私は沢渡沙雪。鬼としての名前は和鬼(カズキ)。猛士北海道第一支部に所属していたが、今は(名目上)捕虜として夜真さん達と共に暮らしている。
「おはよう銃尾」
「おはよう」
彼はノデッポウの銃尾。銃のような形状の尻尾が特徴のトカゲの魔化魍。
私が第一支部にいた頃に世話を担当した魔化魍の一体。私の監視という名目で一緒に住んでいる魔化魍だ。
魔化魍を倒す為に猛士に入ったのだが,私は魔化魍だって生き物だということを知り無闇に清めることはしなくなった。そのせいもあってか変身鬼笛を没収され魔化魍の世話係にさせられてしまい、苦しみで泣き叫ぶ魔化魍達の声を毎日聞くことになってしまった。
「今日の仕事だ」
銃尾から仕事内容を書いた紙を挟んだバインダーを受け取る。仕事の割り振りはイッタンモメンの妖姫の雪さんが決めてくれている。
「はーい。えーと……。あれ、草むしりとかはないんだ」
「草むしり?」
「ほら、最近読んでる漫画にあったじゃない。検定もあるんだよ」
「アレはその漫画での話だ…-」
「残念」
朝食を済ませたら、作業着に着替えてお仕事開始だ。
case1 ライジュウの雷宙(付き添いの黄檗)
「うん。健康そのものだね。」
【ありがと!】
「たくさん遊んで,たくさんお勉強して、たくさん食べて,大きくなるんだよー」
【う、勉強…】
「春風たちと一緒に勉強してるんですが、まだ苦手意識があるみたいで」
「どこかで好きになるタイミングがあるかもしれませんね」
私は北海道支部に囚われていた魔化魍たちの健康診断をしていた。長い実験で体や心に傷を負っていると思い、北海道から出てから健康診断を引き受けた。体調管理は支部にいた頃から続けていたからみんな素直に参加してくれている。
銃尾とミンツチに助手を頼んでいる。ミンツチはノリノリでナース服を着ていたけど銃尾は頑なに拒んでいた。
case2 オンモラキの呪翼
【支部にいた頃は翼千切れかかったこともあったけど……今はすっかりくっついてるし飛び方変えても問題なく動いてくれるわ】
「翼に違和感覚えたらすぐ言ってくださいね」
case3 ウミザトウの海鳴(付き添いの妖姫 瑠璃)
【目はもともとこういう仕様なんでね】
「目の代わりに反響や杖で周囲の状況を確認しているんでしたね」
「海鳴だけじゃなくて、ウミザトウ種全体としての特性なんです。なぜか目が退化していて,その代わりエコーロケーション能力に優れているんですよ」
「なるほど….」
case4 ワニュウドウの焔転
【額の傷もすっかり元通りだ!】
「確か雷宙の代わりに実験を引き受けるって言ったときでしたっけ」
【清められる寸前まで行ったなぁ……】
case5マンネンタケの鎌竹
【筍以外も育ててみようと思うのだが……何がいいだろうか】
「うーん、私はトマトが好きですねー。あ、お米なんてどうでしょう?」
【なるほど。検討する】
「……あれ?なんか診断じゃなくて、悩み相談なような……」
【………気のせいだ】
【オイコラ目を見て話しなさーい】
case6 ナマハゲの氷刃
【シフト調節するの忘れててな…なるべく早く済ませてくれ】
「門番の仕事いつもお疲れ様です。あとで差し入れ持って行きますね」
case7 ユキオンナの冷華
【先生、わたし最近変なんです。夜真様の事を考えると冷たいはずの体が熱くなったような気がして】
「夜真さんのこと大好きなのね…」
一通りの診断を終えて一息ついていると、夜真さんが入ってきた。
「そーいや沙雪さんって,ちゃんと休んでる?」
「え?あ、はい……。というか、週に1か2日しか仕事が無いのが逆に落ち着かないですね」
「呪翼や銃尾から聞いたんだ。支部にいた頃はほとんど休んでなさそうだった,って。一日中魔化魍の世話に追われてたって」
「一応シャワーは浴びてました!あと洗濯もしてましたし。」
「……睡眠は?」
「あー……あまり取れてなかったかも。少しでもうとうとしてたら蛭倉さんに怒鳴られたり電鬼さんや霜鬼さんにちょっかい出されたりして…」
「………寝てくださいね。沙雪さん倒れたらみんな心配しちゃうんで」
「ありがとうございます」
「美味しいっ!」
「ミンツチって料理できるのか」
お昼を食べて、午後は何も無いのでいろいろ見学に行こうと思う。
まずは
ラゴーさん……健二さんの菓子工房だ。そこに赤い作務衣を着た男性がいて、健二さんに袋を渡していた
「あ。秤さん」
「おー、沙雪さんでやんすね。ちょうど小豆の納品をしていたところでやんす」
「この小豆は絶品ですよ。和菓子の味がより良くなりました」
「あ、門番の皆さんに差し入れをしたいです」
「少し待っててくださいね…」
次に門番たちのいる見張り台。
「沙雪さん」
「これ,差し入れです。いつもお疲れ様です」.
【これは、ラゴーさんのまんじゅうか】
【どら焼きもある!】
【この気遣いの良さ、銃尾が惚れるのもわかる】
【う、うるせえ!】
「?」
次に鍛治工房へ向かう。
【お、いらっしゃい】
「鉄火さんと焔転さん、それに拳流さんね。刀,完成したんですね」
【和鬼さんか。実はまだ未完成でね。後は魂を入れれば完成だ】
「魂?」
【イッポンダタラ族に伝わる秘伝の術だ。】
【獣や魚の魂と、人間の魂を入れ込む】
「そんな技が………」
【魂を宿した刀は強い。】
【暑いですよね。私も最初は蒸発しかけました。お水とタオルどうぞ】
暑いからか、汗をかいてしまったのを見た拳流が水とタオルをくれた。
そして夜。温泉に浸かって、自分に割り当てられた部屋へ向かう。
「んー………」
「お疲れ様だ」
「と言っても午後はほとんど見学だったけどねー。外に行けないのが辛いなぁ
「電鬼の話だと、沙雪や捕虜の鬼たちは猛士の裏切り者認定されてしまっている
「ええ……。私はともかく縁鬼さんや飛沫鬼さんが裏切り者って…」
「沙雪も、捕虜たちも俺たちが守ってやる」
「ふふっ、頼もしいね」