ダンゾウの息子、志村ソウマ   作:へたれん

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この時が来た


33.落日と暗雲

シスイがこの世に生を受けてから、早くも一年と半年が過ぎていた。

 

一歳半となった志村シスイは、すでに自分の足でしっかりと大地を踏みしめて歩き回り、たどたどしくも「とーしゃん」「かーしゃん」と言葉を口にするようになっていた。黒く澄んだ大きな瞳と、意思の強そうな目元。志村の堅実さと、うちはカガミの美質を色濃く受け継いだその愛らしい姿は、志村家はもちろんのこと、交流の増えたうちは一族にまで温かな笑顔をもたらしていた。

 

ソウマは、相変わらず暗部のフウガとしての特命をこなしつつ、幼い我が子の成長を何よりの楽しみにしていた。

妻のキョウカも、母親としての慈愛と強さを身につけ、忙しいソウマを健気に支えている。

 

そして波風ミナトは、妙木山でのガマ仙術修行を終えて帰ってきてソウマ、自来也と軽く手合わせしていた

 

「うーんミナトが仙術合わなかったのは意外だな」

 

「そうだなあ、ワシより仙術チャクラを練るのは上手いんだがな」

 

「そうですね一度に少ししか練れませんし…フカサク様達と融合してもオレの戦闘スタイルとは合わないですから、実戦で使うのは難しいかもしれません」

 

「ミナトはチャクラコントロール上手すぎるからなあ、いつも必要最低限しか練らないのが癖になってたとか?

後から猿魔に聞いたんだけど俺が仙術に妙に適性があったのも理由は良くわからないらしいからな、習得も想定よりすごい早かったらしい。

でもまあ使いようだろ?一度に練る仙術チャクラが少ない分仙人モードに入るの自体は俺達の中でもダントツに早いし、落ち着いて自然エネルギーを取り込めるなら仙人モードになって最初の一撃だけでも叩き込んでやればいい、回復とか感知には断然仙人モードになったほうがいいからな」

 

「そうですね、オレなりの使い方を考えてみます」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

第二次忍界大戦の停戦から、四年半。

世界は平和に満ち、このまま穏やかな時が流れていくかのように思われた。

 

――しかし、時代の終わりは、ある静かな雨の日に突然訪れた。

 

千手一族の本邸。

広大な屋敷の一室は、重々しくも静謐な空気に包まれていた。

 

床の間に焚かれた香の煙が、雨の湿気を含んだ空気にゆらりと揺れている。

布団の上に横たわっていたのは、かつて「忍の神」と謳われた兄・柱間とともに木ノ葉隠れの里を創設し、冷徹無比な知略と幾多の禁術をもって里の基盤を築き上げた男――二代目火影・千手扉間であった。

 

老いに伴う身体の衰弱。病苦による苦悶ではなく、すべての役目を果たし終えた英雄の、静かな老衰であった。

 

枕元には、二人の男が固く拳を握り締め、頭を垂れていた。

三代目火影・猿飛ヒルゼンと、暗部『根』の長官・志村ダンゾウである。

 

「……扉間様」

 

ヒルゼンが愛用の煙管を傍らに置き、掠れた声で呼びかける。その目には溢れ出んとする涙が溜まっていた。

ダンゾウもまた、普段の冷徹な仮面を完全に剥ぎ取り、万感の想いと激しい寂痛を胸に押し殺しながら、師の顔を見つめていた。

 

扉間は薄く瞼を開いた。その瞳は濁ることなく、どこまでも深く、澄み渡っている。

 

「……ハハ、情けない顔をするな、ヒルゼン、ダンゾウ……」

 

扉間の唇から、かすかな掠れ声が漏れた。

 

「ワシが戦場を離れ、影から里を見守るようになって久しい……。ワシが去った後、お前たちが『光』と『影』となり、時に反発しながらも……この木ノ葉を良く支えてくれた。……礼を言うぞ」

 

「扉間様……! ワシらは、貴方様が遺してくださった理念と火の意志を追うことで必死でした……!」

ヒルゼンが声を詰まらせる。ダンゾウも深く息を吐き、静かに頭を下げる。

 

