魔化魍を統べる存在になってしまった   作:北凍武人

15 / 15
宿で一息

夜真たちはユキオンナが見繕った宿に来ていた。

 

【拠点の一つとして使っていた廃宿です。中はミンツチ達と共に清掃しておいたので】

 

「おー……!」

 

「主様はこちらに来てください」

 

ユキオンナに案内された部屋のベッドに座る夜真。

 

左側にユキオンナ…改め冷華、右側にキョウコツの燐が座る。

 

「燐、あなたは呼んでいないのですが?」

 

「別に良いじゃない。というか,主様のことはわたしが先に好きになったんだけど」

 

「駄犬」

 

「女狐」

 

バチバチと火花を散らす2体。夜真は慌てて止めようとする。

 

「こらこら,2人とも喧嘩しないの」

 

「喧嘩じゃありません」

 

「そうです!これは正妻の座をかけた乙女の真剣勝負なのです!」

 

「ええ………」

 

「主様の隣はわたくしが予約済みですわ」

 

雪が入ってきたのだが、参戦宣言をし出し、三つ巴のバチバチした空気に夜真は辟易するのだった。

 

 

ライジュウの雷宙、春風、壱嵐、禍瘋は一緒に遊んでいた。まだ幼いためか、思い切り遊んでいる。オンモラキの呪翼はその様子をライジュウの妖姫の黄檗と共ににこやかに見つめていた。

 

【実験で酷い目にあってきたあの子が,あんなに笑っている…】

 

「ユキオンナと主様にはどれだけお礼を言っても足りないです」

 

【……あるじさま、絡まれてる】

 

壱嵐が何かを感じ取ったようだ。

 

【え?誰に?】

 

【処す?処す?】

 

【見に行こう】

 

春風たちも反応するが、壱嵐はハッと気付いたらしく春風たちを止めた。

 

【………多分今はダメ。私たちが逆に処される】

 

アズキハカリの秤とマンネンタケの鎌竹は宿の前で、農場を作る計画を立てていた。

 

【小豆と筍だけではなく、いろんな野菜も作りたいでやんすねぇ】

 

「植物系の魔化魍を仲間に加えたいところだな。あと土壌をある程度操作できる魔化魍も欲しいところだ」

 

ウミザトウの海鳴と白流須鯨怪人は温泉に浸かっていた。

 

「妖姫はどうしたんだ?瑠璃…って名前をもらったんだっけか」

 

「そうだね。彼女は捕虜のいる別館の当直だ。ねえ静馬さん、本来の姿に戻って良いかな」

 

「風呂が壊れるわ!」

 

 

イッポンダタラの鉄火とワニュウドウの焔転は離れに新設した鍛治工房で腕を振るっていた。妖姫たちとカニボウズの童子こと橙のための武器を打っているのだ。

 

【足りなかったものが焔転のおかげで漸く足りた】

 

【炎系の魔化魍の中でも、おれたちワニュウドウは高い火力を持つからな。……ヒデリガミ、テンカってやつも相当凄いけどな】

 

スイコの拳流は2人の会話を聞いてショックを受けていた。

 

【わたし、クビですかぁ!?】

 

【大丈夫だ、拳流には熱した鉄を冷やす役割がある】

 

 

 

カニボウズの鋏鈷とヌリカベの剛壁、ナマハゲの氷刃、甲冑眼魔が合流して話し合っていた。

 

「この館や家の番についてだが」

 

「俺たち4人で回す,ということか」

 

「番人か。第一支部では苦痛だったがここでは楽しめそうだ」

 

「他にも番人になりうる魔化魍はいるだろうか」

 

 

宿の別館は、捕らえた鬼達を収容している場所である。

 

現在捕虜として捕まっている「沫鬼」と「縁鬼」は囚人服を着せられており、同じ部屋に入れられていた。

 

縁鬼はアズキハカリに捕獲された鬼であり、沫鬼はキョウコツに倒され捕獲された鬼である。

 

「縁鬼さん、これからどうなるんでしょう、私たち」

 

「さあね。霜鬼さんは殺されたらしいし、私たちもいずれ処刑かな」

 

「!?」

 

「なーんてね。大人しくしてれば殺されることはないだろうさ」

 

「和鬼さんは?別の部屋にいるようですけど」

 

「彼女は独房だってさ。」

 

ミンツチがお盆を持って入ってきた。

 

ちゃぶ台の上に2人分の食事を置いて去っていく。

 

「ん、食事が来た。………って、多いな!たくあん!」

 

「何故レバニラ。しかも多いです……もう少し質素なものかと思ったのですが」

 

ミンツチが持ってきた料理に驚きを隠せない2人であった。

 

「和鬼も今頃レバニラ責めかなぁ」

 

縁鬼が心配している和鬼こと沙雪は、本館の一室(独房)で監視役(表向き)のノデッポウと過ごしていた。

 

「ノデッポウ、人間の姿にもなれるんだね。とてもカッコいいよ」

 

「銃尾って呼んでくれよ。せっかく主がつけてくれた名前なんだ」

 

「うん、銃尾。…ところで、このおまんじゅう、美味しいね」

 

「ラゴーさんが秤の育てた小豆で作った餡を包んでるからな」

 

その時、ミンツチがお盆を持って入ってきた。

 

「今日の夜ご飯はレバニラ定食なのね」

 

「張り切って作りすぎたらしい……あ、食事の前におやつを食べさせちまった」

 

「あはは…大丈夫。まだお腹に余裕あるよ」

 

夜真は風呂上がりのウミザトウに声をかけた。

 

「海鳴」

 

「はい」

 

「皆を縮小の術で縮めて君の体内に入って移動することって出来るかな。負担かけちゃうかもだけど」

 

「そうですね……。可能ですが、ミンツチが少し多いですね……」

 

「10000体以上に超えちゃったもんなぁ」

 

【調子に乗って増やしすぎた…】

 

その頃、ミンツチの一部が夜真や北河に黙ってどこかに向かっていた。

 

 

【他の支部も潰そう】

 

【北海道は住みやすくなる】

 

【あのニンゲン、本当に信用できるのか?】

 

【北河以外のミンツチはミ-A001みたいな感じのよくわからない名前をつけられている】

 

【手抜きだ!手抜き!】

 

【手柄を上げればマトモな名前がもらえるかも】

 

ミンツチたちの勝手な行軍が、新たな戦いの火蓋を切ることになるとはこの時はまだ誰も思っていなかった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。