昨日の朝投稿したかったんです⋯でも文才無さすぎて中々筆が進まなかったんです⋯
佐倉のストーカーに刺された翌日、左手以外に傷は無いし、授業を受ける上で支障も無いだろうと判断し普通に登校する。
「おはよう、水無瀬くん⋯左手、大丈夫?」
教室に入ると一之瀬が話しかけてきた。一之瀬には昨日病院から戻った後に何があったかチャットで説明はしたが、かなり心配させてしまったみたいだ。
「大丈夫。左手はしばらく使えないけど、利き手じゃないしね」
あの時咄嗟に受けたのが左手で良かった。これが右手だったらかなりの不便を強いられていただろう。
「そっか⋯何か手伝って欲しいことがあったら、いつでも言ってね」
「分かったよ。その時はお願いするから」
それから授業が始まったが、思った通り左手を動かさなければ痛みを感じることもあまりないので、特に問題なく授業を受けることが出来た。
昼休みになると、星之宮先生に呼ばれて生徒指導室に行くよう言われた。僕が着いた時は他に誰もいなかったから何の話かと思ったが、少しして佐倉と茶柱先生もやって来たので昨日の件についてだろうと察した。
「まずはすまなかった。学校側が引き入れた職員が生徒に危害を加えるなど、あってはならない事だ」
僕と佐倉が座ると、早速茶柱先生が頭を下げた。
正直この学校に信用なんてないし、今まで先生としてはろくでもない話しか聞いていなかったから、ちゃんと学校側に不手際があれば謝るんだな⋯と思ってしまった(言葉にはしないが)。
それから僕と佐倉に学校側からそれぞれ100万プライベートポイントが支払われると言われた。佐倉はそもそものストーカー被害に対して、僕は今回で受けた怪我に対しての慰謝料と言ったところだろう。
100万と聞くと高いと感じるが、命の危険もあったという部分まで加味するとむしろ安いのだろうか⋯?この辺りの相場は分からないのでなんとも言えないが、怪我は左手にしか負っていないし、ゴネるとそれはそれで面倒そうなので、ひとまずこの金額で満足しておく事にした。
また、今回支払われるプライベートポイントに関しては、出来るだけ個人で消費するように言われた。これに関しては、学校側もこれ以上話を広められるのを防ぎたいという目的もあるのだろう。
こんなポイントを誰かに譲渡しようとすれば、まずこれだけのポイントを持っている理由まで説明しなければならなくなる。特に佐倉のいるDクラスはポイントの支給が初月以降ほとんど無かったから尚更だ。
とりあえず僕も佐倉もその話を了承し、生徒指導室を出る。
「水無瀬くん⋯その⋯左手、大丈夫⋯?」
「大丈夫だよ。授業にもそこまで支障は無かったし」
昨日佐倉には病院まで来てもらっていたし、僕の状態については分かっているはずだが、それでも不安に思ってくれていたらしい。気持ちは嬉しいが一之瀬も佐倉も少し心配性な気がする。
まあ佐倉はまだ自分が原因と思っていそうではあるし仕方ないかと思いつつ、佐倉と教室に戻るまで話をする。そこでふと、カメラを渡せていなかったことを思い出した。
「あ、そうだ。結局カメラ届いたのに渡せてなかったし、放課後に僕の部屋に取りに来てよ」
「う、うん⋯分かった」
そう約束をして佐倉とは別れ、教室に戻った。
その後午後の授業が終わって放課後になると、佐倉に連絡を取って玄関で合流し寮に向かう。佐倉を僕の部屋に入れ、カメラを渡してデータを確認して貰った。
「⋯うん、データも残ってるから、これなら大丈夫⋯だと思う」
