小説を書きつつ原作を追ってたけど、2000万ポイントの移籍って主人公達の学年が初めてだったんか⋯
一之瀬と話した翌日の昼休み、およそ1月ぶりの話し合いの集まりだ。5人が机を付け、昼食を食べつつ向かい合う。
「それで、裏技が間違いないとして、どうやって探すんだ?」
切り出したのは神崎だ。その点に関しては自分もよく分かっていないので正直に話す。
「そこなんだよなぁ⋯流石にあてもなく探す訳にいかないし。というか、そもそもテストでどうやったら100%赤点回避出来るかって言うのが」
「そうだなぁ⋯真っ先に浮かぶのは、教科書の練習問題がそのまま出るとか?」
一之瀬が出した案はよくある話ではあるし、可能性としては最も高いとは思うが⋯
「それで100%回避出来るかって聞かれると微妙だと思う。教科書の練習問題って、そこそこ量あるし、5教科分覚えられるかって言われたら無理じゃない?」
「まあそうだよねぇ⋯」
僕の言葉に一之瀬も納得して引き下がる。すると、今度は網倉が案を出してきた。
「じゃあ、いっそテストの用紙を事前に貰うとか?」
「出来るわけないだろ」
とんでもない提案に神崎が即却下する。が、網倉は中々諦めない。
「そ、そこはほら、こっそり職員室に潜入して⋯」
「バレた瞬間退学だぞ」
「監視カメラもあるし、絶対バレると思うな⋯」
と神崎だけでなく一之瀬からも否定的な意見が出て流石に諦めた。とはいえ、発想としては悪くないと思った。
「でも、テストと同じような感じで1枚に纏まってるっていうのはあると思うんだよなぁ。それなら誰でも赤点回避出来るくらいには覚えられそうだし⋯」
「確かにそうだが⋯」
「あ」
一之瀬が何か閃いたらしい。
「プライベートポイントで買うっていうのは?前に敷地内でプライベートポイントで買えないものは無いって言ってたし、実際退学回避とかクラス移籍にも使えるくらいだから、出来るんじゃないかな?」
「なるほどな⋯確かにそれなら可能かもしれない。問題はどれだけのポイントが必要になるかだが⋯」
一之瀬の考えはかなり正しそうに感じた。ただ、退学回避が2000万という前提で考えると⋯
「安く見積もって100万⋯とかそんくらいかな?」
「げ、たっか」
「全員の退学が確定で防げるって考えればこれくらいはかかると思うけど」
「あ、あの⋯⋯今って、帆波ちゃんに集まってるポイントって幾らぐらい、なの?」
白波さんが一之瀬にクラス貯金の残高を聞いてきた。
「えっと⋯だいたい300万ポイントはあるけど」
「おお!いけそうじゃん」
そういう網倉だが、色々と勘違いしている。
「いや、僕が言ったポイントって1教科分で100万くらいって話。全教科じゃないからね」
そう言うと網倉がピタッと停止した。
「⋯マジ?」
「残念ながらマジ。というか、テストの問題なんて普通買えるもんじゃないし100万で買えたらラッキーだと思ってる」
ちなみに一之瀬のクラス貯金を計算してみたが、
(3.5(今月分)+(5.0)先月分)×10000×40=340万ちょいってところだ。全教科買うには1教科68万ポイントで買わなければいけないがまず無理だろう。
「まああくまで予想だし、後で先生に確認してみたら?まあ買えたとしても高すぎて素直に勉強した方がいいとは思うけど⋯」
「⋯だねぇ」
ちなみに帰りのホームルームで星之宮先生に確認したら、1教科200万ポイントと言われたので諦めた。なんなら先生もいきなりそんな事を言われるとは思わなかったようで、
「いやー、中間テストの問題を買いたいなんて、先生に言ってくるなんて思わなかったよー」
と言われてしまった。
それからも毎日放課後には毎日勉強会を開いていたが、ある日突然こんな事を聞かれた。
「ねぇ、テスト範囲とは関係ないんだけどさ、この前の小テストの最後の方の問題、どうやって解いたか教えてくれない?」
それ自体は一之瀬達とも協力し、全員が出来なかった最後の1問以外は教えたのだが⋯
(改めて考えると、あれおかしいよなぁ)
試験範囲が変わった後の範囲でもまだ習わなかった問題。翌日の昼に一之瀬達と調べてみたら、最後の3問に関しては2,3年で学ぶ範囲の問題だった。
「なんで2,3年の問題なんて出てきたんだろう?」
「後で特別説明も無かったから、問題が入った事自体、学校側の不手際って訳でもないみたいだしね」
まあこの学校の信用は消え去ってるので、謝りたくなくてあえて何も言ってない可能性すら考えられてしまうのがどうしようも無いが。
「最初のテストは毎年恒例で、1年生の学力を測るためにわざと2,3年生の範囲の問題を出してたとか?」
