ようこそ天使と悪魔のいる教室へ   作:白音澪

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5月1日の説明パートを次話にするか悩んだけど結局纏めました



終わる日常

 

 それから5月に入るまでの1月はあっという間に経過していった。

 

 入学してから1週間経った頃、何故か春先だと言うのにこの学校ではプール授業があった。

 

 

「珍しいよな、4月にプールで授業なんて」

 

「ほんとにね」

 

 着替えている最中に、柴田が話しかけてくる。実際プールと言ったら、大体夏前くらいから始まるイメージだし、気持ちはわかる。

 

「そういえば昨日Dクラスのやつがボヤいてたけど、Dクラスは女子がほとんど見学だったらしいぜ」

 

「見学⋯そうなると、Dクラスはかなりポイントが減りそうだな」

 

「あー、前言ってた授業態度に引っかかるって事か?」

 

「そうそう」

 

「まあでも、女子が見学してたのって、なんかDクラスの山内とか池とかの視線が嫌とか言ってたぜ」

 

「あー⋯」

 

 そういう理由になるとどうしようも無い気がする。Dクラスに入ってしまった運の無さを恨むしかないだろう。

 そんな話をしつつも着替えを終えて更衣室を出る。それから数分してから、女子更衣室から次々と出てくる。

 

「お待たせ。プール久しぶりだけど、ちゃんと泳げるかなぁ⋯」

 

「意外と体は覚えてるものだし、大丈夫じゃない?」

 

「でも私運動神経悪いし⋯」

 

「いや、そんな事ないでしょ。一之瀬より運動苦手な人数えたら女子の半数は該当すると思う」

 

 本人はよく自分の運動神経が悪いと言っているが、正直普通だと思う。まあ、頭がいいから相対的に悪く感じてしまう部分が強いのかもしれない。

 そうして一之瀬と話していると、網倉が話しかけてくる。

 

「水無瀬くん凄いね」

 

「何が?」

 

「いや、女子の水着見たら、少しくらいドキドキするもんじゃない?水無瀬くんいつもと変わらなすぎて」

 

「そう言われても⋯一応幼なじみだし」

 

「いやいや、私とだって普通に話せてるでしょ?それに、帆波ちゃんなんてスタイル凄いし」

 

「えっ!?」

 

 突然スタイルに言及されて一之瀬の顔が赤くなる。

 

「そ、そんな事ないって」

 

「謙遜しないでって。こっちが自信無くしちゃうよ」

 

「⋯そろそろ先生来るだろうし、あんまり弄りすぎないでよ?」

 

 そのまま一之瀬達と別れて男子の方に戻ったが、一部から嫉妬の視線を浴びることになるのだった。これ、俺が悪いのか⋯?

 それから先生がやって来て集合をかけると、準備体操をして早速泳ぐことになった。ただ、泳げない人も3人ほどおり、先生に話したのだが⋯

 

「泳げるようになっておけば、必ず後で役に立つ。必ずな」

 

 やけに役に立つ事を断言する先生の言い方に少し疑問を覚えつつも、とりあえず準備体操をした後、50mほど流しで泳ぐ事になった。

 僕の運動神経はクラスの中では半分より少し下くらいの様で、50mを泳ぎ終えるのは少し遅かった。

 

「では、早速だが競争をする。男女50m自由形だ。1位の生徒には、俺から特別ボーナスで5000ポイントを支給する。逆に、1番遅かった生徒は補習だ」

 

 ということで、突然競争が始まった。基本5人1組で、1位と最下位の人はそれぞれ1位争いと最下位争いでもう1回泳ぐ様だ。

 結果として、男子は柴田が1位、女子は安藤さんが1位で、最下位は男子が別府くん、女子は二宮さんだった。

 

 

 

 

 

 

 それからさらに2週間程経過した4月の月末、ある程度クラスの人とも交流が出来て大半の人は呼び捨てで呼べるようになった。例外は全然話せてない姫野さんとなんとなく呼び捨てしにくい白波さん。

 そんなあと数日でポイントが振り込まれるというタイミングで、珍しい事に担当科目が無い星之宮先生が教壇に立った。

 

「皆、突然だけど、小テストをするよー」

 

 そう言って前からプリントが配られる。主要5科目で1教科につき4問のテストの様だ。

 

「本当に突然ですね」

 

「事前に勉強してないですよ?」

 

「大丈夫大丈夫、今日のテストはあくまで今後の参考用で成績表には反映されないから、あんまり気負わなくて大丈夫だよー。まあでも、カンニングとかはしちゃ駄目だからね」

 

 成績表に反映されないテストの意味とは⋯。まあ、全員が低い点数だったりしたら、今後のテストの難易度が下がったりするのかもしれない。そんな事あるのか?という疑問はあるが。

 

 それから配られた小テストを解いていくが、正直拍子抜けというか、かなり簡単だ。これなら勉強が得意な人は全員満点取れるんじゃなかろうか。

 

(⋯⋯ん?)

