「志村、うちは、日向の三人か……さすが扉間様、実に見事な構成ですな」
ヒルゼンが手元の書類を見つめながら深く感心したように頷く。
「志村は火影の側近として里の闇と実務を支える骨。うちはは洞察と火遁で戦場を圧倒する至高の刃。日向はあらゆる死角を無効化し、接近戦を制する絶対の盾。この里の重鎮一族から選りすぐることで、政治的・軍事的に完璧なバランスの小隊が完成する」
「うむ。それに……うちはと日向を同じ班に置くことの意味は大きい」
扉間は冷徹な眼差しで茶碗を揺らした。
「三大瞳術を誇る両一族は、その歴史ゆえに互いを強く意識するライバル同士。これまで配慮から同じ班に組ませることは避けてこられたが……いつまでもそんな前例に縛られていては両家の真の融和など訪れん。次代を担う子供の世代から同じ班で背中を預け合わせることで、意図的に両一族の距離を縮める」
「なるほど……。本来なら両一族から反発が出かねん禁手ですが、担当上忍が扉間様であれば、うちはも日向も文句を言うどころか『二代目火影直々に自一族の若手が鍛えられる』と歓迎すらするでしょうな」
ダンゾウも納得したように深く息を吐く。
「一族同士の牽制と融和、そして里の結束を示す象徴……。ソウマはその二人の間で連携の軸となる役割ということですな」
こうして、三人の思惑が一致した「第七班」が結成されたのだった。
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そして現在――演習場。
「……っ! なんなの……このプレッシャーは……!」
うちはキキョウは額に大量の汗を浮かべ、荒い息を吐いていた。
隣に立つ日向トキマも、その瞳の周りに筋を浮かび上がらせ、『白眼』を発動させた状態で構えているものの、膝がかすかに震えている。
そして志村ソウマもまた、クナイを握りしめたまま、目の前に立つ老人に全神経を集中させていた。
「どうした。里の誇る一族の子たちよ、動けないなどと言うわけではあるまい?」
腕を組み、微動だにせず佇む千手扉間。
その体躯から漏れ出るのは、数多の死線を潜り抜け、戦国時代を生き抜いてきた木の葉里の祖、その凄まじい威圧感――チャクラの圧力そのものであった。
「いいか。ワシの前で一族の面子などどうでもよい。ワシが欲しいのは『戦える忍』だけだ。――というわけで、まずは挨拶代わりの演習といくぞ。日没までにお前たちが、ワシの体のどこでもよい、一発でも体術か忍術を当てられたら、下忍として認めてやる」
「一撃って……相手は二代目火影様だぞ!? 僕らじゃ……!」
トキマが叫ぶと同時に、トキマが白眼の視界で異変を察知――しようとした、その瞬間だった。
(なッ――!?)
一歩の踏み込み。ただの「素の脚力と身体能力」による異次元の踏み込み。
音もなく背後を取られたトキマは、白眼で視界に捉えているにもかかわらず、体が反応する前に首筋へ手刀を叩き込まれていた。
「ぐはっ……!?」
「白眼で見えていても、体に伝達する速度が遅い。……個で挑んでどうする。死んだぞ、日向トキマ」
「トキマ! 『火遁・鳳仙花の術』!!」
焦ったキキョウが咄嗟に複数の炎を吐き出し、扉間の動きを目で追おうとする。
アカデミー屈指の動体視力を誇るキキョウだったが、まだ写輪眼を開眼していない素の目では、扉間の洗練された身こなしを捉えきれない。扉間は炎の隙間を容易くすり抜けると、キキョウの視界から完全に消失した。
「甘い。まだ写輪眼すら開いておらん目では、ワシの動きは捉えられん。単独で突っ込むなど愚の骨頂」
「きゃッ……!?」
背後から脚を払われ、キキョウがあっけなく草地へと転がる。
(速すぎる……! 個人の力じゃ絶対に無理だ……!)
ソウマの額を冷や汗が伝う。忍界最速と謳われる扉間の真価が、圧倒的な身体能力と基本スペックの高さから来ているのだと痛感させられた。
「どうした、ソウマ。お前も単独で立ち尽くすだけか?」
「……三人でやるぞ! トキマ、キキョウ!」
ソウマの呼びかけに、倒れていた二人が即座に体勢を立て直す。単独では手も足も出ないと思い知らされた二人は、ソウマの合図で息を合わせた。
「『風遁・風切の術』!」
ソウマが手刀から放った鋭い風の刃に対し、扉間は首をわずかに傾けてかわす。
「ふむ、風遁のキレは父親譲り――」
「そこだ! 『火遁・鳳仙花の術』!」
風の刃の軌道を追うように、キキョウが炎を重ねて攻撃範囲を強引に広げる。風遁で煽られた炎が扉間の視界と退路を奪う。
「『八卦・空掌』!」
さらに炎の死角から、トキマが扉間へ向けてチャクラの掌打を放つ。
アカデミーで常に競い合ってきた三人はお互いの手の内も分かっている、それを間髪入れずに叩き込んだ、完璧な連携。
「ほう……悪くない」
だが扉間はその完璧な連携すら、軽く放った水遁と踏み込みひとつで炎をかき消し、空掌の隙間をすり抜け、一瞬でソウマの至近距離へと肉薄した。
(水が無いところでこのレベルの水遁を!――速い! だけど……二人のおかげで軌道が見える!!)
