ダンゾウの息子、志村ソウマ   作:へたれん

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また時間が経過しました、まあ平和な時期なんでね


32.志村ソウマの息子、シスイ

ソウマとキョウカの縁談が決まってから、早くも二年の月日が流れていた。

 

第二次忍界大戦の停戦協定が結ばれてから、ちょうど三年。

木ノ葉隠れの里は、すっかり戦を忘れ往時の活気と賑わいを完全に完全に取り戻していた。

 

21歳になったソウマは、暗部『フウガ』としての特命任務をこなしつつ、未だに自来也不在の自来也班の面倒を見ていたが、最近はミナトが班長となってしっかりやっていたためもっぱらミナトとの飛雷神研究を主に行っていた、そして一人の夫としても志村の家を支える日々を送っていた。一年前のキョウカとの婚姻は、志村家とうちは一族の本家筋、そして里の上層部が見守る中で滞りなく執り行われ、二人は穏やかで温かい家庭を築いていた。

 

そして――。

 

「オギャアアア!! オギャアアア!!」

 

志村邸の奥にある一室から、裂けるような元気で清らかな赤ん坊の産声が響き渡った。

 

「う、生まれた……!?」

 

屋敷の廊下で、落ち着きなく右往左往していたソウマが、弾かれたように足を止めた。

いつもなら飛雷神の術で空間を縦横無尽に跳び回り、どんな暗殺者や過激派を前にしても冷静沈着を崩さない『フウガ』の面影は微塵もない。汗で前髪を額にへばりつかせ、爪を噛みそうな勢いでオロオロとしていたのだ。

 

そのすぐ傍らには、腕を組み、壁に背をあずけて座っている志村ダンゾウの姿があった。

眼光は鋭いものの、その額にはうっすらと冷や汗が浮かび、自慢の杖を握る手が微かに震えている。

 

「……ソウマ、うろたえるな。志村の男がそう易易と狼狽えるものではない」

 

「いや父上、言ってる傍から杖を握る手がガタガタ震えてますけど……!?」

 

「黙れ。ワシは至って冷静だ」

 

強がる二人のやり取りを、廊下の向こうからゆったりと助産を終えた母・ユウリが微笑ましそうに見つめていた。

 

「ふふ、二人ともそっくりですね。さあソウマお入りなさい。キョウカちゃんが待っていますよ」

 

障子が開かれ、湯気がかすかに漂う室内へソウマは吸い寄せられるように踏み込んだ。

 

部屋の奥では、汗ばんだ黒髪を額に散らしたキョウカが、薄桃色の布団に横たわっていた。18歳となり、どこか幼さの残っていた少女から凛とした美しい女性へと成長した彼女の腕には、白い布に包まれた小さな赤子が抱かれている。

 

「……ソウマさん」

 

ソウマの姿を認めたキョウカの唇から、疲れと、それを遥かに上回る愛おしさに満ちた声が漏れた。

 

「キョウカ……! 無事か……!? 体は大丈夫か!?」

 

ソウマは布団の脇にひざまずき、キョウカの冷たい手を両手で包み込んだ。

 

「ええ……無事です。元気な、とても元気な男の子ですよ。……ほら、見てあげてください」

 

キョウカが腕の中の布を少しだけ捲ってみせる。

そこには、生み落とされたばかりの真っ赤な肌をした小さな赤ん坊がいた。小さな手拳を握り締め、黒く透き通った瞳で、じっとソウマの顔を見上げている。

 

志村の血と、うちはの血。

その二つを受け継いだ命の塊。

 

「ああ……」

 

ソウマがそっと指先を差し出すと、赤ん坊はその小さな手でソウマの指をキュッと力強く握り返してきた。

その瞬間、胸の奥から温かく、そして激しい感情が込み上げてきて、ソウマの視界が思わず熱く歪んだ。

 

「すごいな……本当にお前が生んでくれたんだな、キョウカ。ありがとう……本当に、ありがとう」

 

「ふふ……ソウマさんったら、泣いているんですか? 暗部の隊長が形無しですね」

 

キョウカは悪戯っぽく微笑みながらも、その目からポロポロと涙をこぼした。

 

障子の隙間から覗き込んでいたダンゾウとユウリも、静かに部屋へ入ってきた。

ダンゾウは我が子の赤ん坊をじっと見つめ、厳格な顔を少しだけ和ませながら、深々と呟いた。

 

「……カガミの面影もあるな。良い顔だ」

 

「ねえ、ソウマさん。この子の名前……決めてくださったんですよね?」

 

