ストーカーの思考が分からないので何となくで書いている⋯でもプライベート干渉し出すレベルの奴はこんな感じのイメージ
日曜日、昨日の話で今日は外に出ないよう佐倉には言っているし、万が一何かあったらすぐ連絡するように伝えてはいるので、そうそう彼女の身に何か起こることもないだろう。
そう思っていると、佐倉から電話がかかってきた。
「もしもし、佐倉?何かあったの?」
『う、ううん⋯そうじゃない、けど⋯どうしても落ち着かなくって⋯』
彼女の言葉も当然だろう。ストーカー被害を受ける事なんて、普通の人はまず体験することなんてないし、元々人と関わる事が苦手な佐倉なら尚更だ。
まあ、グラビアアイドルなんてしている人を普通の人と判定すべきかと問われたら微妙だが、そこは一旦考えない事にする。
「なら、一之瀬の部屋に行ったら?」
『え⋯でも、いいの⋯?』
「一之瀬の方から迎えに来てもらえば、1人になることは無いし、同じ階だから移動距離も殆ど無いから、それくらいなら大丈夫だと思う。なにより、向こうは僕と佐倉の部屋番号知ってるから、隠れるって意味なら1番安全だろうし」
『⋯うん、分かった⋯帆波ちゃんに連絡してみる』
「うん。一之瀬の部屋に入ったらチャットだけくれれば分かるから」
そう言って通話を切る。それから5分ちょっとで佐倉から『帆波ちゃんの部屋に入ったよ』とチャットが来たのでひとまず安心する。これで佐倉に危害を加える事はほぼ不可能だろう。
一応櫛田さんと綾小路にも状況だけ伝えておく。櫛田さんからは『オッケー(^^)b』と返信は来たが、綾小路からは特に何も返信は来なかった。もしかしたら今日も何か用事で出ているのかもしれない。
それからしばらくゲームをして時間を潰していると、また電話がかかってくる。今度は知らない番号だ。
(こういう時は一旦無視して電話番号で検索して詐欺電話か確認⋯って、この携帯たしか外とは繋がらないんだっけ?)
敷地内からの電話で間違いないことを思い出し、電話に出てみる。
『もしもし、私デジタル・アースの斉藤と申します』
電話先は昨日の電気屋だった。それもあの店員の声。
なんでも、カメラの修理が終わったらしい。昨日の話だと月曜日までに直るとの話だったが、やけに早かったな。
『もし宜しければ、宛先の住所に直接届けることも出来ますが、いかがいたしましょうか』
「うーん⋯」
正直この申し出は受けるべきか悩ましい所だ。
リスクとしては、この店員が届けに来る可能性は高い。ただ、それで佐倉の部屋に行ったとしても彼女は一之瀬の部屋にいるから会うことはないからそこは問題にはならない。
しかもカメラが帰ってくるなら、彼女の部屋に行った姿をそのカメラで撮ってしまえば、明日まで待つこと無く対応して貰えるかもしれない。なんなら佐倉のカメラで撮らずとも、廊下の監視カメラにその姿が映れば証拠としては十分だろう。
「分かりました。じゃあ今日中に届けてもらう事は出来ますか?」
『かしこまりました。今日ですと18時以降になりますがよろしいでしょうか』
「はい。それで大丈夫です」
『承知いたしました。では18時以降にお届けいたします』
そう言って電話が切られた。ひとまず佐倉達に電話をかけ、僕の部屋にカメラが届けられると伝える。
『でも、大丈夫?もし愛里ちゃんの部屋にも来たら⋯』
「それなら監視カメラに映るはずだし、なんなら届いた佐倉のカメラで入ろうとする瞬間でも撮影出来ればそれで解決出来ると思う。とりあえずカメラ受け取って帰ったのを確認したら連絡するから、佐倉はその後部屋に戻って」
『⋯分かった⋯⋯ありがとう、水無瀬くん』
「気にしないで。そっちは今のところは大丈夫そう?」
『こっちは愛里ちゃんと楽しくおしゃべりしてるよー。愛里ちゃんカメラの話になったら止まらなくて』
『ご、ごめんね⋯』
『いいんだよ。愛里ちゃんからあんなに話してくれる事なんて初めてだったから嬉しかったし』
あんなに気にしてたし大丈夫か不安だったが、どうやら向こうの様子を聞く限り楽しめているようだ。
「⋯まあその様子なら大丈夫だと思うけど、もし何か異変を感じたらすぐ連絡してね」
『分かってる。じゃあ、水無瀬くんの連絡待ってるから』
そうして佐倉達への連絡を終え、次に綾小路に電話をかける。
『何かあったか、水無瀬』
2コール程待つと電話に出てくれたので現状について色々説明をする。
「それで、綾小路には僕の部屋にカメラが届いた後に、佐倉の部屋に誰か来ないか監視を頼みたいんだけど」
『⋯分かった。代わりにこちらからも1つ頼みたいんだが、いいか?』
「何?」
そう言って綾小路が1つ頼み事をしてくる。
「⋯いいけど、仮にそれが失敗したとしても責任はそっち持ちなんだよね?」
『ああ』
「⋯分かった。そんな状況になるとは思えないけど、もしそうなったら協力するよ」
『助かる』
綾小路との通話を終える。とりあえずこれで佐倉については安全だろうと判断し、ゲームに戻った。
そして夜の7時過ぎ、玄関のチャイムが鳴る。玄関の窓を覗くと、やはりあの店員がやって来た。
来た事を綾小路にチャットで伝え、玄関の扉を開けた。
