ダンジョンに銃火器を持ち込むのは間違っているだろうか 作:遺物
…なんか泣きそうになった
「だから!聞いてるの?エン!それに神様も?!」
「へ?
「
俺はヘスティア様と、朝飯のパンケーキを夢中で貪っていた。ちなみに、リリはまだ寝ている。それで、え~と…ベルは何て言ってたっけ?あぁそうだ。「剣姫」がどうのって話をしてたな。
「ゴクン…びゃあウマい!あぁゴメン……ふざけすぎた…それで?剣姫がなんだって?」
「剣姫って言わないでよ!アイズさんだよ!アイズさんはもう、単独で階層主を討ちとった!それに比べて…僕は…僕はぁ…!」
「遅れてるって?」
「そうだよォォォ!」
う~ん。ここまで悩んでる本人の前でこう思っちゃ悪いが、そりゃあそうだろ。そもそも冒険を始めた時期が違う。向こうの方に、圧倒的なアドバンテージがある。それに、比べる相手が悪すぎる。よりにもよって、現役冒険者の中でも最上位クラスの実力者に憧れるとは…つくづく難儀な奴だ。
「じゃ、頼めばいいじゃん。そのアイズさんに。」
「え?!ちょっとエン君?!なななな~にを言っているんだい?ヴァレンなにがし君に、ベル君を近づかせるわけには……」
「あぁ…ああ!そうだよエン!そうと決まれば即行動だ!どうすればいいかな……」
「ギルドの受付に言えばいいんじゃないか?ほら…あの…名前忘れた。まぁ、とにかくギルドだ。」
「確かに!ありがとうエン!それじゃ、エイナさんの所に行ってきま〰〰〰す!!」
「うい、頑張れ。」
「ち、ちょっと待ちたまえベルく〰〰〰ん!!」
「うるさいですよヘスティア様!」
「あ、リリ起きた。」
ーーー
今日はやりたいことがある。ダンジョンに潜ることでは無い。最近戦いすぎて、さすがに疲労が溜まっているのだ。街に出て、大通りを歩いていく。
いたいた。彼女たちだ。一人のエルフと、何人かの獣人が店先を掃除している。看板が見えてくる。そう、俺がやらかした場所。「豊穣の女主人」だ。
「あ、クジョウさんではないですか。」
「何しに来たニャ?出禁客。」
「この店でブラックリスト入りしてる奴で、またここに来る勇気があったのは、アンタが初めてだよ?」
俺だって戻りたくなかったさ。でも、戻らなきゃいけないような気がしたんだよ。礼儀とか、情みたいな…何か、言いようのない気まずさみたいなのを、払拭しにきたんだ。
「ホンットーに……申し訳ございませんでしとぅあ!!!」
俺は両膝と両手を地面に付き、額を床にこすりつけ、渾身の土下座をかます。
まぁ、ダラダラとそれっぽい理屈をこねくり回してみても、何も変わらない。俺の気持ちはとっくに決まっている。ただ寂しいだけなのだ。
ベルやリリが酒場に行きたいと言っても、出禁を食らっている俺のせいで、行くことが出来ないのだ。俺のことは気にするなと言って、皆だけで行ってもらっても、家に残るのは俺一人。何回か全身防具に、フルフェイスで行ってみたことがあるのだが、何故か入り口で、必ずミアにバレるのだ。
俺の心は一つ…もう、仲間外れはイヤだ!!
「すいませんでした!!もうしません!!出禁解除をオネシャス!!」
目だけを上に向かせ、エルフの人の反応を見る。
「はぁ~…ミア母さん…クジョウさんが来ましたよ……」
奥から俺の何倍も大柄な女性が出てきた。ミアさん。必死に避けてきたが、今日は面と向かって言うぞ。
「何の用だい…?」
「出禁解いてください!皆と飯が食いたいんです!!すいぁせっした!!」
顔を上げずに、地面のみを見つめる。お願い、許してくれ、ホントもうマジ無理なんだ。孤独のグ〇メはもううんざりなんだ。
「ハァ〰〰〰……ったく。金は落としてくれるんだろうね?!」
「ハッ!」
俺はバッと顔を上げ、超デカい声で返事をする。
「ハイ!俺、金ならあるんで!自慢じゃないけど、自慢です!」
「フンッ!ムカつく男だね!でも、金さえ払うなら、ソイツは客さ!」
そう言って、ミアさん…いや、ミア母さんは、豪快に笑いながら店の奥へと歩いて行った。
俺は、彼女の懐の深さに感動した。これからは彼女の店で迷惑をかける輩は、俺が撃ち殺して……駄目だ駄目だ。こういうことしたらまた出禁になる。素手で追い出すことにしよう。
「ありがとうございぁす!!」
ーーー
ッシャ出禁無いなった!!
良し、取りあえず、今日やりたいことは終わった。ちゃんと謝ったし、もう悔いはない。しかし、暇になってしまった。今からどうしようか…ダンジョンに行く気は無いし、どこ行こうか…まぁ、一日中散歩するっていうのも、別に悪くはないしな。
小腹がすいた俺は、少し離れた飯屋に行くことに決めた。ダイダロス通りを離れ、あまり人が居ない方に向かった。コッチの方には、冒険者ではなさそうな普通の装いをした人たちしかいなかった。
その中で、明らかに見覚えのある人達を見た。上半身は胸に布…?を巻いているだけの女性。赤毛に糸目の胡散臭そうな女性と、黒い短髪のアマゾネス。
それに、緑色を基調とした装飾品を身に纏い、本人も緑髪の女性。彼女は初めて見る。こういう、完全な他人と一緒にいるちょっとした知り合いって、声かけていいのかな。少し迷うよ。
「あ、エン君じゃん!こんなとこで何してんの?」
遠くでもじもじしていると、彼女…ティオナが話しかけてきた。向こうから来てくれるなど、ありがたいことこの上ない。
「やっほー、ティオナ。少し離れた店に来たくてさ、小腹を満たしに。後ろの人達は?」
「ぷっ。人達だって~、ロキ?」
「え、ロキ?」
彼女がロキ?ロキ・ファミリアの主神の?こんな庶民的な人…じゃなく、神なのか。
「ふ~ん、ジブン、中々オモロい身体しとるやん。」
(なんやこの気持ち悪い感覚は…コイツの中が全く読めん…)
オモロいか?こんな体。面白いって言われるより、筋肉質の方が良かったな……エッチな意味じゃないよな?