キョウカに尋ねられ、ソウマは頷いた。

生まれてくる前に、二人で、そして亡きカガミの想いや志村の意志を重ねて考え抜いた名前。

 

「……『シスイ』だ」

 

ソウマは我が子を抱き上げ、静かにその名を呼んだ。

 

「志村シスイ。……濁りのない、清らかな水のようにまっすぐ育ってほしい。そして、どんな闇の中でも決して濁らぬ志を持ってほしいという願いを込めた」

 

「シスイ……止水……良い名ですね。ねえ、シスイちゃん」

 

キョウカの呼びかけに応えるように、赤ん坊――シスイは「あうっ」と小さな声を漏らし、キュッと目を細めて微笑んだのだった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

同じ頃。木ノ葉隠れの里の正面正門。

 

旅装束を纏い、背中に巨大な巻物を背負った一人の男が、数年ぶりに木ノ葉の土を踏みしめていた。

 

「ふははは! いやあ、久々の我が故郷! 妙木山のガマ仙人にして三忍の一人、自来也様の帰還だぞっと!」

 

白髪を豪快に揺らし、歌舞伎のようなポーズを決める自来也。

しかし、周囲を通る里の忍や市民たちは「なんだあれ?」と言いたげな呆れ顔で通り過ぎていく。

 

「ちぇっ、相変わらずノリの悪い里じゃのう。……しかし、変わったな」

 

自来也は煙草に火を点け、紫煙をくゆらせながら街並みを見渡した。

三年前、第二次忍界大戦の影響で活気がなかった商店街には賑やかな声が満ちている。

 

「雨の国のあの三人も、これで一人立ちできるくらいには鍛えてやったが……木ノ葉もすっかり平和を取り戻したというわけか」

 

雨の国の隠れ家で、孤児たちと過ごした三年間の修練の日々。

あの子たちが自分たちの足で歩み始めたことを見届け、自来也は約束通り里へと帰還したのだった。

 

「さて……まずは三代目に挨拶して、それからソウマや弟子どもの顔でも見に行くとするか」

 

自来也がは火影邸に向かう途中、気になるチャクラを感じて演習場に寄り道をしていた。

 

演習場に近づくにつれ、ヒュンヒュンと大気を切り裂く鋭い音と、凄まじい衝撃音が聞こえてくる。

 

「む……? なんだこのチャクラの波長は……」

 

自来也が木々の隙間から演習場を覗き込んだ瞬間、目を見開いた。

 

「そこだ、クシナ! 『二の段』からの派生!」

 

「任せてってばね!!」

 

18歳となり、すっかり凛々しい青年へと成長した波風ミナトが、特製クナイを空中に放り投げる。

同時に、飛雷神の術で一瞬にして空間を跳び、標的の背後へ出現。その手には、完成された密度のチャクラが超高速回転する光の球体――『螺旋丸』が握られていた。

 

ズガガガガガッ!!

 

標的の巨大なダミー人形が一瞬で捻じ切れるように粉砕される。

間髪いれず、同じ18歳となったうずまきクシナが、背中から数本の金色のチャクラの鎖――『金剛封鎖』を繰り出し、飛び散る破片を完璧に縛り上げて空中固定してみせた。

 

「すごいよクシナ! 鎖の速度が相当早くなったね」

 

「ふふん! ソウマさんに仕込まれた特訓の成果だってばね! ミナトの飛雷神との合わせもバッチリでしょ!」

 

さらにその横では、同じく18歳になった志村カエデが、見事な忍刀の手さばきでダミーの残骸を幾重にも切り刻んでいた。

 

「自来也先生ほんとにいつ帰ってくるのかな、まさか死んじゃうとは思えないけど」

 

三人で顔を見合わせ、爽やかに笑い合う姿。

その無駄のない動き、洗練されたチャクラコントロール、そして互いへの絶対的な信頼関係――。

 

(な……なんだあの動きは!? 飛雷神に、螺旋丸の実戦応用……それにクシナの金剛封鎖の制御、カエデも火遁と水遁の切り替えがとてもスムーズになっておる)

 

自来也は開いた口が塞がらなかった。

三年前に里を出たとき、ミナトたちはまだ十四歳の下忍・中忍の領域だったはずだ。それが今や、上忍クラス、ミナトに至っては単独で一軍を壊滅させられるレベルの超一流上忍の面構えになっている。

 

「……ん、自来也先生。陰から覗いてないで、堂々と出てきたらどうですか?」

 

