ダンジョンに銃火器を持ち込むのは間違っているだろうか 作:遺物
「店内で危険物を放ったニャ。ミア母さんから絶対に入れるなと言われてるニャ。」
「あと、顔を見せたら首を刎ね飛ばすとも言われてるの。逃げた方がいいよ~?」
「あ、ベルさんは入っていいですよ~」
チクショウ。ぐうの音も出なかった。そりゃ入れてくれるわけないか。あの店員を責めるのはお門違いだ。憎むべきは、あのオオカミ男!
奴の名前は、ベート・ローガ。ロキ・ファミリア所属の現在レベル5の実力者。巷では、もうすぐレベル6になるという噂もある。
どうしたものかね。今の俺はレベル1。駆け出し冒険者の典型例だ。ベルも、モンスターの攻撃を避けたり、食らわせたりで、着実に強くなっている。彼の動きが良くなっているのは、俺の目で見ても明らかだ。
今、ベルは豊饒の女主人で絶賛飲み食い中だ。俺はというと、自宅でベルを待っている。腹の虫が、その存在をこれでもかと主張する。あそこで晩飯を済ませようと思っていたばかりに、空腹が収まらない。
「ヘスティア様~飯とか無いんすか~?」
「残念だけどねエン君。僕たちヘスティア・ファミリアには、貯金が出来るほどの余裕すらないんだよね~…だから…」
グウゥ〰〰〰〰…
「こうなってる訳だけど…」
「腹が…減った…」
某ドラマみたいになってしまった。このセリフしか知らないが。ソファでくたばっている腹ペコ二人。同時に腹が鳴ってしまい、少し恥ずかしくなる。いや、恥ずかしがっているのは俺だけか。神様はあんまりこういうの気にしない。
う~ん…そうだ。良いことを思いついた。なんで今までやろうとしなかったのだろう。うん、試してみるだけの価値はある。出来るか分からないけど…
「やれるだけやってみるか…『もう日が暮れる』『プレゼント・デイ』!」
そっとテーブルの上に手をかざす。手の形の影が脈打ち、中から紙袋が出てくる。少し茶色がかった袋には、とても見慣れた黄色いMの文字が輝いていた。
この匂い。放課後によく嗅いだ、あの匂いだ。まだ大して時間が経っていないはずなのに、懐かしく感じてしまうのは何故だろう。
「クンクン、クンクンクンクン!うぇ?!エン君!なんだいその犯罪的な匂いのする紙袋は?!」
ソファで小さくなっていたヘスティア様が、のそのそとこちらへにじり寄ってくる。まぁ、この世界の人間にとっては未知の食文化。しかも、カロリーと脂質をこれでもかと詰め込んだ、スーパーギルティな食べ物だからな。気になって当然よ。
「フハハハ!よくぞ聞いてくれましたねえヘスティア様ぁ!これは、俺の国に伝わる、青春の象徴!放課後の代名詞!デブ御用達!(エン基準)」
俺は袋の中身を勢いよく取り出し、丸い物の包み紙を、豪快に引きちぎる。そして、彼の御方のご尊顔が露わになる。
「YES!マク〇ナル〇!(〇には同じ文字が入ります)」
正確にはダブルチーズバーガーセット。さらにはナゲット10ピース、バニラシェイク付き。もう伏字にするのが面倒になったのがバレてしまうな。まさに、空腹の人間にとっての完全装備である。
「うわわぁ〰〰〰!マク〇ナル〇?!そ、そそそそれは一体何なんだい!」
「お子様、若人、社会人、全人類大好きな物体でぃすよ!フハハハハハ!あ、ヘスティア様の分もありますよ。『もう日が暮れる』っと。」
右手にバーガー、左手にシェイクを装備。宴の用意は整った!
「「いっただっきま〰〰〰す!!」」
なンだコレ!ンまいなぁ〰〰〰〰〰〰!
