤は正当防衛という言葉で自分の暴行を正当化しようとしているが、その考え自体が間違っている。
「今回の事件でのお互いの主張は、Cクラスは一方的に殴られた、須藤はCクラスが突っかかってきた、って話。そっちは正当防衛と言葉だけ飾って、Cクラスの主張を否定出来てない」
せめて暴力を振るっていない、と主張すればまだ冤罪として無罪になる可能性はあっただろうが、その線が消えた時点で完全無罪になる事は無い。
「それにそもそも、僕が見たのは須藤が殴ってる現場であって、その前何があったかなんて知らないし。仮に証言したところで、Dクラスに不利な情報が出るだけだよ」
厳密には有利になる情報も無いわけではないが、今話している範囲だけを見れば全てDクラスにとって不利に働くだろう。
僕の言葉に櫛田さんや平田くんも顔が沈む。まあ有力な情報と言われて飛びついたら自分達に不利な情報だったとか、考えただけでも嫌な気分になりそうだ。
「とりあえず、これ以上話す事は無いしもういいなら教室に戻るけど⋯」
「待ってもらえるかしら」
離れようとした瞬間、Dクラスの教室から誰か出てきて引き止めてくる。たしかこの人も図書館で勉強会をしていたメンバーだったはずだ。
「⋯何?」
「幾つか質問してもいいかしら?」
「いいけど、手短に頼むよ」
「じゃあまず1つ。あなたは証言するつもりが無いのに目撃情報を出した。それは何故?」
「幾つか情報を確定させたかっただけ。偶々現場を見たし、調べるにはうってつけだったから」
これは本当。学校側からのアクションがどれだけ入るか、学校側がどこまで把握出来るのか、これは実際にトラブルが起きなければ掴めない。ペナルティの有無も含めて、調べるのにはちょうど良かっただけである。
「そう⋯じゃあもう1つ。貴方以外に目撃者はいるの?」
「さあね。僕が見たのはあくまで階段からだし、廊下側から誰か見ててもおかしくは無いんじゃない?」
佐倉さんについては伏せておく。わざわざ他クラスから先に聞く時点で彼女は話していないのだろうし、それをわざわざ本人の許可無しに伝える理由も無い。
「⋯そう。質問は終わりよ」
「あ、待って!一応、連絡先だけ交換してくれないかな?もし他に何か情報を思い出したら、連絡して欲しいな」
最後の最後で櫛田さんにお願いされてしまう。断って教室に帰りたいが、ここで断るとそれはそれで面倒事に発展する予感がするので、仕方なく交換した。
この後教室に戻ると、教室にいたメンバーから何を話していたのか質問攻めにあってしまい、このまま隠すのは無理だろうと判断してクラスメイトにも事件当時の話をするのだった。
なお、この話を隠してた事がバレたせいで一之瀬からはジト目で見られた。
ちなみにDクラスが全員須藤の様に無罪一択とか考えてたら何も話さないで突っぱねてた。
あとこの作品、現状主人公視点しか無くて他視点出さないとだよなぁ⋯と思いつつも原作まだ読み込んでないからキャラのイメージがブレブレになって中々やる所まで行けない⋯
一応今後一之瀬と坂柳くらいは視点出すつもりだけど他キャラ視点も出した方がいいですかね?