「ワシの創った仕組みを、お前たちが育み、里はここまで大きくなった……充分だ

まさか…ワシが戦場でなく家の布団の上で弟子達に見守れて逝けるとはな…父上が聞いたらどう思う事か」

 

扉間の視線がゆっくりと移動し、二人のすぐ後ろに控えていた青年へと向けられた。

漆黒の暗部装束の上から羽織を引っ掛け、固唾をのんで見守っていた志村ソウマへ。

 

「……ソウマ、近くへ来い」

 

「はい、扉間先生」

 

ソウマは静かに足を進め、布団の脇に膝をつくと、扉間の痩せた手をとった。冷たく、しかし確かに歴史を刻んできた温もりが残っていた。

 

扉間はソウマの顔をじっと見つめ、目元を和ませた。

 

「お前がワシの創り出した『飛雷神の術』を使えるかもしれないと分かった時のワシの喜びが如何程だったかお前には分からんだろうな、お前に集中しすぎてミナトという逸材を見逃していたのは大失態だったがあやつはワシ以上の使い手になるぞ」

 

「扉間先生……。俺に忍の何たるか、空間を穿つ術の真理、そして里を守る覚悟を叩き込んでくださったのは先生です。先生の教えがあったからこそ、俺はここまで来られました」

 

ともに扉間の下で鍛えたうちはキキョウと日向トキマも来ていた

 

「扉間先生…あなたが居なければうちははまだまだ閉鎖的だったと思います、私がどんなにつらくても頑張ってこれたのも先生のおかげです」

 

「今になって『回天』などの宗家秘伝の技を僕が覚えるように誘導されていたと気づけましたよ先生、本当にあなたは凄い人だ」

 

ソウマ達が真摯に言葉を返すと、扉間は満足そうに小さく頷いた。

 

そこへ、部屋の隅で控えていたキョウカが、抱いていた幼いシスイを連れてそっと寄り添ってきた。

一歳半になるシスイは、大人たちの重々しい雰囲気を察してか、おとなしくソウマの腰元にしがみついている。

 

扉間の視線が、その幼い赤ん坊――志村シスイへと注がれた。

 

「……志村の血と、うちは……カガミの血を引く子か」

 

扉間の声に、深い感慨が混じる。

 

「かつてワシが……その圧倒的な力の危険性を恐れたうちは一族、しかし誰よりもその高潔な志を認めたカガミ……。その血と志が、志村の家と結ばれ、こうして里の新しい命として目の前におる……。兄者……ワシの役目も、これで完全に終わったのだな……」

 

シスイが不思議そうに首をひねり、小さな手を伸ばした。

そして、布団の上に置かれた扉間の痩せた指を、キュッと力強く握りしめた。

 

「あう……」

 

その小さな温もりに、扉間は生まれて初めて見せるような、心からの温かな破顔を浮かべた。

 

「……良い目だ。清らかな水のごとき瞳だ……。後を頼むぞ……ソウマ、ヒルゼン、ダンゾウ……。木ノ葉を……忍の未来を……」

 

ゆっくりと、扉間の瞳が閉じられていく。

握られていた指からすっと力が抜け、呼吸が静かに止まった。

 

千手扉間、永眠。

病苦に倒れることなく、忍の歴史を創り上げた巨星が、愛する弟子と次世代の命に見守られながら、穏やかにその生涯の幕を閉じた瞬間であった。

 

「……扉間先生!!!!」

 

ヒルゼンが慟哭し、畳に伏した。

ダンゾウは固く目を閉じ、ただ一筋の涙を頬に伝わせた。

ソウマ達は深々と頭を下げ、その偉大な師の最期を心と刻印に焼き付けたのだった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

千手扉間の死は、一瞬にして忍界全土へと伝播した。

 

木ノ葉隠れの里では国葬が盛大に執り行われ、雨が降りしきる中、数千の忍と市民が黒い服を身に纏い、偉大な二代目火影の死を悼んだ。

 

しかし、その悲しみの裏で、事態は急速に悪化し始めていた。

 

