別館を目指して歩く鬼がいた。
電鬼といい、音撃弦の使い手である。実は彼は第一支部の生き残りであり、襲撃時は魔化魍退治に出ていたために無事だったのだ。
「魔化魍狩りとすすきのから帰ったら支部なくなってるもんなぁ……捕まった鬼達を回収しろ、かぁ。なんか割に合わない任務だ…。そーいや捕まった鬼って女ばかりって言ってたな。霜鬼は殺されたらしいしな。…引き渡す前に味見するのもアリだな」
そこに、異変を察知した和鬼が駆けつける。
「電鬼さん…何故ここに」
「おー和鬼。久しぶりじゃ〜ん。今度は魔化魍にケツ触らせてんの?……支部にいた頃から俺たちよりも魔化魍に構ってたからそりゃそうか」
和鬼は鬼らしからぬ優しく温和で控えめな気性と、それに反して抜群のプロポージョンが災いし、他の研究者や男の鬼からセクハラを受けることが多かった。
電鬼は特にしつこく絡んできており、和鬼は愛想笑いで逸らしていた。
今は嫌悪感を全面に出している。
【やめろぉ!】
そこに、ライジュウの雷宙が飛び込んできた。療養も兼ねて留守番していたのだが、和鬼が絡まれているのを見ていてもたってもいられず飛び込んできたようだ。
【さゆきに、てをだすな!】
「子猫ちゃん1匹で何ができるよ?え?またオレの音撃弦『鳴雷』の餌食になりたいか?」
バチバチと帯電しながら威嚇する雷宙を所詮幼体と侮っているのかニヤニヤしながら見下ろしている。
その時、銃尾が瓦礫を、ミンツチ達が液体窒素粘液を噴射しながら現れた。
「うおっ!?なにしやがる!」
【雷宙!あとは俺たちに任せろ。おい小鬼野郎。沙雪には指一本触れさせねぇぞ】
「へえ。和鬼、コイツとデキてるんだな」
「ッ!」
ニヤニヤと下品な笑みを浮かべる電鬼。素顔はモテる容姿の彼だが、その本性は色狂いのセクハラ常習犯である。
【お前ら!あいつのお粗末なモンをぶち抜け!】
ミンツチたちはクエッ!!と返事をし、液体窒素粘液を吐き出す速度を上げてきた。
銃尾は別館のミンツチ達に粘液をより遠くに飛ばす方法を伝授していた。
ノデッポウとは違いミンツチは口の中で爆発させられないため勢いをつけて口を細めて打ち出す方法を教えたのだ。
「鉄砲隊かなんかかよ!」
「長篠の戦い……」
【ぼく、あいつゆるせない】
雷宙がどこからともなく黄色い電気を帯びた珠を取り出す。
その力を解放すると、雷宙は雷を纏い、さらに成体サイズに肥大化した。
【な、なんだ!?】
【大キクナッテル!】
【実験ノ後遺症カ?】
【雷宙!コノママ叩キツブセー!】
【暴走シソウ……心配ダワ】
「デカくなったからなんだ!ライジュウの弱点はこの弦!土手っ腹ぶち抜いて音撃を浴びせてやふべら!?」
雷宙の尻尾が叩きつけられた。
【うるさい】
そして、帯電した電気を右手に収縮し、叩きつける。
「あぎゃいいいいいいいいいいい!?」
超高電圧のお手を喰らい、なんと鬼の鎧を貫通してその身を直接焼いてきた。
数秒後、電鬼は黒焦げの炭となって北海道の空に散ったのだった。
「これが、成体のライジュウのパワー………」
【やったよー!沙雪!】
【んなっ!?】
「よくがんばったね、雷宙」
沙雪は雷宙の頭を優しく撫でる。既に元の大きさに戻っていて、嬉しそうに尻尾を振っている。
【えへへ】
【ぐっ……ガキンチョのくせに…】
【嫉妬カ?】
【大人ゲナイゾノデッポウ】
【う、うるせぇ!持ち場に戻れ!】
「銃尾もあとでなでなでしてあげるね」
【沙雪!?】