ポケモンと嫁と地方の果て   作:南方

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第一話:ヨシノシティ

 一応俺は、ポケモンことポケットモンスターのゲームは結構やってきている……と思う。

 小学生の時に買った金銀が最初で、友達からもらった緑版をやり、そこからサファイア、プラチナ、ソウルシルバーぐらいまではやった。

 流石にホワイトとかブラックは手を出してはいなかったが、受験が終わればやろうかなぁ、なんて考えていたのは懐かしい思い出。

 

 ――そう、もう思い出なんだよ。

 

 何がどうなってるのかよく分からないが、ここはポケモンの世界っぽい。てかポケモンの世界だ。ゲームじゃなくてリアル。

 今の生活が始まって、既に四か月が経っている。俺もだいぶこの生活にも慣れてきた。

 まず俺が住んでいるのはヨシノシティ。つまり金銀版とかHGSSの物語に出てくる、ジョウトの小さな町である。

 そんな俺は現在十歳。義務教育の真っ最中。

 といってもこの世界の義務教育はすごい。五歳ぐらいから既に簡単な漢字などを覚えさせたり、簡単な計算をさせるみたいで。

 小学校教育は十歳で終わらせる仕様のようだ。まあこれはアニメでもサトシが旅立つときが十歳だったので知っていたが、いくら何でも勉強させるの早すぎやしないか?

 ……まあ、そこはいいんだ。次に行こう。俺としても、さっさと義務教育終わるのは嫌じゃないし。

 そこからは勉強の道――つまり中学――に進んで安定職に就くか、トレーナーとなって旅に出るかの選択となってくる。親に聞くと、普通は中学に行くってのこと。まあトレーナーとして大成するのも結構過酷な道らしいから、当然と言えば当然か。

 しかし俺の記憶が定着する前の『自分』は、旅に出ると言って仕方がなかったらしい。そのための条件として、小学校卒業試験でトップの成績を取れば出してもいい、と親が打ち出したらしい。

 まあ小さな町といっても、頭のいいやつはチラホラいる。いくら頑張っても一位なんて無理だと思ってたんだろう。

 

「……これが取れちゃったんだよなぁ」

 

 現在、俺はちょっとした森を超えたところにある、海の見える浜辺を歩いている。

 多分、ゲームだったら『なみのり』を使わないと来られない場所だろう。しかし現実として陸続きなので木々をすり抜ければ行ける。

 勉強はやっていなかったが、小学校レベルが出来ないわけではない。元々日本がベースとなっているこの世界なので、文字などは普通に読めた。数字も読める。英語はまだない。

 つまり俺は勝ち組だった!

 

「よっと……」

 

 いつもの獣道を通って、一か所だけ芝生が生い茂っている場所へとたどり着く。ここは俺がこの世界に来て、初めて見つけた絶景スポットだ。

 前の体の時は、よくバイクで海や山に行って風景を撮ったり、なんてことはよくやっていた。

 一種の趣味みたいなもんだ。綺麗な景色を見て回る、これが俺の生きがい。

 

 閑話休題。

 

 樹林に囲まれた芝生。そこから見える海がまさに絶景と言わざるを得ない。

 だがそこには、いつもの先約が既にその腰を下ろし、海を眺めていた。

 

「よぉ、また会ったな」

「ブイブイ! ブ~イ!」

「ははっ、相変わらず元気だな」

 

 俺より先に海を眺めていた俺を待っていたのは、しんかポケモンことイーブイ。

 元々生息地不明、というのは定期的に出現する場所がないだけで、実際に居ないということではない。

 このイーブイもその一例である。

 彼らは、決まった居場所を作らず場所を転々として生活している。

 しかもなかなか人の押し入らない森の中を移り住んでいるのだから、そりゃあ生息地が分からないと言ってもおかしくはないだろう。

 ここにいるイーブイは、俺がこの浜辺を発見して一か月後ぐらいにやってきたポケモンだ。

 最初は俺を怖がっていた様子だったが、別に俺は何もしやしなかった――――なんていうのは嘘で。

 実はここまでくる途中に見つけていたきのみをイーブイにあげたりしていた。いや、本当はよくないんだけど。

 結果として、意外と早く懐いてくれたので僥倖いったところか。

 ……いや、本当によくないんだけどね。二回言うけどさ。

 でもやっぱ、傍に寄っても拒否られなくなったのは、素直に嬉しい。

 最近はイーブイの方がきのみとかを俺にくれるようになったしな。ちなみにオレンの実とモモンの実は結構旨い。

 

「やっぱりこの景色はすごいよなぁ……」

「ブ~イ……」

 

