第二次忍界大戦の終結から数週間。木ノ葉隠れの里は、かつての緊迫した戦時中が嘘のように、穏やかで活気ある日常を取り戻していた。
第三演習場。
朝もやがうっすらと残る広大な敷地の中で、風を切り裂くような鋭い音が響き渡っていた。
フッ
音もなく空間が揺らめき、木々の間に志村ソウマの姿が現れる。
そのすぐ隣を追うように、眩い金髪を揺らした波風ミナトが、同じように姿を現した。
「ハァ……流石ですね、ソウマさん。直線的な速度なら僕も負けないつもりですけど、空間移動の予測とフェイントのバリエーションは、やっぱりソウマさんの方が一枚上手です」
ミナトは額の汗を拭いながら、爽やかな笑顔を浮かべて言った。
15歳にしてすでに「中忍」として里の任務をこなすミナトは、前線でもその機動力を遺憾なく発揮し、次世代のホープとして確固たる地位を築いていた。そして、ソウマにとっては最も気心の知れた、そして『飛雷神の術』を分かち合う数少ない同志である。
「いや、ミナトの純粋な動体視力とチャクラの収束スピードは化け物級だろ。俺なんて、お前の年齢の頃はあんな綺麗に跳べなかったっての」
ソウマが苦笑しながら肩を叩く。
「ふん、相変わらず身内の褒め合いか。だが、おしゃべりはそこまでにしておけ」
低く、しかし圧倒的な威圧感を持つ声が演習場に響いた。
声の主――それは、二代目火影・千手扉間であった。青い甲冑に身を包んだ扉間は、腕を組みながら二人の様子を静かに見据えていた。
「先生!」
「二代目様!」
二人が姿勢を正すと、扉間はわずかに顎を引いた。
「お前たちの『飛雷神の術』の習熟度を見る限り、基礎は完全に体に染み込んでいるようだな。だが、時空間忍術というものは、ただ空間を跳ぶだけでは二流だ。いかに敵の死角を突き、いかに他の術とコンビネーションさせるか……それが生死を分ける」
扉間は指針を示すように言葉を続ける。
「例えば、複数のマーキングを同時に認識した際の時間差を消去する感覚、あるいは敵が放った忍術そのものを術ごと別の空間へ転移させる『飛雷神導雷』の応用だ。……ソウマの『二の段』や、ミナトの空間把握力なら、十分にものにできるはずだ」
「「はっ!」」
二人の力強い返事を聞き、扉間は満足そうに頷いた。
「ワシが考案した術を、これほど高いレベルで受け継ぐ者が二人も現れた。……未来の木ノ葉は安泰だな」
そこへ、演習場の入口から可愛らしい足音が近づいてきた。
「兄さん! ミナト! 休憩にしてよ、冷たいもの持ってきたから!二代目様もいかがですか?」
声をかけてきたのは、15歳となり中忍ベストをまとった妹のカエデだった。その隣には、鮮やかな赤髪を揺らすうずまきクシナの姿もある。
カエデの両手には、里の甘味処から差し入れられたばかりの冷たいアイスクリームとお茶が包まれていた。
「おっ、助かる! ちょうど喉が渇いてたんだ」
ソウマが駆け寄り、アイスを受け取る。ミナトもクシナからお茶を受け取り、柔らかく微笑んだ。
扉間も
「いただこう」
お茶を飲み始めた
「お疲れ様、ミナト。相変わらず二代目様の厳しい特訓つき合わされて大変ね」
クシナが愛おしそうにミナトの額の汗をハンカチで拭うと、ミナトは少し照れくさそうに頭をかいた。
「ううん、勉強になることばかりだよ、クシナ。それに……僕、実は自来也先生と特訓して開発していた『あの新術』、ようやく完璧に完成したんだ」
「どんな術だ?」ソウマが目を輝かせる。
「うん。……ソウマさん、二代目様、良かったら見てくれますか?」
ミナトはアイスをカエデに預けると、スッと右手を前に突き出した。
印を結ぶ素振りは一切ない。
次の瞬間――ミナトの手のひらの上で、青白く輝く超高密度のチャクラが爆発的な速度で高回転を始め、一瞬にして完璧な球体へと収束し、それを演習場の木にぶつけた
ズガァァン!と木が抉れて倒れた
「ほう……!」扉間の赤眼が鋭く見開かれた。
「印を一切結ばず、純粋な『チャクラの形態変化』のみでここまでの圧縮と威力を生み出すとは……! 発生速度も破壊力も文句の付けようがない。完璧な術だ」
「す、すげえ……!!」ソウマも息をのんだ。
「チャクラの回転と収束が完璧すぎる。飛雷神で相手の死角に跳んだ瞬間にこれを叩き込まれたら、防げる忍なんてそういないぞ!」
「ありがとうございます」
ミナトはふっと術を解除し、爽やかな笑顔を浮かべた。