ミナトがフッと微笑みながら、自来也の隠れている木を見上げた。

 

「ゲッ……感知まで完璧かよ!」

 

自来也は苦笑しながら木の上から飛び降りた。

 

「「自来也先生!!」」

 

二人がパッと目を輝かせて駆け寄ってくる。

 

「おうおう! すっかりデカくなりおってクシナとカエデは美人になったのう……三人とも元気だったか!」

 

「おかえりなさい、先生! 雨の国での修行、お疲れ様でした!」

 

ミナトが爽やかに頭を下げる。自来也はミナトの肩をガシガシと叩きながら、感嘆の声を漏らした。

 

「いやはや驚いたぞ。ワシが留守にしている間に、お前たちが見違えるほどの猛者になっておるとはな……!」

 

「へへー! 自来也先生が帰ってくるまでにびっくりさせてやろうって、みんなでずっと修行してたんだってばね!」

 

クシナが胸を張る。カエデも嬉しそうに頷いた。

 

「……でも先生、僕たちがここまで成長できたのは、何よりソウマさんのおかげです。自来也先生が留守の間、ずっと僕たちの指導を引き受けてくださって……術の開発も、実戦での飛雷神の立ち回りも、ソウマが一緒に研究してくれました」

 

ミナトの言葉に、自来也はやれやれと首を振った。

 

「ソウマの奴め……自分の『根』の仕事もあるだろうに、ワシの弟子まで完璧に育て上げおって。あいつは本当にお人好しか、それとも化け物か……」

 

「あ、自来也先生。それと……」

ミナトが不意に、真剣な眼差しで自来也を見つめた。

 

「ん? なんじゃミナト」

 

「自来也先生が帰ってきたら、ずっと頼もうと決めていたことがあります。……僕に、妙木山の『仙術』を教えてください」

 

「な……なに!?」

 

自来也は思わず素声を上げた。

 

「仙術だと!? お前、どこでその言葉を……!」

 

「ソウマさんです」ミナトはまっすぐに自来也を見返した。

「ソウマさんは二年前、猿獄山で猿の仙術を修得して帰ってきました。その成果をを僕に見せてくれたんです。『お前ならガマの仙術をものにできる』って……背中を押してくださいました」

 

(ソウマの奴、猿獄山で仙人モードを完成させただと……!? 冗談だろ……あの年齢で……!)

 

自来也の背中に冷や汗が流れた。

自身ですら、妙木山での仙術修行はいまだ完全ではなく、発動時にはフカサク・シマ両仙人のサポートと顔のカエル化を伴う。それをソウマが修得し、さらにミナトにまで継承させようとしている。

 

自来也はしばらく絶句していたが、やがてミナトの瞳に宿る澄み切った覚悟と底知れぬ才能を感じ取り、ニッと豪快に笑い飛ばした。

 

「ハハッ! 参ったな、あいつめ……余計な種を蒔いていきおって!……良かろうミナト! ガマの仙術は生半可な覚悟じゃ死ぬぞ? だが、お前がそこまで言うなら、ワシが妙木山へ連れて行ってやる!」

 

「はい! ありがとうございます、自来也先生!」

 

ミナトが嬉しそうに頭を下げたその時――。

 

「やあ、賑やかだね。自来也さん…やっと帰ってきましたね?」

 

演習場の入口から、穏やかな声が響いた。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

振り向いた全員の視線の先に立っていたのは、志村ソウマだった。

 

着流し姿のソウマは、二年前よりもどこか雰囲気が柔らかく、しかし内側には深海のような底知れぬ静寂と圧倒的なチャクラを秘めていた。

 

「ソウマ!」自来也が声を張り上げた。

「お前いつの間にやら立派な男になっておるの~!留守中にワシの弟子を勝手に特級忍者に育て上げるわ、猿獄山で仙人になるわ、やりたい放題じゃな!」

 

「はは、ミナトたちなら勝手に成長したと思いますけど、俺も里にいるときにやることがなかったのでちょうど良かったんです」

 

ソウマは苦笑しながら歩み寄ると、ミナト、クシナ、カエデ、そして自来也を見渡した。

 

「兄さんどこに行ってたの? 今日は暗部の仕事は休みって言ってたのに」

 

カエデが尋ねると、ソウマの顔が心底嬉しそうに、どこか照れくさそうに綻んだ。

 

「ああ……実はな。たった今、生まれたんだ」

 

「え……?」

 

一瞬、演習場が静まり返った。

 

「生まれたって……まさか、キョウカの……!?」

クシナが目を丸くした。

 

