【うすほそ】軽部生海とかいう女性声優wwww【低音ハスキーボイス】 作:おフィ
軽部と有涼の二人が練習を続けていると、続々とキャストがやって来る。二人を見たキャスト陣は皆、同じように驚いていた。
そして最後に、MASAKIが入ってくる。すると軽部と有涼の表情が引き締まる。
ダンスが苦手なのは、自覚している。だから、今日ここで練習の成果を認めてもらう。
「はい、じゃあプランクいくよ〜!」
言われた通りプランクを始める。前回より少し余裕が出来た軽部は、周囲を見渡す。
有涼は流石にブレない。よく見ると、筋トレが趣味な熱沢や吹上、千崎も綺麗なフォームをしていた。
熱沢はともかく、吹上と千崎まで。スポーツをやっていたのだろうか、と気になる。
「はいっ、そこまで!」
プランクが終わると、またしても軽部は床とお友達になる。少し余裕が出来たとはいえ、たかが
二週間やったくらいでは劇的には変わらない。
「軽部くん、もしかして家でもやってた?」
「え……はい。毎回やるって言ってたんで」
「いいね、その心がけ! そう言われてもやらない人って居るからね、凄く偉いよ!」
「……ありがとう、ございます」
やっていてよかった、と心から思う。少し褒められただけで大袈裟だと思われそうだが、自分の判断でやったことを褒められるというのは、想像以上に嬉しいものだ。
どこか明るい気分でプランクを終えた軽部は、前回のステップをおさらいする。
「うん、いいね。じゃあ予定通り、一人ずつ課題曲を踊ってもらいます」
遂に来たか、と軽部は思った。練習は、可能な限りしてきた。だが他のキャストの出来次第ではやっていないと思われる可能性もある。
そのことに怯えながらも、軽部は自分の順番を待つ。
「うん、空賀くんはやっぱり良いね! ちなみになんだけど自分の味を出すダンスは出来る?」
「はい、前の事務所の時に教わりましたから」
「じゃあ今回は、敢えてお手本通りに踊った?」
「そうなりますね」
「ふむふむ……オッケー! じゃあ次!」
その後も順番に踊っていき、遂に軽部の順番が訪れた。見られながらやるというのもそうだが、本当に踊れているのか今更不安になってくる。
けれど、もう逃げられない。故にやるしかないのだ。軽部は覚悟を決めて立ち上がり、鏡のなかの自分を見つめながら踊り始めた。
(Bメロ……ここでリズム変更!)
多分、ステップのリズム変更は問題無かった。サビに入り、キャッチーな振り付けをする。
そして迎えた最後のターン。
(…………っ!)
僅かに、フラついてしまった。踊り終えた軽部は思わず、右の手を握り締める。
「……軽部くん」
「はい」
「どこが悔しかった?」
いつの間にか下を向いていた顔を、バッと上げる。MASAKIは真剣な眼差しで、こちらを見つめていた。
「……最後の、ターンです」
「ふむ、どういうところが悔しかった?」
「少しだけフラつきました」
MASAKIは少しの間を空ける。その間は一瞬だったはずだが、軽部にはそれがとても長く感じられた。
「……うん、いいね」
「…………え?」
「ちゃんとどこが悪かったのかが分かっている。それに、前回のレッスンの時よりも自信があるように見えた。この短期間で、凄く成長したね!」
ぽかんと口を開けた軽部は、時間を掛けてMASAKIの言葉を咀嚼する。
褒められたのだと理解できたのは、少し経ってからのことだった。
「ふふ、僕もそんな鬼じゃないよ。けど、二週間でよくそこまで変われたね?」
「あ……マネージャーさんが、ダンス経験者で」
「なるほど。良いアドバイスを貰えたんだね」
「……はい!」
間接的に中村のことを褒められたと感じた軽部は、つい大きな声がでる。
それに恥ずかしさを覚えながらも、軽部は次の人に場所を明け渡す。
最後は、有涼だった。
「じゃあ、いくよ」
「はい!」
曲が流れ、有涼が踊り始める。動きが大きく、それでいてキレがあるように見えた。