「で、ミナト! この術の名前は何て言うんだ?」ソウマが興味津々に尋ねる。
すると、ミナトは少し照れくさそうに苦笑いを浮かべながら、その『命名の経緯』を語り始めた。
「あはは……実は、今の名前は『螺旋丸(らせんがん)』って言うんです……クシナが付けてくれたんです」
「へぇ、『螺旋丸』か! 響きもかっこいいし、術の性質が一発で伝わる良い名前じゃないか!」ソウマが絶賛する。
「でしょー!?」クシナが誇らしげに胸を張った。
「だってね、ミナトったら最初、自来也先生と冷たいアイスを食べたりつむじの渦をヒントにしたからって……」
クシナの暴露に、ミナトが慌てて手を振る。
「わっ、クシナ! それは言わない約束じゃ……!」
「いいじゃない! 最初はさ、ミナトったら『光輪冷菓発起旋毛自来也双式ノ丸(こうりんれいかはっきつむじじらいやそうしきのまる)』なんて長くてダサい名前をドヤ顔で言い放ったんだから!!」
……。
演習場に、一瞬の静寂が訪れた。
「…………」
扉間は真顔のまま一瞬固まり、心の中で(……ふっ、普段なら激しくツボるが、二代目としての威厳がある……!)と必死に耐えた。
「な、なんだって……?」
ソウマは自分の耳を疑い、思わず腹を抱えた。
「長ッ!!? いや待てミナト! なんで術名に『冷菓(アイス)』とか『旋毛(つむじ)』とか開発時のエピソード全部詰め込んでんだよ! 完成度があれだけ高い術なのに、その名前はあまりにもあんまりだろ!」
「ええ……? 開発の想い出がぎゅっと詰まってて、僕としてはすごく良い名前だと思ったんだけどな……」
ミナトは本気で不思議そうに首をかしげている。
「ダサいし長すぎるってばね!! だからあたしが『螺旋丸』にしなさい!って一刀両断してあげたのよ!」
クシナが威風堂々と鼻を鳴らすと、カエデもクスクスと笑い転げた。
「ふっ……術の才能と命名のセンスは反比例するものらしいな」
やれやれと首を振る扉間だったが、その口元にはかすかに微笑が浮かんでいた。
ソウマがミナトとクシナを見ながら
「てかさ、ずっと気になってたけどミナトとクシナはいつからそんな仲良くなったの?なんかクシナってもっとミナトの事ライバル視してなかったか?」
ミナトとクシナが目を丸くしながら顔を赤くしてお互いを見る中、カエデが
「兄さん…なんて鈍感な男なの、戦の中で二人の距離がグッと縮まる素敵なコトがあったのよ!」
「え?ど、鈍感?てかなにそんな面白そうな事聞いてないけど」
まだ顔の赤いクシナが答えた
「え~っとですね、簡単にいうと戦の時に私が攫われちゃったんだけど、ミナトが助けにきてくれたんだってばね!」
「ほう、そんなカッコイイ事をしたのかミナト、やるな」
「い、いや僕も必死だったんですよ!かっこつけるとかそんなんないですって」
「そうだよ兄さん、あの時のミナトはすんごい形相だったんだから、早すぎて私はついていけなかったし。兄さんこそキキョウさんとなんかないの?」
「キキョウ~?あいつは攫われるようなタマじゃねえよ、目を合わせたら写輪眼で幻術食らうし、目を合わせなくても幻術に嵌める技持ってるし、縄で縛ろうが『火纏』で焼き切る奴をどうやって攫うんだよ。てか俺とトキマがいてそんな失態はありえないな、飛雷神使えるようになってから二人にはマーキングつけてるからろくに被弾もしてないぞ。
クシナが攫われたって時もどうせ自来也さんがいない時を狙われたんだろ、あの人がいてクシナが攫われるなんてありえない」
「すごい自信ですねソウマさん、まあ確かに自来也先生が居ないタイミングを狙われたんです、それに今はソウマさんと一緒でクシナの封印術に僕のマーキングを付けてあるのでいつでも駆けつけますよ!」
「九尾の封印術にお前のマーキングを入れ込んだのか?器用だなほんとに、封印術まで出来るようになってんのかミナト…俺は流石に任務に出るときだけで終わったら消してるぞ、プライバシー保護ってやつだ」
そんな飛雷神使いの男たちの会話を聞いている女子達は
「ねえねえクシナ、愛されてるねえ」
「う、うん…、でもカエデだってソウマさんのマーキング持ってるでしょ?一緒だよ」
扉間は
「(『冷菓』というのはなかなか美味いな)」
アイスを熱心に食っていた
原作では扉間とミナトは面識が無いです、ミナトはどこから飛雷神覚えたんだろうね、資料とかあったのかなヒルゼンは知ってるし