「⋯やっぱり、まだ不安?」
「⋯うん。ただ、話す事が怖いんじゃなくて⋯私が証言しても、何も変わらないんじゃないかって⋯」
どうやら証言する事より、証言した結果が怖いらしい。
「⋯前に櫛田さん達に証言をお願いされた時にも言ったんだけど、佐倉が証言しても須藤が無罪になる事はないと思う」
「⋯え?」
ここで気遣って嘘をついても結果が無罪になる事は無いし、その結果で彼女が自分を責めるのは容易に想像がつくので、ここは正直に伝える。
「結局佐倉が証言しても、Cクラス側が暴行されたって事実は変わらないからね⋯でも、佐倉の証言で多少は罰が軽くなるはずだし、なにより大事なのは佐倉が証言したっていう事実だよ。佐倉は、須藤を無罪にする為じゃなくて、自分が前に進む為に証言したらいい」
「自分が、前に進む為に⋯⋯ありがとう、水無瀬くん。私、頑張るね」
僕の言葉を聞いて、少しは佐倉の気持ちが軽くなった様で、さっきまでの暗い雰囲気から少し持ち直した様に感じる。
それから佐倉を見送るのに立ち上がろうとすると、彼女はまだ話があるのか何か言いたげにしていた。
「⋯どうかした?」
「⋯その⋯水無瀬くんに1つお願いがあって⋯」
「お願い?」
「⋯その、今回貰ったポイントで、活動に使う機材とか買おうと思うんだけど⋯⋯一緒に来て欲しいなって⋯」
「⋯あー⋯」
たしかに、ストーカーが居なくなったとはいえ、直近でストーカー被害を受けたばかりの場所に一人で足を運ぶのは怖いだろう。
「それくらいなら構わないよ」
「良かった⋯じゃあ、今週の土曜日でも、いい?」
という事で、また週末に佐倉と出かけることが決まったのだった。
そして翌日の話し合い当日。
ホームルームが終わり放課後になると、僕と一之瀬は佐倉の様子を見に行ってみる。彼女は昨日話したのもあってか、少し緊張気味ではあるが話し合いには問題なく参加出来そうだった。
「愛里ちゃん、頑張ってね」
「うん⋯頑張るよ」
一之瀬の応援に頷く佐倉。その光景を見ていたら堀北に話しかけられた。
「聞いていいかしら。どうしてあなたは佐倉さんを助けたの?今回の事件、あなたは関わらないと言っていたはずよ」
言い方的に一瞬ストーカーの方かと思ってしまったが、暴行事件の証言が出来るように助けた理由を聞いたみたいだ。
「佐倉から僕達に話してくれたから。それだけだよ」
はっきり言って、あの時特別棟で佐倉の方から僕達に話してこなければ、僕は彼女と関わることは無かった。
あくまで佐倉の方から話して来たから彼女と関わったし、その佐倉に勇気をあげたのは僕じゃなくて一之瀬だ。ストーカーの件も佐倉からお願いされたから助けたにすぎない。
どこかのヒーローのような余計なお世話はしないのだ。
「⋯そう」
僕の答えに納得したのかは分からないが、それだけ言って僕から離れる。
とりあえず話し合いが終わったら連絡するようお願いし、期末テストも近いので一之瀬と教室に残っていたメンバーで軽く勉強会をした。
それから30分程が経った頃、佐倉から話し合いが終わったと連絡が来たので生徒会室前に向かった。
そして話し合いの結果について聞いた⋯のだが、話し合いは決着がつかず、明日に持ち越しになったらしい。
なんでも、Cクラスの担任からは須藤が2週間、Cクラスの3人が1週間の停学という譲歩案が出たらしいが、堀北さんは完全無罪を主張したからだそうだ。⋯いやどうしてそうなった?
