最近原作からの変化でこの先の試験結果がどうなるか色々妄想している
放課後、一之瀬が念の為自分も調べておきたいと言うので、2人で特別棟に行く。
「うーん、やっぱり廊下には監視カメラも無いかぁ⋯」
「まあそういう場所を選んでやったんだろうね」
分かっていたことではあったが、やはり現場に何か情報が残ったりしている事は無さそうだ。
「それにしても、本当に暑いね⋯」
一之瀬が汗をハンカチで拭きながら言う。彼女の言う通りで、7月に入ったとは言え毎年こんな暑かったか?と疑問に感じるくらいには今年は異常に暑い気がする。
「風の通りが悪いから熱が篭ってるのかもね⋯放課後に特別棟来る人なんて基本いないから冷房も付いてないし」
「⋯ん?じゃあなんで水無瀬くんは事件当日に特別棟に来たのかな?」
明らかに発言と矛盾した僕の行動にツッコまれ、一之瀬からさらにジト目を向けられる。
「それについては黙秘で。結局事件現場に鉢合わせる以外何も起きなかったし」
尾行されてるかもなんて、普通に考えたら自意識過剰以外の何物でもないし、なんならあれからも見つかってないから本当に自意識過剰な気がしてきたし、わざわざ話さなくてもいいだろう。
「ふーん⋯何か手伝えることがあったらちゃんと話してね」
「分かってる。その時は頼りにするから」
「ならよし!じゃあもう少し調べて早く帰ろう」
僕の返答にひとまずは満足したのか、彼女は笑顔を浮かべ調査を再開する。
その後近くの教室のカメラ位置等気になる場所は全て調べてみたが、結局事件への証拠になりそうなものは見つからなかった。
「うーん⋯結局何も見つけられなかったね」
「まあ事件から何日か経ってるし、分かりやすい物証なんてあったらとっくに回収されてるだろうから仕方ないよ」
とりあえず引き上げようと階段に向かうと、その階段から誰かが上がってきた。
「こんな所で何をしているのかしら」
誰かと思ったら、昼に僕に質問をしてきた女子生徒だった。隣にはあの時にいた男子生徒もいる。
「えっと君たちは⋯Dクラスの生徒だよね?」
「⋯知ってるのか?」
一之瀬の言葉に男子生徒の方が驚く。
「君とは2回くらい会ったしね。もう1人の子も、図書館で見たことあるから」
「⋯そういうあなたはBクラスよね?私たちに協力しないと言っていたのに、なんでここにいるのかしら」
協力しないとまでは言わなかった気がするが、あながち間違ってもいないかと思い口は挟まないでおく。
「私が一応調べてみたかったから、付き添ってもらってたの。私は事件があった場所も知らなかったし。君たちも調べに来たんでしょ?」
「そうね。それで、あなた達は何か見つけられたのかしら」
「残念だけど、何も見つからなかったよ」
「そう、やはり無駄足だったみたいね⋯行きましょう、綾小路くん」
一之瀬の言葉を聞いて女子生徒の方が踵を返そうとする。
「⋯ひとつ聞いてもいいか?」
が、綾小路と呼ばれていた男子生徒の方が尋ねてくる。
「何?」
「昼にも聞いたが、目撃者は他にいなかったのか?」
佐倉さんが見ていた事を知ってか知らずかそんな事を聞いてくる。昼と同じ答えでもいいが、一応もう1つの僕すらいるか分からない可能性だけは出すことにした。
「昼にも言ったけど、僕は知らないよ。まあ見たのは途中からだし、喧嘩に発展した時点で逃げた人ならいたのかもしれないけど」
「⋯そうか」
納得したかは分からないが、綾小路は僕の答えを聞いて引き下がり、女子生徒と下の階へ降りていった。
「⋯水無瀬くん。さっき聞かれてたことだけど⋯」
一之瀬に佐倉さんの事を話しておくべきか悩むと、廊下の曲がり角から人が出てきた。
「あ、あの⋯」