こんなに美味しかったっけ?しばらくぶりと言っても、中々に来るものがある。ホームシックになるには少し早い気がするが。
え~と、何考えてたっけ…あ、そうだ。ヘスティア様のことだ。彼女は俺をどう思っているのだろうか。というか、彼女はベルが絡まないことに興味が無い。俺にもちょっとは興味を持って欲しいのだが……まぁ別にいいんだけどね。
あ~駄目だ。一度気になってしまったらそのことが頭を支配する。そもそも俺がここにいる理由の一つは、あの屋根の修理代を返すためだ。借金がなくなったら、俺はここにいる必要もなくなるんじゃないか。ベル君と僕の愛の巣から出ていけ、とか言われたらどうしよう…いやそんなこと実際は無いんだろうけどさ。そうだ。聞けばいいんじゃないか。横で人生、いや、神生の初バーガーに狂わされている。俺は、彼女に顔を近づける。
「あの、ヘスティア様。率直に聞きます。俺のこと……どう思ってます?」
「ング…ゲホッゴホッ!急に何を言い出すんだいエン君!?」
「そのままの意味……いや、そのままでは無いですね。ヘスティア様はベルのことをスゴく構っていますが…俺のことはどう思ってるんですか…と、聞きたいんです。」
そう言うと、彼女の口がにんまりと緩む。その様子が、ちょっとウチの猫に似ていた。
「ふふん。な~る~ほ~ど~ね~?つまり、君はベル君に嫉妬してるわけだねぇ~?」
「あぁ……まぁ…そう…です…ね……!」
「なんでそんな悔しそうな顔をするんだい?」
「負けた気がして。」
「ちょっとそれどういう意味だい!?まぁ答えてしんぜよう。僕は神様だからね。子供たちの悩みを解決するのも、僕らの役目さ。」
「そうなんですか?普段バイトに勤しんでいる姿からは想像出来ないですが。」
「いちいち失礼だね君。ま、真面目に答えるとさ…君のことは、心配できないんだよ。いい意味でね。」
「ほう…?」
「君は強い。レベル1とは思えないほどだ。もうソロで10階層まで行けるんだろ?分かってるさ。」
え?たまにベルに黙ってダンジョンに潜ってることバレちゃってる。こっそりベルが行けない所で戦ってる。理由は、スリルを求めてだ。もっと強い敵を、見たことない敵を倒したい。それに、アイツらのことが気になる。ロキ・ファミリアだ。さっさとアイツらに追いつきたい。俺達が笑われないとこまで強くなりたい。
「つまり、僕は君を全面的に信頼してるのさ。君なら絶対に、僕の元に無事に帰ってくると信じてる。逆に、ベル君は危なっかしいからね~。心配が尽きなくて、つい構いすぎてしまうのさ。」
あぁ…まずい、駄目だ。笑みがこぼれる。そんな風に思ってくれてたなんて。すっごく嬉しい。多分今の俺は、感情が全部顔に出ていると思う。
「なるほど…それを聞いて、少し安心しました。俺は、ここに居ていいんですね…うん、良かった。とても、良かったです。」
「あれ?エン君泣いてるのかい?」
「いえ、それはないです。」
「なんでだい!?」
玖蒸のどうでもいいメモ
本名・玖蒸 炎(旧姓は鳴子だが、小さいころ父親が亡くなったため、十年以上、母親の性である玖蒸として過ごしている)
年齢(享年)・17歳
好きなこと・ゲームのガチャやパチンコ(あまり実力の絡まない運ゲーなら何でもいい、何ならじゃんけんでもいい、パチンコに沼ってる奴のことは小馬鹿にしてる)
嫌いなこと・同じ中学校の陽キャ女子グループから話しかけられること(原因は罰ゲーム告白)
好きな物・ハンバーグオムライス(子供っぽいことは分かっているので、友達の前では食べたくない)
嫌いな物・中学の同級生(原因は以下同文)
趣味・ガンアクション系の映画鑑賞、銃プラモ集め(一番好きな映画はターミネーター2)
やりたいこと・サバゲ―(やりたい欲はあるが、コミュ障すぎて勇気が出なかった。今ではだいぶ後悔している)