 

 そう思っていたのだが、最後の3問だけ急に難易度が上がった。いや、難易度が上がったどころか⋯

 

(これ、解けるように出来てるのか?)

 

 そんな疑問が浮かぶ位には難しい。もしかして予習しないと解けないように出来ているとかそんな所だろうか。

 

(まあ、出来るだけ解いては見るけど⋯坂柳だったら解けるのか?解けそうだなぁ⋯)

 

 結局、時間を使い切っても最後の3問の内、解けたのは1問だけで、残りの2問は片方しか手をつけられなかった。

 

 

 

 テストが回収されて先生が教室から出ていった後、クラスのほとんどの人が最後の問題の難易度に違和感を覚えたようで、話し合っていた。

 

「水無瀬くんはどうだった?小テスト」

 

「最後の3問だけ難易度おかしいと思う。あれ1つしか解ききれなかったし」

 

「やっぱりそうだよね⋯私も最後まで解ききれなかったよ」

 

「俺もだ。だが、難易度もそうだが、成績に反映されないテストをいきなり行う学校の考えもよく分からないな⋯」

 

 神崎も今回のテストの理由には疑問を覚えたようだ。

 

「うーん⋯今の皆の学力を見ておきたいって、普通の理由かもしれないよ?」

 

「それなら、途中の問題ももう少し難易度を上げるはずだ」

 

「それは⋯たしかに」

 

「まあもうすぐ5月になるし、そしたら説明してくれるんじゃない?」

 

 考えても答えは出ないので、ひとまず学校が説明してくれるまで保留、という事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、5月1日。

 

 朝起きて、すぐにポイントの残高を確認する。

 

「えっと⋯増えたのは8万5千ポイントかぁ」

 

 2日目の終わり時点で注意したとはいえ、全て直せるなんて事は無く、少しずつ遅刻や授業態度で引かれたのだろうと思う。

 ひとまずクラスチャットに、どれだけポイントが増えたか全員が確認するよう促し、学校に向かう。

 

「おはようございます、水無瀬くん」

 

「⋯おはよう坂柳」

 

 が、寮のエレベーター前で坂柳と遭遇してしまった。入学式の日以降会っていなかったけど、同じ階だったとは。

 

「⋯坂柳は何ポイント振り込まれたんだ?」

 

「私のクラスは9万6千ポイントでしたよ」

 

「⋯マジか」

 

 うちより1万ポイント以上多いって、初日時点でクラス中に注意喚起でもしたのか?いや、それにしたって格差がある気がする。

 

「Bクラスはどうだったんですか?」

 

「⋯こっちのクラスは8万5千ポイントだよ」

 

「そうですか。学校のシステムには気付いたんですか?」

 

「大体は。坂柳はもう全部予想ついてるんじゃない?」

 

「ええ。大体は」

 

 こっちの言葉に合わせて返してくる。絶対全部気づいてるなこれ⋯

 話している間にエレベーターがやって来たので乗り込む。

 

 

「⋯それにしても、この1ヶ月の間に一度も会いに来てくれませんでしたね」

 

「こっちから会いに行く理由なんて無かったし」

 

 元々僕が中学で助けたのも最初は偶然だし、その後付き人のような事をやったのも賭けの結果でしかない訳で。その賭けも中学卒業までと期間が決まっていたのだし、高校まで同じ事をする必要は無いはずである。

 

「あら、心配はしてくれなかったんですか?寂しいですね」

 

「よく言うよ。どうせ誰か中学の僕みたいに誰か横に控えさせたりしてるんでしょ」

 

 杖が無ければ歩けないから補助が誰かいた方がいい、という理由もあるが、坂柳に関しては仮にそんなデメリットが無かったとしても誰か手駒にしていたと思う。

 