火影邸の最奥、厳重な結界が張られた作戦会議室。

卓上には、忍界全土から寄せられた暗部や諜報部からの緊急報せが山積みになっていた。

 

「……酷いものだな」

ダンゾウが不機嫌そうに書類を叩きつける。

「扉間様の訃報が各国の耳に届いた途端、まるで示し合わせたかのように国境付近の不穏分子が活発化しておる。特に霧隠れの動きがおかしい。我が里の補給線を密かに探るような工作員が急増している」

 

ヒルゼンが深く煙管を吸い込み、吐き出した煙を眩しそうに見つめた。

 

「霧隠れだけではない。岩隠れも土の国国境に兵力を集結させつつあると、サクモからの報告が入っておる。……自来也や大蛇丸が警戒に当たっておるが、第二次大戦の傷が癒えた各大国が、次の覇権を狙って蠢き出した」

 

ダンゾウが鋭い眼光をソウマに向けた。

「ソウマ、戦争になったらお前は面を外せ、志村ソウマとして部隊を率いて貰う、ミナトと合わせて木ノ葉に飛雷神ありと思わせねば」

 

「了解しました。父上」

 

「局地的な衝突で済めば良いが……」ヒルゼンが苦重に満ちた顔で窓の外を見つめる。

「……もはや避けられまい。これは遠からず、前大戦をも超える惨禍――『第三次忍界大戦』へと発展する」

 

会議を終えたソウマは、夕刻の演習場へと足を運んだ。

 

そこには、波風ミナトが待っていた。

 

「……ソウマさん。扉間様のこと、本当に悔やまれます」

ミナトが深く頭を下げる。

 

「扉間先生は安らかに旅立たれたよ。……それよりミナト、里の外の空気が変わったのは分かっているな?」

 

「はい」ミナトの瞳がキリッと鋭くなった。

「……各大国が、本格的に動き出していますね」

 

「ああ。あと半年……いや、下手をすれば数ヶ月以内に、忍界全体を巻き込む大戦が始まる」

 

ソウマはミナトの肩に手を置いた。

 

「お前には大々的に働いてもらう予定だ、俺も面を外して志村ソウマとして戦う」

 

ミナトは力強く頷いた。

 

「オレの全てをかけて、この木ノ葉と、みんなを守ります」

 

夜。志村邸。

 

任務へ赴く前の束の間の休息。ソウマは自室の縁側で、すやすやと寝息を立てる我が子・シスイを愛おしそうに抱きかかえていた。

 

妻のキョウカが、温かいお茶を持って静かに隣に腰かける。

 

「……ソウマさん。また、戦いになるのですね」

 

キョウカの声には、妻としての不安と、忍の妻としての覚悟が混ざり合っていた。

 

「ああ。だが、心配いらない」

ソウマはシスイの柔らかい頬を撫でながら、力強く微笑んだ。

 

「俺には扉間先生から受け継いだ術があり、火の意志がある。そして何より……守るべきお前と、シスイがいる」

 

シスイが夢の中で「あう……」と小さく呟き、ソウマの服の裾をギュッと握りしめた。

 

かつて扉間が最期に見つめた、清らかな水のごとき瞳を持つ子ども。

志村とうちはの血を受け継ぎ、未来を担うこの小さな命を、絶対に戦火の炎で灼かせはしない。

 

「キョウカ。俺が絶対に、この平和の防波堤になってみせる。どんな闇が襲ってこようと、すべてを穿ち、切り伏せて帰ってくる」

 

「……はい。信じています、ソウマさん」

 

ソウマは夜空を見上げた。

雲の切れ間から覗く月影が、静かにソウマの横顔を照らしている。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

木ノ葉隠れの里から遠く離れた、暗く冷たい地底の空洞。

 

外道魔像の背中から伸ばされた何本もの黒い管に繋がれ、不気味な生命維持を続けている老いた男――うちはマダラが、暗闇の中で静かに座していた。

 

その足元の地面からぬっと異形が姿を現す。

白い粘液のような身体を持つ白ゼツだ

 

「マダラ~、扉間が死んだよ~」

白ゼツが独特の甲高い声で囁く。

 