「うーん⋯」
一之瀬の言葉に何か引っかかる。テスト、毎年恒例、ポイントで購入⋯
「あ」
「水無瀬くん?」
今までの話し合いで可能性として出てきたテストをポイントで購入するという考え。そこに一之瀬が言った毎年恒例という言葉⋯もしこれが毎年何かしら2,3年の範囲から問題がランダムに選出されるんじゃなく、
(問題は、誰に聞きに行くかだけど⋯)
正直、上級生で知り合いの人間はいない。いや、厳密には1人だけいるのだが⋯
(⋯でも、答え合わせには1番適任ではあるんだよなぁ⋯)
生徒会に所属している、というだけでも間違いなく1番正解には近づけるだろう。
「⋯一之瀬、今日の勉強会だけど、ちょっと行く場所出来たから遅れて参加する事にするよ」
「え⋯?うん、分かったけど⋯行く場所って?」
「それはまた今度説明するよ」
そう言った後、午後の授業の予鈴が鳴ったので教室に戻った。
午後の授業が終わった後、覚悟を決めて生徒会室に向かう。生徒会室の扉の前に立ち2回ノックをすると、以前にも聞いた声が返ってくる。
「入れ」
「⋯失礼します」
生徒会室に入ると、真ん中の机に堀北生徒会長が某新世紀な司令ポーズをして座っていた。
「⋯今日は誰かが来る予定は無かったはず。生徒会に入りたいのなら、事前に教師から連絡をしてもらうのが筋だが⋯それとも、俺に用があるのか?」
「はい。先輩が1年生だった時の最初の中間テストをポイントで買うことは出来ますか?」
「⋯ふむ」
そう言うと会長は手元にあったタブレットを操作し、1つの画面を開いてこちらに見せてくる。遠目から見た限りでも、それがテストの答案だと分かる。
「ここに当時俺が解いた中間テストのPDFがある。お前が必要なら、4月の小テストとまとめて3万プライベートポイントで売ってやろう」
「分かりました」
僕が即答すると、意外だったのか会長が少し目を開き、それを誤魔化すようにメガネを上げる。
「⋯悩まないんだな」
「先輩がPDFを
2年前の問題なんて、普通すぐに用意出来るわけがない。というか残してるわけがない。ついでに言えば、関係の無い物だったなら、僕からの問いに疑問を返してくるはずだ。
僕の言葉に会長はフッと笑った。
「なるほどな」
それから、会長にプライベートポイントを渡す為に連絡先を交換し、取引を成立させた。
(⋯まさか生徒会長と連絡先交換なんてする事になるとは)
部活動紹介の時に一之瀬が生徒会に入ろうとしていたし、彼女に取引させた方が良かったかもしれない。
「じゃあ、僕はこれで」
「いや、少し待て」
取引も終わったので退室しようとすると、会長が引き止めてきた。
「⋯何ですか?」
「水無瀬、生徒会に入らないか?」
突然の話に困惑する。
「なぜ僕に?うちのクラスなら、一之瀬が入ろうとしてましたしそれで十分では⋯」
「たしかに一之瀬帆波は生徒会に入ろうと来たが、面接の結果あいつは入るべきではないと判断した」
「⋯え?」
一之瀬落ちたの?少なくとも僕より適任なはずだが。なんで一之瀬を落として僕を入れようとするのか全くわからない。
「なら尚更分かりません。少なくとも彼女の方が生徒会には向いていると思いますが」
「⋯4月にあのタイミングであの質問が出来るだけでも、十分に頭は回るのだろう。今日の時点で俺に話をしてきた事もそれを裏付けている」
「それについてはクラスの人達とも相談した結果であって、僕1人で気付いた訳では無いので」
これは事実だ。僕1人で気付いた事などそこまで多くはない。結局違和感を感じても、答えまで1人で辿り着けない程度ではたかが知れているだろう。
「⋯そうか。お前の話は分かった。だが、もし気が変わったら何時でも言うといい」
どうやら僕の言葉を聞いても会長の考えは変わっていないらしい。
「⋯分かりました。それじゃあ今度こそ失礼します」
そう言って今度こそ生徒会室から出た。
「⋯そういえば今更だけど、先生から買おうとした時の言葉もちょっとしたヒントだったのかな」
たしか⋯『先生に言ってくるなんて思わなかった』。これも、学校側の想定している生徒同士の取引では無かったから、
(⋯それと)
会長は言っていた。『今日の時点で俺に話をしてきた』と。つまり、まだ何かしら学校側から中間テストに関してのアクションがあるらしい。
(まあ会長から問題を貰えた時点で問題は無いけど⋯どう使うべきかな、これ)
今後の扱いを考えながら、クラスの勉強会に戻るのだった。
次回で中間テストは終わるけど、その後の事件の知識が不足してるので読んできます⋯