ダンジョンに銃火器を持ち込むのは間違っているだろうか 作:遺物
「リリにも難解すぎます~」
「ルービックキューブって、異世界でもムズカシイ物なんだな。」
「いいの?ホントにダンジョン行くの?家で休んでてもいいんだけど…」
「いいんです!ほら、行きますよエン様、ベル様!今日もガッポリ稼がないといけないんですから!」
「全く、エンは心配性だな~」
そうだよ。心配しちゃ悪いかよ。俺はリリに幸せになって欲しいんだ。あんな身の上話をされて、ほうっておける程人間性を捨ててはいない。
心配する俺と、稼ぎたいリリ、ダンジョンに潜りたいベル。三者三様の思いを抱えて、彼らはダンジョンへと潜っていく。
彼らを遠くから見つめる影があることも知らずに…
ーダンジョン十階層ー
いつもとやることは大して変わらない。ベルを援護し、雑兵を撃ち払う。それに加え、リリの安否を気にするだけだ。それだけでいい。普段と大して変わらない。
でも、なんか滅茶苦茶緊張するな~。彼女に対する心配事が尽きない。彼女の為に出来ることなら、なんだってしてあげたい。俺にあるのは、力、懐の深さ、それと……金。そうだ。貯めておいた金を、彼女にあげよう。俺は武器とか防具の代金は必要ないし、どうせ使うなら人の為に使いたい。よし、そうだな、そうしよう。
「ふぅ…ここら辺のモンスターは、あらかた片付いたね。」
「えぇ、それでは私は、エン様が倒した、奥の方の魔石を回収してきます!」
「お、おぉ…ありがとう……一人で大丈夫?」
「もう!心配性もいい加減にしてください!リリにもそのくらいの仕事はさせてもらいますよ!」
よ~く働いてくれるよな~。この時間、魔石を回収するためにまたモンスターと遭遇したり、往復が困難になることもあったが、それもなくなった。ホント、サポーターさまさまだよ。誰だよ、最初にサポーターが要らないとか言ったやつは。
「雇って良かったな。リリのこと。」
「そうだね、エン。にしても、一日も経たない内に、あそこまで心変わりするとは思わなかったよ。」
「……俺もそう思う。」
リリを待っている間、俺は手ごろな岩に座り、ルービックキューブで遊んでいた。ベルはナイフを研いでいる……にしても遅いな。どこまで行ってるんだろう。ダンジョンの奥の方を見ると、リリの姿が見えなかった。本当にどこまで行ったんだ?
「…ちょっと様子を見てくるよ。いくら何でも遅すぎる。」
「確かにそうだね……僕もいくよ。」
二人とも立ち上がり、武器を構える。ベルはヘスティア・ナイフを持ち、俺も
道中に、リリの持ち物や、破かれた服の切れ端が落ちている。ただ事ではない雰囲気なのは、ベルも感じていた。少し進むと、小さな空洞が見えた。俺は静かに、部屋の壁に聴診器を当てた。会話が聞こえてくる。
「ギャハハ!ここまで貯めこんでやがったとはな!」
「流石だぜアーデ!お前が新しく出来たパーティーに取り入ったことは理解していたが…ここまで稼いでたとはな!」
「俺達の為にありがとなアーデ…じゃ、この金は貰って行くぜ?」
俺はこぶしを握り締めた。持っている銃を
「それじゃ、このキラーアントの群れは…お前に任せたぜアーデ!」
そう言うと、冒険者たちは振り返って唯一の出口である、俺達のいる通路の方に向かってくる。俺は、奴らに向かって催涙弾を投げつける。炸裂した瞬間、奴らが咳き込み始める。
「な、なんだこれ…ゲホッ!」
「く…苦しい……!」
「お前はリリを頼む!」
「分かった!」
ベルは凄まじいスピードでリリを抱きかかえ、空洞からダンジョンの広間まで出ていく。
俺は銃を連射し、咳をしているアフロの男をハチの巣にする。俺の方に倒れ込んで来たので、蹴りを入れて他の冒険者の方へ飛ばす。
「おぉらぁ!」
ノッポの男が、白い剣を振るい、催涙ガスを払う。魔剣だろうか。ノッポの男がもう一度魔剣をこちらに向かって振り、風の斬撃を飛ばす。
既に死体となったアフロの男の身体を持ち上げ、相手と俺の間で盾にする。斬撃を防いだ後、手榴弾を上に向かって投げる。手榴弾は天井に当たって跳ね返り、ノッポの男の顔面にぶつかる。我ながらナイスショット。自分で思うのもなんだが、凄い器用だな。
「あ?んだコレ……」
俺は爆発の衝撃に備え、死体を掴む手に力を込める。手榴弾が炸裂し、後に残ったのは、男の亡骸だけだった。死体の前半分も削れている。
残るは、小太りの冒険者と、剣を持った冒険者。こいつらは少し強そうだ。銃を使うか…周りにはキラーアントの群れ。そうだ、こうすればいいじゃん。
「『もう日が暮れる』 『プレゼント・デイ』!」
俺は麻酔銃を構え、二人に向かって撃ちこむ。小太りには当たったが、剣士には弾かれた。眠らせた後、キラーアントに喰わせよう作戦は、半分成功、半分失敗か。俺は距離を取り、
「ふん!何かは知らんが、そんなもので俺の剣を躱せるか?!」
俺はバック走しながら、
「あぁ……すまない。躱す必要が無かったからな……もう聞こえてないか。」
俺は四人の死体から、目ぼしい物を奪い取り、ポケットにしまう。キラーアントは放置でいいだろう。彼らの死体を食べて、証拠を隠滅してくれるだろう。後でギルドにバレたりしたら、色々と面倒なことになりそうだしな。既に、彼らの死体を貪っている個体もいる。その調子で頼むよ、君達。うわ、コッチくんな。気持ち悪い。
ーーー
「オッケー。終わったよ。大丈夫かい?リリ。」
傷ついたリリの身体を、ベルがさすって温めている。俺もスキルで暖かい毛布を出す。明るい顔、明るい顔だ。ちゃんと保てよ、俺。
「あれは…リリが所属する、ソーマ・ファミリアの団員です。リリの稼いだ金を狙ってくる輩です…」
涙交じりの声で、彼女は話す。俺はリリの頭を撫でながら言う。
「大丈夫、もう大丈夫だよ。もう、二度と、お前が絡まれる心配はないから。さ、今日は帰ろう。暖かいご飯を食べて、ベッドでぐっすりと寝よう。欲しいものがあれば、俺がいくらでも出してあげるから。」
「……はい…あの…エン様…ベル様…」
「うん、なんだい?」
「助けていただき…いや、それだけじゃありません…雇っていただき、リリのことを見つけて下さり、本当に、ありがとうございます……」
「いいよそんな事。俺らの方こそ、自分を売り込みに来てくれて、ありがとね。」
そう言って、俺はリリを担ぐ。荷物はベルに持ってもらい、家に帰る準備を進める。
「そうだよリリ。僕たちが助かってるんだ。僕たちが助けたくて助けたんだ。それ以上でも、それ以下でもないよ。僕らのパーティーに来てくれてありがとう。リリ!」
「あ…ベル。リリ…もう寝てるよ。」
「フフ…そっか。」
玖蒸のどうでもいいメモ
・ソーマ・ファミリアのことは、既にだいぶ嫌いになっている
・このことを機に、リリには銃の扱い方を教えると心に決めた