「ここから完全無罪とかどう頑張っても無理だと思うんだけど⋯」
「にゃはは⋯でもDクラスにとっては、停学処分でも負けになるもんね。須藤くんのレギュラー剥奪になるかもしれないし」
たしかに一之瀬の言う通りレギュラー剥奪になる可能性は高いが、こればかりは須藤の責任としか言いようがない。Cクラス側から仕掛けたとしてもだ。
「でも、何か作戦とかはあるの?証拠とか証言はこれ以上出てこないと思うけど⋯」
「それなのだけど、あなた達に用意してもらいたい物があるの」
「用意してもらいたい物?」
「ええ、それは──」
堀北さんからの頼みを聞いた瞬間、僕は日曜日にしたある約束を思い出し綾小路の方を向くが、綾小路は目を合わせれくれない。
「うーん⋯それは結構ハードなお願いだね」
僕と綾小路の約束を知らない一之瀬は、突然のお願いに難色を示す。なにしろ堀北さんの頼みにはかなりのポイントが必要になるのだから当然だ。
「ええ。あなた達にお願い出来るような立場じゃない事は理解しているし、負担が大きいのも分かってるわ」
「ううん、負担については私個人でも何とかなる範囲ではあるけど⋯ただ、理由は聞かせて欲しいかな」
「そうね⋯じゃあ、今から言う理由に納得出来たら、協力して貰える?」
そう言って堀北さんが詳細を話すと、一之瀬は少し考え込む。
「⋯それ、いつ思いついたの?」
「話し合いが終わる寸前よ。偶然の思い付き」
「うーん⋯でも正直反則というか⋯嘘をつかないといけない訳だし」
「僕は賛成するよ」
「水無瀬くん?」
「リスクは大きいけど、それくらいしないと須藤の罰が重くなるだけだし、Dクラスにとっては最善だと思うってだけだよ。Dクラスに貸しも作れるしね」
本当は綾小路と約束したからが理由の半分なのだが、それは言わないでおく。
「元々今回の事件は、Cクラスの嘘から始まった物よ。ならその事件に終止符を打てるのも嘘だけ。私はそう思う」
「⋯分かった、手伝うよ。でも、これは貸しだからね。いつか返してもらうよ?」
堀北さんの言葉に一之瀬も心を決めたみたいだ。
「ええ、約束するわ」
それから片手が使えない僕は帰ることにして、一之瀬と堀北さん、綾小路に買い物は任せたのだった。
翌日、昼休みにDクラスを手伝って堀北さんに頼まれた買い物⋯監視カメラを現場に取り付ける。
そして放課後すぐに一之瀬と綾小路はCクラスの3人を現場へ呼び出し、訴えを取り下げるように交渉した。最初は余裕を持っていたCクラスの3人も、取り付けられたカメラを見るととたんに慌てだしたらしく、そこからは嘘とハッタリで上手い具合に持っていけたとの事だ。
なおこの話は全て綾小路から聞いたが、まるで名探偵の様に堂々と一之瀬が全部説明したし、結構ノリノリだったらしい。
僕は綾小路からの話を聞いた後、部屋に帰ってベッドに仰向けに転がりながら、少し考える。
『須藤の事件で、Cクラスからの訴えを取り下げさせる為に偽の証拠を作る事になるかもしれない。そうなった時は手を貸してくれ』
それが綾小路との約束だった。あの時点じゃ痛み分けで終わると思っていたし、頼んでくる可能性は低いと判断して、最悪の場合でもBクラスに責任が飛んでこないよう確認をした上で了承した。というか、今日まで結局何も言わなかったから、てっきりその路線は諦めたのかと思っていたのだが⋯
そもそも僕には訴えを取り下げさせる、なんて考え自体が無かった。Cクラスが監視カメラが無い場所を狙っている事は分かりきっていたし、そんなダミーに騙されるとも思えなかった。
それを特別棟の暑さで思考を鈍らせてこちらの言葉に疑いを持たせにくくし、さらに退学の可能性をチラつかせる事で訴えを取り消させる事に成功した。
話し合いの後でカメラを買うよう僕達にお願いしたのは堀北さんだが、それは綾小路が事前に話していたのか、それとも本人が言ってたように自力で考えついたのか⋯それによってDクラスの⋯というより、綾小路と堀北さんの評価はかなり変わりそうだ。
もし、全て綾小路の思い通りになっているのだとしたら⋯綾小路は坂柳に近い存在なのかもしれない。
Cクラスを天使枠で椎名、Dクラスを悪魔枠で櫛田と考えてたのが、佐倉がDクラスで天使枠掻っ攫ったからバランス的にCから悪魔出さないと⋯となり、今悪魔枠考えてるんですが⋯
どう頑張っても消去法で龍園一択になってしまう本当にどうしよう