「あのさぁ燐」
「なんでしょう?主様」
「絵面がヤバいんで魔化魍の姿に戻って欲しいかな」
「むー、甘えちゃいけないの?」
夜真は燐の頭を撫でていた。だが紺色の髪をストレートヘアにした美少女の姿に変身していた燐とそれを撫でる夜真。側から見たら誤解されそうな組み合わせだ。
「おー楽しみ中のところ悪いが」
と、そこに鉄火が一本の刀を持って現れた。
「なんか誤解生む言い方やめて!」
「武器が欲しいって言ってたろ?だから刀を打ってきた」
「おおー……」
「名前は主がつけてやってくれ」
「……名前か」
刀に名前をつけようとしたその時、雪と墨が入ってきた。
「主様!大変です」
「家が鬼に襲撃を!今、橙、鋏鈷、剛壁とイッタンモメン三姉妹が対処してます」
駆けつけると、その鬼はなぜか変身していなかった。夜真をいじめていた主犯格だ。
「お前は」
「オレは鬼となった!名は響鬼だ!山本!お前とバケモノ……まかもー達をぶっ殺しにきてやったぜ」
「「「!!!」」」
魔化魍たちが一斉に反応する。
「落ち着け。どうせあいつが勝手に名乗ってるだけだろ」
「そ、そうでしたわ、つい冷静さを……」
「ってかさぁ、響鬼を名乗るってアンタいかれてるよ」
【響鬼といえば、オロチ現象を止め、先代の主「ヤトノカミ」を倒した男でやんすからねぇ。おいら達魔化魍にとっては天敵中の天敵でやんす】
「で、何であいつ変身出来てないの?鬼って姿を変えてたよな?」
「主様、恐らく奴は碌に修行を積んできていないと思われます」
【あの佇まい,完全に素人です】
夜真の問いには墨と拳流が答えてくれた。
「命じてくれれば俺が殺しましょうか」
橙が問うが、夜真はいや,いいと制した。
自称響鬼は苛立ちながら音撃棒を構えている。
「何ぶつくさ言ってるんだよインキャ野郎!早くしないとぶち殺すぞ」
「口じゃなくて手を動かそうな」
「うわああああ!?俺の腕がぁ!」
夜真は自称響鬼が叫んでいる間に壱嵐と鉄火に命じていて、風の刃と彼の試作品による斬撃で腕を切り裂いていた。
「もうこれで音撃棒握れないね」
「このクソインキャァ!」
「その陰キャに今からお前は消されるんだよ」
夜真は突進してきた自称響鬼を真っ二つに切り裂いた。
「俺剣術の心得ないけど……こんなにあっさり斬れるものなのね」
【気合を込めて打ったから、切れ味が、なっ!】
「さ、みんな飯の時間だよ」
春風が、壱嵐が、禍瘋が、燐が喰らいつく。響鬼を騙った「ただの人間」は絶望の表情のまま喰われるのだった……。
切り取られた腕は剛壁と鋏鈷がそれぞれ食べていた。
「………音撃棒、か」
物陰から様子を見ていた青年がいた。
「あらら…彼、勝手に音撃棒持ち出して…勝手に響鬼を名乗って食べられちゃったか。音撃棒は諦めよう。今行っても多勢に無勢だな」
青年は苦笑まじりに呟くと、その場を立ち去った……。
朝間 恭吾
夜真をいじめていた連中のリーダー格。金髪のスポーツ刈りと、左耳に2つピアスをつけているのが特徴的な青年。夜真に命じられた春風達に仲間を食われ復讐を誓い、鬼に弟子入り…したのだが、碌な修行もせず、勝手に音撃棒を盗み出し、響鬼の名を騙り夜真達に挑み、無惨に敗北してその身は魔化魍達の餌と成り果てた。
勝手に響鬼を名乗った彼は“響鬼”を襲名できなかった“ただの鬼”どころか、そもそも響鬼の弟子ではなかった。著名な鬼の名を騙っただけであり、修行もしてないので変身能力も身につけていなかった。