「まあその通りですが、寂しいという気持ちに嘘はありませんよ。これでも私は水無瀬くんを評価してますから」

 

 ⋯言葉に嘘は無いように感じるけど、どこまでが本心なのやら。

 そんな話をする内にエレベーターが1階に着く。

 

「なら少しは優しく扱って欲しかったんだけど」

 

「毎回変な発言をする貴方が悪いです」

 

「変な発言って?具体的に痛っ!」

 

 歩いていた足に杖が振り下ろされた。めっちゃ痛い。

 

「これポイント減らされる行為じゃ⋯」

 

「何を言っているんですか?私が杖をついた場所にたまたま貴方の足があっただけですよ?つまり偶々です」

 

 いけしゃあしゃあとそんな事を宣う坂柳。どう考えてもわざとだ。

 

「偶々でもダメだろ」

 

「怪我になるようなものではないでしょう?」

 

「そういう問題か?」

 

 たしかに跡が残ったりはしないだろうが、それでセーフと言えるのだろうか。

 

「では、私は真澄さんが来るのを待ちますので」

 

「ああ、うん⋯って、その人が来る前になんでわざわざ来たんだ?」

 

「貴方と少し話そうと思った⋯と言うのは冗談で、Bクラスのポイントを聞くのに貴方がうってつけだった、それだけです。それと、今後の為に連絡先を教えていただけますか?」

 

「⋯まあ、それくらいなら」

 

  連絡先を交換し、坂柳と別れる。それから学校に入ると、既に来ていたクラスの人間は皆振り込まれたポイントについて話していた。

 

「あ、水無瀬くん。やっぱりポイントは減ってたね」

 

 教室に入ると、僕に気付いた一之瀬が話しかけてくる。

 

「うん。さっき坂柳と会ったから聞いたけど、Aクラスは9万6千ポイントだったって」

 

 その言葉に彼女が驚く。

 

「そんなに残ったんだ⋯坂柳さん達のクラスは凄いんだね」

 

「CとDクラスは何ポイントか分かる?」

 

「えっと、Cクラスは分からないけど⋯Dクラスは振り込まれてないみたい」

 

「⋯マジか」

 

 10万ポイントがひと月で0ポイントまで落ちるって、どんな態度で授業受けてたんだ⋯たしかに授業中偶になんか声が聞こえた事があった気はするけど。

 

 それからホームルームの時間になり、星之宮先生がやって来る。

 

「それじゃあホームルームを始めるけど、まず最初に皆から何か質問はあるかな?」

 

 その言葉に僕や一之瀬、神崎など何人かが手を挙げた。

 

「じゃあ一之瀬さん」

 

「はい。今月振り込まれたポイントが先月より少なかった理由を教えてください」

 

「そうね。じゃあその説明をする前に、まずはこれを見てみて」

 

 そう言うと、先生が黒板に1つの表を広げた。Aクラスが960、Bクラスが850、Cクラスが490、Dクラスが0と今月のポイントから100分の1の数字になっているのが分かる。

 

「これが、各クラスのクラスポイントで、学校は主にこのポイントでクラスを評価するわ。4月時点で皆には1000ポイントのクラスポイントがあったの。そこから、授業態度とか問題行動によってマイナスされたのが、今のポイントよ。皆に振り込まれてるポイントは、正式にはプライベートポイントって言って、クラスポイントを100倍したポイントが振り込まれるようになってるの。ここまでは、一之瀬さん達が話し合って気付いてたと思う」

 

 とりあえず貰えるポイントの増減に関しては予想通りだった様だ。先生の説明は続く。

 

「そしてここからが大事なポイントよ。このクラスポイントが高いクラスの順番でAからDクラスが決まっているの。つまり、もしBクラスがAクラスより多くポイントが残っていれば、このクラスはAクラスになっていたわ」

 

 ここで想定していなかった情報が飛び出てくる。3年間クラスのメンバーが変わらないとは、変わるのはクラスの人全員が同じようにクラス移動するからと⋯いや分かるかそんなの。

 

「⋯これを聞いて、元々Aクラスじゃない人は不利に思ったかもしれないけど、この学校のクラス分けは、学校側の評価を元に優秀な人から順番にAクラスに配属されるようになっているの」

 