暗闇の中で、マダラが緩やかに目をひらいた。その老いた眼光の奥で、恐ろしいチャクラが渦を巻く。

 

「やっと…扉間が死んだか」

 

マダラは低く呟き、過去の記憶を反芻した。

かつて宿敵・柱間の背後に常に控え、冷徹な知謀と冷酷な合理主義をもって自分と「うちは」を徹底的に警戒し続けた男。あの千手扉間という最大の障壁、木ノ葉の知恵袋が、ついにこの世から去ったのだ。

 

マダラが不敵な笑みを漏らす。

 

「扉間という男は、オレの存在や裏の動きを誰よりも警戒していた。あの男が存命の間は下手に大きく動けば勘づかれるリスクがあったが……奴が死んだ今、木ノ葉の目は決定的に濁る」

 

「どうするの、マダラ? いよいよ『計画』を本格的に動かすの?」

白ゼツがニヤニヤと問いかける。

 

「ああ。長年温めてきた『月ノ眼計画』の準備を始める。……ゼツよ、裏で接触している『霧隠れ』の動向を操れ。重鎮たちに暗示をかけ、国境付近での挑発と暗躍を加速させよ」

 

「へえ、霧隠れを動かして他国を刺激するんだね?」

 

「そうだ。第二次大戦の終結から数年……各大国は傷を癒やし、溜め込んだ軍備の吐き出し口を探している。扉間の死という大局の揺らぎを利用し、各大国の不信感と利権争いを極限まで煽れ。五大国全てを巻き込み……世界を再び巨大な炎――『第三次忍界大戦』へと叩き落とすのだ。」

 

「それから木ノ葉の偵察はヒルゼンはどうでもいいが、扉間の飛雷神を受け継いだ志村ソウマと波風ミナトとかいう小僧は常に警戒して動向を把握しておけよ、二人とも仙術が使えるようだし、飛雷神はオレや柱間ですら会得できなかった特殊な術だ。万が一にもマーキングをつけられたりしてその個体がここに帰ってきて場所がバレるのはまずい」

 

「わかったよ~、勝手に長門を鍛えてくれた自来也はいいの?」

 

「こいつも仙術が使えるらしいが…そこまで警戒するまでもないだろうがさっきの二人を偵察していれば自ずとこいつの動向も知れるだろう。それよりもオレの意思を受け継いで動ける者が必要だ、外道魔像を扱うからにはやはりうちはの者が良い、長門でもいいがアイツはまだまだ力を出せていない、それを煽るためにも先にうちはの者を駒にする必要がある」

 

「僕らもずっと探してるけどそんな都合よくはいかないよ~、まあ戦争が始まったらまた変わるかな」

 

マダラの背後で、外道魔像の不気味なチャクラが脈動する。

 

「そのための戦争だ、戦乱の渦中でこそ、オレの望む『意志』を継ぐ駒が生まれ、長門の輪廻眼を覚醒させる機会が訪れる。……さあ始めよう、世界の救済を」

 

闇の深淵で、無限の絶望へ向けた計画が静かに、そして確実に進み始めた。

 

千手扉間の死によって忍界に走った動揺を利用し、うちはマダラの暗躍によって世界は破滅の『第三次忍界大戦』へと傾き始めていた。

 





第二次大戦終結直後以外は扉間を出してなかったんだけど気づきましたかね、あと第二次大戦も終盤はソウマ達がもう十分育ったというのもあって前線には出てませんでした、飛雷神で情報伝達係はやってた感じかな

この世界の扉間、ソウマのおかげでうちはもなんとかしてるし、飛雷神の後継者もいるし本当に頑張ったなあ…

扉間が死んだだけではすぐに戦争だ!とはならなかったはずなんだけど、裏でウキウキで扉間が死ぬのを待ってた奴がいるのでコイツのせいです

評価、お気に入り、しおり、感想ありがとうございます
誤字修正も感謝

(追記)
改めてミナトが仙術つかうとこ読んだら「チャクラの練りあげに時間がかかる」と言っているので本作とは矛盾してますが…ソウマのおかげで元から概念を知ってたからちょっと違う感じになったという事にしよう、うん、苦手なのは変らんし
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