 海上にちらほらと岩山が聳え、そこを岩波が穏やかながらも打ち付ける。

 そしてその先には悠然と聳える太陽が、海一面を朱色へ染め上げていた。

 花と海ぐらいしかないこの町では、こういった自然を楽しむぐらいしかやることがなかった。

 十歳までは自分でモンスターボールを買うこと。また捕まえて使役することは違法であるのでポケモンを使う様々なことが出来なかったのだ。

 パソコンはあったが、色々規制がついていて殆どのサイトが見れなかったし。

 

「まあ、別にいいんだけど」

「ブイ?」

 

 突然呟いた俺の独り言に、イーブイは可愛らしく顔を傾げてこちらを見上げる。

 ボールなんかなくても、俺に寄って来てくれるポケモンはいるもんだ。あと、自然を楽しむのも嫌いじゃないっていうか、普通に好きな方だし。

 ああ、学校でもポケモンに懐かれたりしてた奴がやっぱり居たな。ここいらに多く生息するコラッタ、ポッポ、ホーホー。女子には受けが悪いがビードル、キャタピーなどを学校に連れてきて遊んだり、時にはバトルなんていうこともしていた。

 モンスターボールを使うことが違法であって、自然とすり寄ってくるポケモンと戯れることは犯罪ではない。

 まあ、それはそれでいいんだけど。

 さぁてと。

 

 

 ――――今からちょっと、真面目タイムといきますか。

 

 

「さて、イーブイ。少しお前に頼みたいことがあるんだ」

「……」

 

 途端に声色の変わった俺の発言に、イーブイは無言で俺の瞳を覗き始める。

 コイツ、本当にいいやつだよ。同じイーブイなら間違いなく惚れてる。まあ人間だから可愛いと感じるしかないけど。

 

「俺は昨日十歳になった。そんで、あと一週間で実は卒業式なんだ。実はさ、俺卒業式が終わったら、この街を離れて旅をしようかなぁなんて思ってんだ」

 

 俺の言葉に、ピクピクと大きな耳を動かして話を聞くイーブイ。

 かーわーいーいー! なんて感想は、今は胸に留めておいて話を続ける。

 

「大体旅に出る場合、誰かしろからポケモンを貰ったり、親に手伝ってもらってポケモンを捕まえたりして、ソイツと一緒に旅をするっていうもんだが――」

 

 そういって俺は、ズボンのポケットから小さな円形状のものを取り出した。

 今日買ってきた、上が赤、下が白の見慣れた道具――モンスターボール。

 

「――俺はお前と旅がしたいと思う」

「……」

 

 これじゃまるで、女の子に告ってるみたいじゃないか!

 はずかしー! でも今更やめられない空気だもんね! このまま行かせてもらう!

 

「お前と会って二か月――いや、三か月に近いかな。最初はギクシャクしてたけど、最近じゃお前といる一日が、俺の日常だと思っているよ」

「ブイ! ブイ!」

 

 俺の言葉に同意するようにイーブイが首を縦に振った。

 これはかなり嬉しい。

 ていうかやっぱりモフモフしたいよ! かぁいいよぉ! そんなつぶらな瞳で俺を見ないでぇ!

 しかしシリアス的な空気は変えたりしない。ここは俺のターニングポイント。ミスれば今後が飯マズな事態になると思うしな。

 

「俺はあと一週間としない内に旅に出る。そしてこの地方の――いや、世界の美しい景色を自分の瞳に焼き付けるんだ」

「ブ~イ……!」

 

 え、すごーい! みたいな感じでイーブイはかわいい鳴き声を放った。

 いや、お前を誘ってるんだけどな。言わないと分かんないかなぁ。

 

「……俺と一緒に世界を歩こうぜ、イーブイ。決して楽じゃないはずだけど、決して後悔はさせないと誓う」

 

 は、はずかしー! なんだコレ! なんだよコレは! 彼女作るより恥ずかしい!

 もう顔真っ赤だと思うよ! いや、何ポケモンにマジになって俺と付いてきてくれって……もうプロポーズだよ! どう考えてもプロポーズでイーブイはお嫁さんだよ!

 何なの!? この世界のトレーナーさんはポケモンに告っちゃってたりするの!? しないよねぇ!? ふつうは「行くぞ!」「ぴっぴかちゅう!」みたいなもんだよな!? そんな軽いやりとりだよな……。

 と、とりあえず落ち着こう。別にイーブイを馬鹿にしているわけじゃないんだから。気にする必要はない……はず。

 そんでなんか勢いで捲くし立てたけど、変な部分無かったかな。誰か俺に教えてくれぇ!

 

 ――なんて思考をしていた俺は、ここでやっとイーブイが俺の服の袖を引っ張ってきていることに気付いた。

 

 俺が気が付いたのを確認すると、イーブイは何やら決心した様子で森の中に走っていく。

 ……もしかして、付いてこいってことですか?

 てかどこ行くんですか? 森で何するんですか?

 そんなことを考えながら、数メートル進んで振り返って俺を待っているイーブイの後を追った。

 

 

 

 




そんなわけで第二話でした。
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