「ああ。元気な男の子だ。母子ともに健康だよ」

 

「「「お~!」」」

 

クシナとカエデが飛び上がって歓声をあげた。

 

「おめでとうございます、ソウマさん!!」

ミナトが心からの笑顔でソウマの手を握りしめる。

 

「な、なに!?ソウマお前結婚したのか!?ワシより先に!?お前がお父さん!?」

自来也は固まってソウマを凝視した

 

「名前は何ていうんですか、兄さん!?」

カエデが目を輝かせて身を乗り出してくる。

 

ソウマは優しく目を細め、胸を張って答えた。

 

「『シスイ』だ。志村シスイ」

 

「シスイ……すごく綺麗で、カッコいい名前ですね!」

ミナトが感心したように頷く。

 

「今日はもうここまでにして早速赤ちゃん見に行きましょうよ、キョウカにも会いたいし」

クシナがはしゃぎ、カエデも

「私は叔母さんか…いやお姉ちゃんって呼ばせる!抱っこもするんだから!」と対抗している。

 

和やかに深まる秋の空の下、若き忍たちの笑い声が演習場に満ちていた。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

その日の夕刻。

 

仕事を終えた三代目火影・猿飛ヒルゼンと志村ダンゾウ、そして帰還した自来也とソウマの四人は、火影邸の屋上に集まっていた。

 

沈みゆく夕日が、赤々と木ノ葉の里と火影岩を照らしている。

 

「そうか……シスイというのか。カガミも草葉の陰で喜んでおろうな」

ヒルゼンが煙管の煙をくゆらせながら、しみじみと呟いた。

 

「うむ。志村とうちはの架け橋となる子だ。一族の未来をあの子に託すつもりでおる」

ダンゾウも静かに酒杯を傾けながら頷く。

 

「……にしてもよ、三代目、ダンゾウのオッサン」

自来也が手すりに肘をかけ、遠くの街並みを見つめながら口を開いた。

 

「里は平和になったが……雨の国の情勢や、土の国・風の国の動きを見ていると、どうも雲行きがあやしい。この平和も、そう長くは続かんかもしれんな」

 

「……分かっておる」

ヒルゼンの目が厳しく細められた。

「第二次忍界大戦の停戦から三年。各大国は傷を癒やしつつも、裏では密かに軍備を再編しておる。特に岩隠れの動きが不穏じゃ。……次の『大戦』の足音は、確実に近づいておる」

 

「第三次、ですか……」

ソウマが静かに言葉を吐き出した。

 

二年前、猿獄山で仙術を修得し、暗部の『フウガ』として裏社会の過激派を狩り続けてきたソウマには、世界に漂う摩擦の匂いが肌で分かっていた。

 

「だが」ダンゾウがソウマの背中に視線を向けた。「ソウマが仙術を修得し、戦力は過去最高に高まっている。それにミナトやクシナ、カエデたち次世代の成長も目覚ましい。まだ幼いがサクモの息子は天才らしいぞ?親バカかもしれんがな、木ノ葉の誇る『火の意志』は、着実に次の世代へ受け継がれておる」

 

「ああ」ソウマは夕日を見つめながら、力強く頷いた。

 

我が子・シスイの、生まれたばかりのあの小さな手の温もりが、今も指先に残っている。

守るべきものが、また一つ増えた。

 

妻であるキョウカ。

生まれたばかりの息子、シスイ。

かけがえのない家族、妹のカエデ、父と母。

そして、共に時代を歩むミナト、クシナ、自来也や仲間たち。

 

「どんな時代が来ようと……俺が、この手で守り抜いて見せます。この里も、家族も、新しい命も」

 

ソウマの瞳に宿る漆黒の光には、迷いなど一切なかった。

 

風が吹き抜け、ソウマの着物の裾をなびかせる。

遠くで響く赤ん坊の健やかな産声と、未来を拓く若き忍たちの足音。

 

木ノ葉隠れの里に、新たな息吹が吹き込まれた瞬間だった。





コイツが出したかったからみたいな所はある

まあほんとに生まれた直後の赤ちゃんはこんな感じじゃないと思うけどそこは流してくれ

イベントが盛り沢山すぎる第三次忍界大戦が始まりますね、ほぼオリジナル展開だった第二次と比べたら第三次は重要イベント多すぎるからどう進めようかすんごい頭を悩ませている

カカシは今7歳ぐらいです

評価、お気に入り、しおり、感想ありがとうございます
誤字修正も感謝
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