 その言葉にクラスのほとんどの人が顔を顰める。つまるところ、Bクラス以下の人はAクラスより劣った人が行く場所、と言っているのと同義だ。

 

(⋯まあ、僕はそこまでショックでは無いけど)

 

 坂柳がAクラスなのを考えれば、学校側の評価もまあ正しいのだろうと納得はいく。彼女には運動が出来ないというデメリットはあるが、それ以上に頭脳が優秀だからこそ配属されたのだろう。

 

「そしてもう1つ。この学校は希望の進路を100%保証する、それが志望動機の人も少なからずいると思います。けど、望んだ就職、進学が叶う恩恵はA(・)ク(・)ラ(・)ス(・)で(・)卒(・)業(・)し(・)た(・)人(・)に(・)し(・)か(・)与(・)え(・)ら(・)れ(・)ま(・)せ(・)ん(・)」

 

 その説明に、クラス全体がどよめく。

 

(⋯いやマジか)

 

 ここまで学校側は隠し事はあっても、嘘は無かった。いや、今の話もAクラスに限定すれば事実ではあるのだけれども⋯

 

(でも、学年全体じゃなくてクラス単位、しかも1番上のクラスだけって⋯普通に詐欺では?)

 

「以上が、Sシステムで皆に話してなかった部分よ。それじゃあ次に、この前の小テストの結果を貼るわね」

 

 そう言って黒板にクラスのテストの点数が張り出される。

 最高点は一之瀬の95点で、次いで僕と神崎が90点、他の人達も、ほとんどが70点以上は取れており、平均点は80点だった。

 

「今回は該当者はいないけど、もしこれが中間テストや期末テストで40点以下の人がいたら、その人は退学になってたわ」

 

 突然の発言に再び教室がどよめく。

 

「た、退学って⋯」

 

「この学校では、一度でも赤点を取った生徒は退学になるの。でもさっきも話したけど、少なくともこのクラスは入学時点で学校側に上位の評価を貰っているし、勉強すれば大丈夫だと思うわ」

 

 そう言われても、簡単に落ち着けるわけがない。ただ、同時に納得もした。

 

(上の学年の人数が少なかった事に少し納得出来た。まあ、それにしたって多すぎる)

 

「それから、3週間後には中間テストがあります。だから退学にならないように頑張って勉強してね。皆が赤点取らずに乗り切ってくれるって、私は確信してるから」

 

 そこまで言って、彼女は手を叩く。

 

「はい!以上で説明は終わりよ。なにか質問があったら何でも聞いて」

 

 質問が無いか聞かれたので、手を挙げる。まだ、あの時の疑問、以前会長に聞いた事についての答えが分かっていない。

 

「じゃあ水無瀬くん」

 

「他のクラスに移籍する方法はありますか」

 

 その質問を聞いて、彼女の言葉が一瞬詰まる。

 

「⋯ええ。2000万プライベートポイントを支払う事で、クラス移籍の権利を買うことが出来るわ」

 

「なるほど⋯分かりました」

 

 2000万プライベートポイント。現状到底集められる気はしないが、3年が最低でも2人移動しているのを考えると決して集められないポイント、という訳では無いのだろう。

 加えて、プライベートポイントの使い道がかなり広い事も分かった。入学の時に買えないものは無い、とは言っていたが想像以上に買える範囲は広いらしい。これなら欠席や遅刻なんかもポイントで補填出来るのだろう。

 

「じゃあ、他に質問は⋯」

 

「あ、先生」

 

 一之瀬が手を挙げる。

 

「テストで赤点を取った時の様に、退学が決まった人を助ける方法はありますか?」

 

「2000万プライベートポイント、そして300クラスポイントを使えば、退学が決まった生徒も助ける事が出来るわ」

 

 退学の取り消しには、移籍と同じポイントだけでなくクラスポイントまで必要になる様だ。正直かなり厳しいと言える。

 

「他に質問は無いかしら?じゃあ、今日は説明もあってホームルームの時間は長く取られてるから、残りは自由に過ごしてね。でも、あまり煩くしないようにね」

 

 そう言って先生が教室を出ていった。

 

 

 

 ここから、本当の実力主義の学校が始まる。





 ちなみにAクラスが原作よりポイント多いのは坂柳が初日時点でクラスの人間に可能性として提示したから
 坂柳がわざわざクラスの為に動くような事をした理由については⋯そのうち分かるかもしれない
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