「佐倉さん?」
出てきたのは佐倉さんだった。何故ここにいるのか聞こうとすると、彼女が口を開く。
「⋯水無瀬くんは⋯なんで私の事を話さなかったの⋯?あの時、私が現場にいた事を知ってるのに⋯」
タイミングはちょうどいいが最悪だった。
「⋯水無瀬くん?」
一之瀬の圧のある笑顔を見て咄嗟に脳内の検索エンジンを働かせる。
【急募】ここから上手く誤魔化す方法
A.諦めて全部話せバカタレ
⋯脳内検索エンジンは無能だった。
「全部話すから、とりあえず落ち着いて」
自然界だと笑顔は威嚇の意味合いがあると聞いた事があるが、一之瀬のこの笑顔を見たら本当なのかもしれないと感じるのだった。
ひとまず話をしようにも、ここではまた人が来る可能性があるし、僕の部屋だと誰かいてもおかしくなかったので、3人で一之瀬の部屋に行くことになった。
「じゃあ何があったか、今度こそ全部聞くからね」
「分かってる。って言っても、そんな話が増えるわけじゃないけど」
と、事件現場を佐倉さんが見ていた事、隙を見て彼女を連れて現場から逃げた事を話した。
「⋯話は分かったけど、でもなんで佐倉さんの事を話さなかったの?」
「今回の事件についての話を先生にした時点で、佐倉さんは自己申告をしてなかったから。佐倉さん、人と関わるの苦手って言ってたし、これ以上関わりたくないんだろうなって思ったんだよ」
「⋯たしかに、Dクラスの人が当事者なんだし、むしろ早く申告しないと嘘だと思われちゃいそうだもんね」
自己申告をしていない時点で、彼女がこの件に関わりたくないのは明らかだ。僕の言葉を聞いて一之瀬も納得する。
「⋯私、あそこにいた事がもう半分バレてて⋯否定はしてるんだけど、出来たら話して欲しいってお願いされてて」
どうやらさっき綾小路にされた質問も、佐倉が見ていた事を知っているかどうか確認する為の質問だった様だ。
「佐倉さんは、どうしたいの?」
「私は⋯」
一之瀬が佐倉さんに問いかけるが、彼女は言い淀む。
話すつもりが全く無かったのなら、わざわざ事件現場に来たり、僕に話に来ることも無かったはずだ。きっと、話したい気持ちもあるのだろう。
彼女が話すまで待ち続けると、佐倉さんがポツリポツリと話し始める。
「⋯私は、怖い。もし、私がこのまま証言しなかったら、きっと後悔するって、分かってる⋯でも、目立つのは怖くて⋯自分から話す勇気が、どうしても出せなくて⋯」
言葉を紡ぐ毎に声が小さくなっていく。そのまま言葉が止まるが、やがてずっと俯いていた彼女が顔を上げた。
「⋯だから、勇気が欲しい。皆の前で話す勇気が」
「⋯大丈夫だよ、佐倉さん」
佐倉の言葉を聞いた一之瀬が彼女の手を掴む。
「私達はクラスは違うけど、何か出来る事があるなら助けるし、Dクラスの人達も助けてくれるよ」
その一之瀬の言葉に、佐倉さんは足りなかった勇気が少しでも貰えたのかもしれない。
「⋯私、頑張ってみる」
そこには、さっきまでとは違う、怖くても前に進もうという勇気を持つ事が出来た佐倉さんがいた。
「⋯ねぇ、2人にお願いがあるの⋯」
「何?」
「⋯私と、友達になって欲しい」
そう言った佐倉さんの顔は真っ赤になっていた。きっとそれは、彼女にとって勇気の一歩目なのかもしれない。
「もちろん!よろしくね、愛里ちゃん!」
「うん。よろしく、佐倉」
こうして僕と一之瀬は、佐倉と友達になった。
切る場所こっちの方が良さげだったので少し文を削除しました。切り取った分は次話に入れるので少々お待ちを。
ちなみに尾行してる某Yさんは主人公が明らかに警戒してるのに気付かれないせいで、自分の存在感の無さにさらにネガティブになっているとかいないとか