「ティオナ、彼は?」
「クジョウ・エン君!この子、レベル1でシルバーバッグを瞬殺したんだよ!」
「エン君って……ティオナは何歳なんだよ。」
「じゅうなな!」
スゴく明るい笑顔で、彼女は俺の問いに答えてくれる。そんなに毎日明るく過ごせる秘訣を、俺も教えて欲しいものだ。
「ははっ、同い年じゃねぇか。呼び捨てにしてくれよ。俺はティオナって呼んでるんだし。」
「分かったよエンく……エン!」
「ほう…」
エルフのお姉さんからも、ジロジロと見られてしまう。何だよもう。恥ずかしいからあんま見ないでよ。
「改めて……初めまして、主神ロキ。俺はヘスティア・ファミリアの玖蒸・炎です。」
「ヘスティア・ファミリアァ?!あんなガキの神に仕えるなんて、ニイちゃん、ほんまオモロいわ!」
はっはっは~。ウケたようで何より。どこが面白いのかは、一切分からないがな。
「初めまして、私はリヴェリア。ロキ・ファミリアの副団長をしている。よろしく。」
「あぁ、はい。よろしくお願いします。」
凄く丁寧な挨拶だ。見た目通り、礼儀正しい人だ。この人とは仲良くなれそうだ。
「それで、ティオナ達はここで何してるんだ?」
「ロキが新しい酒が欲しいって聞かなくてさ~。しょうがないから、こんな離れたところの店まで探しに来なきゃいけなくなったんだよ。」
そう言いながら、ティオナはロキを睨みつける。リヴェリアさんも、溜め息を吐いてあきれ顔だ。オラリオ屈指のファミリアの主神なのに、全然尊敬されてる様子が無い。今話しただけだが、俺も尊敬出来そうな感触はない。
「なるほどね。じゃあ、俺はもう行くよ。」
三人はちゃんと予定があってここにいるのだ。時間を潰したいだけの俺と違って、やらなくてはいけないことがあるのだ。ジャマしては悪い。それにしても、今日は一人か。リリに一緒に来てくれるよう頼めばよかったな。でも、その場合、リリに俺の土下座を見られることになるのか。やっぱ一人で良かったな。その場を離れようとすると、ティオナに腕を掴まれる。
「まぁまぁ待ってよエン。ご飯食べに行くんでしょ?一緒に行こうよ!」
やっぱり、彼女は底抜けに明るいな。
明るい性格…ベルや、ヘスティア様にも言えることだが……こういう人たちは、俺にない、俺の知らない何かを持ってる。色んな物事の良い面を抽出し、自分の中でそれを増幅させることが出来る。悪い物事を自分の中で自身の良い経験で打ち消したり、忘れたり、解決したりできる。はっきり言って羨ましい。
「え…俺は暇だし、全然いいんだけど…その……二人は良いのか?」
リヴェリアさんと、ロキの方を見る。二人とも、俺が行って大丈夫なのだろうか。
「えぇ、構いませんよ。ロキの無駄遣いに付き合わされるより、貴方といる方が気が楽そうですし。」
「酒は残念やけど……ま、ええんちゃう?ほな、いこか。」
二人が先導し、ティオナが俺の腕を掴んで引っ張っていく。皆優しくて、良い人達だ。俺が、彼らのような上位レベルの冒険者と居て何か不都合がないか、と思ったが、彼らが良いと言っているので、とやかく言うのはよそう。
「…では、お言葉に甘えて。」
ーーー
ある女神が居た。女神は少年を見ていた。白く、小さく、兎のような少年。少年は、女性と戦闘の稽古をしていた。彼女は、彼の憧れの女性だ。
女神は少年が欲しかった。少年には光が見えた。彼が試練を乗り越える瞬間の輝きは、とても言葉では言い表せないほどのものだった。その試練が大きければ大きいほど、彼の輝きはより強くなっていった。
…だが、彼のほかに、少しだけ気になる者がいた。
彼の横に居る謎の男。これと言って特に何にも例えようがない、不思議な男。特別な雰囲気も、選ばれし者というわけでもない。なのに、何故かやけに目に留まった。
彼の輝きの、どこにも美しさは感じられない。ただ無骨で、単純で、均一で、一切揺らめかない光。ただ、輝きが褪せることは無かった。増すこともなかった。
気になる。好意ではない。別に、他の者となんら遜色もない。それなのに気になる。視界には常に少年と、彼の隣にいる男が映っていた。
「フレイヤ様、準備が整いました。」
彼女は試練を用意した。少年の輝きを見る為。男の輝きを見定める為。相応の試練を…
「さぁ、貴方達はどこまで……私の為に輝いてくれるかしら?」
玖蒸のどうでもいいメモ
・ティオナのことは友達だと思っている
・ベルの恋路は応援する気でいるし、しっかりと楽しんでいる