「こちらカメラになります。お客様の方でも、動作確認の方をお願いいたします」
そう言ってカメラを渡してきた。電源ボタンを押し、カメラが付くか確認したその瞬間、視界の端の店員から光る何かがこちらに目掛けて振るわれる。
「っ!!」
最初に感じたのは痛みだった。
痛みの元を追うと、振るわれた何かを咄嗟に受け止めようと伸ばした左手にナイフが突き刺さっていた。
「お前が、お前さえいなければ!雫は僕のものなんだ!」
「っ⋯⋯ぐ⋯⋯」
店員がなにか喚いていたが、何を言っているのか意識する余裕は無かった。左手に刺さったナイフを認識した事で、より感じる痛みは強くなっていく。
狂った店員はさらにナイフを無理やり引き抜き、さらに大きく振りかぶる。
「これで⋯!!」
「っ⋯の!」
振り下ろされたナイフをもう一度左手で受ける。そしてそのまま突き刺さったナイフを掴んで抜けないようにし、鳩尾に膝を叩き込む。
「っご⋯⋯あ⋯⋯⋯」
店員が呻いて地面に崩れる。そこにさらに金的を蹴り上げ追撃すると、店員が気絶した。
それからすぐに階段を登ってきた綾小路が僕の部屋の前に来る。
「大丈夫か?」
「⋯大丈夫だと思う?」
結構血が出てるしめっちゃ痛いのだが、こんな状況を目にしても綾小路の表情は一切動かない。やっぱり表情筋が死んでるんじゃなかろうか。
「⋯とりあえず、警察と救急を呼んでくれない?」
「分かった」
そうして綾小路が警察と救急に電話している間に、佐倉と一之瀬に終わった事を伝える。ただ、佐倉には警察に状況を説明する一助をしてもらう為に、僕の部屋の前に来てもらう。
「水無瀬くん⋯!」
僕の部屋の前に来た佐倉は、倒れている店員と僕に刺さったナイフを見て顔を青くする。
「もしかして⋯⋯」
「話は後でするから」
それから警察と救急がほとんど同時に到着し、店員は拘束、僕は病院に連れていかれ、処置をされながら事情聴取を受ける。佐倉には僕に同行してもらった。
後になって知った事だが、そもそもあの店は部屋に直接届けるサービスなんてしていなかったらしい。つまり、最初からこうするつもりで話を持ちかけたのだろう。
「ごめんなさい⋯⋯本当に、ごめんなさい⋯⋯」
病院での事情聴取が終わった後、ずっと佐倉は泣いていた。
「佐倉が謝る必要なんてない」
「でも⋯⋯私が、水無瀬くんにお願いしたから⋯⋯本当は、私が自分からあの人に話をつけてたら⋯⋯」
「⋯佐倉」
彼女の言うたらればは、あの店員の錯乱ぶりを見ればまず有り得ない事だろうと思う。
だが、それを見ていない彼女にとっては本来自分だけで解決すべき問題と思っていて、自分を責めずにはいられないのだろう。
このままだとずっと自己嫌悪しそうなので、助け舟として彼女が見落としている大事なことを教える。
「⋯むしろ、あの時僕達を頼ってくれたから、これくらいの被害で済んだんだ。だから⋯ありがとう」
もし、昨日佐倉が話してくれなければ、何も対策なんてしていなかったし、そうなっていたら⋯僕はあの店員には注意を向けずにそのまま刺され、間違いなく死んでいただろう。彼女が相談してくれたから、僕は左手だけの怪我で済んだ。
だから、佐倉に感謝する事はあっても、非難する理由なんてどこにも無い。
「っ⋯⋯うわあぁぁ」
僕の言葉を聞いて佐倉は僕の胸に飛び込み、そのまま思い切り抱きついて号泣した。
正直左腕を巻き込んで抱きついてきているから少し痛いが、彼女が落ち着くまでの我慢だと思い、空いた右手で頭を撫でた。
「⋯水無瀬くん」
あれからひときしり号泣し、落ち着いた佐倉が顔を上げる。
「⋯ありがとう。私を、助けてくれて⋯」
「⋯どういたしまして」
それから2人で寮への帰路に着く。しばらくの間無言が続くが、やがて彼女の方から話しかけてきた。
「⋯次は、私が頑張る番⋯だよね」
「⋯今の佐倉なら大丈夫だよ」
これはお世辞ではない。今の佐倉は人との関わりを恐れ、目を背けていた1週間前の佐倉とは別人のように変わっている。だから、証言に関しての不安要素はもう無いだろう。
「⋯水無瀬くんは、どうして助けてくれたの⋯?別のクラスなのに⋯」
「⋯強いて言うなら、一之瀬の影響、かな」
小学校時代から彼女の善性を見て、僕もそうありたいと思って、でも彼女の様には出来ない事はすぐに分かってしまったから。だから、彼女の様になりたいと思う
尤も、中にはその善意を踏みにじる輩や利用する輩なんかもいたが(主に坂柳)。
「最初に佐倉に勇気をあげたのも一之瀬だし、これ以上の礼は一之瀬にしてあげて」
「うん。明日帆波ちゃんにもお礼を言うね⋯」
その後寮に到着し、2人でエレベーターに乗り込む。5階に着き、先にエレベーターを降りた。
「じゃあ、また明日」
「うん⋯また明日⋯」
そうして佐倉と別れ部屋に入ると、玄関の靴箱の上にカメラを置きっぱなしにしていた事に気付く。
「⋯これは明日にしよう」
門限も過ぎているので佐倉には明日渡す事にし、今日はそのままベッドで眠りについた。
次回で暴行事件の方も終わらせます。その後は一之瀬バースデーから無人島(たぶん)
暴行事件終わった後佐倉どうやって出番作るかな⋯(現状佐倉より出番の少ない坂柳から目を逸らしつつ)