しかし、課題のBメロの入り。そこはやはり、ズレが生じてしまうようだった。
それでも有涼は止まらずに踊り続け、ターンを綺麗に決める。
「うんうん、有涼くんも踊れるようになったね」
「Bメロの入りが、どうしても……」
「そこは、これからリズムトレーニングするから出来るようになるよ。それより大事なのは、ズレても踊り切ったことだから」
その言葉に有涼は目を丸くする。
「本番で止まったらステージが台無しになる。けど動いていれば、言い方は悪いかも知れないけど多少はごまかせる。だから皆も、間違っても絶対に止まらないこと」
目ざといファンには間違っていたとバレる可能性はあるが、それでも停止してしまうよりはマシである。
間違っても、止まらない。そのことを胸に刻んだキャスト陣は、次のトレーニングに移る。
「リズムの話が出たので、メトロノームを使ってリズムキープの練習をします」
メトロノームの拍に合わせてステップを踏み、全員がズレなくなったら裏拍にも挑戦する。
そう聞くだけなら簡単だったが、キャストの中にはそのリズムキープを苦手としている人物が、一人居る。
「有涼くん、今少し遅れてたよ!」
そう、有涼夏輝である。彼は野球選手としては優秀な選手であったが、ダンスに関しては素人。
踊った経験は、中学の授業以来だった。
「っ、すみません」
有涼は全員に頭を下げる。自分のせいで裏拍に移れない、というのが重いのだろう。
「メトロノームの音に合わせる意識が強いのかもしれません」
ふと、ViZが言った。
「クリックを追い掛けているというか……それだと遅れてしまうので、クリックと同調するようにした方がいいと思います」
「そうですね。音を聞き過ぎず、自分の中で拍を刻む意識でやるとやりやすいと思います。追うというより、答え合わせする感じで!」
ViZの意見に、空賀も賛同する。
「答え合わせ……分かりました、やってみます」
有涼はそう言って、もう一度やってみた。
「……前回より良くなってませんか!?」
吹上が嬉しそうに言う。有涼も手応えがあったのか、少し顔が綻んでいる。
「……あとは繰り返し、ですね」
様子をうかがっていた熱沢が言った。すると、有涼は気まずそうに首を掻く。
「……俺に付き合わせてしまうのは、申し訳ないですね」
「え、なんでですか?」
千崎が関西弁のイントネーションで返した。
有涼は思わずそちらを見る。
「俺らだって練習になりますよ」
「けど、皆は出来てるし……」
「出来てるからって、誰かを置いていっていい理由にはならないじゃないですか」
千崎はハッキリと断言した。
「だって、同じグループの仲間なんですよ?」
置いていく方がおかしいじゃないですか、と彼は付け足した。
「……そうだね。それに、反復練習は大事だし」
「筋トレが趣味の熱沢さんが言うと説得力が違いますね」
熱沢が賛同し、隼瀬がそれに乗っかる。
(……そっか)
ここは出来ないから置いていかれるような場所でもなければ、必要とされなくなる訳でもない。
戦力外というものが無いからこそ、高い意識を維持し続ける必要はあるが——有涼には既にその意識を持っていた。
「……よしっ」
「お、元気になりました?」
「はい。何度も突き合わせてしまうかもしれませんが、お願いします」
「ばっちこいですよ!」
そう言って再びリズムキープトレーニングを始める。その様子を見て、MASAKIは。
(誰かが出来ないことで雰囲気が悪くなるのではなく、置いていかない選択肢を取ることができる……アイドルートの人事は凄いと聞いていたけど、ここまでとはね)
顔も見たことがない人事の優秀ぶりを体感したMASAKIは、その手腕を尊敬するのであった。
——その後。
無事にリズムを刻めるようになり、裏拍に挑戦することになったキャスト陣。
だが裏拍では何人かが出来ないことが判明し、それなりに躓くのであった。