二人と連携したことで生まれたコンマ数秒の猶予。扉間が二人の攻撃を避けて接近してくる軌道が制限されていたため、そこに事前に攻撃を置くソウマ。
(見えた……ここに来る!!)
ソウマは反射的に身体を極限まで捻り、出された掌打をすんでのところで紙一重で回避。同時に、残された感覚だけを信じて右拳を全力で振り抜いた。
ガキィンッ!
「ぐあっ……!?」
ソウマの拳は扉間に届くことすらなく、扉間の左腕によって軽々と受け止められていた。寸分の隙もないガード。一撃を入れるなど、ハナから不可能な圧倒的実力差だった。
「……甘いな。だが」
扉間はソウマの拳を掴んでいた手を解き、ゆっくりと距離を取った。
「……個々の力では逆立ちしても届かん相手だと察し、即座に己の一族のプライドを捨てて連携へと切り替えた判断力。そして仲間の作った僅かな隙を逃さず、死角からの攻撃を避けて反撃へと繋げたその覚悟……悪くない」
「……ハァ、ハァ……一発どころか……カスりもしなかったですけどね……」
ソウマが膝に手をつき、肩で息をしながら苦笑いする。
ほんの一瞬戦闘しただけなのに扉間のプレッシャーと極度の集中を行っていたためすぐに疲労が体を襲った。
キキョウとトキマも、同じようにして光景を見つめていた。一撃を入れることこそ叶わなかったが、三人で力を合わせたからこそ、あの二代目火影に「攻撃の形」を作らせるところまで食い下がれたのだ。
「フン、お前たちが個の力に固執して散るようなら、叩き落としてアカデミーへ送り返すつもりであったが……前言撤回だ。全員、合格とする」
「明日から地獄の特訓だ。覚悟しておけ」
扉間の容赦のない一言とともに、その圧倒的な存在感がふっと薄れる。
緊張の糸がプツリと切れた三人は、示し合わせたかのようにその場へドサリと倒れ込んだ。
「ハァ……ハァ……死ぬかと思ったわよ、ホントに……」
キキョウが仰向けに倒れたまま、夕焼けに染まり始めた空を見上げて呟く。アカデミーでは常に天才と持て囃されてきた彼女の顔には、かつてない疲労と、それ以上の敗北感が滲んでいた。
「……ああ。白眼をもってしても動きの予兆すら追えなかった。伝説の二代目火影様……文字通り桁違いだ」
トキマもまた、瞳の周囲の筋を解き、荒い息を吐きながら天を仰ぐ。だが、その言葉とは裏腹に、二人の視線は自然と体を起こしたソウマへと向けられていた。
「けど……ソウマ、アンタよくあの土壇場で声を張ってくれたわね」
「……正直、必死だっただけだよ。二人が合わせてくれなきゃ、俺たち一瞬で全員沈んでた」
ソウマは自分の右拳を見つめながら、ぽつりと答えた。
受け止められた右拳に残る鈍い痺れ。扉間の圧倒的な強さを肌で知った恐怖と同時に、三人で力を合わせれば「チーム」として戦っていけるかもしれないという、確かな手応えが胸の奥で熱く燻っていた。
「……悔しいけど、アンタが声をかけてくれなきゃ、アタシたちは意地を張り合って自滅してたわ」
キキョウが不愛想にそっぽを向きながらも、どこか認めたような口調で呟く。トキマも静かに頷いた。
「うちはと日向……意地を張って個で挑もうとした僕たちの甘さを、ソウマが繋いでくれた。……感謝する」
「……よし、決まりね」
キキョウが勢いよく立ち上がり、着物の汚れをバシバシと払った。その瞳には、敗北の陰りはすでに無く、強靭な意地と闘志が宿っている。
「二代目様に一発叩き込めるくらい強くなるまで、アタシは絶対諦めないわよ。……よろしくね、ソウマ、トキマ」
「ふ……望むところだ。日向の名に恥じぬよう、鍛え直させてもらう」
互いを強く意識し合っていたうちはと日向の二人が、ソウマを介して初めて同じ視線で向き合った瞬間だった。
沈みゆく夕日が演習場を赤く染め上げる中、第七班の三人は、これから始まる過酷な日々に向けて静かに、しかし固い決意を交わし合うのだった。
扉間班の三人はこの世代のトップスリーという感じですね
志村ソウマ
・体術、手裏剣術、クナイ等全部できる
・風遁、火遁はちゃんと使える、相性補完の土遁はまだまだ練習中
・今すぐ中忍試験でても本戦のタイマンでやりあえるレべル
うちはキキョウ
・うちは一族当主(この時代はフガクの父)の娘でフガクの姉に当たる
・戦場に出てもないので写輪眼は使えません
・うちはなので美人
日向トキマ
・日向の分家の一つの跡継ぎ、日向は結構数がいる印象(うちはも本来は結構いるけど)なのでヒアシ&ヒザシ兄弟とはまたちょっと離れた親戚って感じですかね、アンコと行動してたトクマの兄という設定だがトクマは別に出てきません