志村ソウマは十二歳となり、予定通りアカデミーを無事に卒業した。
飛び級などはせず、六年間しっかりと基礎を修め、仲間との絆や忍としての倫理観を深めさせた上での卒業である。
卒業式の数日前、火影室では三代目火影・猿飛ヒルゼンと、志村ダンゾウの二人が、目の前で茶をすする老人に呆れ顔を向けていた。
「……扉間様。本当にお引き受けになられるおつもりなのですか?」
ヒルゼンが困惑気味に尋ねる。
千手扉間は今年で65歳。いくら全盛期とあまり変わらぬ見た目を保ち、未だにほとんどの現役の忍を凌駕する強さを誇るとはいえ、若い頃を知る弟子達からすればかなり衰えているのは見てわかっている、更には高齢を理由にアカデミーの校長職を辞したばかりなのだ。
ちなみに空席となった校長職はヒルゼンが火影と兼任することになったが、忙しい三代目火影の実務を考慮し、現場の管理は副校長が取り仕切る体制へと移行していた。
校長を引退してようやく悠々自適の隠居生活に入ると誰もが思っていた矢先、扉間は自ら「今年度の下忍一班を担当する」と言い出したのである。
「扉間様、御身を案じてのことにございます。校長を引退されたというのに、なぜ現場の担当上忍などに……」
ダンゾウも心配そうに眉をひそめる。しかし、扉間は静かに茶碗を置くと、不敵な笑みを浮かべた。
「フン、心配はいらん。ワシが自ら教壇を降りたのは、手隙の時間を作るためだ。……ダンゾウ、お前の息子・ソウマのことだ」
「ソウマが……? 何か問題でもありましたか」
「逆だ。あやつには『飛雷神の術』の適性がある」
「「!!?」」
扉間の一言に、ヒルゼンとダンゾウの息が止まった。
飛雷神の術――かつて二代目が開発し、その圧倒的な神速をもって戦場を支配した至高の時空間忍術。創案者である扉間以外に扱える者がおらず、弟子のヒルゼンですら習得を諦めた超高難易度の術である。
「二年前の特別講義の折、ワシが付けた術式マーキングの微小なチャクラの繋がりを、ソウマだけが感覚として捉えておった。実はその後もたまに飛雷神やマーキングの札を見せたりしていたのだが……間違いない、あやつなら、ワシの時空間忍術を受け継ぐことができる。だからこそ、ワシ自らが手元に置き、直々に仕込むのだ」
扉間の確信に満ちた眼差しに、二人は言葉を失う。
あの千手扉間が、己の至高の術を伝授するために自ら現場に立つ。それがどれほど破格の扱いか、二人に理解できないはずがなかった。
「……なるほど。そういうことでしたか。ソウマの班の編成、しかと手配いたしました」
ヒルゼンは深く頷き、扉間が率いる「第七班」の書類に判を押したのだった。
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そして迎えた、アカデミーの教室での班発表。
「――次は『第七班』。志村ソウマ、うちはキキョウ、日向トキマ」
名前を呼ばれ、ソウマは隣の席の少女と少年を見やった。
うちは一族の少女・キキョウと、日向一族の少年・トキマ。二人ともアカデミーでは上位を争う有名人であり、志村家、うちは、日向という里の重鎮一族が揃った豪華な構成であった。
(キキョウとトキマか。二人とも優秀だし、いいチームになりそうだ)
ソウマがそんなことを考えていると、教室の扉が静かに開いた。
「第七班、ついて来い」
重厚で、聞き覚えがありすぎる声が教室に響き渡る。
足を踏み入れてきたのは、濃紺の戦闘服に身を包んだ白髪の老人――前アカデミー校長にして、二代目火影その人であった。
「「「……えっ!!???」」」
教室内から凄まじい悲鳴が上がった。当然、第七班の三人も例外ではない。
「と、扉間様!? なぜ元校長先生が……!?」
キキョウが目を丸くして立ち上がり、普段は冷静なトキマすらも白眼を開きそうになるほど狼狽している。
ソウマもまた、口をあんぐり開けて唖然としていた。高齢を理由に校長を辞任したはずの伝説の忍が、なぜ自分たちの担当上忍として目の前に立っているのか。
「ワシがお前たちの担当上忍だからだ、何をボサッとしている。行くぞ」
扉間は三人の反応に満足そうに鼻を鳴らすと、さっさと廊下へ出ていく。
ソウマたちは慌てて荷物をまとめ、伝説の忍の背中を追いかけて走り出したのだった。
これが、のちに全員が上忍へと登り詰め、忍界にその名を轟かせることとなる「扉間班」の始まりであった。
多分裏では自来也達がハンゾウに三忍と勝手に名付けられてたりする時期